<風営法>タンゴやサルサも規制? 「クラブ」摘発の余波
毎日新聞 5月11日(土)12時38分配信
若者が踊る「クラブ」の摘発を目的とした「風営法に基づくダンス営業規制」強化の余波で、公民館などのダンス教室が中止に追い込まれるなどの混乱が生じている。警察庁は規制緩和方針を出したが、混乱は収まっていない。今月17日には規制反対の15万人の請願署名が国会に提出される。
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高知市では昨年5月、高齢者向けの社交ダンスの公民館講座が突然、市の要請で中止になった。社交ダンスは、国が指定する2団体から認定された講師がいる場合に限り、同法の規制対象外となるが、この講座の講師は無認定だった。公民館を管理する市が高知県警と相談し、開講すれば無許可営業に当たると判断した結果だった。
こうした事態に対し、警察庁は「健康増進目的の場合、同法上の『営業』に当たらない」との見解を示し、昨年12月に都道府県警に法解釈の通知を出した。この中で、規制対象外のダンス教室・講座として「男女がペアで踊るのが通常の形態とされていないもの」とし、ヒップホップダンスや盆踊りを例示。しかし、男女ペアが原則のタンゴやサルサは依然規制対象となっており、街のダンス教室関係者には更に戸惑いが広がっている。
タンゴは、男女が即興的に踊る南米・アルゼンチンの伝統的舞踊で、国内の愛好者は約1万人という。兵庫県でタンゴ教室を10年以上経営している50代の男性は「風俗営業と言われても……」と首をかしげる。スタジオに防音設備を入れ、午後10時以降は踊らないなど配慮し、これまで苦情を寄せられたことはないという。
同庁は通知と並行して同法施行令・規則も改正し、社交ダンスに限られていた「認定講師」を他のダンスでも認めた。ダンス種別ごとに法人格を持つ団体を設立し、講習会などで講師を認定する態勢を整えれば、教室などは対象外となる。
タンゴ教室関係者も団体設立の協議を始めたが、運営方法や資金など課題は多く、めどは立っていない。兵庫の教室経営者は「生活があり、教室をやめるわけにはいかない。音楽や絵などと同じ芸術の一つなのに、法で規制されるなんて」と釈然としない表情だ。【入江直樹】
【ことば】風営法とダンス
風俗営業適正化法は「客にダンスをさせる営業」を規制対象とし、営業には都道府県の公安委員会の許可が必要。許可をとると営業時間は原則午前0時(一部地域は午前1時)までに規制されるため、クラブの多くは無許可営業だった。2010〜12年にかけ、各地の警察が取り締まりを強化。閉店するクラブが続出。若者文化衰退に危機感を抱いたアーティストらが昨年5月から、規制対象から「ダンス」を削除する同法改正を求める署名に取り組んでいる。
最終更新:5月11日(土)19時43分