ドゥ
dong-wang-fu
 チベットの土着宗教であるボン教にける天界の精霊のこと。しかしチベット仏教となって悪魔とされるようになる。黒い姿をしており城に住むという。

東王父 とうおうふ
dong-wang-fu
 中国における神仙で、東王公、木公などとも称される。西王母に対比して、男の仙人を統べる陽の気の精とされる。背丈は一丈あり、髪は白く、人の体に鳥の顔、虎の尾を持っていて、黒い熊に乗っているという。

透欧博如坎 トゥオゥボルカン
Tòuōubórúkǎn
 中国の少数民族、鄂倫春(オロチョン)族における火の神。

トゥオニ
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 フィンランドの叙事詩「カレワラ」に登場する冥府の王。死んだ人間は彼と彼の妻トゥオネタルの支配する国「トゥオネラ」に行く。国境には黒い黒い河が流れ、河の水面には白い白い白鳥がいる。トゥオネラのビールには蛙と蛇と得体の知れない気味の悪いものが入っているし、トゥオネラの敷布団は焼けた石で、掛け布団は蛆虫の群れである。トゥオニとトゥオネタルの間には1人の息子と無数の娘達がおり、息子は鉤型に曲がった指を持ち、千尋のヤナ(魚を取る道具)を河に掛け渡して、どんな勇士も二度と地上に戻れないようにする。娘たちは病気と苦痛の女神達だが、一人だけ優しい娘もいて、トゥオネラの川辺でまだ生きている人に「こちらへくるな」と警告する。

ドヴォロヴォーイ
Dvorovoi
 スラヴ地方における庭の精霊。ドモヴォーイが多生野生化したような精霊で、放って置くとあまり害は無いものの、ときどき人間に恋に落ちたり、起こって八つ当たりする事があります。暴れてしょうがない時は、殴ったり、嫌いなもの(白い動物の毛皮、カササギなど)をぶつけたりすると反省するといいます。

東岳太帝 とうがくたいてい
Dongyue-Dadi
泰山府君

 とうこつ
tao-wu 杌(ゲツ):Unicode674C
 中国神話において、尭帝の時代に遥か西方の地に棲んでいたとされる怪物。人の顔を持ち、身体は虎に似ているが虎よりも遥かに大きい。全身に長さ40cmの毛が生え、口には猪の牙が生え、5mの尾を持っていたという。梼は古代の王族の血を引いていたが、ただ凶暴で悪いことばかりし、引く事を知らずに死ぬまで戦うという性格だった。また人の意見を全く聞き入れないので「難訓(教育できない)」という別名があったという。

ドゥジェト
Ndo'yet
 メソアメリカ中央部の南部高地、およびその周辺に住んでいたサポテカ人に信じられていた神。9つある暦日名の一つで、神聖なものや自然の力をあらわすとされる。

ドゥシン
Ndozin
 メソアメリカ中央部の南部高地、およびその周辺に住んでいたサポテカ人に信じられていた神。死と正義の神で、夜の神々のひとり。ダンの使者。

痘疹娘娘 とうしんにゃんにゃん
Doú-zhěn niáng-niáng
 中国道教で、子供を産む際にあらゆる災厄から護ってくれる娘娘神のうちの一人。そのうち痘疹娘娘は、幼児を天然痘(疱瘡)にかからないように護る役目を司っている。(参考:乳母娘娘)

洞庭神君 どうていしんくん
Tungting-shenchun
 中国湖南省北東部にある、中国第二の大きさを持つ淡水湖、洞庭湖に住まう水神。元の名は「柳毅(りゅうき)」といい、気弱な学生であったが、たまたま洞庭竜王の娘が難に遭っているのを見て、苦境を救ってやった。その縁で彼女を娶って昇仙し、後に洞庭竜王の後を次いで洞庭湖の神になったのである。ところが元々文弱の徒であった洞庭神君は容貌が優しかった為に水怪たちを威服させることが出来なかった。そこで昼は奇怪な面をつけ、夜になるとこれをはずして眠るようにした。だが面をつけるのになれた洞庭神君は日ごとに面をはずすことを忘れるようになり、面はついに顔と同化してはずせなくなってしまった。その為、洞庭湖を船で行き来する時に無駄口を聞いたり、何かを指差したり、手をかざして遠くを見たりすると、洞庭神君が自分の顔のことで陰口を叩いたり、自分を指して笑ったり、自分の顔をうかがっていると勘違いして、船を覆されてしまうという。

饕餮 とうてつ
tao-tie
 中国神話において四凶と呼ばれ恐れられていた四匹の怪物の一。人の頭に羊の身体を持ち、二本の角をもち、全身は毛で覆われていて虎のような牙を持っていた。この饕餮は中国の西南方の荒野で育ったとされる野蛮な怪物で、ものすごい食欲で何でも喰い、自分は働かずに他人のものを奪い取り、強いものには媚びを売り、弱いものはいじめるという。古代の帝王であった縉雲氏の子孫で、舜帝によって西方に追放されたという。

ドゥラムラン
Daramulun
 オーストラリア東部、ニューサウス・ウェールズにおける天空神。名前は「一本足の」といった意味。「スレムリン」とも呼ばれる。ドゥラムランは天空神であるとともに雷神であり、地域によってはその叫びは雷鳴となり振り下ろす斧は稲妻になるとも言われる。通過儀礼を行う際に「万物の父」として表れる存在であり、その像は粘土から作ることになっているが、通過儀礼のときにだけしか見ることが出来ない。ドゥラムランの伝承はバイアメと混ざっており、「万物の父」がバイアメの場合もあるし、ドゥラムランがバイアメの息子とされ、父であるバイアメが人間との仲立ちをする場合もある。このような通過儀礼における存在は、ビクトリア州ではブンジル、マレー川下降では「ヌルンデレ」、「ングルンテリ」と取って代わる。

トゥレカムイ
 
 アイヌにおける植物のカムイ。「トゥレ」とはアイヌ語でウバユリのこと。アイヌ人にとって北海道に生える大姥百合(おおうばゆり)の根茎は重要な食物の一つであり、トゥレカムイはアイヌ人が何故植物を食べるようになったかを説明する神謡に登場する。トゥレカムイはかさぶただらけで毛髪が一本も無い不気味な女性の姿でアイヌ人たちの家を訪れ、頭のかさぶたを爪で掻き落として鍋に入れて茹で、その恐ろしい白い粥状の汁をアイヌ人たちに食べさせようとする。死ぬ気で粥を口にしたアイヌ人は、それが素晴らしくおいしい食べ物であることを知った。驚くアイヌ人達の前で、トゥレカムイは本来の美しい姿をあらわし、自分(ウバユリ)がおいしい食べ物であることを知らないアイヌ人達に、自分の利用法を教えに来たということを明かす。

トカブインジ
 
 オーストラリア北部、ディリー川流域にあるデラメアという土地に住むアボリジニ、ワルダマン族における雷神。弟のワグドジャドブラと合わせて「稲妻の兄弟」と呼ばれる。ワルダマン族にとって重要な聖地「雨を夢見る中心地」において、その儀式の多くはこの兄弟に捧げられる。特にイニシエーションの儀式として重要な擬似割礼は、この兄弟がもたらしたものだとされる。この二人は兄の妻カナンダをめぐって争い、弟ワグドジャドブラは兄トカブインジによってブーメランで殺された、或いは石斧で殺されたとされる。斧はオーストラリアだけでなく東南アジアからヨーロッパまで、稲妻の象徴となっている。

トカポ
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常世神
とこよのかみ
 日本において常世(不老不死の理想郷、あるいは死後の魂が向かう国)から来たと考えられた神。(芋虫の姿をした神などではなく)芋虫=常世神である。皇極天皇の時代(642〜645)に富士川の周辺で採取できる特定の芋虫を祀れば、貧しいものは金持ちとなり、病は快癒し、老人は若返り、不老不死になれるという現世利益を目的とした民間宗教の神。中国神仙道のいわゆる「蠱術」や陰陽道、呪禁道などの影響から発生した信仰だと思われる。結局は邪教として滅ぼされた。

トシ
Toci
 呼称は我々の祖母を意味する。古い地母神で、元来はワステカ(メソアメリカ北東部のメキシコ湾岸北部沿いに住んでいた民族)起源の女神だったとされている。主要なアステカの神の一人で、神々の母テテオインナンと関係があり、ときにはトラリルヨロ(Tlallilyollo「大地の心臓」)とも呼ばれた。収穫祭であるオチュパニストリで祀られた神である。地母神としてのとしは、一方で助産婦と治療者の守護女神でもあり、メソアメリカのテメスカル(サウナの意)とも関わりがあった。トラソルテオトルトラエルクアニとも明白な関係があり、この女神のいでたち同様、しばしば黒い反転のある顔と綿の糸巻きを頭飾りにした姿で描かれた。

トト
Totho
 エジプト神話における魔術の神。「大いなる尊きヒヒ」などと呼ばれ、ヒヒの頭を持った、獣頭人身を姿をしている。またトキの頭を持った男として描かれることもあった。知恵の神で文字を書くことができ、神々の世界で書記の役を務めた。古代エジプトの都市ヘルモポリスでは最高神とされたこともあった。彼は常にオシリスイシスホルスなどの、セトと敵対する善神につき従い協力する。例えばオシリスを蘇らせる為の呪文をその妹で妻のイシスに教えたり、セトに負わされた目の傷を呪文の力で癒したりしている。こうしたことからトトは知恵と魔術を司る神として崇められ、42巻からなる「トトの書」を記したとされるようになった(そのため書物の神とも言われる)。また、知恵や魔術を象徴する月と関連付けられるようになり、月の出ている時間の支配者であるとも言われる。冥界の神オシリスの死者を裁く法廷には「レーの天秤」と呼ばれる秤があって、死者の心臓と「真実の羽」と乗せてその人間が悪人か善人かを見定めたとされているが、トトは秤のそばにいて測定の結果を葦ペンでパピルスに記す役目を持っていた。

トナカシワトル
Tonacacihuatl
オメシワトル

トナカテクートリ
Tonacatecuhtli
オメテクートリ

トナティウ
Tonatiuh
 メソアメリカ中央部における太陽神。クアウートレウアニトル(Cuauhtlehánitl=「天に昇る鷲」)とクアウテモック(Cuauhtémoc=「降りる鷲」)の姿で顕現する。配偶神はヨワルテクートリ。とくにメシーカ・アステカ人(一般にアステカ人といわれるメキシコ盆地に移った最後の部族)にとって、若い戦士としての戦神ウィツィロポチトリと結びついていた。さらにヨワルテウクティン(夜の神々)の3番目として、若々しいトナティウの姿をとるピルツィンテクートリでもあった。サポテカ神話のコピーチャに相当する。
 トナティウは生命の供給者であり、神話の中で五回変わった太陽のうち現在天上にある第五の太陽そのものであり、アステカの20ある暦日(センポワリ)の19日目であるキアウィトル(Quiáhuitl=「雨」)の守護神であり、さらにトナルテウクティン(夜の神々)の4番目でもある。トラルテクートリウィツィロポチトリと同様に人間の生贄を頻繁に要求する神であり、多くの心臓と血がこの神に捧げられた。
 またトナティウ自身もテクシステカトルナナウトツィンの犠牲によって生まれた神である。生まれたトナティウ=第五の太陽はそのままでは動かず、生贄の血を要求した。これをなだめるために神々はケツァルコアトルを呼び、彼の黒曜石のナイフで自分達の心臓を取り出させた。

トナパ
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トナルテウクティン
Tonalteuctin
 「昼の神々」。アステカにおいて、昼の13ある時刻にそれぞれ関連した神々。またそれぞれの時刻は「鳥」(有翼ないし飛翔動物)にも対応している。創世神話にみえる13層に分かれた天空と結びついていると考えられる。これに対応する「夜の神々」をヨワルテウクティンといい、一部の神はどちらにも登場している。
1 火の神シウテクートリ/ウエウエテオトル 青い蜂鳥
2 大地の神トラルテクートリ 緑の蜂鳥
3 水の女神チャルチウィトリクエ
4 太陽神トナティウ ウズラ
5 愛の女神トラソルテオトル
6 戦死者の神テオヤオミキ/ミクトランテクートリ メンフクロウ
7 トウモロコシの神ショチピリセンテオトル
8 雨の神トラロック
9 風の神ケツァルコアトル 七面鳥
10 食料の神テスカトリポカ ミミズク
11 地下世界の神ミクトランテクートリ/チャルメカテクートリ コウンゴウインコ
12 夜明けの神トラウィスカルパンテクートリ ケツァル
13 空の神イマラテクートリ オウム

トナンツィン
Tonantzin
 アステカにおいて、地母神で人類の母であるシワコアトルの善なる性格に付けられた名称。名前は「小さな母親」の意。アステカのテノチティトランには、トナンツィンに捧げられた神殿が存在する。

トバディシュティニ
Tobadjishtchini
 北アメリカ大陸の南西地方に住むネイティブアメリカン、ナヴァホ族に伝わる双子の戦神。もう一人はナイェネズガニエスツァナットレーヒが裸身を水と太陽に晒すことで生まれた。ナヴァホ族の始祖たちが出現したとき、大地には怪物だらけだったため、彼らの祖母ナ・アシュ・ジェイ・アスダァアは二人に力を授け、父親である太陽を探し出し助けを求めるようにと頼んだ。父親を見つけた二人は、父親に怪物を退治する方法を教わり、怪物たちを退治することが出来たという。

ドモヴォーイ
Domovoï
 スラヴ地方における家の精霊。天から落ちた天使のうち、人家の近くに堕ちたものがドモヴォーイになると言われています。ドモヴィーハ(Domobikha)という名の妻がいて、彼女はドモヴォーイと違って決して人に姿を見せようとしません。全身(手のひらまで)白い毛に包まれた、人のような姿をしていますが、犬や猫、羊といった家畜や、時にはわら束などに化けています。ドモヴォーイの本当の姿を見たときは不吉の前兆であるとされています。夜になるとドモヴォーイの声が聞こえる事があり、ぺちゃくちゃと言っている時は、家が平和である印で、反対にすすり泣きや悲しい声が聞こえてくる時は良くない事が起こる印で、たいてい身内に不幸があるといいます。

ドュラハン
Dullahan
 アイルランドやイギリスなどに棲む不吉な妖精の一種。人が死ぬ前になると出現し、町中を走り回る。首のない女、或いは騎士の姿をしており、コシュタ・バワーに引かれた二輪馬車に乗っている。町のあちこちを走り回った後目的の家の前に止まり、馬車の音に不審に思った家の者がドアをあけると桶一杯の血を浴びせるのだという。

豊受大神
とようけおおがみ
 (「とよ」は美称、「うけ」は「食(け)」と同じで食物の意)。稚産霊神の子で、伊勢神宮の外宮にまつられる。穀物の神。

豊玉姫神
とよたまひめのかみ
 日本記紀神話に登場する神。「豊玉毘売神」とも書く。海神(どの神かははっきりしない)の娘で日子穂穂手見神の妃。

トラウィスカルパンテクートリ
Tlahuixcalpantecuhtli
 アステカにおける破壊神。名前の原義は「曙の主」。アステカにおいて明けの明星の金星をあらわす神。古代メキシコでは、金星の光は負傷をもたらすものと考えられ、この星の出現を人々はひどく恐れた。彼は槍投げ器で激しく燃え盛る光線を投げつける姿で書かれる。あらゆる災い、破壊をもたらす者とされた。穀物の不作、戦争での敗北、王族に加えられる危害、女たちの危機など、全ての災いは金星(=トラウィスカルパンテクートリ)に起因するものと信じられ、そのためアステカでは金星の運行が熱心に研究された。太陽神トナティウが天に登った時、この太陽は神々にいけにえを求めた。トラウィスカルパンテクートリはこれにひどく腹を立て、太陽に向かって災いの光線を放った。しかしこの光線は太陽には無力であり、逆に彼は自分の放った矢で頭蓋を刺し貫かれてしまい、その瞬間から彼は石と冷気の神(イツラコリウキ)に変えられてしまった。夜明け前が冷え込むのはそのためである。

トラエルクアニ
Tlaelquani
 アステカにおいて、女神トラソルテオトルの化身。字義は「排泄物を食べる者」。あらゆる不潔な行為が有する根源と隠れた力をあらわす神。また魔術と罪の浄化にも関わっている。人々がテスカトリポカに罪を告白するときの代理人とされた。通常トラエルクアニの口のまわりは黒く染まった姿で表され、これは「不快だが不可避な行為」を象徴していると考えられている。トラソルテオトルが性的行為の暗い側面と結びついていることから、トラエルクアニは戦士達のために一般市民から強制的に集められた娼婦達の守護女神ともされた。

ドラグ
Drug
 インドの聖典「ヴェーダ」の悪魔がイラン神話に取り入れられたもの。虚偽を司る悪魔であり、暗い洞窟に住んでいるといわれる。

トラソルテオトル
Tlazolteotl
 アステカにおける欲望と肉体的愛を司る女神。また地母神でありシワコアトルコアトリクエと関連がある。中央アメリカ諸族に広く知られているが、もともとワステカ起源の女神であり、アステカ湾岸北部の征服後にアステカの神体系の中に組み込まれた。名前はナワトル語で「不浄の女王」を意味する。ワステカ族においては「綿の女王」と呼ばれることもある。愛の女神にしてトウモロコシの母であり、また古くから伝わる大地の女神でもある。トラソルテオトルは「あらゆる不浄な行為の陰に潜む力」であり、罪をあがないたいと願う者と全能神テスカトリポカとの間を取り持ってくれる女神だと考えられた。特に「不潔」な行為を具現化した「トラエルクアニ」という別称を持っている。トラソルテオトル自信は特に性的な罪との関係が深く、アステカの湖上都市テノチティトランにおいて戦士達のために一般家庭から集められた娼婦達は、トラソルテオトルないしトラエルクアニに帰依した。彼女達はトラソルテオトルの道具として務めを果たしたあと、口を黒く塗られ、儀式において殺された。
 20ある暦日(センポワリ)の14番目「オセロトル(ジャガーの意)」の守護神であり、また「昼の神々」トナルテウクティンの5番目であると同時に「夜の神々」ヨワルテウクティンの7番目でもあった。さらに暦上でのトラソルテオトルの祭日は「6のシパクトリ」であった。365日暦の第12月にはチコメコアトルテテオインナンとともに、「オチュパニストリ」という祭りで祀られた。原始的な地母神トシと結びついており、ワステカ起源の地母神イシュクイナン、塩の神ウィシュトシワトルはトラソルテオトルの化身ないし関連する神と考えられる。またある意味でマヤのイシュチェルを対応神とみなすことも出来る。
 トラソルテオトルはコデックス(絵文書)では綿のバンドと2つの紡錘ないし糸巻きを頭飾りとする姿で描かれている。時にはシペ・トテックのように生贄から剥いだ皮をきている姿でも表され、これは子宮からの新しい命の誕生を象徴したものだと考えられる。

トラロック
Tlaloc
 メキシコ中央部、ティオティワカンの神。メソアメリカの神々のうちで最も古くかつ根源的な神であり、生命の付与者であるとともに破壊の源泉として信仰されていたが、何にもまして雨の神として信仰された。語形はトラリ(tlalli「大地」)とオク(oc「表面にあるもの」)から。オルメカの神第W神がその祖形と考えられている。マヤのチャク、ミシュテカのザウィ、トトナカのタヒン、サポテカのコーシオ、(そしておそらく)タラスコのチュピティリペメを直接の対応神とする。
 アステカの首都テノチティトランでは、純粋にアステカの神であるウィツィロポチトリと同等の地位を与えられており、この2神は双神殿で祀られた。トラロックの神殿は漆喰で覆われ、(水を象徴する)明るい青と白で彩色されていた。双方の神官達はアステカ社会において同等の地位を与えられていた。 チャルチウィトリクエを姉妹神、あるいは配偶神とし、トラロックはこの女神とともにトラロケ(トラロック一族)を支配した。トラロケとは、二人の妻、つまり神話上でテスカトリポカに誘拐されたとされているマクウィルショチトルマトラルクエイトル、そして羽毛の蛇ケツァルコアトルなどの神をさす。
 アステカの暦日(センポワリ)の中の7番目であるマサトル(鹿)を司り、また365日暦の暦上では9のオセロトル(9のジャガー)である。さらに昼の時刻を示すトナルテウクティンの8番目、夜の時刻を示すヨワルテウクティンの9番目を司る。 雨や雲、雷を司り、彼の力の顕れは、ある時は恵みの雨となり、またある時は人々に害をもたらす嵐となる。山の何箇所かの洞穴に住み、それらの洞穴は富と栄華に満ちた素晴らしい宝物殿であるという。稲妻、トウモロコシや水と共に描かれ、ギョロリとした目とジャガーの歯を持っている。水と海に関係した神で、時によって寛大にも無慈悲にもなるとされた。また、トラロックはトラロカン(Tlalocan)という死後の楽園を支配する神でもあった。トラロカンは「霧と水の国」とも呼ばれ、大きな変化も無く牧歌的に日々が過ぎ行く平和な場所であるという。そこに集った魂は、トウモロコシなどの豊富な食物や花々に囲まれた安穏とした生活を四年ほど送った後、再び現世に戻ってくると信じられた。トラロカンにいける資格をもつの者は、雷、水害、伝染病、癩病で命を落としたものであるという。

トラルチトナティウ
Tlalchitonatiuh
 古代都市テオティワカンにおいて崇拝されたメソアメリカ初期の神に後世つけられたナワトル語の名称。字義は「トナティウ(太陽)の国」。この神はジャガーの太陽ないし日没の太陽であり、アステカの鷲とジャガーの戦士集団の守護神とされ、鷲の戦死の通過儀礼を司っていた。紀元1世紀7世紀のテオティワカンにおける主要な神の一人として、その信仰はグァテマラ高地にまで浸透していた。

トラルテクートリ
Tlaltecuhtli
 メソアメリカ中央部における両性具有神の一人。字義は「大地の神」。男・女両性の側面をもつとされていたが、通常は女神とされていた。この女神は大地の怪物で、巨大で太ったカエルのような獣として描写され、大きな口、2本の飛び出た牙、そして鋭いかぎ爪の突いた足を持っていた。また、肘といい膝といい全ての関節には歯ぎしりする口がついているという。「昼の神々」トナルテウクティンの2番目を担っている。夕方の沈む太陽を飲み込み、朝に登る太陽を吐き出していた。生贄の心臓を食べる神であり、胸を切り裂かれた生贄の心臓を置くためのクアウシカリと呼ばれる石の容器の裏底に好んで刻まれた。
 第五の太陽(現在の世界の太陽)の世界が創造されるとき、トラルテクートリの体は世界を作るための材料とされた。世界の海にまたがって存在していたトラルテクートリを見たケツァルコアトルテスカトリポカは驚いて、このような怪物がいる限り世界が存続できないだろうと考えた。そこで彼らは2匹の巨大な蛇に変身し、一方がトラルテクートリの右手と左足を、もう一方が左手と右足をつかんだ。テスカトリポカが片足を失うという長い苦闘の末、ついには彼らはトラルテクートリをバラバラに引きちぎった。トラルテクートリの上半身は大地となり、下半身は空に放り上げられて天となった。しかし他の神々はこうした自体を喜ばず、トラルテクートリの体から人間の生存に必要な植物を生み出すことにした。その髪は木や花となり、皮膚は草や小さな花が成長するための栄養となった。眼は泉や井戸や洞窟の源に変えられ、口は大きな洞穴や川の源となった。鼻は山や谷となった。こうして神々はトラルテクートリの霊を慰めたのだった。

泥田坊
どろたぼう
 日本の水田に棲む妖怪。頭に毛がなく、一つ目で(片目は爛れている)、指は三本しかない。泥の中に住んでいるので身体は黒く、地面から上半身を出して「田を返せ〜、田を返せ〜」と悲しげな叫び声をあげる。必死に働いて田を買いためた老人が、死後に道楽者の息子に酒代のために田を売り払われてしまったため、これを恨んで泥田坊になったという。

トリグラフ
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トール
þórr
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ドルジ
Drujs
 ゾロアスター教における悪魔の一人。女の悪魔で、6人のアメサ・スペンタに対抗する6人の悪魔の一人(ただし諸説あるせいで全員挙げると6人以上いる)と考えられた。名前は「虚偽」を意味する。後世には女悪魔の総称としてこの名が使われた。

ドレキ
Dreqi
 アラビア語で「悪魔」を意味する。ラテン語で言う「ドラコ」であり、悪魔というより邪竜に近い。