動2013:橋下発言の余波
毎日新聞 2013年05月15日 東京朝刊
◇維新内部「擁護すればするほど参院選苦しい」
日本軍の従軍慰安婦は必要だったなどとした日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)の発言で、同党は14日激しく揺れた。
同日午後、大阪市。松井一郎幹事長(大阪府知事)は待ち構えた記者団にこう言った。
「軍関係者であろうと合法的な風俗店については楽しんでいただいてもいいのでは」
橋下氏の真意を説明すると思われたが火に油を注ぐ結果に終わり、党内からは「擁護すればするほど参院選は苦しくなる」との弱音が噴き出した。
都議選を控えた東京では、国会議員団が釈明に追われた。石原慎太郎共同代表は「軍と売春はつきもの」などと擁護したが、幹部からは「ああいう発言をするなら事前に言ってほしい」との本音も漏れた。小沢鋭仁国対委員長は急きょメールで橋下氏と意見交換。橋下氏は「何を言っていただいても結構。個人の見解であることは間違いない」と返答してきたという。
公務のない橋下氏は終日ツイッターに向かったが、選挙担当者からは「これで女性票は大幅減だ」と嘆き節ばかりが聞こえてきた。
◇首相周辺「歴史認識で盾になってくれた」
橋下発言に対し、民主党などは14日、一斉に批判を繰り広げ、国会は参院選を意識した「維新たたき」の様相となった。
「女性の人権を無視した発言」。民主党本部で、海江田万里代表が口火を切ると、幹部らが「国際問題になりかねない」と続いた。維新と選挙協力を組む、みんなの党も距離を置いた。「コメントにすら値しない。参院選後も合流はない」。渡辺喜美代表は差別化に躍起となった。生活の党の鈴木克昌幹事長は「外交面で心配」と指摘し、共産党の市田忠義書記局長は「政党の存立が問われる重大問題」とまで言い切った。
自民党と維新は歴史認識や憲法改正など政策面で共通項が多い。最近は両党で個別に国会運営を協議するまでになっていただけに、首相周辺からは「(橋下氏は)歴史認識で盾になってくれた」との声も漏れた。自民党はこの日、火の粉を逃れるように、参院選の重大争点を経済再生に切り替え始めた。政府高官が静かに言った。
「彼(橋下氏)がこれをどうやって切り抜けていくのかな、というのは見ている」