結婚生活を振り返ってみる。これがうまく「消化」できないと先に進めないと思うから。
ゆうきとは仕事の関係で知り合った。
年齢は私と同じだが、私は短大、彼は大卒だったので私のほうが社会人としては先輩であることから、何となく仕事上の悩みなどを聞くようになった。グループで、飲みに行ったり、スキー旅行に出かけたりもした。
私はそのころ会社の先輩とつきあっていたのだが、彼は海外転勤になり、遠距離恋愛となった。私は自宅だったし、メールなどない時代だったから、年に3,4回、彼が日本に出張の時に会うだけだった。それでもそんな関係が2,3年続いていた。しかし、彼は他の女性と結婚してしまったのだ。
ゆうきからは「つきあってください。」と言われていたけれども、私は彼がいるから、と軽くかわしていた。それでも、ゆうきは何度もつきあって欲しい、結婚して欲しいと言い、まめに私を誘った。会社帰りに何人かで飲みに行くことがほとんどだったけれども、何回かは2人で行ったかも知れない。大好きだった彼に振られた時に、「好きだと、言ってくれる人と結婚するのが一番だ。」とふと魔がさした。ゆうきは実に3年間も私に結婚してほしい、と言い続けていたのだ。ゆうきは有名大学卒で、一流会社につとめていたことも、私を惑わした一因でもある。
さて、結婚とういう話になって、恥ずかしいから親に会わせたくない、と言う。それでも、と私の両親が席をもうけ、ゆうきの両親に来ていただいた。ゆうきの母はぼさぼさの髪の毛をひとつにまとめ、しみのついたようなワンピースでやってきた。近年母に聞いたのだが、この時の食事代を向こうは一銭も払わなかったそうだ。
次に、結婚式のお金がない、と言う。仕方がないので、これも私が出した。
そして、アパートを借りるお金がない、と言う。これも母のアパートを格安で借りることとした。
そして、結婚生活が始まって三日ほどでゆうきは会社を辞めた。「俺のやりたい仕事ができない」
次に務めたのは知り合いの小さな事務所だった。それだけでは給料が安いので、知り合いの小学生の所に週三回家庭教師に出かけた。そして、そこの奥さんとできていた。ひょんなことから知ってしまったが、黙っていた。
このころから帰りがどんどん遅くなり、ほとんど顔を会わさない毎日だった。
ある時、友達と山形に旅行に行きたいので、私の親に車を貸してくれないか、と言う。その間は実家の軽を使ってくれ、と。都内だったらうちまで来てもらって一緒にいったら?と言ったのだが、迎えに行く、と言う。快く送り出した。しかし、友達は会社の女の子だった。
弁護士に言われ、証拠は集めた。私の年収は彼の倍くらいだった。
「隠れてこそこそするのは止めてください。そういうことならどうぞそちらに。」
と言ってみたが、しらばっくれる。そのうちその彼女から有名ブランドのアクセサリーが送り返されてきた。ふざけんな!と一度はゴミ箱に捨てたが、待てよと思い直して、質屋に売った。二万円で売れた。
さて、結婚したばかりで離婚というのもなんだし、とちょっとばかり情を持ってしまったばかりに離婚の機会を逸してしまった。ゆうきは精神的におかしくなり、会社をやめ、一日中うちにこもるようになった。そのうち、「自分は女だ。」と言いだし、女装をするようになった。
このころは本当につらかった。親にも友達にも言えない。
医者には自殺するかもしれないから一人にしないように言われる。そんなの無理だ。
入院させることにした。
「分裂症の疑い」
三ヶ月の入院だった。