性別で分け隔てることなく人を育て、登用する。働く場は、そうでなければ。安倍首相は成長戦略のなかですべての上場企業に対し、役員のなかに1人は女性を登用するよう求めた。[記事全文]
国から財源を引っ張るためにも、自治体が子育て支援に本気を見せるときだ。認可保育所に預けられなかった親たちが異議申し立てをする発火点となった東京都杉並区で注目すべき動きが[記事全文]
性別で分け隔てることなく人を育て、登用する。働く場は、そうでなければ。
安倍首相は成長戦略のなかですべての上場企業に対し、役員のなかに1人は女性を登用するよう求めた。
採用や昇進での女性差別をなくそうと、男女雇用機会均等法が施行されて四半世紀以上たった。しかし、11年の調査では、民間企業の課長職以上のうち、女性は7・2%にとどまる。
指導的地位に女性が占める割合を、20年までに少なくても30%にする、という政府の目標には、ほど遠い。
能力や、やる気はあっても、責任ある役職を任されない。そんな「ガラスの天井」を感じている女性は少なくない。女性役員が当たり前の存在になることは、企業に厳然とある男女の格差を改める一案ではある。
上場企業の役員に男女いずれも一定の割合以上を置くよう義務づける制度は、欧州を中心に広がっている。ノルウェーでは、取締役を男女それぞれ40%以上とするルールを決めて、女性の進出が一気に進んだ。
日本で「役員の1人は女性」としても、育てていないから外部から招けばよい、と受け流す会社もあるかもしれない。それでは職場の実情は変わらない。
本当に必要なのは、たんに役員の女性枠をつくることではなく、将来的に役員にもなりうる戦力として、女性を早い段階から活躍させることだ。
企業は手始めに、いつまでに何人の女性を管理職に登用していくという目標を定め、達成の状況を公開してはどうか。
社会の信頼が高まり、すぐれた人材も集まる。
実際のところ、女性役員の比率が高い企業の方が、業績がよく市場の評価も高いという傾向が、海外の調査で出ている。
そもそも、女性をいかせない職場は、男性にとっても快適なものではないはずだ。
生きていれば、仕事以外にも子育て、家のこと、地域の活動など、だれかが果たさなければならない責任がある。それを女性が担いがちだったことが、結果として働く機会を狭め、職場の男女格差にまでなった。
女性が活躍できる場を実現することは、だれもが仕事外の責任を無理なく果たせる働き方に変えることに通ずる。
積極的な企業は、政府あげて後押しすべきだ。
すでに都道府県には、女性が働きやすい企業にポイントを与え、物資を買うときの入札や契約で優先する仕組みを始めているところもある。
国から財源を引っ張るためにも、自治体が子育て支援に本気を見せるときだ。
認可保育所に預けられなかった親たちが異議申し立てをする発火点となった東京都杉並区で注目すべき動きがあった。
保育園に預けられなかった待機児童の数え方を改め、やむをえず育児休業を延長したり、仕事をやめたりしたケースを含めた数字を公表したのだ。
この結果、今年4月現在の待機児童数は285人。従来の数え方だと94人で、3倍に膨れたことになる。
待機児童数は厚生労働省が全国集計しており、昨年4月は約2万5千人。ただ、数え方は自治体の裁量が大きい。潜在的な待機児童数は85万人という推計もあり、まさに「氷山の一角」に過ぎなかった。
表に出る待機児童が多ければ、行政は対応を迫られる。厳しい財政事情を背景に、できるだけ小さく見せたいという意識が働くのは自然だ。
そこをあえて、大きく見せたのは、住民のニーズに正面から向き合う覚悟があってのことだろう。評価したい。
自治体が頭を切り替え、子育て支援がどのくらい必要かを正確に把握し、それを表に出すのは今が絶好のタイミングだ。
理由は二つある。
一つは、国に財源を確実に確保させるためにも、プレッシャーをかけたほうがよいからだ。
安倍首相が先日発表した「待機児童解消加速化プラン」は、今後5年で40万人の保育の受け皿整備を宣言したものの、財源の確保は大きな課題だ。
消費増税から子育て関連に確保される年7千億円にくわえ、国は3千億円の上積みを検討すると約束している。きっちり守ってもらおう。
もう一つは、2015年度からスタートする子ども・子育て支援の新制度へのスムーズな移行のためだ。
これまでは「親が保育できるか否か」で線引きしてきたが、新制度では市区町村が個々の住民の保育ニーズをよりきめ細かく認定し、それを満たすための計画をつくる義務を負う。
いまは保育所の利用をあきらめているが、「もし預けられたら働きたい」と思っている人たちも含め、「氷山の全体像」を把握する必要がある。
各自治体の首長や職員の実力と熱意が明らかになろう。
待機児童数が全国ワースト1位の1552人だった横浜市は、3年でゼロが見えてきた。やればできるということだ。
やるなら、今でしょ。