橋下氏慰安婦発言:「女性への冒とくだ」…市民団体も反発
毎日新聞 2013年05月14日 00時13分(最終更新 05月14日 01時22分)
「女性に対する冒とくだ」。従軍慰安婦制度は必要だったとする日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長の発言を巡り、慰安婦問題に取り組む団体だけでなく性的被害を受けた女性を支援している団体の関係者からも驚きと反発の声が相次いだ。
慰安婦だった女性を招いた証言集会を開催し、橋下氏に女性と面会するよう求めてきた市民団体「日本軍『慰安婦』問題・関西ネットワーク」共同代表の方清子さんは「女性の人権を無視した発言。国際会議でも女性への性暴力根絶が議論されている。人権感覚を疑う」と憤った。
「旧日本軍性奴隷問題の解決を求める全国同時企画・京都実行委員会」の浅井桐子さん(56)も「これまでも(政治家の)『やむを得なかった』との趣旨の発言はあったが、『必要だった』と肯定する発言は聞いたことがない」と驚いた様子。
元慰安婦の女性らが共同生活する韓国京畿道の施設「ナヌムの家」の金貞淑(キムジョンスク)・事務局長は「深い傷を負った元慰安婦の方々をさらに精神的に痛めつけるような発言。こちらに来て元慰安婦の方々の話を直接聞いた上で発言してほしい」と話した。
全国組織の「性暴力禁止法をつくろうネットワーク」の共同代表で、性暴力などの相談を女性から受ける活動をしている周藤(すとう)由美子さんは「戦争という暴力の遂行のため、女性の性を利用することが当然のような言い方で、全ての女性に対する冒とくだ。沖縄の米軍基地問題にもつながる発言で、基地周辺で(性暴力被害に)苦しむ女性に対する想像力もない」と語った。【花澤茂人、関雄輔】
◇研究者も疑問視
研究者からも批判や疑問の声があがった。
従軍慰安婦の証言を本にまとめた神戸女学院大の石川康宏教授は「慰安婦問題は過去の話ではなく、今も重大な外交テーマ。東アジア各国といかに付き合っていくかに関わる問題だという認識が欠如している」と指摘した。
木村幹・神戸大大学院国際協力研究科教授は「政権を狙う国政政党の代表とは思えない不用意な発言。慰安所の設置は中国大陸での暴行頻発が背景にあり、その必要性を認めることは『当時の日本軍は戦地で暴行をするような軍隊だった』と認めるも同然。首相として自衛隊の最高司令官になるかもしれない人物が、戦争状態では慰安婦制度もやむを得ないとも解釈される発言をするのは軽率だ」と語った。