【きんだいちしょうねんのじけんぼ ほしみとう かなしみのふくしゅうき】
ジャンル | アドベンチャー |
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対応機種 | セガサターン | |
発売元 | ハドソン | |
開発元 | メトロ | |
発売日 | 1998年1月15日 | |
定価 | 5,800円 | |
レーティング | セガ審査:全年齢推奨 | |
金田一少年の事件簿シリーズリンク |
人気の絶頂にあったアイドルが「事務所社長の息子との密会」というスキャンダルで失脚。アイドルのマネージャーであった「立花由布」も、真相を探る途中で謎の転落死を遂げた。
警察は由布の死を自殺と断定したが、そのことに不審を抱く者が2人いた。1人はスキャンダルを仕掛けられた張本人で由布の親友でもあった「桂木なお」。もう1人は由布の婚約者「阿佐桐卓也」。スキャンダルが仕組まれたものであったことに気づいた2人は別々に由布の復讐を決意。すべての関係者が集まるレジャー施設「星見島」でその機会を伺うのだった…。
本作は殺人犯になって復讐を遂げることが目的という、推理ゲームの中でも類を見ない異色作である。その異色さは「このゲームは犯罪を助長するものではありません」という警告文がCDケース・説明書・ゲーム開始時の3か所にわたって記載されていることからも伝わるだろう(なぜか対象年齢は「全年齢推奨」だが)。
主人公は「桂木なお」(初級編)と「阿佐桐卓也」(上級編)の2人。主人公によって主な登場人物と復讐のターゲットが変わり、復讐のきっかけとなる事件から始まって復讐相手を探し出して殺害し、金田一の追及をかわして復讐を成し遂げることが最終的な目的となる。基本的には選択肢を選びながらシナリオを読む「アドベンチャーモード」でゲームを進めていくが、殺害シーンや逃走シーンでは「リアルタイムサスペンスモード」なるアクション要素が強いミニゲームをすることもある。
ゲームの難易度は高めである。復讐を遂げるにはターゲットを探すところから始まって、殺害方法やトリック、殺害する順番までを自分で決めていかなければならず、ちょっとでも方法や手順を間違えたり不審な行動を取ったりすれば、たちまち金田一に気づかれてバッドエンドになる。気づかれるポイントは、プレイヤーでさえ「いくらなんでも」と思うような大失敗から、金田一の本領発揮と言えるさりげないものまでさまざま。反対にうまく欺いていけば、原作ではなかなか見られない推理を外しまくる金田一(と最後にちょっとだけ出てくるあの人)を見ることができる。
金田一に気づかれる以外にも、「疑心暗鬼に陥った復讐相手に殺される」「復讐相手を間違える」「金田一を殺そうとする」などバッドエンドの種類は豊富で、特にちょいちょい混ざっているネタ選択肢を誘惑に負けて選ぶとほぼ間違いなくバッドエンドに直行する。バッドエンドにもネタ要素の強いものが多く、殺人をする前どころか復讐を決意する前に話が終わってしまうものもある。
ありそうで意外とない、犯人視点で話が進む推理ゲームである。このような作品はミステリーでは「倒叙もの」と呼ばれる
(*5)
が、これらの作品では完全犯罪をもくろむ犯人が探偵に追い詰められていく過程が物語のメインになるため、「犯人が探偵を出し抜く」というシチュエーションにはまずお目にかかれない。
また、『金田一少年の事件簿』のもう1人の主役とも言える犯人にスポットを当て、復讐を遂げるまでの経緯や心情の変化、殺害を実行に移すまでの苦労、金田一を欺くための涙ぐましい(?)努力を追体験できることや、「先輩としてアドバイスをする」というとんでもない役どころで過去に登場した怪人が出演すること、犯人にとって金田一がどれほど恐ろしい存在なのかがよく分かることなど、キャラゲーとしても優秀な点が多い。
「殺人犯になって復讐を遂げる」という人には勧めにくい内容やアドベンチャーゲームとしては不便なところもあるが、ゲームならではのミステリーの楽しみ方ができる良作と言えるだろう。
*2 さらに、本作に登場するトリックのいくつかは原作でも使われているのだが、そのトリックを使うとバッドエンドになり、「金田一には同じ手は通用しない」と忠告されるという念の入れようである。
*3 金田一の後輩のビデオマニアで、事件現場の撮影役を担当する。原作では同じ役割をしていた兄がある事件で殺されたため登場するようになったが、アニメ版では兄が生きているので登場しない。
*4 そもそも最初の主人公選択画面が「供述調書」となっているので、結局は捕まったか自首したのだと考えられる。
*5 推理小説ではF.W.クロフツや鮎川哲也、折原一、大倉崇裕などの作品、ドラマでは『刑事コロンボ』『古畑任三郎』などが有名で、『金田一少年の事件簿』の短編にも倒叙ものの話がある。