ブアウ
ベトナムにおいて戦争で殺された男の幽霊のこと。頭がない。人間が現われて間もない頃、一組の夫婦がいた。夫が海に出かけると物陰からブアウが現われ、妻を引っつかんで茂みに連れ込んだ。そして、家からかなり離れたところで背中にネバネバしたものを塗って岩にはり付けてしまった。夫が家に帰ると妻の姿がない。方々探し回り、ようやく妻を発見して助けようとしたが、悪魔のにかわはびくともしない。夕方、夫はブアウの来る道に罠を仕掛けて待った。そしてブアウの足を絡めて捕らえ、ブアウから命を助ける代わりに離れられる薬を取り上げると、さっさと切り殺してしまった。しばらくすると妻は子供を産んだ。だがそれはブアウの子で、うまれるとすぐに妻の乳房に吸い付いてはなれない。子供は恐ろしく醜かったが利口で、産まれた時から口を利き、物の名前を知っていた。男は子供にバアングの木の名前を聞き、口を開けた瞬間、剣で頭を真っ二つに切った。するとその肉片は蛭になったという。
ファウォニウス
Favonius
ローマにおける西風の神。ギリシア神話のゼフュロスに相当するとされる。
ファウナ
Fauna
ローマにおいて
ファウヌスを女性形にした女神。「ファトゥナ」とも呼ばれる。ファウヌスの姉妹だとされる。また、ファウヌスの娘であり妻でもある
ボナ・デアと同一視される。
ファウヌス
Faunus
古代ローマの神で、ギリシアの神「パン」と同一視された。イヌウスとも呼ばれる。
ファウナとともに
ピクスの子であり、
サトゥルヌスの孫にあたる。父ピクスから予言の力を受け継いでいるとされ、予言の神としては
ファトゥウスと呼ばれる。また娘である
ボナデアを無理やり犯して妻にしている。牧畜の神として古くからパラティウム丘に祭祀されていたらしい。伝説ではピクスの継承者として
ラティヌスに先立ち、ラティウムを支配したとも言われる。のちにはギリシア神話のサテュロスなどと同様複数をみなされるようになり、山羊の角と脚を持つ半人半獣として表象された。
ファタ
Fata
ローマにおける運命を司る女神達のこと。
パルカと同義。
ファトゥウス
Fatuus
ローマにおいて、
ファウヌスを予言の神としてこう呼ぶ。
ファマ
Fama
ローマにおける噂や世論の女神。ギリシア神話のペメに相当する。無数の目と耳をもち、空を飛ぶとされる。
ファメス
Fames
ローマにおける飢えの神。ギリシア神話のリモスに相当する。
フィデス
Fides
古代ローマの女神で、制約、約束、条約など信義の守護神でロムルスによってローマが建設される以前からすでにパラディウムの丘上で祭祀されていたとされ、特に2代目の王ヌマ・ポンパリウスの厚い崇敬を受け、フラメン達により右手を白布で隠して執行される祭りが、この王によって創設されたと伝えられる。通常、白髪の老女の姿に表される。
フェニクッス
Phoenix
エジプト神話にでてくる霊鳥。世界に一羽しかいない美しい鳥だとされる。鷲に似た姿をしており、首の周りが金色、身体は紫で、薔薇色の混じった青い尾を持っている。アラビアの砂漠にすみ、シナモンの小枝などを集めて巣を作り、五百年あるいは六百年ごとに焼け死ぬが、その灰の中から再び若い姿をして生きかえってくるという。
フェブリス
Febris
ローマにおける熱病の女神。ローマだけでも三つの神殿を持つ。マラリア性の熱病を司る。
フェブルウス
Febrruus
イタリアのフェブルアリウス(浄罪の月)の神。後にギリシア神話の冥界神ディス・パテールと同一視された。
フェレトリウス
Feretrius
ローマにおける
ユピテルの別称の一つ。偽の誓いをするものを打つ、平和をもたらす神としてのユピテルのこと。
フェロニア
Feronia
古代イタリアの女神。森や泉など、自然界の支配者で、タラキナにあったその神殿で、奴隷の開放が行われたところから、自由の女神
リベルタスとも同一視された。ソラクテ山麓に祭祀の中心があったが、エトルリア(中部イタリア)の名所に祀られ、ローマに神殿を有した。
フェンリル
Fenrir
北欧神話における巨大な狼の魔物。悪神
ロキと巨人の女アングルボザの子で、口を開くと上顎と下顎が天と地まで届き、目や鼻から炎が噴きだしているという。フェンリルの怪力と悪行を恐れた神々は、小人族
ドヴェルグに頼んで、猫の足音、女の頬ひげ、魚の息などで、魔法の紐グレイプニルを作ってもらい、それでフェンリルを縛り、岩につないだ。フェンリルはラグナレクまでつながれているが、世界が破滅する時に開放されて
オーディンを飲み込む。しかし
ウィザルにあごを引き裂かれて最期を遂げるという。
フォモール(族)
Fomor
ケルト神話における巨人族、神々の敵たる一族。神である「女王
ダヌの一族」の敵として登場する。ダヌの一族がアイルランドにやってくる遥か昔から棲んでいたのがフォモール族で、次々とやってくるアイルランドへの侵入者を従えたり、敗北した姿を隠したりする。「フォモール」とはそもそも地底或いは海底、あるいは下級の神という意味である。だが神話では彼らは神で無く悪魔として登場し、邪眼の
バロールを王に戴き、神々と戦うことになる。
「ダヌの一族」がアイルランドにやってきて、彼らの前にいたフィル・ボルグ族を倒したとき、フォモールは彼らの王に巨人の血を引く
ブレシュを据えた。だがこの支配は長く続かず、最後の戦いでバロールが光の神ルーに倒されると、アイルランドをダヌの一族に委ねて滅亡する。
フォルス
Fors
ローマにおいて、偶然・チャンスを司る神。
フォルセティ
Forseti
北欧神話における正義と調停の神。
アサ神族。
バルドルと
ナンナの息子。神話においては名前を出自、性格だけが語られる。フォルセティの父であるバルドルは容姿も性格も完璧に近い神であったが一つ弱点があった。それは争い事の仲裁とする時、その裁断が移ろいやすく、判定が一つとして不変ではなかったことだ。このバルドルの弱点を補うのがフォルセティの役目で、どのように解決が難しい争いごとであっても、フォルセティが仲裁すれば人々は和解したといわれている。デンマークとオランダの間にあるフリジア人の島フォシテスランドで崇拝されていた、フォシテという神が変化したものと考えられている。
フォルトゥナ
Fortuna
ローマにおける豊穣、多産の女神。また予言の女神だともされる。後にギリシア神話のテュケと同一視されるようになった。
フォルナクス
Fornax
ローマにおいて、パンを焼く釜の神。フォルナクスのために「フォルナカリア」と呼ばれる祭礼が行われる。
フォンス
Fons
ローマにおいて、
ヤヌスの子ともされる泉を司る神。フォントゥスとも呼ばれる。
プーカ
Pooka
アイルランドの伝説(ケルト神話)に出て来る妖精で、
インキュバスなどの夢魔の仲間とされる。プーカの住む屋敷の軒下で眠ると、とんでもない悪夢にうなされるという。いつも馬やロバの姿をしていることが多く、特に鎖をたらした毛深い子馬の姿で現れることが多い。長い角があり、凄いスピードで走るので乗せられた人は必死でそれにつかまらないと振り落とされてしまう。プーカは人を乗せることが大好きなので、夜が明けるまでずっと走り、気が付くと見知らぬ遠い場所で放り出されていたりする。生前怠け者だった者がプーカになるとも言われており、夜中に家の中を掃除したり、皿を磨いたりするが、いたずらは滅多にしない。掃除のお礼にプーカの上着を新調してあげると、そのプーカは天罰が解けて昇天できると言われている。
プーシャン
Pūşan
インド神話における神で、「リグベータ」に表われる太陽神。太陽の養育作用を神格化したもの。主として牧畜神、道祖の神として信仰された。髻髪(けいはつ)を戴き、かゆを主食とし、やぎが引く車に乗る。
ブーシュヤンスター
イラン、ゾロアスター教における悪魔の一人。酷く長い腕をした女悪魔で、その役目は人に眠気を吹き込み、酷い怠け者にしてしまうことである。、日の出とともに人々の枕元に音も無く近寄り、「起きる時間にはまだ早いですよ」とささやく。というのもゾロアスター教では早起きの者は天国に行くことになっており、そんなコトをされては悪魔はたまらないからである。
衾
ふすま
日本の佐渡島に出現するという妖怪。ムササビに似た姿をしているといわれ、縦横無尽に空を飛ぶ。夜中に出歩いている人の後からやってきて、頭に風呂敷のようなものをかぶせて歩くのを邪魔する。この風呂敷のようなものは妙に頑丈で、どんな刀を使っても切れない。ただ、一度でもお歯黒にしたことのある歯であれば噛み切れると言う。このためか、佐渡島では江戸時代になっても男のお歯黒の習慣が残っていた。
プター
Ptah
エジプトの、メンフィスの神話における世界創造の神。彼の信仰が盛んだったメンフィスでは獅子の女神
セクメトを妻とし、ネフェルテムを息子としていた。メンフィスの神話では、彼は原初の時
ヌンとして存在していた。そして言葉によって(或いはこねた泥によって)、世界を創造したことになっている。
またその際に創造した神がプターの体内にとどまり、
ホルスが心臓に、
トトが舌となり、そのに中の神が合体して
アトゥムとなったとも伝えられている。他のエジプトの神々と異なり多分に観念的な神であり、そのためか他の神への信仰が盛んになるにつれて急激に影響力を失った。生命力、産出力の象徴であるアンク(護符)を持つ神として描かれる。ギリシア人は同様に産出力を持った鍛冶の神ヘパイトスと関連付けている。
二口女
ふたくちおんな
日本の妖怪で、旦那が食費をケチったために餓死してしまった女房が化けたものだという。一見普通に人間の姿をしているが、後頭部に不気味に大きく開いた口を髪で隠している。夜中などに起きて自分で飯を炊き、長い髪を触手のように操って握り飯を貪り食うという。
伏羲 ふっき
Fú-xī
中国神話において、
三皇五帝の一人。中国最古の君主とみなされている神。「庖犠(ほうぎ)」、「大昊伏羲(たいこうふっき)」、「太皓(たいこう)」などともよばれる。
女とともに非常に古くから信仰されている神で、人間の祖であり、文明のシンボルともいえる。五行思想では東方の神とされている。
猫(ミャオ)族系神話では、伏羲は女
と兄弟であって、この二人だけが大洪水の時代を生き延び、その後夫婦になって人類の祖になったとされる。有名な山東省の石刻画には人頭蛇身の伏羲と女
が描かれており、蛇の尾を絡ませ、伏羲は曲尺(かねじゃく)を、女
はコンパスを持っている。文化神として伏羲は陰と陽の組み合わせで未来を推測する「八卦」を発明し、婚姻の制度を整えたことで知られる。また漁網を発明して人々に漁猟を教えたり、縄の結びによる記録法を考え出したのも伏羲だという。
妃
ふっぴ
Fú-fēi 宓(フク):Unicode5B93
フッラ
Fulla
北欧神話において、
フリッグの侍女であり、
アサ神族。神話においては
ゲフィヨンとともに処女であることが強調されている。父と母は不明。フリッグは夫である主神
オーディンを牽制する策略かとしての一面を持っているが、フッラは侍女であると共にその計略を補佐する密使としてフリッグの秘密に深く関与しているといわれる。アース神の世界であるアスガルドを離れる事が少ないフリッグの代行者として、人間界であるミッドガルドなどの他の世界をひそかに訪問することもあった。フッラの遣わした策略によって、フリッグはオーディンの養子であるゴート族の王ゲイルロドの信用を失墜させ、忙殺している。
神をほどいて垂らし、頭もしくは首に黄金の輪をはめているとされる。侍女としてフリッグの長櫃を携え、履物の世話をする。フッラの神話的起源は古く、ドイツの伝承にもフッラに相当する神「フォッラ」の名前が見える。フォッラは北欧神話におけるフリッグの前身である、女神フリーアの姉妹とされている。
フナブ・クー
Hunab Ku
古代メキシコのユカタン・マヤ族における最高神。語義は「一人(Hun=1)存在する(Ab=存在している状態)神(Ku=神)」、であり、唯一の創造神。
イツァムナの父親だと考えられている。創世神話の一つでは、世界を創造し、空を支える為に
バカブを世界の四隅に配置した神だとされる。他の神と一線を画しており、その姿は見えないとされるために図像などには表されず、抽象的な概念で示される。このことからフナブ・クーは他の神とは別に、一神論的な形態をとろうとしていた後古典初期の神だと考えられる。
船幽霊
ふなゆうれい
日本において海に出現する人間の姿をした妖怪。海で遭難した者達が成仏できずに船幽霊になるという。大時化の日などに漁に出ると現れ、船の縁に手をかけ、口々に柄杓(ひしゃく)を貸せという。この時本当の柄杓を貸すと、船に水を入れられて遭難させられてしまうので、船乗りたちはいつも底の抜けた柄杓を用意している。柄杓を一本しか貸さなくても、何故か船幽霊たちはその途端一人ずつ柄杓を持って船の中に水を入れようとする。底の抜けた柄杓を貸したならば、水はどうやっても入らないので、船幽霊たちは恨めしい声をあげながらまた海の中へ消えて行くという。
フヘディーメルゲン
Fuhedi Mergane
モンゴル神話の英雄神。ブリヤート族の雷神。北天の守護者。その名に含まれるメルゲンは、「弓術に秀でた者」を意味し、雷の矢を放つ存在である事を示すと同時に、狩猟の神でもある。神をだました
マンガドを滅ぼすよう父神に命じられた彼は、それを9人の自分の息子たちに伝えて攻撃させた後、自ら雷の矢を放って退治した。
附宝 ふほう
Fù-băo
中国神話において最高神
黄帝と炎帝
神農の母。あるとき北極星の周りを大きな稲妻が巡って郊外を照らし、これをみた附宝が感応して妊娠、25ヵ月後に黄帝を出産したとされる。
浮游 ふゆう
Fú-yóu
中国神話における悪神の一。洪水神
共工の配下の悪神であったが、後に淮水の神になったとされる。
ブライン
Bulaing
オーストラリアのアボリジニの一部族、カラジェリ人の信じる女神。天に住む創造神であり、全ての事物と生物を作ったという。蛇の姿をしている。
ブラウニー
Brownie
スコットランドの高地やコーンウォールに住む、民謡などにも歌われる大人しい性格の妖精。小さな全身茶色の巻き毛におおわれた老人の姿をしています。顔は平らでピンでつついたような鼻の穴をしており、普通茶色のボロ着を着ているので、「茶色さん(ブラウニー)」と言われています。ブラウニーの姿を見れるのは子供か正直で明るい人間だけで、ブラウニーの存在を否定する大人が来るとどこかへ逃げていきます。子供の遊び相手になってくれるほか、
ゴブリンを追い払ったり、蜂の群れをどこかに追いやったりしてくれます。いつもいる家が引越すと、家族と一緒についてくるようです。また、ブラウニーはお気に入りの人間が死んでしまうと
ボガートになってしまうと言われています。
ブラギ
Bragi
北欧神話において詩と雄弁を司る神であり、
オーディンの息子。
アサ神族である。名前は「第一人者」を意味し、同時に「詩芸」を指す「bragr」という言葉から作られたもので、元来はオーディンの変名の一つであったらしい。従ってブラギはオーディンの持つ能力の一つである詩芸が独立して神格化した神だと考えられる。
ブラック・アニス
Black Annis
スコットランド高地地方の妖精で人食い
ハッグ。真っ青な顔と鉄の爪、長く白い牙を持っている。また片目であるともいわれる。これまでに食べた人間や羊の骨が転がった洞窟の中に棲んでいる。ブラック・アニスの爪を研ぐ音は遥か彼方まで響き、これを聞いた昔の人々は子供を家に入れて扉を閉ざし窓に近づけないようにしたという。窓からすっと手を伸ばして子供をさらったり、或いは自分の住処の近くに生えている木の上で待ち伏せして通りすがりの人に襲いかかるという。非常に足が早く、外でその姿を見てしまった人はもう逃れようがない。しかし、その力は自分の血に依存しているとされ、ケガを負わすことが出来れば、傷の手当てをしに棲みかに帰ってしまうという。この地方では薬草の汁につけた猫の死骸(アニスと呼ばれる)をブラック・アニスに与える餌として町じゅう引き回すという恒例の行事がある。ブラック・アニスや
ジェントル・アニーといったハッグは全てケルトの女神
ダヌーからうまれたものだともされている。
フリアイ
Furiae
ローマにおける復讐の女神達のこと。「ディライ」とも呼ばれる。ギリシア神話のエリニュスに相当する。
ブリギット
Brigit
アイルランドの春の女神とされているが、同じ名前を持つ女神が多数存在し、いわば「アイルランドの女神はみな、ブリギットという一つの名前で呼ばれていた」のである。そのために属性も、詩や学問、治療、工芸芸術と幅広い。それでもなお、彼女が春の女神である理由は彼女がキリスト教の聖者として、「聖ブリギット」と呼ばれ、これを記念する祭日が、異教の春の祭典と同じであるというところにある。
神々の父である
ダグザ(ダグダ)の娘として、家の外でも内でもない所で生まれた。そしてアイルランドで魔術的な存在とされる、赤い耳を持つ白い牝牛の乳で育てられ、燃えるように輝く家に住んでいた。そのために彼女には炎ないし光の女神としての属性も与えられ、19人の尼僧が絶えず男子禁制の聖堂で彼女を表す永遠の美を守っているともいわれる。
ブリゾ
Brizo
エーゲ海のキクラデス諸島にあるデロス島の女神。航海の保護者であり、正夢を送るともいわれる。
フリナ
Furrina
古代ローマの神で、7月25日に祭礼がある。本来の権能は早くから忘れられ、
フリアイの一人とされた。
プルウィウス
Pluvius
ローマ神話において、数ある
ユピテルの異称の一つ。「雨を降らす者」の意。
ブルク・チャブタン
Buluc Chabtan
マヤにおいて、大地と戦いと人身御供の神。マヤの研究者たちによって各神の定義分けがあやふやであった頃は「F神」と便宜上呼ばれていた。マヤのコデックス(絵文書)では、目の周りと頬にかけて引かれた黒い線でそれと分かる。頭には11を表す文字が描かれ、マヤの20ある暦日(ウィナル)の7日目「マニク(=手)」を司る。
アフ・プチないし
ユン・シミルをともなって現われることもあるが、片手で家々に火を放ち、もう片方の手で人々を槍で突き刺す戦いの神として描かれることの方が多い。
プロセルピナ
Proserphina
ローマにおける農業の女神。早くからギリシアのペルセポネと同一視された。
フローラ
Flora
ローマ神話における花と春、豊穣を司る女神。春に植物の花を開花させる。ローマ帝政初期の抒情詩人オウィディウスの伝えるところによれば、フローラはもともとギリシア語名をクロリスというニンフであったが、西風の神ゼフィロスにさらわれてその妻となり、花の女神としての職分をこの夫から与えられたという。また、
ユノはフローラにもらった奇跡の花で、
ユピテルの種に頼らずにマルスを産んだため、これを記念して春の最初に月である3月がマルスの月になったとされている。彼女の祭りは性的に放埓なものとなる。
文晶帝君 ぶんしょうていくん
Wén-jīng dì-jūn
中国の道教における学問、受験の神。「梓潼帝君」ともよばれる。中国には隋の時代から1905年まで、科挙(かきょ)と呼ばれる国家公務員試験があったが、この試験を受けるものはみな文晶帝君を奉じたという。中国では現在でも文筆業者や受験生はこの神を信仰する。「史記」によれば北斗七星の第一星から第四星の近くにある6つの星を神格化したものだという。また中国神話の最高神
黄帝の子である揮(き)が文晶帝君になったという説もある。揮は周から元(前1100〜後1368)の間に97回も生まれ変わり学問を志す人に尽くしたとされているのでこれが道教の神にされたのだと考えられている。優れた文章家だった唐代(618〜907)の張亜という人が死後に神として祀られ、やがて文晶帝君になったのだという説もある。
ブンジル
Bunjil
オーストラリアのクリン人の信じる、鷹の姿をした創造神。最初に人間を作り、その口に息を吹き込んだという。通常は名前ではなく「我らが父」と呼ばれる。ある時蛇に襲われた二人の女が木の棒を振り回したとき、偶然石にぶつかった棒が折れ、火花が散って火がついた。それを烏がとっていった。これを見つけた二人の男は烏を追いかけたが、必死で逃げ回った烏は地上に火を落としてしまい、世界は大火事になった。これをみたブンジルは、二人を天に移して星に変えて救い、そして火事を消した後に人間に火を渡し、大切になくさないように気をつけるように言った。しかし結局人間は火をなくしてしまい、お陰でまた女が蛇に襲われるようになった。天に住んでいた
パリヤングはこれに見かねて、妹である
カラカルークに女たちを護るように命じた。地上に降りたカラカルークは棒で蛇を殴り殺していたが、偶然にその棒が石にあたり、火がついた。しかしこの火はまたもや烏に奪い去られてしまう。これを見つけ出したのはブンジルによって星に変えられていた二人の男で、人間は再び火を手に入れることが出来た。これ以降人間が火をなくすことは無かった。