成年被後見人:参院選から選挙権回復 法改正へ
毎日新聞 2013年04月26日 02時30分
認知症や知的障害で成年後見人を付けた人の選挙権が、夏の参院選から全面的に回復される見通しとなった。自民党が25日の選挙制度調査会(逢沢一郎会長)などの合同会議で、被後見人の選挙権喪失を定めた公職選挙法の規定を削除する改正案の議員提案を確認した。野党も同様の改正を主張しており、改正案は6月上旬にも成立する。
現行の公選法は、被後見人は「選挙権及び被選挙権を有しない」と規定している。東京地裁が3月に「一律の選挙権剥奪はやむを得ないとはいえない」と違憲判決を下し、自民、公明両党が法改正を検討してきた。政府は「各地の選挙が混乱する」と東京高裁に控訴しているが、法が改正されれば取り下げる。施行日は参院選の公示日として有力視されている7月4日を想定している。
選挙権の回復で、被後見人への投票の誘導など不正行為が起きる懸念もあるため、防止策も策定する。公選法は身体障害者などを対象に補助者を指名して代筆を行う代理投票を認めており、補助者を選挙管理委員会の職員など第三者に限定することなどを検討している。
自民党の合同会議は、改正案について逢沢氏に一任。逢沢氏は終了後、記者団に対して「被後見人の選挙権を回復する方向で議員提案する。民主党など野党とも速やかに調整したい」と表明した。
実際に選挙権を付与するには、約13万6000人(最高裁調べ)の被後見人を市町村選管ごとの選挙人名簿に登録する作業が必要だ。被後見人や家族、介護施設など関係者に制度改正を徹底するため、「1カ月程度の周知期間」(総務省幹部)も必要となるが、総務省は6月上旬までに成立すれば、参院選から適用できるとみている。【横田愛、中島和哉】
◇成年後見(せいねんこうけん)制度
認知症や知的障害などで判断能力が不十分な人を法的に支える制度。本人や親族の申し立てに基づき、家庭裁判所が選任した後見人が財産管理▽契約行為▽法定手続き−−などを行う。2000年に従来の禁治産・準禁治産制度に代わって民法で規定された。成年後見制度には本人の判断能力に応じて保護の必要性が高い順に後見▽保佐▽補助があり、後見になれば選挙権と被選挙権が制限される。