vol.3 音へのこだわり
モンキー そういえば、この間久しぶりにチャーリー・コーセー(注:1)さんに会ってきましたよ。
おおすみ まだ歌ってるんだってねぇ。
モンキー そう、そう。彼は自分でお店を持っていて、そこで歌ってるの。結構お客さんもいっぱいで、リクエストはルパンの主題歌が多いんだよ。
おおすみ 一日に一回は歌ってるらしいねぇ。
モンキー そうそう。その時、増山江威子(注:2)さんと一緒に行ったの。増山さんが宝塚に住んでいて、僕が神戸に行った時、たまたま増山さんも時間が空いていて、会うことになったの。で、たしかこの近くにチャーリー・コーセーさんのお店があるから行ってみよう、ってことになって、携帯で検索して探してみたら、すぐ近くだったの!(笑)
‐‐‐‐歌声は変わってなかったですか?
モンキー 変わってないねー。張りのある声でね。
おおすみ ほんとに、いい声だよなぁ。
そういえば最近、峰不二子のテーマ曲を、奥田民夫が歌ったんだけど知ってる?
モンキー へー、そうなの?おおすみ 結構おもしろいよ。ちゃんと感じが出てるの。
あー、CD持ってくりゃよかったな。こんど持ってきますよ。
今日はモンキーさんの新しいスピーカー「エベレスト」で音楽を拝聴するというのも大事な目的だったからね。(笑)
モンキー あはは(笑)。
おおすみ 僕も昔、ちょうどルパンを作ってた頃、スピーカーが欲しくなって、音響監督の田代敦巳さんに相談してみたの。そしたら「行きましょう!」って、丸一日かけてショールーム巡り! 何種類ものいろんなスピーカーを聴き歩いたんだよね。まだその時はスピーカーの知識も何にもない頃だったんだけど、最終的に一番いいと思ったのが、ジムラン(JBL)だったんだよね。田代さんに「おおすみさん、お目が高い!」って褒められたよ。(笑)
モンキー 俺もちょうど、その頃からハマり出したんだよね。
おおすみ 田代さんは、普通のスピーカーじゃ満足できないって言って、取り壊される映画館から、劇場用のでっかいスピーカーを家に運び込んでたよ。あまりにも大きいからスピーカーの後ろ部分が、家の外壁から出てたけど!(笑)。
モンキー (笑)。僕もやっぱり昔からJBLのスピーカーの音は一番いいと思ってたんだけど、値段が高くいてね。当時はなかなか手が出なかった。
僕は一つのこだわりがあって、買うときは必ず聴いてみるんです。一番の条件で聴けるところを探しすんですけど、「HiVi(ハイヴィー)」という雑誌があるんですけど、そこの視聴室が一番いいんですよね。聴きたいと思う音があると、連絡して聴かせてもらうんです。長い付き合いだから、指定したスピーカーもちゃんと用意してもらえるの。
おおすみ こうやって話しを聞いてると、すごい音響マニアと思うんだけど、モンキーさんのすごいところは、どんなに凝っても、生の音には敵わないという考え方を、最初からきちん持っているところなんです。みんな観念ではわかってるんだけど、なかなか認識できない。
モンキー 生の音ってのは、自分でチューニングできないでしょ?ところが、スピーカーの音は、自分でチューニングして好きな音で聴ける。音ってキャラクターだと思ってるんですよ。だからJBLのスピーカーの音もキャラクターで、そのキャラクターを好きか嫌いかってことなんですよ。
‐‐‐‐自分好みのキャラクター(音)を作っていく作業なんですね?
モンキー そうです。だから生の音よりは、自分の好みで聴けるスピーカーの音が好きなんです。たまに生演奏も聴きにいくけど、ホールによってかなり違うんだよね。それもまた一つのキャラクターになってる訳なんだけど。
おおすみ 全ての音が耳に入ってくる生の音と、「いらない音」と「いる音」を調整できるスピーカーの音は、まったく違うものだよね。
音響スタジオのモニタースピーカーって、ものすごいいいもの使ってるんだけど、あれで音楽を聴いて、いいなと思った事ないんですよ。
モンキー うん。
おおすみ なんでだろう?って思ったら、あのスピーカーは全ての音を聴けるようになってる、それは言ってみれば、ひどい言葉ですけど「あら捜し」ができるようになってるんです。欠点をすぐに見つけられるように。だから、そういうので聴くと疲れるんですよ。そうすると、家に帰って自分でチューニングした音で音楽を聴くとほっとする。安いスピーカーでもね(笑)
モンキー (笑)そういうことってあるかもね。
おおすみ 今日はモンキーさんの新しいスピーカー、エベレストでぜひ聴ききたいと思ってピンクフロイドの「原子心母」持ってきたんだ。
モンキー おお、いいねー(笑)。聴こう聴こう。
注:1 チャーリー・コーセー(wikipedia)
注:2 増山江威子(wikipedia)
モンキー・パンチ氏 略歴
1937年北海道厚岸郡生まれ出版社で漫画家のアルバイトをした後、1965年『プレイボーイ入門』で漫画家デビュー。1966年「漫画ストーリー」に『銀座旋風児』を発表。1967年「週刊漫画アクション創刊号」より『ルパン三世』を連載。アメリカン・コミック調のタッチで人気を呼び大ヒット。のちにテレビアニメ化、映画化を果たした。1998年から漫画週刊誌「WEEKLY漫画アクション」で17年ぶりに連載を再開。東京工科大学大学院博士前期課程終了。
2005年より大手前大学人文科学部メディア・芸術学科教授。
次回更新は4/29の予定です
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