◎はじめに
正直なところ、おじさんには蛭田昌人の凄さがそんなにはわからなかった。多くの人が天才と呼び、剣乃氏や業界全体に多大なる影響を与えたとする蛭田昌人。そんな彼の代表作である『同級生2』だけど、これは発売当時にプレイしていれば、それなりに面白かったのかも知れないが、初プレイの時期が遅すぎた。どうもシステムに面白さを感じれなかったし、テキストにもそんな突出したものは感じることは出来なかった。
『同級生』『ドラゴンナイト1~3』『野々村病院の人々』『河原崎家の一族1~2』『エル』『ワーズワース』『下級生』『鬼作』『臭作』『遺作』『シャングリラ1~2』も同様だった。勿論、どの作品も面白く、これらの作品のテキストを書いたことは天才以外の何者でもないけど、「そんな大袈裟に言う程のことだろうか」と思っていた。ぶっちゃけ、蛭田昌人よりもTADA氏や剣乃氏の方が才能は上なんじゃなかろうかと。
が、この作品をプレイして印象がガラリと変わった。なぜ蛭田昌人が天才と呼ばれ賞賛されたのかがようやくわかった。
というわけで、そんな『DE・JA(デジャ) I & II マルチパック』の感想である。今作は1991年と1992年に発売された『DE・JA』と『DE・JAII』のリメイクで、CGがフルカラーになっていたり、フルボイスになっていたり、操作性が向上していたりする。
ちなみに。なぜ今の時期にこの作品の感想を上げるのかと言うと、最近買った『ドラゴンナイト4』がうちの端末では動かなかったからだ゚:・( つдT)・:゚ ちゃんとベンチマーク試しておけよ、俺……。
◎キャラクター
いわゆる蛭田キャラの主人公。独り言が多く、説明口調、ふざけた思考回路を持っていながら、決めるところは決める天才タイプ。こうやって書くとどうってことないのだけど、実際にプレイしてみると鳥肌が立つ。なぜなら、これが今発売されている多くのエロゲ主人公の雛形になっているからだ。元は1991~2年の作品ですよ? 当時にこれをやっているのは脱帽以外の何者でもない。これを見ると、いかに剣乃氏が蛭田昌人に影響を受けているかがわかる。ああ、ルーツはここだったんだなぁと。
業界から姿を消して随分と経つけれど、彼は未だに蛭田キャラをエロゲライターに描かせ続けているわけです。
さて。
その他のキャラも個性豊かで面白い。何せヒロインのあだ名ががちゃ子である。このセンスは蛭田昌人ならではだろう(TADA氏も近いけど)。他にも島流繁王(しまながししげおう)だとか、大槻ケンヂだとか。凄いセンスですよ。
インパクトに優れたキャラが多く、ユーザーを飽きさせない。だから楽しい。
◎シナリオ
何が信じられないって、このシナリオが1991~2年に書かれていたという点ですよ。当時に発売されていたゲーム群から考えてみると、頭が3つくらいは抜けている印象。昔のゲームを今プレイすると、大抵はシナリオの古さが目に付くのだけど、この作品に関しては別格。今でも充分に通用する程のクオリティ。
考古学がテーマになっており、オーパーツやら何やらそれっぽい単語が次々に出てくる。巡るめく謎。次々に巻き起こるドンデン返し。ワクワク感。蛭田昌人の引き出しの多さに目を疑う。なんでこんなに多才なんだろーかと。後はこういうシナリオも書けるのねと。
後はあれだ。テキストの面白さに尽きる。単調にならないように、2分に1回はギャグが挿入されている感じ。それがまたセンスあって面白い。
◎システム
昔ながらのフラグ立てコマンド総当たりAVG。コマンド以外にマウスカーソルを操作してのフラグ立てもあり。
今となっては古臭い。フラグがわかりづらく、同じメッセージを2度3度と読ませられるのは苦痛でしかない。が、今作の場合、テキストが面白いので許せてしまう。様々な場所を選んでクリックして、面白メッセージをあますところなく拾わせようとする吸引力がある。
この「面白メッセージを拾わせる」っていうのは、コマンド総当たりならではの仕掛けだと思う。この辺をクリックしたらどういうメッセージが返ってくるのだろうか? と考えながらあれこれするのは楽しい。結構、2重3重にメッセージが用意されていたりして、その辺りの仕事が細かいのにも好感がもてる。
後は捜査シーンで威力を発揮している感じ。通常パートではやや苦痛になるが、捜査シーンはこのシステムの方が面白い。
◎音楽
それっぽい音楽。主張することもなく、地味すぎることもなく。良曲が揃っている感じ。また曲数が多いので飽きさせない。雰囲気が大事な場面では演出に一役買っていた。
◎ボイス
例によってどの方もお上手。だけど、結局は邪風鈴さんの印象しか残らないという罠(笑)。
◎絵
阿比留壽浩氏が原画。つーか知らん(笑) 調べたら、今はミンクの社長をやっておられる方らしい。なんというか、とても古い絵柄。それはまぁ、昔の作品なのだし当然のことなのだけど、これはそれをフルカラーに塗り直しているわけで、変な気持ち悪さみたいなものはある(笑) 古いのだけど、そんなに古く感じさせない……みたいな。なんだろうこの違和感。でも、この絵柄でもそれなりになるっていうのは凄いと思う。凄いよ、エルフ塗り!
◎総評
『EVE』とか『YU-NO』が好きな人で未プレイな人がいたら、是非プレイして欲しい。エルフの名作群の中では見事に埋もれてしまっているけど、これはかなり面白いですよ。私的なオススメ度は相当高い。
本当なら、どう面白いのかを書きたいのだけど、それをやると120%ネタバレになってしまうわけで、その辺りがとてももどかしい。
今現在、この手のAVGが作られることがなくなってしまったから、尚更プレイして欲しいなぁと思う。
けどあれだな。この埋もれっぷりから察するに、この手の作品の需要ってのは今の業界内ではまずないんだろーな(笑)。
コメント
妻みぐい辺りからエロゲをやり始めた自分には、こういうリメイクはありがたいです。
探偵紳士みたいにあり過ぎると、どれやればいいか分からなくなりますが(笑)
Posted by: マベ | 2007年07月13日 10:46
探偵紳士はハードコアをやっておけば問題ないかと。まぁ、あのシリーズは今となってはそんなにプレイする価値もないですけども(笑)
Posted by: ほいみん | 2007年07月13日 21:12
はじめまして
僕は蛭田氏は凄い人だと思います
菅野氏が影響を受けたのは間違いないでしょう
影響を受けつつ菅野氏のオリジナルを混ぜた感じですね
僕は野々村病院が一番好きでしたね
野々村は犯人見つけるだけなら面白さは半減します
すべてのENDを探すとか、すべてのCGを探す
というのが、このゲームの楽しみだと思います
私は200回プレイして終に最後の一枚が探せませんでした
攻略本を見て納得して感動したもんですね
Posted by: 京 | 2009年06月29日 07:12
当時98でリアルタイムにやったんですよね。
蛭田ゲーのはじめはELLEからだったんですが、あれの最後のどんでん返しでもうとりこになり、
ドラゴンナイト4で号泣、中年になってしまったいまでもにエト、マルレーネって名前を忘れられん。
名前は確かに適当ですよね。エトという名前もたしか
「え~と」
という考えるしぐさの擬音からきてるって、ドンだけ適当なんだよ見たいなwww
ワーズワースも、主人公の成長が、ヒロインや周りのみんなの台詞でわかるのがかなりいいんです。
そして対比として必ずいやみなライバルがいることwww
単純ですが、これがかなり胸がすく展開の元ですね。
同級生は2ですねえ。当時かなり本気で可憐チャンに夢中でした。
秋葉とか同級生のポスターだらけでしたよ。
そしてWINDOWS版の声優がクレヨンしんちゃんの人というだけで大切に持ってます。
あと、旧シルキーズブランドのタイトルもほとんどクオリティがすごいですよ。
有名な野々村病院もかっこいいですが、ほかのもすばらしいです。
蛭田ゲーは主人公もかっこいいのですが、エロが親父視点なのも今のものと違い好みでした。
ドラゴンナイト4まだやってないならお勧めです。
本当にあれは切なくなりますから。
やらないと損ですわ。
でも今じゃあエルフのソフトはやらなくなったのでさびしいです。
Posted by: sin | 2010年05月04日 15:03
初期からのエルフ好き(ドラゴンナイト1の時代から)にとって、DEJAの衝撃度は語れないほど。DEJA2は発売当初にやった。
あの主人公のトーク能力。ちなみに、DEJA1とDEJA2の間にELLEが発売されてます。こちらもお勧め。
Posted by: rarabie | 2010年10月12日 22:35