大石さんのJ-CASTニュースへの寄稿記事が面白かったので。
人は簡単に変われない 企業は人を入れ替えるしかない (1/3) : J-CAST会社ウォッチ
「私がこの職場を変えてやる」という愚考
会社を変わることで、その人の才能がより発揮できる舞台に出会うマッチングが行われるのが、新陳代謝や流動性の本質です。これが絶えず行われることで、企業も変わることができ、個人も自分の特質を生かし続けることができるのです。
ぼくは会社員時代、日々職場に対して不満を感じて働いていました。「なんでPCひとつあれば仕事できるのに出社しないといけないんだ」「なんで他部署の承認が必要なんだ」「仕事中にマインスイーパやってるオッサンが自分より高年収とかおかしくないか」云々…。
そういう不満を上司に吐露すると、かなり高い確率で「そうだな、お前の言う通りだ、自分で頑張って職場を変えてみろ」ということばを頂きました。
これ自体は決して悪いアドバイスではないのですが、では現実的に「頑張って職場が変わるか」というと、世の中そんなに甘くはありません。実際、ぼくが当時悩んだ職場の課題は、頑張っても変わりませんでした。
そうなんです。職場はそう簡単に変わりません。自分の力で職場を変えられると思い込むことは、傲慢といってもよいでしょう。ましてや立場の弱い若手社員においては、その傲慢の度合いはより高まります。雑魚キャラひとりじゃ、何も変えられませんから。
今、ぼくが当時の自分にアドバイスをするのなら「頑張ってみるのもいいけど、職場はそんな簡単に変わらないし、君が正しいとも限らないから、より適性の合う場所に移動するのを考えてみるといいんじゃないかな?」と伝えます。こちらの方がより現実に即しており、有益なアドバイスとなるはずだからです。
ぼくの態度を「諦め」だと批判する根性論者も多いでしょう。が、ぼくは自分の経験からいって「諦め」は悪いことではありません。スキル的、性格的に適性の合わない職場で頑張りつづける方が、自分にとってマイナスです。不本意な悪路に四苦八苦する時間があるのなら、自分の全速力を出せる環境に身を移すべきです。
日本の場合、多くの才能が大企業にロックインされていて出てきません。本人にとっても辛いだろうし、企業にとっても不幸です。雇用の流動化は今までタブー視されてきましたが、これがなければ日本企業は不幸な人材をたくさん抱え、タイタニックのように沈んでしまうでしょう。
まさに、日本の企業においてはこれまで「ロックイン」が前提だったのでしょう。それゆえ「自分で頑張って職場を変えてみろ」という無理難題が押しつけられる。
ケースバイケースではありますが、難易度から考えると、本来あるべきアドバイスは、「職場を自分の手で変えろ」ではなく「自分の居心地のよい環境に移れ」でしょう。
いいかえれば、これは「他者を変えようとする」のではなく「自分を変えようとする」と態度です。「頑張って職場を変える」のは一見カッコいいですが、「自分の正しさを押しつけている」ことには気づくべきです。そして、あなたの正義は、必ずしも組織の正義ではなかったりもします。
もしみなさんが現状に不満を抱いており、「自分で頑張って職場を変える」と意気込んでいる、またはそうあるべきだと伝えられているのなら、自分のあり方を疑ってみてください。もっとエネルギーを効率的に使う道が別にあるかもしれません。
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他者をコントロールするのではなく、自分で道を選びましょう(選択理論)、という考え方が丁寧に説かれた一冊です。
外的コントロール心理学とは異なる、もうひとつの心理学があります。それが「選択理論」です。こちらは「人は自分の行動しかコントロールすることはできない」と捉える理論です。
(中略)「自分が相手にしたり言ったりすることは、数ある情報のひとつに過ぎず、それに対して、どんな行動や態度を選択するのかは相手次第である」と考えます。こう考えると、自分は他者からコントロールされているわけではないし、自分も相手を思うようにコントロールすることはできない、ということになります。