エア
Ea
 ギルガメッシュ叙事詩に出てくるシュメール・バビロニア神話の神。シュメール地方ではエンキと呼ばれる。「エンキ」というのは「大地の主」という意味で、またエアという名は「水の家」を意味する。アヌエンリルとともにバビロニア・パンテオンの三体一座をなす水神。魚の尾を持つ山羊で象徴される男や、肩から水を噴出す男、或いは手に瓶を持つ男の姿で表現される。地底の大洋アプスの支配者で知恵、豊穣、医術、芸術、彫刻を司る。そのため、大工、石工、貴金属細工師の保護神とされる。人類の友であり、神々が洪水を起こした時は、ウトナピシュチムに箱舟を作らせて人間を救った。女神バーウーの息子でマルドゥークの父。妻はニンキ

エイル
Eir
 北欧神話における、医療の神、アース神族の女神。父と母は不明。すぐれた医者であるという事を除いては神話でも多くを語られておらず、棲んでいる場所も不明。ヨツン(巨人)族の国ヨツンヘイムに棲むメングラッドの侍女であるという。メングラッドの館ガストロープニルの近くにある山リュフヤベルグ(=「治癒の丘」の意)において、メングラッドは彼女の侍女達と共に、救いを求める病人や貧しい者たちを救済している。エイルはその侍女の一人であり、特に「親切な者」と呼ばれている。残りの八人の侍女達の名前は明らかにされておらず、エイルのみが医療を司るアース親族の女神として、神々の名を連ねた目録の中にその名前を記載されている。

エインガナ
Eingana
 オーストラリアの先住民アボリジニのポンガポンガ族の神話に登場する虹の蛇の一種で、この世の始めにたった一人で無限の砂漠に横たわっていたとされる。それに飽きた時、エインガナは自分自身で地上に存在するもの全てを生み出し、最後に人間を産んだ。しかし人間たちはエインガナのことを考えず逃げ出そうとしたので、エインガナは人間たちのかかとの部分を紐で縛った。この紐は今もエインガナが握っていて、これを放すと人間は死ぬという。

エインセル
Ainsel
 イングランド北部に住む、とがった耳を持つ少女の妖精の一種。その名前には「自分自身」という意味がある。ある夜更け、農家の少年が暖炉のそばで遊んでいると彼女が出現して名乗ったので、少年も「ぼくもエインセルだよ」と名乗って仲良くなった。しばらくして少年の失敗で妖精が火傷をして泣き出すと、恐ろしい顔をした母親の妖精が出現し、少年に誰がやったのかと聞いた。それに対して少年は「エインセルだよ」と答えたので、少年は復讐されずに済んだという。

エーギル
Aegil
 ゲルマン神話において、バナ神族の長で、海を支配していると考えられた巨神。海底にある宮殿に棲んでいたが、そこには海に沈んだ財宝の全てが集まるので、黄金に満ちており、その輝きだけで他の照明が要らなかったという。海を荒らしたり鎮めたりするのは彼にとっては簡単なことだという。また彼の9人の娘たちも船乗りを誘惑し、魂を海に引き込もうとする。ラーンという彼の妻も人間を一気に捕まえる網を持っていたとされる。海に沈んだ人間の魂は彼の宮殿でもてなされる。

エキンム
Ekimmu
エディンム

エク・アハウ
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エク・チュア

エク・チュア
Ek Chuah
 マヤ神話における戦争と商業の神。その名は「黒い戦王」を意味する。その名の通り戦争を司る荒ぶる神であり、「エク・アハウ」とも呼ばれる。エク・チュアとエク・アハウは元々は別個の神格であったが、次第に習合されたと思われる。本来、エク・チュアは旅人を守護する役目を持つ下位の神であり、エク・アハウこそが高位の戦神であったとする説もある。肌の色は黒く、身体は大きくて鈍重であるという。目の周りを黒く縁取った姿で描かれる。マヤの神殿における重要度は高く、偉大な軍神として崇められていたが、商業の守護者としての信仰もあり、どちらかというとこちらの面で人々に親しまれていたと思われる。商業神として描かれる場合は、背中に商品を背負った姿であらわされる。

エゲリア
Egeria
 ローマのネミの森の泉の神。ヌマ王の良き相談役であったとされる。ヴェスタの女祭祀はこの泉から祭儀の水を汲む。

エサースロン
Ellyllon
 イングランドのウェールズ地方に棲む小人の妖精の一種。エルフの一種であり、陽気で明るく面倒見がよい。フェアリーバターという黄色い毒キノコの汁が大好物で、その毒キノコの生えている近くにエサースロンの棲家があるという。困っている人がいると虫できず、夜の間に沢山の仲間を連れてやってきて、わいわいと楽しそうに騒ぎながら家の仕事を片付けるので、その家はどんどん豊かになるという。覗き見されると二度とやってこないが、復讐はしないといわれる。

エシュ
Eshu
 ナイジェリア、ヨルバ族の膨大な神群の中でもひときわ重要なトリックスター。特定の祭祀集団によって祀られているヨルバ族の他の神々とは異なり、全ての人々に祀られている。人の生活と密着した家の守護神であり、市場や交易の神であり、天界の主オロルンに次ぐ力を持つ強大な神。神話上ではしばしば道化のような役割で登場するが、他の神々ですらエシュの力からは逃れられず、不和や混乱をもたらす神として恐れられている。ヨルバ族にはエシュが登場する様々な逸話が伝わっているが、それぞれのエシュに対する描写は食い違い、小人のような姿をしている時もあれば、立派な逞しい男の姿のときもある。神々の使者という役割でありながらその力はほとんど万能に近く他の神々を圧倒し、不和や混乱、争いをまきちらす秩序の破壊者であると同時に、家や文化の守護神でもあるという。秩序の破壊することで変化をもたらす典型的な放浪神であり、ヨルバ族の人々はエシュを崇めながらも同時に恐れている。

エスス
Esus
 ローマ人がガリアと呼んだ、大陸のケルト人に崇拝されていた戦の神。「ヘスス」と呼ばれることもある。元々は木を切り倒す斧の神であり、それゆえに植物の神でもあった。ケルト民族ではエススに生贄として人間を捧げたが、その犠牲者は樹木に逆さ釣りにされた。「祭壇を染める生贄の血を見て心を休める」と言われる残忍な神で、戦の神というよりも人殺しの神とでも呼べるような存在であり、戦いに赴くケルト人を鼓舞し、熱狂を吹き込んだといわれる。そしてケルト人は勝利したあと、敗北した敵をエススへの生贄として捧げることで、この残忍な神を慰めた。一説にはアイルランドの伝説の英雄クーフーリンはエススと同一の神格で、戦いの神であるエススが大陸からアイルランドへと渡るうちに、勇敢な英雄として描かれるようになったのだとも言われている。ローマにおいてエススはマルス、或いはマーキュリーになぞらえられた。

エスツァナットレーヒ
Estsanatlehi
 北アメリカ大陸の南西地方に住むネイティブアメリカン、ナヴァホ族に伝わる女性(神)。地上における四季の変化に応じて年老いたり若くなったりすることから「変わる女(チェンジングウーマン)」とも呼ばれる。世界(もしくは闇)から生まれた"最初の男"「アルツェ・ヘイスティン(Altsé Hastiin)」と"最初の女"「アルツェ・アズザア(Altsé Asdzáá)」が雨雲がかかった山頂で見つけた。二人が花粉と露を与えるとエスツァナットレーヒはみるみる成長した。思春期を過ぎたころ、彼女は太陽と水に裸身を晒し、双子の戦いの神、ナイェネズガニトバディシュティニを宿した。二人が祖母であるナ・アシュ・ジェイ・アスダァアと父親である太陽の助力で怪物たちを退治し世界を救ったあと、彼女は西に浮かぶ島に移り住んだという。また、東西南北のそれぞれで踊ることで、東に雨雲、西に植物とトウモロコシ、南に織物と宝石、北に動物を創造したとされる。

エディン
Etain
 一般的なケルト神話(島のケルト)に登場する光を司る女神。美しい女神で光、或いは月を司る女神とされている。エディンは初め愛の神アングスの誘惑を受け、続いて大地の神ミエールの妻となったが、これに嫉妬したミエールの先妻であったファヴナックの怒りを買い、羽虫に姿を変えられてしまう。それでもミエールは彼女を愛しつづけたのでファヴナックは魔法の風で彼女を吹き飛ばして七年間荒野に吹きさらしにし、それでも飽き足らなくなってさらに遠くにエディンを吹き飛ばした。こうして放浪を続けたエディンは最後にアルスターの王エダールの妻の杯に落ちて彼に飲み込まれ、最初に生まれてから1012年後に、王の娘に生まれ変わることで再び女神としての姿を取り戻した。その時までずっとエディンを愛しつづけたミエールが冥界から彼女を迎えに来て、二人は再び夫婦となった。冥界に住むミエールが彼女を妻にしたことによって、世界に冬が来るようになったという。

エディンム
Edimmu
 古代シュメール、バビロニアにおいて信じられていた害悪をもたらす死霊の総称。エキンム(Ekimmu)とも呼ばれる。その名は「持ち上げられた者」という意味があり、幽体離脱した者の魂だとも、浮かばれない死者の魂で自分をちゃんと埋葬してくれなかったことを恨んで生者に災いをもたらすものだとも言われている。不和をばらまき、疫病を流行らせ、人間を破滅させることを望んでいて、人間に取り憑き、病気や災いをもたらしたりする。どんな小さなものにも潜り込み、どんな大きなものにも同化することが出来る。また様々な姿に変身することができるが、サソリ、蛇などの不吉なもの(毒をもつもの)に化けることが多い。ガルラナムタルの他、ディムメ、ディムメア、アル(ウトゥック)、アッハーズ、クアート・エチムミ、ラビス、クビュ、ペル・ウウリ、アシャック、ラビス、ラバス、マシュキムなどの固有名称と特徴を持った多くのエディンムが存在する。エディンムに憑かれた者は医学的な治療法では効果が無く、力のある神(エアなど)の呪文でのみ退散させられるとされる。

エフネ
Ephne
 ケルト神話において、太陽神ルーの母親であり、巨人族フォモールの王。魔眼バロールの娘でもある。

エベフ
Ebehu
 シュメール神話における山の神。

エポナ
Epona
 ローマにおける馬とラバの神。その出自はケルト神話のエポナであり、ケルトの神で唯一ローマ神話に加えられた存在である。

エポナ
Epona
 ???

エラテムー
 
 西太平洋パラオのガラヅマオというところに伝わる翼をもつ悪神。ガラヅマオのはげ山には悪神が棲んでおり、空から舞い降りてきては人を食ったという。人々は恐れて山から遠いホルレイという村まで逃げたが、一人老婆が逃げ遅れた。老婆は洞窟に潜んで芋を食って生き延び、やがて二人の兄弟を生んだ。二人は立派に育ち、自ら家を建て、その家の屋根にトベヘルというマングローブの木の枝で罠を仕掛け、家の中で火を焚いた。するとエラテムーがやってきて屋根の上に止まり、案の定罠にかかった。兄弟はエラテムーが動けなくなったところを二人がかりでようやく殺し、そのヅルブクル(気嚢)をとって事の次第をホルレイで告げてくるように命じた。ホルレイの者がヅブルクルを拾って「お前は魚のヅブルクルか」と、また「獣のヅブルクルか」と聞いても答えない。最後に「悪心のヅブルクルか」と聞くとヅブルクルは沈んで石になった。

エリナ・イチャ・アーバマナカラ
Erina Itja Arbamanakala
アルチラ

エリゴル
Eligor, Eligos, Abigor
 ユダヤの魔神でソロモン王によって封印された72柱の魔神の一人。「騎士心公」と称され、黒い鎧に身を包み、右手には、どんな印かこの世の者には分からない印が書いてある軍旗のついたランス(馬上で使う突撃用の槍)を持ち、左手には王笏、或いは毒蛇を持ち黒い戦馬に乗ってあらわれる。愛と闘争をもたらす力があるという。

エレキシュガル
Erekishgal
 シュメール神話において、大地の甘い水に下に位置する、乾燥したちりだらけの土地「クル・ブ・ギ・ア(帰還することのない大地)」を支配する「死の女主人」。「天の女主人」イナンナとは姉妹であるが、イナンナが光であるのに対し、正反対の闇の性質を持っている。バビロニア神話ではネルガルの妻であり、地下の悪魔であるガラは彼女の配下である。イナンナは姉であり敵であるエレキシュガルの支配する土地に訪れて、自分の権威を主張しようとしたが、逆に素っ裸にされ、屍体として杭につるされた。イナンナはエンキ(エア)に「生命の食物」と「生命の水」を与えられて復活することが出来たが、ガラたちはイナンナに付きまとって、その身代わりが見つかるまで離れなかったという。

エルフ
Elf
 ヨーロッパにおいて、丘や地下に住むといわれる北欧起源の妖精の一種。時代が下るにつれて小人の妖精だと考えられるようになった。元は見た目も大きさも人間くらいで、男女ともに若く美しく、人間が見ると一目惚れしてしまうといわれた。ただ、人間と違って背中がへこんでいるので区別することは可能だという。音楽好きでしばしば丘の上などで皆で踊りを踊っているというが、人間の家に棲み付いていたずらをする者もいるといわれる。

エロッザ
El-'Ozza
アル=ウッザ

エンキ
Enki
 シュメール神話における水の神であり、創造神。シュメールのエリドゥ市の水神で、バビロニア神話のエアの原型となった。エンキは浄化の力に長けているとされ、その祭儀を行う際、祭司たちは魚を模した衣装を身につけたとされている。またヘブライ神話においてはこんな神話が残されている。エンキはニンフルサグとともに、ディルムンと呼ばれる争いも病気も死もない場所で平和に暮らしていた。しかし甘い水だけがなかったため、エンキがこれを提供し、その水によってニンフルサグが八本の植物を育てた。この植物をエンキが口にしたときより、争いが起こるようになったのだという。他にもエンキは下位の神々の不満を聞いて、労働者として粘土より人間を創りだしている。エンキの行いの多くは形を変えて旧約聖書に残されている。

エンキドゥ
Enkidu
 古代バビロニアの「ギルガメシュ叙事詩」に登場する山男。怪力の王ギルガメシュと同等の力をもつとして、創造の女神アルが粘土から作り上げて地上に送ったとされる。獣と同じように草原で草を食べ、水を飲んで暮らしていたが、ギルガメシュに出会い、力試しで対等に渡り合って親友になった。ギルガメシュとともに怪物フンババを打ち倒したあと、神の作った巨大な牛を倒したが、このために神の怒りに触れ殺されたという。

猿猴
えんこう
河童

茲 えんじ
Yǎn-zī
 弇(エン):Unicode5F07
 中国神話において、西海の州に住むとされる神。人頭蛇身で青蛇二匹を耳に飾り、赤蛇二匹を足の下に踏みつけた禺彊に似た姿をしている。

エンプン・ルミヌウト
Empung Luminuut
 インドネシアのスラウェシ島北部に住むミナハサ族の女神。大地から現れたとされる。西風によって妊娠し、太陽神トアルを生んだ。

煙羅煙羅
えんらえんら
 煙に宿るといわれる日本の妖怪の一種。鳥山石燕の「今昔百鬼拾遺」には「煙煙羅(えんえんら)」という名前で紹介されている。煙はその時々に色々な形になるが、それが不気味で怪しい形になると煙羅煙羅になる。羅は「うすもの」とも読み、羅(目の粗い布の織物)が風にたなびくのに似ているのでこのような名前になったと説明されている。

エンリル
Enlil
 バビロニアの神。古都ニップールの守護神で風の神。「エンリル」とは「風の主」という意味。荒れ狂う暴風雨の神で、同時にまた雨をもたらし、砂漠と高地に緑を蘇らせる春の新生の湿った風の神でもある。アヌの息子で、アヌとともにニップールのウプシュキンナ宮に会する神々の集団の首長を務め、「全土の王」として、王権と首長権とを授与する。エンリルの言葉、つまり「風」は神々の集会の執行機関であって、その決定を実行する。もし神々がある都市の滅亡を決定すると、その破壊の嵐を送るのはエンリルの言葉であった。