お遍路:日韓の橋渡し 崔さん「大窪寺」到着、4度目の結願果たす 韓国人初の「先達」へ /徳島
毎日新聞 2013年05月09日 地方版
3月6日から4度目の歩き遍路を行っていた韓国人女性の崔象喜(チェサンヒ)さん(37)=ソウル市=が、最後の札所「大窪寺」(香川県さぬき市)に無事到着した。4度目の結願を果たし、遍路道を案内したり各霊場で巡拝作法を手ほどきしたりする「先達(せんだつ)」に韓国人として初めて認定される見込みとなった崔さん。健康志向が高まっている韓国ではここ数年、お遍路への関心も増しており、「四国のお遍路文化を韓国にも広め、日韓の橋渡しをしたい」と意気込んでいる。【阿部弘賢】
5日、大窪寺に着いた崔さんは7年前に父親を亡くした。供養のために巡礼先を探していた時、四国霊場88カ所を巡る遍路道の存在を知った。3年前に初めて全札所を42日間で歩き通して以来、毎年この季節に、歩き遍路を続けている。
もともと日本好きだったが、四国に来て、初対面の人にも食べ物や宿を無償で提供してくれたり親切に声を掛けてくれたりする「お接待文化」に魅せられた。「つらい思いや悩みを抱えて歩き始めても、最後には温かい気持ちで終え、また来たくなる」と話す。
韓国人のお遍路さんの道標になるようにと、道中、宿や休憩所にハングル文字で書かれた自作のシールを昨年から貼らせてもらっているが、竹島問題を契機にした最近の日韓関係の悪化で、勝手にはがされたこともあったという。それでも崔さんは「応援してくれる人の方がずっと多い」と笑顔を見せる。
2年前には、お遍路に関する情報を発信しようと韓国語のインターネット交流サイト「同行2人」を立ち上げ、札所や宿などの役立つ情報を紹介。会員は現在200人を超え、四国訪問を希望する人も多いという。
13番札所「大日寺」(徳島市)の金昴先(キムミョウソン)住職(55)によると、昨年、韓国の著名な宗教家ら120人が同寺を訪れるなど、四国霊場に関心を持つ韓国人が年々増えている。来年は四国霊場の開創1200年に当たり、海外からの訪問客がさらに増えそうだ。金住職は「時代が変わり、国境や宗教を超え、無欲で歩くことを世界中の多くの人が求めているのではないか」と話す。
崔さんは韓国に戻った後、お遍路の魅力や体験談をまとめた本を出版する予定だ。崔さんは「日本に来るなら東京ではなく、まず四国に来るべきです。そうすれば日本の良さをもっと感じられるはずだということを伝えたい」と話している。