6月10日(木)、学校に行ったら、生徒に言われた。「今朝、NHKニュースに出てましたね」。エッ、そうなの。「又、捕まったのかと思ったら、イルカの映画でした」。
やだな。もう、捕まりませんよ。今は、悪いことはしない。法に触れることはしていない。正々堂々と生きている。「昨日の夜のニュースで見たよ」という先生もいた。そうだったのか。
昨日は大盛況だった。「ザ・コーブ」上映とシンポジウムに600人が集まった。入れなくて帰った人が300人もいた。凄い集会だった。そんな集会にパネラーとして出席でき、光栄でしたよ。
「騒ぎ」があると思い警察も随分と出ていた。マスコミも多かった。テレビのカメラは沢山来てた。でも、「乱闘」もなかったし、「事件」がなかったから、放映もなかったと思ってたのに。でも、ちゃんと放映してたんだ。それに、新聞はどこも、ちゃんと報道していた。
「ザ・コーブ中止に反対」(朝日)、
「ザ・コーブ上映中止でシンポ」(読売)、
「イルカ漁『ザ・コーブ』上映会、観客の反応」(東スポ)、
「上映中止シンポ」(読売)
…と、出ていた。
米ドキュメンタリー映画「ザ・コーブ」の上映を取りやめる映画館が相次いでいる。保守・右派団体が「これは反日映画だ。許せない。上映をやめろ!」と攻撃をし、それで怖れをなした映画館がすでに3館も上映中止を発表した。それで、この日の上映会にドッと人が詰めかけたのだ。入場券をローソンで売り出したが、売り切れ。「ともかく見てみたい」「果たして反日映画なのか」という関心も高かった。当日券を求める人が、開場2時間前から並んだ。
6時50分から上映だが、上映反対派が押しかけるという情報もあり、その時は、体を張って集会を守らなくては、と思い、5時には会場に行った。ところが、もう、長蛇の列。当日券を求める人だ。それに、警察官がズラリといる。何十人もいる。さらに私服の公安警察も、多い。物々しい警備だ。
上映反対派が大挙して押しかけるという情報もあったが、それはなかった。何人かが、上映反対のビラを撒いた位だった。「これは、テロ集団シーシェパードによるプロパガンタだ!」「テロリストの作った映画に表現の自由を認めてはならない」というビラだった。
しかし、主催者の「創」は「反対の自由も認める」と、ビラ配布も認めた。太っ腹だ。又、シンポジウムでは森達也監督は、「この映画に対する抗議の自由もある。その上で、一緒に討論しよう」と呼びかけていた。大したものだ。
上映開始が遅れ、上映したのは7時過ぎだ。映画は90分。休憩をはさんで、シンポジウムが始まったのは9時近くだ。だから、30分位しかなかった。映画配給会社からの説明があり、急遽来日した、主演のオバリーさんが挨拶。サプライズ・ゲストに皆がビックリした。そして、主催者が、「言論表現の自由が危うい。上映中止に反対する」とアピールした。その後は、「朝日新聞」(6月11日号)によれば、こうだ。
〈メディア批評誌「創」が企画。500人以上の市民が集まるなか、映画監督の森達也さんや右翼団体顧問の鈴木邦男さんらが、上映予定館への抗議活動や表現の自由について話し合った。森さんは「見て聞いて読んで議論するのが民主社会。当たり前のことが機能していない」と上映自粛の動きに危機感を示した。シンポでは映画上映も行われた〉
森さんと私だけが、名前が出てるが、他に、綿井健陽さん(映画監督)、板野正人さん(ディレクター)、野中章弘さん(アジアプレス・インターナショナル代表)が出席し、「篠田博之さん(「創」編集長)が司会をした。
短い時間だったが、充実したシンポジウムだった。質疑応答もやりたかったし、「上映反対派」も壇上に上がってもらいたかったが、時間がなくて出来なかったようだ。「上映中止」の説明をしたり、声明を読み上げたり、オバリーさんの挨拶があったりで、時間は、どんどん押してしまい、5人のパネラーは、1人5分ずつ喋り、そのあと、全体でちょっと話し合いがあったが、それで終了だった。
私は緊張してよく覚えてない。そしたら、ネットで紹介してる人がいた。中山治美さんが書いてくれてた。ありがたい。だから、それを紹介しよう。
〈上映中止騒動が勃発しているドキュメンタリー映画『ザ・コーブ』の上映とシンポジウムが9日、東京・なかのZERO小ホールで行われた。同作品は和歌山県太地町のイルカ漁を告発していることから「反日映画」として一部の右翼団体から電話や街宣などによる抗議を受けており、この日も万が一に備えて警察官19人が警備にあたり、会場内ではシンポジウムでペットボトルが投げられることを警戒して自動販売機の使用を中止する措置が取られた〉
警察官は19人いたのか。その他、私服の公安も沢山いた。見る人も緊張しただろう。司会の篠田さんが、「途中、立ち上がったり、叫んだりして上映を妨害する人がいたら近くの人が止めて下さい」と言っていた。でも、「そんなこと無理だよ」という声が多かった。
仕方ない。我々がやるしかない。森さん、綿井さんに、「その時は、我々3人で取り押さえて、外に出しましょう」と言ったら、「鈴木さん1人で大丈夫でしょう。柔道3段なんだから」と森さんに言われた。でも、暴力を振るわずに、大人しく出ていってもらうのは難しい。しかし、その時は、やるしかないかな、と思っていた。でも、ビラまき位だった。
〈その最中、「『ザ・コーブ』はテロ集団シーシェパードによるプロパガンタ」と書いたビラを配布する反対派や、日の丸を掲げて抗議しようとした男性に対して警察関係者が取り囲む物々しい一幕もあった。しかし550席の会場は瞬く間に満席となり入り切れなかった観客のために急遽ロビーにモニターを出してシンポジウムの様子を流すなど、人々の関心の高さを伺わせた〉
「朝日」は500人以上。ここでは550人。「毎日」「読売」「東スポ」でも550人以上と書いていた。大体、600人でしょ。それに、入れなくて、ロビーで見てた人も大勢いたし。
ともかく、超満員だった。あんな熱気のある会場で話す方も感動し、興奮するだろう。だから、私も自分で何を言ったか記憶にないが、こう書かれている。
〈過激な発言で知られる鈴木氏も「映画を見た上で、間違いを指摘し、日本の伝統だというのなら堂々と議論すればいい。許せないのは、見せないで反日映画と決めつけること。まあ、自分も昔、やってましたけどね(笑)。でもどうしても許せないのなら、1億2000万人に映画を見せて、『おれたちの主張が正しいだろう』と言えばいいのに、そういう勇気もないんですね。せいぜい20〜30人が反日映画と決めつけて、国民に映画を見せないなんて、それはかえって日本国民をバカにしている。信じていないんじゃないでしょうか。そういう行動そのものが反日的だと思います。違いますか!」と吠えると、会場から拍手が湧き起こった〉
ほう、この人は、こんな事を言ったんですか。凄いですね。吠えたんですか。ワン、ワン。
終わって、「上映反対」のビラを撒いてた人が、「お前の言ってることは間違っている」と言っていた。「宗教団体が、我々を批判するなら、まず我々の集会に参加してから言ってくれ、というのと同じだ」と言う。
そうかなー。違うと思うけど。宗教は、本も出してるし、主張も述べている。信者の行動も分かる。それで判断することも出来る。ところが映画は、見ない限りは全く分からないのだし。
私はネットの「マガジン9条」にも、この映画について詳しく書いた。初め、いろんな人から、「ひどい反日映画だ」「こんな日本バッシングは許せない」と言われていた。でも、見たら、そんなことはない。むしろ、オバリーさんの「自己批判」の映画であり、謙虚な「問題提起」だと思った。オバリーさんは、テレビの人気番組「わんぱくフリッパー」に出ていた。イルカと楽しく遊ぶ番組だ。でも、今はイルカ解放運動をやっている。
確かに、イルカ漁は残酷だ。イルカ肉も食べたいとは思わない。これが日本の「伝統文化」とも思わない。でも、イルカショーはいいんじゃないのかと思っていた。イルカは人間を乗せて泳いだり、飛び跳ねたり、実に楽しそうにやっている。そう思っていた。
ところが、イルカは狭い水槽で、ストレスがたまり、死んでいく。そこでエサと共に、胃薬を飲ませているそうだ。確かに、大海では凄いスピードで毎日泳いでいる。それが全く動けないような狭いプールに閉じ込められ、「芸」をしなければエサも与えられない。これではイルカもストレスになる。
又、イルカは人間にとてもなつくし、海でタイバーが泳いでいると寄ってきて、一緒に泳ぐ。自分の腹を触らせたりもする。又、サメに襲われたダイバーがイルカによって助けられたこともあるという。それほど人間に親切で、好意的な動物だ。「親人的」だ。「親日的」でもある。(決して「反日」ではない)。
それなのに人間は、その恩を忘れて、残虐にも囲い込み、モリで刺し、殺している。食べ、あるいは世界の水族館に売って、「強制労働」させている。これはひどい話だ。
私は、この映画で、初めて知ったことが多かった。いや、ほとんど何も知らなかったのだ。その意味では恥ずかしい。他の人だって同じはずだ。日本人のほとんどが知らないのに、「これは日本の文化だ」「伝統だ」と言われても困る。まず見て、知って、その上で、論じたらいい。
この映画は、アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞を取り、世界中で上映されている。当の日本だけが上映されず、日本人がこの問題を知らないとしたら、この事実こそが「国辱的」ではないのか。まず知ることと、見ること。それから議論したらいい。
「東京新聞」(6月11日付)は〈「表現の自由」めぐり活発な議論〉と題し、6段囲み記事で大々的にこのシンポジウムを報道していた。
〈司会のメディア批評誌「創」編集長の篠田博之氏が「作品を見て『思っていたのと違った』と感じた人」と客席に問い掛けると、多くの人が手を挙げた。篠田氏は「見ないうちにイメージだけで作り上げてしまう、これが問題だ」と強調した〉
そうなんだ。「上映するな!」と叫んでいる人々もそうだ。「イメージ」だけで反対している。「見せたら終わりだ」「洗脳される」と思っているようだ。だから俺たちが見せないようにしてるのだ…ということだろう。傲慢だし、日本人を蔑んだ考えだ。これこそ、「日本人蔑視」だ。と、私は思いましたね。
さて、これからだ。3館が上映中止になった。他の映画館にも、「上映するな!」と電話やメールが行っている。それに対し、「映画館は頑張れ!」と言うだけではダメだろう。我々も、駆け付けて守る努力をしなくては、と思った。この集会のあと、
「頑張れ!」「負けるな!」という声も増え、映画館も心強く思っているようだ。そして、何よりも、「我々の見る権利を守れ!」と一般の国民が声を上げることだ。
こんなに大きな問題になっているのに、一般の人は「見れない」。それでいて、「見せるな!」という人間だけが大声で絶叫している。何が悪いのか、何が問題なのかも分からない。おかしいだろう。まず、見せて、それから議論したらいい。その方向に行くことを願う。又、そうなるように私らも全力で努力する。
6月12日(土)は、横浜の映画館に行った。「上映をやめろ!」と叫ぶ人が30人ほど来て、映画館前でハンドマイクで演説。それも40分もやる。単なる嫌がらせだ。たなりかねて、「じゃ、私と公開討論しよう!」と言ったら、「帰れ!」と言われた。「鈴木邦男は日本から出て行け!」「出ていけ!」のシュプレヒコール。「ゴキブリ!」「ゴミ!」とも言われた。警察官にも、「やめて下さい」と止められた。だから不発。こっちは、たった1人なのに…。
6月13日(日)は阿佐ヶ谷ロフトに行った。午後1時から中野ジロー氏(作家)の出版記念と激励の集い。「ピョンヤンに行くんで行けなくなった」とお詫びの電話をしようと思ってたのに。それは不要になった。この日は、針谷大輔氏、AKIRA氏、月乃光司氏、高取英氏、宮崎美乃利さんなども来て、大いに盛り上がった。
①6月9日(水)中野ZERO小ホールで、映画「ザ・コーブ」の上映とシンポジウムが行われました。超満員でした。この写真は、シンポジウムの時です。左から、司会の篠田博之さん(月刊「創」編集長)、森達也さん(映画監督)、綿井健陽さん(映画監督)、坂野正人さん(ディレクター)、私、野中章弘さん(アジアプレス代表)。
⑤会場には山内和彦さんも来てました。ドキュメンタリー映画「選挙」に出てた人です。2007年ベルリン国際映画祭に上映され、数々の賞を取った映画です。川崎市議会選に見事、当選した、その時のドキュメンタリー映画です。今は議員を辞めて、「ライター」「子育て主夫」だそうです。『自民党で選挙と議員をやりました』(角川SSC新書)も出してます。
⑥「北芝健の他では絶対に聞けない話」。7月4日(日)午後1時から、阿佐ヶ谷ロフトです。 〈世界的大陰謀。テロ、ゲリラ、マフィアの真実! 日本の恐るべき闇! 欧米のエロ事情! 男女の攻防戦の裏表を犯罪学者、北芝健が切る!〉 という謳い文句です。元ヤクザ組長、元犯罪者、マッド・サイエンティスト、「ムー」編集長、元演歌歌手…など、いろんな人が出てました。
⑦控え室で、後ろに北芝さんがいます。右上に横からクビを出してるのが小峯さんです。(元「週刊プレイボーイ」の編集長です)。「鈴木さんとは朝生で会いましたね」と言う。何だっけ? そうだ。「オウムと連合赤軍」だ。あの時も、犯罪者ばっかりだったな。植垣康博、宮崎学…とか。
⑩6月5日(土)、自治労会館で。孫崎亨さん(評論家)の講演を聞きに行きました。日米安保の話でした。孫崎さんは私と同じ昭和18年生まれです。一緒に写真を撮りました。そしたら、亡くなって、4月24日に葬式をしたはずの塩見孝也さんが、ツツツーと寄ってきました。亡霊です。だから、カメラには写らないでしょう。と思ったが、写ってました。不思議です。奇妙です。あるいは私が夢を見てるのでせうか。
⑪6月3日(木)夜7時からネーキッドロフトで。「幸福の科学だぜよ!」が行われ、私も途中から見に行きました。壇上の人は、左から、小林郁子さん(幸福の科学広報局課長)、渡邊伸幸さん(同広報局部長)、饗庭直道さん(幸福実現党広報本部長代理)、里村英一さん(『ザ・リバティ』編集長)、有田芳生さん、山田直樹さん(ジャーナリスト)。司会は、お客さんのかげで見えませんが、藤倉善郎さん(やや日刊カルト新聞社主筆)。
⑬6月10日(木)、午後6時半より、ANAコンチネンタルホテル東京。喜納昌吉さんの決起集会です。〈すべての人の心に花を。花を咲かす会in東京〉と銘打って、講演と、ミニコンサートの夕べでした。喜納さんは元気一杯でした。新しく出た『沖縄の自己決定権』(未来社)も売ってました。帰って読みました。なかなかいい本でした。「右も左もない。なか翼(仲よく)だ」と言ってました。私は「左右を超える」(超翼)と言ってます。宮崎学さんは、左右は入り乱れたらいい。混翼(混浴)だ!と言ってます。果たしてどの言葉が定着するでしょうか。
⑮ホテルから帰る時、バッタリと志方俊之さんと会いました。他の集まりに出てたのでしょう。志方さんとは、朝生や「たかじん」で何度かご一緒しました。「今は全体が右傾化してるから鈴木さんも大変でしょう」と同情されました。志方さんの意見はいつも筋が通っているし、世に媚びない。そこが好きですね。