株式会社三橋貴明事務所
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『ドイツのユーロ(後編)①』三橋貴明 AJER2013.4.16(1)
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「経済界 2013年 5/21号 [雑誌]
」に連載「実践主義者の経済学」第25回「ユーロと生産性」を寄稿しました。
さて、昨日の予告通り、本日はオランダ危機の話です。
オランダと言えば、ドイツに次ぐ優等生。慢性的な貿易黒字国、経常収支黒字国で、新自由主義者お好みの構造改革も進んでおり、ドイツの緊縮財政・構造改革路線をバックアップしてくれる国という印象でした。そのはずでした。
ところで、IMFのWorld Economic Outlookの2013年4月版がリリースになりましたので、改めてユーロ圏の経常収支の状況を見てみましょう。
【ユーロ圏の経常収支の推移(単位:十億ドル)】
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_42.html#CurrentEuro
改めてデータをグラフ化すると、
「ユーロ圏の経常収支黒字国はひたすら黒字を拡大し、赤字国はこれまたひたすら赤字を拡大する」
いわゆるユーロ・インバランスが08年に終了していることが分かります。07年のアイルランドを皮切りに、諸外国で次々に不動産バブルが崩壊していき、08年9月にはリーマンショックが起き、さらにギリシャの財政危機が顕在化していきました。
その後、赤字組(フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャなど)の赤字幅は横ばいで推移していましたが、2012年に一気に縮小しました。最早(フランスを除き)ユーロ諸国に経常収支の赤字を引き受ける余力はないという話です。
凄いのは、ユーロ圏の赤字組が赤字幅を縮小している中において、ドイツは黒字幅を拡大しているところです。もちろん、最近までのユーロ安の恩恵で、ドイツの「ユーロ圏外」への輸出が増えたという話です。とはいえ、それももう終わりつつあります。
それはともかく、オランダはユーロ圏でドイツに次ぐ経常収支の黒字を確保し続けています。このオランダがなぜ「危機」なのか。
『ユーロ圏を崩壊させ得るオランダの債務危機
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323605404578472214120164122.html
ユーロ圏で最も大きな債務を背負っている国はどこか。国費で気前のいい年金を支払っている浪費家のギリシャか。いかがわしいロシアの資金をその銀行に預かっていたキプロスか。景気後退に見舞われているスペインか、それとも好況後の不況に陥っているアイルランドか。
そのいずれでもない。実は節度と責任感のあるオランダだ。
オランダの家計債務は可処分所得の250%に達した。これは世界でも最高レベルであり、スペインでさえ、それが125%を上回ったことはない。
オランダは世界でも最も重い債務を抱えた国になってしまった。景気後退に陥り、そこから脱却する兆しはほとんど見えていない。3年にわたってだらだらと長引いてきたユーロ危機だが、これまでに感染してきたのはユーロ圏内の周辺諸国だけだった。しかし、オランダはユーロ圏と欧州連合(EU)の中核国である。オランダがユーロ圏で生き残れなければ、このゲームは本当に終了となる。(中略)
主にドイツ経済に有益なように設定された低金利と潤沢な低利融資資金が、不動産ブームと債務の急増につながった。オランダの住宅価格は、ユーロの導入から市場がピークに達するまでに2倍になり、世界で最も加熱した不動産市場の1つとなった。
その市場が今、大暴落している。オランダの住宅価格は、米国の住宅バブルが崩壊したときのフロリダと同じぐらいの速さで下がっているのだ。現在の価格はバブルがピークに達した2008年より16.6%も低くなっている。英国不動産業者協会(NAEA)の予測では今年さらに7%下落するという。つまり、2001年以前に家を買っていなければ、現在の住宅の価値は買ったときよりも下がっており、下手をすると住宅ローン残高よりも低くなっているかもしれない。(後略)』
実のところ、大して難しい話ではなく、
「ITバブル崩壊の直撃を受けたドイツを救うために、ECBが金利を引き下げた結果、オランダで(オランダ以外も)不動産バブルが発生し、家計の負債が膨れ上がっていった。その後、不動産バブル崩壊が始まり、オランダは『巨額の家計の債務』という思い足かせを背負うことになった」
という話でございます。
家計の債務対可処分所得250%というは、結構凄まじい数値で、何しろリーマンショック時点のアメリカさえ、本指標は160%程度でした。
ここで改めて上記「ユーロ圏の経常収支の推移」を見て欲しいのですが、オランダの経常収支の黒字は08年、09年時と比べ、最近の方がむしろ増えています。不動産バブルが崩壊したにも関わらず、経常収支の黒字が増える。こんなことあるのかと思われた方がいるかも知れませんが、それは普通にあります。何しろ、日本もそうです。
要するに、オランダの家計が過剰(過剰すぎる)債務負担により、消費を減らし始めており、オランダ企業の「供給能力」が国内の需要に対し過剰になりつつあり、
「同国の供給能力が外需に充てられた」
結果、経常収支の黒字が維持されているのではないかという話です。(日本はまんまこうなりました)
オランダの場合は経常収支黒字国であるため、国内の供給能力は十分です。すなわち、アベノミクス張りの金融政策と財政政策のパッケージを実施すれば、問題を解決できるわけです。
とはいえ、ユーロ加盟国のオランダは金融政策の自由を持ちません。と言いますか、金融政策の自由が無いからこそ、ECBの低金利政策でバブル拡大を招いてしまったのです。
WSJの記事にもありますが、このままドイツ式緊縮財政を継続し、しかも金融緩和も充分にできないとなると、オランダ国民のユーロへの支持は失われていきます。
さらに、日本の円安はドイツのみならず、もちろんオランダにも打撃を与えます。といいますか、国内の民間債務が過剰になっている状況での輸出減少は、これはきついです。まさに、このままの経験をした日本国民であれば、わかるでしょう。
オランダはこのままでは「構造的な日本化」の道を辿ることになります。日本の場合、単に政策担当者がミスを繰り返した「政策的な日本化」でしたが、オランダの場合はユーロに加盟している限り、どうあがいても日本化の道を辿らざるを得ないという、まことに困った状況です。
そう考えたとき、
「もしかして最も早くユーロから離脱するのは、オランダになってしまうのでは?」
とすら思えてしまうわけです。
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2 ■ユーロの崩壊ではないかと思いますが
山科さんは、あのケチなオランダ人が・・・といってましたが、確かにダッチアカウントはそうですが、実はドイツ人はその上を行くそうです。
東京駅の修復が終わり、赤レンガの東京駅と旧中央郵便局のビルが新しくなって脚光を浴びているようです。 あのレンガ造りの東京駅はオランダ・アムステルダムの駅がモデルになっていると聞いたことがあります。 こんどは日本のデフレをオランダが後追いするのでしょうかね。
しかし、ユーロも出口が見つからないラビランス(迷宮)かMaze(迷路)に入って抜けられませんね。 ドイツが先か、オランダが先か、いやギリシャが先か・・・
3 ■無題
ユーロを一つの国とみなせばその構造はデフレで苦しむ日本の姿そのものなのですね。ユーロ圏の財政悪化→金融引き締め→財政悪化のデフレスパイラル。この作為的一方通行ともいえる不景気策は祖国に魂を持たないグローバル企業(ハゲタカ)にとって格好の獲物となるでしょうね。金融政策が打てないから通貨量は増えない→ユーロ買えば儲かる。財政悪化で景気後退→ユーロ圏株式を空売りすれば儲かる簡単なお仕事となるでしょうね。
日本は一線を超える前に立ち止まる事ができそうですが、革命や内戦の歴史とも言っていい欧州の人たちの沸点はそんなに高いものではないと思います。
4 ■無題
>「安倍政権が羨ましい」と中央日報…凋落・韓国の本音チラリ「日本が蘇る」
2013.5.14 08:00 (1/4ページ)
>「ウォン安」と「サムスン電子」の“看板”だけで成長してきた韓国経済も曲がり角を迎えている。
>日銀の異次元緩和に揺れる韓国経済
大阪・泉州沖。関西国際空港には今、連日多くの外国人観光客が降り立つ。一時1ドル=102円にまで急落した円安ドル高効果で、新関西国際空港会社が発表した3月の外国人旅行客は前年同月比37%増の36万5490人と、3月としては平成6年の開港以来、最多を記録した。
>アベノミクスによる日本銀行の異次元緩和は「円高」の流れを一気に「円安」に変え、5月9日には1ドル=100円を突破、13日には約4年7カ月ぶりに102円台前半にまで下落した。
>日本が復活しつつあるのは、政府が3本の矢を同時に放ち、4重苦(円高・高関税・高税率・高エネルギー費)をなくすという明確な目標を示し、「それにむけて一斉に動いているためだ」と指摘。半信半疑だった国民も、大胆かつ果敢に政策を実践する安倍政権に対し、「この政府なら経済を再生できるとういう期待が生まれた」とする。その上で、韓国の現状をこう厳しく分析する。
>4月25日に韓国銀行(中央銀行)が発表した1~3月期のGDP(速報値)の民間消費は前期比0.3%減と5四半期ぶりにマイナスに転落した。さらに日銀が4月に決めた異次元緩和の影響でウォン高円安が進行。ウォン安を背景に世界中で自動車、デジタル家電などのシェアを高めてきた韓国企業だが、ウォン高で価格競争力が低下し、業績は急速に悪化しつつある。
>韓国は財閥系の大企業を優遇し、国全体の経済力を高めてきた。この政策に対し、韓国国民の中には不満がくすぶり続けていたのは事実で、それは韓国最大の企業であるサムスン電子が同国で最も嫌われている企業の1社というところにも表れている。国全体が上げ潮のときはこうした不満もまだ表面化していなかったが、今回のウォン高等にともなう景気低迷をきっかけに「人々の意欲が落ちている」とコラムは指摘。
朴さん、今こそ己の失政から目をそらすために反日をwで、在日を引き取り、国交断絶をお願いしますwwww
5 ■オランダと対照的な日本、日本のアベノミクス
円安と株価の高騰は、この短期間にこれ程までに推移するとは誰も想像しなかったと思います。
三橋氏は日本の潜在力を理解されていたと思います。私も懐疑的ではありましが、日本の潜在力を信じてました。
最近はバカみたいに、テレビ東京の「ジパング」を見て活字ではなく映像として日本企業の躍進、奮闘振りを感じてます。 昨日もトヨタの社長の決算報告とコメントがありましたが、年末から今日までの間で「失われた20年の半分を取り戻した」と言ってましたね。 それと家電関連の企業も回復基調にあります。
今日の中央日報ではアジア太平洋地区での日本の銀行の投資額、融資額か? そのシェアが50%だそうです。 2,3年前とは天と地の差があります。 それと安倍総理は東欧諸国にも原発の売り込みに精を出されているようです。
1979年にエズラ・ヴォーゲル氏がJapan as No.1を出されましたが、正に21世紀は日本の世紀になる勢いを感じます。 一年前まで影の存在であった日本が今世界を牽引してます。
まだ、何もしていない状態でこうです。
今後は内需拡大のため、インフラ整備(国土強靭化)、東北の復興、安全保障の確立、資源開発、に財政出動を期待しています。
今、東京の大改造が始まってますが、地方も頑張って頂きたいと思います。私はアジアを中心に日本型の資本主義が根付くのではないかと密かに期待しています。
6 ■移民問題
財政問題の影に隠れていますが、オランダやベルギー、スウェーデンといった国々では、イスラム系移民人口が自国民の人口を早々に上回るといわれています。
国家百年の計を誤り、安易に労働力を輸入しようとした成れの果て。治安は悪化し、文化は失われる。治安や文化伝統は国の宝、それがなくなっては自国民がますます子供を育てにくくなり、国への誇りを失い、人々のストレスレベルは上がり、長期的には経済も停滞するでしょう。
この点でも、日本は決して欧州の二の舞になってはなりません。
7 ■思考停止
>日本の場合、単に政策担当者がミスを繰り返し>た「政策的な日本化」でしたが
本当に三橋さんはそう、思っていらっしゃるのでしょうか?
社会的に地位の高い人々が仮にもちょっと調べれば解るような単純なミスを繰り返していたとは私には考えられません。
本当の理由は三橋さんは実はお解りなのでしょうが、そんなところで思考停止しているふりをしていると、また「TPPで騙された」とか「消費増税で騙された」とかサポーターが騒ぐ話になりかねません。
例えば今回の株高や円安の件、本当の実行部隊は日銀でしょう。日銀が膨大な資金量で東証の買い入れを行っている。従って円安に振れている。その事実にヘッジや市場関係者がさも、操作しているような印象を与えているだけ。現在、世界中で通貨の発行余地がある規模のでかい中央銀行は日銀だけの状況。
上記のようなことは金融関係者なら今や常識ですが、三橋さんは敢えて触れずに市場が勝手に株やドルを買い上げていると言ったスタンスでおられていますよね。敢えて事実を伏せておられると私は思います。
今後、三橋さんには原因が「担当者が馬鹿だった」レベルの話で「思考停止」にならずにもっと突っ込んだ原因の公開を切にお願いしたいと思います。なんかこのままだと「TPP」も「消費増税」も担当者が馬鹿だったから結局、施行されちゃいましたとなりそうで怖いですから。
立場上、大変でしょうが、何卒よろしくお願いいたします。良い国にするために。。。
8 ■>#4
>mさん
私も同じ記事を読んで、コメントの一部したんですが、 同感です。
サムスンに関しては別のブログで面白いのがありましたよ。つまりサムスンは粉飾決算を繰り返しているようです。計上すべき経費が抜けていて、外資の逃避を逃れている、政府のその後押しをしているような話です。それとスマートフォンしか戦略的武器がないんです。
それから昨日のコメント;
>オバマも今頃、「あれ?今TPPはやばいんじゃ?」って気づいてくれればいいがw
前にも書いたのですが、オバマは産業の国内回帰を謳い、100万人の雇用を米国内で作る言っておきながら、TPP推進なんです。この辺の矛盾が判ってないんです。移民の自由化や自由競争の拡大は先進国には不利なんです。
これで関税撤廃になれば、米国以外の国からの完成品が津波のように押し寄せ、国内の産業は太刀打ちできません。
こんな当たり前の理論が判らないんです。日本はアメリカとはやや違います。先端産業や中小企業の能力は高いです。円安で全てが回復基調になってます。 アメリカは失われた技術、産業基盤、労働者のメンタリティーはすぐに回復しません。
机の上でしか考えてないバカはこの事がわからないんです。
だから、TPPは参加国にメリットがなく、意味のない協定なんです。 判りませんが、日本が参加することになっても、負けないと思いますね。
私が懸念しているのは、他にもあります。ベネズエラのチャべス氏が亡くなりました、ベネズエラは石油の埋蔵量がサウジを抜いて世界一だそうです。 その石油パワーで反米勢力を南米に広げましたが、その国々は今後新たな国家政策を考えなくてはいけません。中南米は今後、TPPに加盟する可能性があります。
こうしてTPPが環太平洋を包み国枠組みになると日本が「蚊帳の外」では、すべてアメリカのスタンダードになります。規格や法体系までアメリカ式になったとき、さて日本は?になります。
日本企業が進出している東南アジア、インド、ミャンマーなどがAmerican Standardで進められることになります。
安倍総理はこうした事態になっていく気配を、各国首脳から聞いて、感じているのではないでしょうか。 私はTPPは意味のないものですが、この事も頭に入れておく必要があると思います。
9 ■重箱の隅ですが
× 思い足かせを背負う
○ 重い足かせを背負う
10 ■インフレとハイパーインフレと生活
小生、ニクソンショックの時は
かぎっ子で小学生でした。
昼は母親からお金をもらい
パンを買ってたべていました。
しかし、ある日いつものように
お金をもらってパンを買いに
いくと、パンが値上がりしていて
いままで、2個買えたパンが
1個しか買えませんでした。
母親にパンが値上がりして
2個しか買えないとゆうと
お金がないのでいままで
と同じしかあげられないとゆうの
です。
すきっ腹をかかえました。
これはハイパーインフレでは
ありません。
ハイパーインフレでなくても
貯金の額面はかわれず、
貯金の価値が四分の三や三分の二に
なることは十分ありえます。
しかし、日本の製造業が全滅したり
サービス業が大打撃をうけ仕事が
なくなるのとどちらがいいか
と聞かれれば答えにこまります。
総裁の行なっていることが
いいわるいの前に小生は
自分の家計防衛行動を行います。
1 ■ギルダー復活
マルクより先にギルダー復活か?
オランダ危機を「日本化」という見方からみるとよくわかりました。
しかし、欧州で例外的に 反日の人がいるオランダが経済的 日本化とは皮肉ですね。