韓国社会福祉共同募金会 【ソウル】札幌に住む在日同胞の男性(88)が4月23日、韓国の社会福祉共同募金会を訪れ、「所得の少ない独居老人のために使ってほしい」と、29億1400万ウォン(約2億6000万円)を寄付していたことがわかった。 この男性は「他人の手助けは黙ってやるものだ」と名前を明かさなかった。同募金会によれば、98年の発足以来、個人寄付金としては過去最高額だ。 朝鮮日報と聯合通信が報じたところによれば、男性は、英科学誌「ネイチャー誌」にこれまで論文が3度も載ったという著名な医学者。今回の寄付金は、研究結果をまとめた特許などを売却して集めたという。 募金会には、「若くして異国での生活を続けるのが大変だったので、やむを得ず日本国籍を取得したが、韓国人としての誇りは忘れたことはない。日本の植民地支配や韓国戦争を体験し、いまや力なく孤独な立場になった同年代の高齢者に少しでも助けになりたい」と話している。 男性は1925年、平安北道(現在の北韓)生まれ。15歳で渡日し、高校に通った。解放後、北韓に残る家族と連絡が取れなくなり、アルバイトをしながら高校を卒業して医大に進学。大阪大学病院で5年間、専門医として勤務した後、札幌医科大学の教授に就任した。「研究に没頭し結婚など考える暇もなかった」ため生涯独身を通し、66平方メートルほどの集合住宅で質素な暮らしを続けている。 (2013.5.8 民団新聞)
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