阿奥 アアオ
Ā-ào
 中国雲南地方の紅河(ソンコイ川)南岸及び奥地に住む哈尼(ハニ)族が信仰する大地の神。

アイス
Ays
 アルメニアの言葉で「風」を意味すると同時に、風の中にいて狂気をもたらすとされる悪霊のこと。

愛染明王 あいぜんみょうおう
Rāgarāja
 真言密教の神。「Rāgarāja」とは「愛着染色」といった意味。愛欲を本体とする愛の神。全身赤色で、三目、六臂(ろっぴ)、頭に獅子の冠をいただき、顔には常に怒りの相を表わす。近世では、恋愛を助け、遊女を守る神としても信仰された。また、俗に、この明王を信仰すると美貌になると信じられていた。

アイニ
Aini, Ain, Aim,Aym, Haborym
 ユダヤの魔神で聖書などに登場する。「火炎公」、「破壊公」等と呼ばれ、蛇と猫と人間の頭を持った三つ首の姿で、人間の頭の額には五芒星の印がついていることもあります。右手には決して消えない松明(または火の玉)を持ち、この世に火炎地獄を作るため、見るもの全てに放火しようとします。常に赤みがかった煙に包まれ、地獄の毒蛇(またはトカゲ)にまたがっています。法律に詳しいともされます。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人。

アイラヌック
 
 アイヌ民族における英雄的なカムイ。オキクと同一視される。アイヌモシ(人間界)に顕現するときは人間と同じ姿になる。

アウィアテオトル
Ahuiatéotl
 アステカの官能の神の一人。アウィアトル(Ahuíatl)とも呼ばれ、アウィアテテオの一人であるマクウィルショチトルの別名。ショチピリの化身の一人とも言われる。

アウィアテテオ
Ahuiateteo
 メキシコ中央部、アステカの神。5人一組の神で、飲酒、賭け事、性交その他の快楽が度を越した場合の危険と罰を象徴している。それぞれ、マクイルクェツパリン(五のトカゲ)、マクイルコスカクアウトリ(五のコンドル)、マクイルトチトリ(五のウサギ)、マクイルショチトル(五の花)、マクイルマリナリ(五の草)という名前をもっている。ある種の奇形と病気は不謹慎な行為に対してアウィアテテオの神たちが与えた罰だと考えられていた。彼等は南の方位に関連付けられた神で、彼等の口の部分には5という数字を示す人間の手が描かれる。

アウィアトル
Ahuíatl
アウィアテオトル

アウィテリン・ツィタ
Awitelin Tsita
 ネイティブアメリカンの一部族、ズーニー族における「母なる大地」。原初の両性具有の存在アウォナウィロナの一部から「父なる天」アポヤン・タチュとともに成った。全ての生命はアウィテリン・ツィタの持つ4つの子宮から生み出されたという。

アーウェルンクス
Averruncus
 ローマにおいて禍を転じて福と成すという神。

アウォナウィロナ
Awonawilona
 ネイティブアメリカンの一部族、ズーニー族の神話で、「全てを含む」とされる両性具有の存在。一切が闇と空虚であったとき、様々な思念から霧を創造したという。霧が濃くなるとそれは雨となり、原初の空虚を広大な海洋で満たした。そしてアウォナウィロナ自身は太陽となった。さらにアウォナウィロナは自分の一部を剥いで、海洋の上に緑なす苔としておいた。この苔は固まると2つの巨大な被造物となり、永遠と結びつくようになった。この二つは「母なる大地」アウィテリン・ツィタと「父なる天」アポヤン・タチュとなった。

アウステル
Auster
 ローマ神話における南風の神。ギリシアのノトスにあたる。

アウロラ
Aurora
 ローマ神話における曙の女神。ギリシアのエオスに相当する。自然現象である「オーロラ」の語源となった。

アエシュマ
Aesuma
 古代ペルシアの民族宗教「ゾロアスター教」に出てくる悪魔。不浄の(魔)神アンラ・マンユ(アーリマン)の腹心の部下。その名は「凶暴」という意味があり、邪悪にして狡猾、残虐にして不義なる者で、人の怒りと欲望につけこむとされる。血塗られた棍棒を持ち、人に益をなす家畜や死者の魂を責め殺す。魔族ダエーワを率い、不義なる魔術師を使って世に戦乱を広げ、またアルコールに酔いつぶれているものをそそのかし、乱暴や狂乱を導くという。

青行燈
あおあんどん
 日本の妖怪の一種。鳥山石燕の「今昔百鬼拾遺」に描かれている。百物語をするとあらわれるという。百物語は、夜数人が集まって交代で怪談を語るもので、百本の蝋燭、または行燈に百本の灯心を入れてともし、一つの話が終わるごとに一本ずつ消していくものだった。これを百本全部行った時にあらわれる妖怪、或いは起こる怪異のことを青行燈と称するようだが詳細は不明。江戸中期には百物語を行う際は行燈に青い紙を張るという約束事があったようなので、名前はそこから来たと思われる。「今昔百鬼拾遺」には行燈の傍に立つ長い髪の鬼女の姿を描いている。

青坊主
あおぼうず
 日本の岡山県邑久郡地方にあらわれる妖怪。衣服もしくは体が青い色をした大坊主で、空家などに現われるという。鳥山石燕の「画図百鬼夜行」にも一つ目の法師姿の青坊主が描かれているが、説明が無い為にその詳細は不明。

奥瑪 アオマ
Ào-mă
 中国雲南地方の紅河(ソンコイ川)南岸及び奥地に住む哈尼(ハニ)族が信仰する天女神。神々の中で最大の神であり、万物の創造神とされる。阿奥搓司搓欽とともに世界を支配する。

敖雷巴爾汗 アォレィバルカン
Áoléibāěrhàn
 中国の少数民族、達斡爾(ダフール)族が祀る病気治癒の神。キツネやイタチのような動物が仙化したもので「狐仙爺(こせんや)」とも呼ばれる。豚、鶏などを殺して供え、加護を祈ると病気が治るという。

アガシオン
Agathion
 ユダヤ系の魔術師が使う使い魔のうち、実態がない使い魔の総称。アガシオンはたいてい、壺や指輪、護符、魔法円などに封じられており、魔術師の命によって出現し、用事が済むと再び封印される。

赤舌
あかした
 日本において、川に住んでおり弱者の見方をしてくれるという妖怪の一種。いつも赤い舌を出しているので赤舌という。鳥山石燕の「画図百鬼夜行」には水門の上で黒雲をまとい、獅子鼻をして舌を出した、三本の鍵爪を持つ四足獣のような姿で描かれている。かつて津軽の用水路に出現したという言い伝えがあり、水門の番をする妖怪だと考えられていたようだが、これは「画図百鬼夜行」の絵柄からの連想であろうと思われる。もともと赤舌とは陰陽道における赤舌神(しゃくぜつじん)がモデルだったことは間違いないが、赤舌神は水門などに全く関連が無い。

アガースラ
Aghasura
 阿修羅(アスラ)族の一人。アガースラとは「アガ」という名のアスラ、という意味。悪王カンサの将軍であると伝えられる。ヒンズー教経典の一つ、「バーガヴァタ・プラーナ」によれば、アガースラはアジャガラという巨大な蛇の姿で、英雄神クリシュナとその仲間たちを飲み込もうと画策する。アガースラの口は見たところ洞窟の入り口そっくりだったので、クリシュナを除く仲間たちと、その家畜は騙されて中に入ってしまう。このことを知ったクリシュナは、仲間たちを救い出し、アガースラを倒したとされる。この経典中では、クリシュナはヴィシュヌのアバターラ(化身)と一つとされているので、アガースラはヴィシュヌに倒されたことになる。

垢舐め
あかなめ
 日本の妖怪の一種。「垢舐り(あかねぶり)」とも言う。風呂屋や荒れ果てた屋敷に住み、真夜中人気の無い頃に出現しては、風呂場にこびりついた人間の垢をペロペロ舐める。風呂場が汚れている家ほど住み着きやすいという。足に一本の鉤爪を持つ散切り頭の醜い童子の姿をしている。塵や垢の気が寄り集まって出来た妖怪だといわれる。

アカ・マナフ
Aka Mana
 ゾロアスター教における悪魔の一人。6人のアメサ・スペンタに対抗する6人の悪魔の一人(ただし諸説あるせいで全員挙げると6人以上いる)。名前は「悪しき思い」を意味し、アカ・マナフに支配された人間は正邪善悪の区別が出来なくなるという。

アガリアレプト
Agaliarept
 ユダヤの魔神で聖書などに登場する地獄の第2軍団の大将。世界中の多くの謎に通じ、それを暴露します。とくに宮廷や議会の秘密に詳しいとされ、ブエルグーシオンブボティスを指揮下に置いています。

アガレス
Agares
 ユダヤの魔神で聖書などに登場する31個師団をその配下におさめる大公。「変化の公爵」の異名を持ち、地獄の東方を治める。かつては力天使であったとされる。弱々しい賢者の姿をしていて、手の甲に大鷹(またはカラス)をとまらせ、大きなワニ(または陸亀)に乗っている。声は老人のように震えているといわれる。未来を見通す力があるが、全てを謎めかして語り、しかも時々嘘を混ぜるため、その言葉は容易に信用できない。人間の行方を探る能力があり、また多くの言語を知っている。また、地震を起こす事ができるといわれる。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人。

アカングァーマジムン
 
 沖縄に出現する妖怪の一種。赤ん坊の死霊で、アカングァーマジムンとは「赤ん坊の魔物」という意味。この妖怪に股をくぐられると死んでしまうという。このように股をくぐらせてはいけない妖怪は沖縄を含む南西諸島に多く見られ、カタキラウワなどもその一例である。

アキス
AKis
 ローマ神話における河神で、ファウヌスとニンフであるシュマイティスの子。殺されたとき流れ出した血が河となった。

アクゥイロー
Aquilo
 ローマ神話における北風の神。ギリシア神話のボレアスに相当する。

アグディスティス
Agdistis
 プリュギア(小アジア地方、現在のトルコ共和国中央部)の大地の女神の一柱。両性具有で生まれた神で、キュベレと同一視される。ギリシア神話においてはゼウスがディンデュモン山で昼寝をしていたときにこぼれた彼の体液から生まれたとされる。

阿克的恩都立 アクドエンドゥリ
Ākèdìēndūlì
 中国の少数民族、鄂倫春(オロチョン)族における雷の神。鑿と槌を持っており、それを打つと雷鳴が起こるという。

アグニ
Aguni
 インド神話における火の神で、「阿耆尼(アギニ)」と漢訳する。イランにおいてはアータルといわれる。黄金の顎、歯を持ち、炎の頭髪を有し、3〜7枚の舌を持つ。天空地三界に顕現し、天上においては太陽と同一視され暗黒を駆逐し、空中においては電光としてひらめき、地界においては祭火として燃えるという。火中に投じられた供物を天上へと運ぶため、神と人との仲介者、または使者、賓客として、あるいはアグニ自身が優れた祭官として崇拝された。「リグ・ベータ」において彼に捧げられた賛歌は全体の5分の1をしめる。後世、インドラ、バルナ、ヤマなどとともにローカパーラ(世界守護神)の一つとして崇拝され、南東に住むと見なされた。仏教では火天に帰化している。

アグリポル
Aguriporu
 アラビア北部のパルミュラの月の神。鎌のような月を額、ないしは両肩に乗せている。名前は「ボルの雄牛」を意味すると考えられることもある。月は元来雄牛の角に見立てられていたらしい。

アサ
Æsir
 北欧神話において主要な神々が属する神族。総じて戦闘的な種族だとされる。本来は北欧の人々だけではなく、他のゲルマン民族からも崇拝されていた存在だと考えられている。「アサ」は複数形で、単数形では「アース」。世界の秩序が神格化された存在であり、多様な特質をもつ神々によって構成される。ヨツン(巨人)族の祖であるユミルとともに最初の生き物として生まれた牡牛アウドムラが、餌として舐めていた石から誕生したブーリという男を祖としている。ブーリの息子ボルを父とするオーディンを王とし、ヨツン族と常に敵対関係にあるが、この世が終わる時までは正面から戦うことはなく警戒的平和の中にある。人間はアサ神族によって創造されたといわれており、これによって古代北欧ではアサ神族は人間の保護者として崇拝されていた。またもう一つの神族である、ニョルズ率いるヴァナ神族とも対立関係にあり、両神族の間には激しい戦闘は繰り広げられたこともあったが、結局人質を交換して和解した。

アサ
Asa
 アフリカのケニアのカンバ人における創造神。語義は「父」の意。他の部族でムルングと呼ばれる。慰めと生命維持の神であり、天災による被害から自然の立ち直りの遅いときに、人間を助けてくれるという。

アザゼル
Azazel, Azaziel Azael
 ユダヤの魔神。「地獄の君主」、「人間の誘惑者」、「羊の守護者」などと呼ばれる。その名は「神の如き強き者」、「完全なる除去」、「移動」。「荒野」、「山羊」などの意味があり、しばしばサタンと同一視される。旧約聖書「レビ記」や旧約聖書偽典「エノク書」などに登場する。7つの蛇頭と14の顔、12枚の翼を持ち、蛇にまたがった姿で表されます。ノアの時代に天から降りてきて人間の女と交わり、巨人族を産ませた天使群(グリゴリ)の一人で、元は智天使だったとされる。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人。

味耜高彦根神
あじすきたかひこねのかみ
 大国主命の子。奈良県御所市の高鴨神社の祭神。高賀茂大神。

アジ・ダハーカ
Aži Dahāka
 古代ペルシアの民族宗教「ゾロアスター教」の聖典「アヴェスタ」に出てくる竜。悪神アンラ・マンユが生み出した、三頭、三口、六眼の竜。バビロンにあるクリンタ城に住み、千の魔法を駆使してあらゆる悪をなし、炎の神アータルとも激しく戦ったとされる。その後、エータナオ(ファリードゥーンとも)という英雄が退治しようとしたが、英雄が剣を突き刺すと傷口からサソリ、トカゲ、カエルなどの有害な無数の生き物が這い出したため殺すことが出来ず、捕縛してダマーヴァンド山に幽閉したという。

葦原醜男神
あしはらしこおのかみ
大国主神

アシュビン(双神)
Asvin
 インドのリグベータに書かれた神。たいていの場合、一対の神格としてあげられている。「騎士」、「治癒」を司る神で、「ナーサティヤ」という別称がある。ビバスバットとサラニウーの子神。若く美しさに満ち、敏速、聡明で驚くべき威力をもつ。密を特に好み、多量の蜜を馬のひずめ〜注ぐといわれる。双神の乗る車は密色で、密を運び、鳥または有翼の馬に引かれている。彼らは太陽の娘スーリヤと親密で、人々を厄災から救い、優れた医術をふるう。彼らは早朝に出現するという。アベスタ(ゾロアスター教の聖典)にはナーサティヤの名前で出てくるが、悪魔の列に落ちている。またギリシャ神話ではディオスクロイに相当する。

阿修羅 あしゅら
Asura
 インドにおける悪魔の通称。「修羅」と略されたり、「非天」、「無酒」などとも称される。『リグ・ベーダ』においては常に悪い意味(悪魔)とは限らず、特殊な神格を指す場合もある。これは、ゾロアスター教のアフラ・マズダに相当する。阿修羅(アスラ)は後世インドでは「神(sura)ではない(a)もの」、すなわち「非天」と通俗語源解釈され、悪魔の意味になった。仏教では八部衆の一で仏法を守護する。

アジョク
Ajok
 アフリカのナイル川上流に住むロトゥコ人に信じられている慈悲深い天空神

阿嬌魯 アジョル
Ājiāolǔ
 中国の少数民族、鄂倫春(オロチョン)族における祖先神。氏族の祖先が死後に神となったもので、人間、家畜、農作物などを守護する。人間の前に直接現れることなく、シャーマンを死者として交流するという。

アシラ
Ashrah, Aţrt, Ašerat
 アシラトとも「海の貴婦人」とも呼ばれる、カナアンの女神。バールなどの多くの神々の母であり、大后でもある。生まれたばかりの神々は、彼女の乳を吸って育つ。
 ユダヤでは魔神とされ、バールとよく対になって出てくる。

アース
Áss
アサ

アス=イガ
As-Iga
 シベリアのオスチャク族における、親切な精霊。名は「オブの古老」を意味する。オブとはシベリアを貫いて流れる大河の名前。

アスカトル
Azcatl
 アステカにおいて神ではないが、神話に登場し、ケツァルコアトルを案内する役を担う赤蟻。アステカ神話では第5の太陽の時代(現在の世界)、新しく人類が創造されたあと、神々の次の仕事は新しい人類に食料を与えることだった。偶然トウモロコシ(メイズ)の種を担いで走っていたアスカトルを見つけたケツァルコアトルは、どこにそんな素晴らしい食料があるのかとアスカトルに尋ねるが、アスカトルは答えたがらなかった。しかしケツァルコアトルの嫌がらせと脅しに負けたアスカトルは、ついには食料のある場所───トナカテペトル(Tonacatepétl 「食料の山」の意)───を白状し、ケツァルコアトルをその山へ案内する。その後トナカテペトルはナナウアツィンの提案によって、4方位の風と雨の神、そして4人のトラロケによって分割され、植物の種は風によって四方の大地にばら撒かれた。

アースメーカー
Earth Maker(s)
 →大地を造った者(アパッチ族)
 →大地を造った者(ミドゥ族)

小豆洗い
あずきあらい
 日本の妖怪で小川などに住み着く。「小豆磨ぎ(あずきとぎ)」、「小豆しゃらしゃら」とも呼ばれる。シャカシャカとまるで小豆を洗うような音を出すが一向に姿は見えない。小さな老人とも老婆の姿をしているとも言われる。音だけなので害はないが、正体を突き止めようとした者はからかわれて河に落とされる。また、地方によっては「小豆磨ごうか人とって喰おうか」などと物騒な事も言う。

アスタルテ
Astarte
 カナアンに伝えられる古代セム族の豊饒と生殖の女神。バビロニアの神であるイシュタルに語源があるとされる。バールの配偶神で頭に三日月型の角をつけた姿や、牡牛の頭をした女性の姿で表される。

アスタロス
Astaroth, Ashtart, Astarte, Ashtaroth,Astoreth, Asteroth,Astarath, Ashteroth,Ashtoroth, Astorath, Asthoreth, Ishtar, Aphrodite
 ユダヤの魔神の一人。その起源は古代セム族の豊饒と生殖の女神であるアスタルテ(Astarte)や、バビロニアの美の女神イシュタル(Ishtar)にあるといわれている。「恐怖公」「地獄の大公」等の異名をとり、また元々座天使であったという説から「座天使の公子」等とも呼ばれる。その姿は唇を血で濡らした全身黒ずくめの黒い天使で、右手には毒蛇を持ち、地獄の龍(または蛇)にまたがっているという。過去と未来を見通す力があり、まるで自分は堕落していないかのように天使たちが天から落とされた時の事を語る。常に安楽に過ごし、安逸をむさぼる事を好み人を怠惰に導く。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人。

アストー・ウィーザートゥ
Asto Vidatu
 古代ペルシアの死神。もともとは「アストー・ヴィダーツ」と発音した。名前は「肉体の粉砕者」という意味を持つ。最初は子悪魔だったが後に誰も逃れ得ぬ死の神となった。ゾロアスター教では「アストー・ウィーザートゥ」と呼ばれ、あらゆる人間にとって避けられぬ「死」を司る、比類なく強力な悪魔だとされた。全ての人間を死に引きずり込む為に虎視眈々と狙っており、母親の胎内の赤子ですらこれは例外ではない。流産が起こるのもこの悪魔のせいだとされている。民間伝承によれば、この魔物は投げ縄が大層上手で、この世に生まれた全ての人の首に縄をかける。人が死ぬと、善人の首の縄は外れるが、悪人は縄を引かれて地獄に堕ちるという。

アストー・ヴィダーツ
Asto Vidatu
アストー・ウィーザートゥ

アスマン
Asuman
 西アフリカ一帯の部族で共通して信仰されている創造神オニャンコポンの下位にいる低級神。木々や動物、魔除けなどを活性化する。

アスモデウス
Asmodeus
 ユダヤ教のタルムード文献に見られる等に見られる悪魔。ペルシアの魔人アエシュマが元となっている。「悪魔の頭」、「魔神王」、「剣の王アシュモダイ」等と呼ばれ、配下に多くの魔神を従えている。その顔は炎のように燃えており、天を駆けるための翼をもっている以外は、ほぼ人間と同じ容姿をしている。未来を見通して人の定めを知ったり、大地を見通して宝石や貴金属のありかを知る事ができ、また様々なものに変身する能力をもっているといわれる。天界では熾天使であったとも言われている。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人。

アダド
Adad
 バビロニア・アッシリア神話における、パンテオンの偉大な気象神。風の神エンリルが地上界の神になったとき、そのかわりに雷雨の支配権を握った。アダドは二つの性格、即ち雨風によって肥沃をもたらす豊穣神としての性格と、暴風雨、雷、洪水によって自然を破壊し、暗黒と死をもたらす神の性格を持つ。また、それらの性格からシャマシュとともに未来を喚起する特権をもつ託宣の神としても崇拝された。天神アヌの息子あるいは大地の神ベルの息子と呼ばれる。聖動物は雄牛とライオン、シンボルは糸杉、牛の背に乗り、片手に稲妻を持つ形で表現される。

アタール
Atar
 ゾロアスター教における火の精霊。ヒンズー教の火の神アグニがその元であるとされる。火を崇高のものとするゾロアスター教で数多くの天使や精霊の中でも力が強く善なるものとされた。「崇拝に値する者達」ヤザタの一人で、アフラ・マズダの息子といわれる。人間に安楽と知恵をもたらし、世界を邪悪から守るといわれていた。勇敢な戦士だとも言われており、悪竜アジ・ダハーカと激しい戦いを繰り広げたとされる。稲妻であるとも考えられ、雨を降らせないことで旱魃を起こそうとした悪魔を退治したとも言われている。

アタルガティス
Atargatis
 古代シリアにおける大女神。豊穣を司り、魚およびほとと結びつきが深く、上半身は人間の女、下半身は魚の形で表されることもあった。シリアにおいてもっとも信仰されていた神と言われる。また、ハダトという夫の神がいたとされる。

ア・チクン・エク
Ah Chicum Ek
シャメン・エク

アツィナ
 
アッコロカムイ

アッカ・ラーレンティア
Acca Larentia
 イタリアにおける大地の女神。12月23日のラーレンタリア祭の主神。元はローマの遊女だったといわれる。

アッコロカムイ
 
 アイヌに伝わる妖怪。「アツィナ」(海の木幣)とも言う。北海道の内浦湾(噴火湾)に住むという大蛸。1ヘクタールほどの大きさでで、通りかかる漁船を襲ったという。アッコロカムイのいるところは体の赤い色が海面に反射して遠くからでも分かったという。また一説には巨大魚とされるが、その場合でも特徴は変わらない。

アッシュル
Assur, Ashur
 バビロニア神話における軍神。アッシリアの国家神でまた、首都アッシュールの守護神。マルドゥクエンリルの役割を引き継いだ神であり、マルドゥクの好戦性とエンリルの治癒力をあわせ持つ。また彼の名は「慈悲深き者」を意味し、豊穣肥沃の神として棕櫚(しゅろ)の枝で囲まれた姿で表される。また軍神としてのアッシュルは矢を放つべく張られた弓を取り囲んだ翼のある円盤の形か、牛にのり空を行く姿で表された。なお時代と地域により数々の異名を持つ。

アッタール
Attar
 イスラム教以前の時代にアラビア半島南部で崇拝された神。戦いの神で、「大胆に戦う者」と呼ばれることが多い。シンボルの一つに槍の穂先がある。アッタールの聖なる動物はアンテロープ(カモシカ)である。金星を支配する力があるとされており、人類に水をもたらす神と考えられていた。

アッハーズ
???
 ???

アップルツリーマン
Apple-tree Man
 イギリスの果樹園の一番古い林檎の木に棲んでいる、林檎の木の精。その果樹園の全てを熟知しており、毎日良い行いをしている人を助けるという。ただし、アドバイスは声だけで姿はわからない。ある昔話では、財産を少しも貰えなかったものの毎日真面目に働いた長男に、クリスマスイブの夜に宝物の在り処を教えたとされる。その家の末っ子は全財産を受け継いだが、毎日遊んでいたので、家畜たちが彼について喋る悪口だけを聞かされたという。

  あつゆ
Yà-yǔ
 カツ:不明,窳(ユ):Unicode7AB3
 中国神話における怪物の一種。もとは天神だったが、天神である弐負(じふ)とその臣下の危(き)に殺され、怪物と化したとされる。その姿は「人頭、牛体、馬足」だとか「人頭蛇身」だなどのさまざまな伝承がある。

アッロケン
Allocen
 ユダヤの魔神。「戦士公」などと称される地獄の大公の一人。獅子の顔をした戦士で、肌は赤い黄金のように光り、輝く鎧に身を包んで、巨大な戦車に乗っています。荒野にとどろく荒々しい声を発し、その燃える瞳を覗き込んだものは自分の死に様が見え、そのショックでしばらく眼が見えなくなるといわれます。占星術、文法、論理学、修辞学、算数、幾何学、天文、音楽などの各種文芸に通じています。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人。

アーディティ
Aditi
 インド神話においてアーディティヤ神群の母とされる「母性」、「無限」などを象徴する女神。A-ditiは無拘束、無限を意味する。「リグ・ベータ」で彼女に捧げられる独立賛歌は3詩節のみである。ちなみにアーディティヤ神群とは、バルナとミトラを首長として、アリアマン(歓待)、バガ(分配、幸運)、アンシャ(配当)、ダクシャ(意力)などを含む12神のことである。

阿丁博児 アディンボル
Ādīngbóér
 中国の少数民族、鄂倫春(オロチョン)族における風の神。

アテン
Aten
 エジプトの太陽の神。Atonとは「太陽の円盤」を意味する。エジプト第18王朝のアメンヘテプ4世(在位前1379〜62)は世界最古の宗教改革者として従来の他の神々への信仰、特にアモンへの信仰を禁じ、アテン宗教のみを公式の宗教として認めた。そして自らの名をアメンヘテプ(「アモンは満足する」の意)からアクエンアテン(「アテンの栄光」の意)へと改めた。アテンは常に巨大な赤い日輪と、そこから伸びる先端が手の形をした光線とであらわされる。この光線はアテンの美しさを王にまで及ぼすものと考えられた。

アトゥイコカムイ
 
 アイヌ民族においてシャチ(或いはクジラ)の姿で顕現するカムイ。語義は「海を領有するカムイ」。

後追い小僧
あとおいこぞう
 神奈川県丹沢地方に見られる妖怪。山中で何者かが後を追いかけてくるが、振り返っても木や岩の影に隠れたようで誰もいない。これは山霊、あるいは後追い小僧の仕業で、特に害は無いといわれる。余りにもしつこい場合は何か食べ物を置いておくとよいという。道案内をするかのように前を歩く場合もある。夜間より昼間、特に午後に多く現われ、夜間の場合はちょうちんのような火を灯して人の前後に現われるという。

アトメフカト
Atmuhakat
 ベトナムのチャム族における女神。インド哲学の「アートマン(自我・あるいは物一般の本質のこと。宇宙原理ブラフマンと同一視される)」を擬人化した存在。宇宙に12個の太陽があった頃、子の年の6月、月曜日3時から世界を管理し始めたという。

アトラトナン
Atlatonan
 アステカにおける大地と水の女神。アトラトナン、ウィシュトシワトルシローネンショチケツァルの4人の女神に扮した女性は、テスカトリポカに扮する若い戦士に仕える4人のうちの一人であった。この戦士は名誉と快楽を1年間傍受したあと、365日暦の6番目の暦月にある「トシュカトル(「渇いたもの」の意)」という祭儀で4人と一緒に生贄にされる運命にあった。

アナト
Anat,Anath
 カナン、古代フェニキアの大女神。闘いの女神としての性格が特に顕著で、その祭祀はエジプトにも取り入れられ、エジプトではレーの娘で、セトの配偶者とされた。古代都市ウガリトの遺跡から出土した文書に示された神話では、アナトはアリヤン・バールと呼ばれる神の姉妹で、彼のために無数の人間を殺害して両手を血で染め、またバールをたおした モト神とも戦って、彼を殺し、その死体を切り刻み蓑でふるいわけ、火で焼き、臼で粉砕して畑にばら撒く残忍な女神として描写されている。

アナーヒター
Aāhitā
 古代ペルシア神話における聖なる水の女神。正確には「Aredovi Sū-ra Aāhitā」という。それぞれ「湿り気のある」、「強い」、「純潔な」という意味を持っており、同名の河を神格化したもの。インドのサラスバティーとの共通点が多く見られる。星の間に住み、勇気ある高貴さを備えて、四頭立ての戦車に乗って進み、悪魔や暴君を打ち負かす。また、自然と生物の多産を約束し、鳥獣や牧場を保護し、王権を守護する。その姿は、千の星で飾られた金の冠と四角い金の首飾りをつけた痩身の気高く美しい処女、あるいは千の入り江と千の水路を有した巨大な川そのものであらわされる。

アナンタ
Ananta
 インド神話において、ビシュヌが瞑想する時に横たわるベットの役をする竜(大蛇)。アナンタとは「無限」という意味。「シェーシャ(Śeşa)」とも言われる。全てのナーガラージャを統べる王であり、原初の蛇にして最後の蛇。また、この竜はブラフマーの命令により地底界に住み大地を支えているとされる。

アヌ
Anu
 アッシリアおよびバビロニアのパンテオンの最高神。天空の世界「アンシャル」と地上の世界「キシャル」から生まれた。「アヌの空」と呼ばれる最も高い場所に棲み、配偶神である女神アンツに助けられて、宇宙を司った。「神々の王」、「天の王」、「国々の王」などの称号をもち、権力と正義、つまり至上権の全ての表象を備えている。

アヌビス
Anubis
 エジプトの神で、彼岸の世界への門を開き、死者をオシリスの裁きの間へと導く役目を持つ。オシリスネプテュスの子。それ故、冥府へ死者を導くヘルメスと同一視され、「ヘルマヌビス」と呼べれたりもする。オシリスがセトに殺害された時に、その身体に布を巻いてミイラにしたため、以後、葬儀を司るようになった。黒いジャッカル或いはイヌの頭を乗せた黒っぽい皮膚の男として表される(ジャッカルや犬はアヌビスの聖獣)。

アハ・イシュケ
Each Uisge
 アイルランドやスコットランド高地地方において、海や塩水湖の塩水の中に住むといわれる馬の怪物の一種。よく晴れた午後などに、毛並みのよい馬の姿で岸辺の草を食み、興味を持った少年や少女達が背中に乗りたくなるように誘ってくる。しかしこの馬の背中には不思議な粘着力があり、一度またがってしまうと二度と降りられず、水中に引きずり込まれてしまうのである。この馬が食わなかった肝臓だけが、翌日の岸辺に打ち上げられるといわれている。

アパオシャ
 
 イラン、ゾロアスター教における旱魃を司る悪魔。 イランでは古くから農耕と牧畜の両方が行われていたが、イラン人は自分達を農耕民族だと考えていた。従って旱魃は最大の危難とされた。その最大の危難を司るのがアパオシャであり、頭や背や尾に一本も毛のない真っ黒の馬のような姿であらわされ、自在に天を駆けるこの馬が中空に居座る限り、下界は日照りに悩まされつづけるという。ゾロアスター教聖典によれば、アパオシャは雨の神ティシュトリヤと三日三晩戦った末、これを打ち負かすが、ティシュトリヤは善神アフラ・マズダより「十頭の馬の力、十頭の駱駝の力、十頭の牛の力、十の山の力、十の大河の力」を付与され再び現われ、アパオシャを打ち負かす。こうして下界に雨期がやってくるのだという。しかし、ティシュトリヤがいつも速やかにアパオシャに勝つとは限らないのだ。

アパサウンカムイ
 
 アイヌ民族におけるタヌキ(ムジナ)の姿で顕現するカムイ。名前は「戸口を守るカムイ」の意。男女一対のカムイと考えられることもある。

アバーシ
Abaasy
 シベリアのヤクート族において、邪悪な存在とされる悪霊たちのこと。地下世界に住み、「アバース・オイクボ」と呼ばれる特別な穴を通って人間のもとに現れる。邪神ウル・トヨンによって支配されてとされることもある。アバーシの頭目の息子は眼が一つしかなく、鉄の歯を持っているといわれる。

アバドン
Abaddon
 ユダヤの魔神で、「疫病のイナゴ王」、「死の闇天使」、「奈落の魔神」などと称される。ヨハネの黙示録にはアポルオン(Apollyon)という名で出てくる。その名は「破壊」、「滅亡」、「廃墟」、「墓」、「冥界」、「死」などの意味があり、ギリシアの太陽の神アポロンとも関係があるとされます。鎌状の翼を持った恐ろしい姿で、見たものはショック死するとされる。地獄の奥底に住む堕天使で 、最後の審判が訪れる時に、イナゴに似た使い魔を放って人間を苦しめ抜きます。

アビゴル
Abigor, Abigar
 ユダヤの魔神で、「冥界の大公」と称される。王笏をもった見た目よい騎士の姿であらわれる。未来を予言する能力と、軍の指揮能力を有する。

アビス
Abyss
 エジプトにおいて、牡牛の姿をした豊穣の神。

アピス
Apis
 エジプト神話に見える雄牛の神性。メンフィスを中心として信仰されていた。ハピ(Hapi)のギリシア語化。エジプトの他の雄牛の神性と同様に、もともと 多産豊穣の神で、鳥獣の繁殖に関係していたが、のちプターやオシリスと結びつくようになった。アピス信仰では実際の牛を進行の対象としていて、アピスとなる牡牛を選び、その生涯が終わるまで神として祭り上げる。そのアピスが死亡すると王公貴族のように飾り立てたミイラにして石棺に納めたあとに、次代のアピスを神々の陪審員(おそらく神官が受け持ったと思われる)が選定した。

カムイ
 
 アイヌ民族において天然痘として顕現するカムイ。悪いカムイとは考えられていない。名は「歩くカムイ」の意で、霰の模様の入った服を着ている。

アプサラス  神族
Apsaras
 インド神話における水の妖精の総称。彼女らは川、雲、電光、星の中に住み、みずからの姿を水鳥に化する。また、ミヤグローダ(バニヤンの樹、榕樹)や菩提樹に住むこともある。人々に精神異常や狂気を起こさせたりする。メーナカー、シャクンタラー、ウルバシーなどは有名なアプサラスである。

アプス
Apsu
 古代メソポタミア神話の神。地下に広がると観念された、地上全ての水の源をなす淡水を神格化した存在で、太古に、海水を神格化した蛇形の女神ティアマットと夫婦になり、この両者から全ての神々が生じたとされる。のちに彼は子孫の神々が騒がしいのに怒って、配下のムンムと共に彼らを滅ぼそうとしたが、逆にエアに殺される。

アフ・プチ
Ah Puch
 マヤ神話における死の神。九つの層に分かれた地下の冥界の、最も深い9層目の世界「ミトナル(mitnal)」を支配している。この世界に棲む悪鬼達の王として、「フン・ハウ」という別名も持っている。あごから肉が削げ落ち、腐敗を表す黒点が身体中に浮き出ている姿をしている。また、鈴を身につけた膨張した死体として表されたり、骸骨そのものとして描かれることもあった。最近では(特に民間伝承において)「ユム・シミル」、「フン・シミル」という名で呼ばれることもある。死の国に新たな住人を招くべく、病人や死期のせまった人間の家をうろつき回るという。

アブラクサス
Abraxas
 ユダヤの魔神で、「永却の貴公子」と呼ばれる。正式にはギリシア語で「αβραξασ」と綴ります。雄鶏の頭に2匹の蛇を足とした姿をしています。右手には盾を、左手には鞭を持っていて、この世の生き物と神との仲を調停する役目があるといわれます。「アブラカダブラ(abracadabra)」という呪文はこの魔神から来ているとされます。

油澄まし
あぶらすまし
 日本の妖怪で、熊本県天草諸島などで目撃される。油瓶を持ち、物憂げに澄ました顔で峠道に現れ、道行く人々を驚かす。人間の姿をしているが、頭だけが奇妙に大きく、身体中を蓑ですっぽりと包み杖をついている。油澄ましの噂話をすると出るといわれ、油を盗んだ人間の霊が化けたものとも言われる。

アフラ・マズダ
Ahura Mazdāh
 ゾロアスター教の善神にして最高神。アフラは神、マズダは知恵を意味する。悪魔アンラ・マンユに対する絶対の善であり、この世界はこの二者の絶えざる闘争の場であるという。天上の光に満ちたところに棲み、神聖な教義や知恵の源として崇拝された。「全生命の創始者」とも呼ばれる。二者の関係には二つの説があり、一つはアフラ・マズダはアンラ・マンユより上位の存在でありその存在価値は神と悪魔のような関係であるとする説、もう一つは二者は同格の存在であり、超越的な根本原理「無際限の時間」から生まれた双生児であるとする説である。双子の精霊スペンタ・マインユとアンラ・マインユをつくり、象は王冠をかぶった有翼の人間の姿をとる。

アペカムイ
 
アペフチ

アペフチ
 
 アイヌ民族において、炎を顕現体とする女性のカムイ。「アペカムイ」とも呼ばれる。アイヌモシ(人間界)では炎の姿になるが、老婆として描写されることも多い。

アペメル
 
 アイヌ民族において、火花を顕現体とする男性のカムイ。カンチュウとともにチピヤカムイの兄で、チピヤカムイを見初めたアイヌ人の男に試練を与えた。

アポ・カタワン
Apo Katawan
 フィリピンのネグリト族における、「父」なる神。

アポピス
Apophis
 エジプトにおいて、水と土の元素からなると考えられた闇の蛇。その色は黄色と黒で染められ、「恐ろしき者」、「危険な者」、「反逆する者」、「招かれざる者」などと呼ばれる。闇を象徴するアポピスは、太陽の神アトゥムの敵である。元来はセトの敵でもあったが、セトがオシリスの伝説において悪役とみなされるようになると、アポピスもセトの仲間と考えられるようになった。アポピスは原書の水(アビュッソス)から現われたもので、世界を原書の混沌に引き戻そうという力を顕れである。アポピスがエジプトの祭儀に登場する時、それは退治すべき邪悪な者として登場する。メンフィスで行われるソカリス祭では、王がオシリスの前でアポピスを打ち負かす儀式を行う。別の神殿では、セトとその従者を倒す書があり、そこでもアポピスは倒されている。また、このような儀式で行われる教えは、後世になるとあらゆる悪から身を守る呪文のようなものとして使われるようになった。ただし冥界においては、アポピスはオシリスに有罪を宣告された死者達を追いまわし、苦しめる役割を担っている。

アポヤン・タチュ
Apoyan Tachu
 ネイティブアメリカンの一部族、ズーニー族における「父なる天」。原初の両性具有の存在であり、海を創造し、自身は太陽と変じた存在アウォナウィロナの一部、緑なす苔から「母なる大地」であるアウィテリン・ツィタのともに生まれた。全ての生命はアポヤン・タチュとアウィテリン・ツィタから生まれたとされる。

アポロ
Apollo
 ギリシア、ローマ両神話に登場する太陽神。予言、芸術、医術の神でもある。

天津久米神
あまつくめのかみ
 日本記紀神話において高天原(天界)の武神。久米直(くめのあたい)等の祖神。天孫降臨に際し、武具を携え、瓊瓊杵神の前駆を行なった。

天津彦彦火瓊瓊杵神
あまつひおひこほのににぎのかみ
瓊瓊杵神

天津甕星神
あまつみかぼしのかみ
 日本の記紀神話における星の神で悪神。またの名を「天香香背男神(あまのかがせおのかみ)」という。天津神であるにもかかわらず、高天ヶ原の命に従わない天津甕星神は、猛き神建御雷神経主神のニ柱をはねのけるほどの力を持っていたが、最終的には倭文(しつり)神・建葉槌神(たけはづちのかみ)により懐柔された。星と、星を見て占う占星の吉凶を司る神。

天照大御神
あまてらすおおみかみ
 日本の記紀神話の最高女神。「天照大御神(あまてらすおおかみ)」、「大日貴(おおひるめのむち)」、「天照御魂神(あまてらすみたまのかみ)」、「天照坐大神(あまてらすいますおおかみ)」などの別称がある。
 高天原(たかまがはら)の主神、つまり八百万の神々のトップランクに位置し、その名の示す通り、太陽を司る神。伊邪那岐神から生まれた「三貴神」の一神。弟の素戔嗚神の粗暴なふるまいを怒って天の岩屋戸に隠れた話は、日蝕を表したものだとか、キリストの復活を真似たものであるなどの色々な説があるが、要するに生物(人間)にとってどれだけ太陽の恵みが無くてはならないものかを伝えるための説話だと思われる。

天香香背男神
あまのかがせおのかみ
天津甕星神

天探女神
あまのさぐめのかみ
 日本の神で、邪心をもち、他人の心を探り出すのに長じているという。天稚彦神をそそのかし、出雲平定の天命にそむいた天稚彦神の責任追及のため高天原から遣わされた雉を射殺させた。天邪鬼はこの神の名によるともいう。

天邪鬼
あまのじゃく
 日本の妖怪で、天探女を語源としている、小鬼、悪鬼の類。人の心と正反対の事をして楽しむへそ曲がりな妖怪。他人の姿や口真似、物真似をしたり、或いはそれをさかさまにやってみたりして人に逆らい、からかうが、大抵の場合最後には滅ぼされる。「あまのじゃこ」とも読む。

アマルゴ
 
 フィリピンのルソン島における太陽神。人が恋をするのはアマルゴがその人の魂を盗んでしまうからだという。

アマンチュー
 
 沖縄における創世神。「アマミキヨ」、「アマミコ」、「アマミク」とも言う。昔、天と地は境が無くて一つであったので、人間は蛙のように這っていた。そこでアマンチューが天を押し上げ、天と地の境を作った。そのために人間は立って歩けるようになったという。これと同じ話は、「アマンシャグマ」という巨人の話として熊本県に伝わっている。

アミィ
Amy, Avmas
 ユダヤの魔神で「炎の総統」と称される。かつては天使(或いは能天使powers)の階級だった。地獄と業火と煙の柱に包まれて現われるため、実際の姿はわからない。この炎は冷たく燃え広がらないが、火柱を見つめていると、そこにはさまざまな光景が現われ、未来の風景まで映るとう。また指でこの火柱に触れると自分の死の光景を見ることが出来るとも言われている。命じられれば炎のおおいを解き、魅力ある男性、或いは干からびた小人の姿をとる。人間の魂と引き換えに占星術などの様々な技術を伝授する。ソロモン王によって封印された72柱の魔神の一人。

アミタンネカムイ
 
 アイヌにおいて徘徊性で巣を作らない種類の蜘蛛であるアシダカグモを顕現体とする女性のカムイ。名前は「足(爪)の長いカムイ」の意。長く細い脚が女性を連想させるところから女性のカムイとされたと思われる。蜘蛛一般を顕現体とするカムイはヤオカムイと呼ばれる。

アムドゥシアス
Amdusias, Abuscias
 ユダヤの魔神で、「一角公」と称される。銀色のユニコーンの姿をとり、使い 魔の楽隊を率いて、いかなるところでも美しい音楽を鳴らす。その音楽で、木々の枝葉を自由に動かすことが出来る。人間の姿をとるときは白いアゴヒゲを生やした背の高い痩身の男になる。ソロモン王によって封印された72柱の魔神の一人。

アメサ・スペンタ
Amesa Spenta(s)
 アメシャ・スペンタ、アムシャスペンズ、アメシャス・スペンタとも呼ぶ。ゾロアスター教における聖なる存在(神々)の総称。ゾロアスターの宗教改革以前に信じられていた古代ペルシアの神々だったと思われる。つまり「至高神」アフラ・マズダを絶対の存在とする一方で、古代から信仰・人気のあった神々を、アメサ・スペンタとして教義に取り込み、邪悪な神アングラ・マイニュに対立する唯一絶対の神アフラ・マズダの見せる別の顔として定義しなおしたというのが通説である。アフラ・マズダだけが信仰に値する存在で七柱のアメサ・スペンタは、アフラ・マズダと人間(信者)達の間を仲介する存在とされる。
 アメサ・スペンタはそれぞれが、生き物の種、一年のある一部、といった世界を構成する特定の部分に関わっている。
┌──────┐┌──────┐┌──────┐┌──────┐┌───────┐┌─────┐
│      ││アシャ・  ││スペンタ・ ││クシャトラ・││       ││     │
│ヴォフ・マノ││      ││      ││      ││ハウルヴァタト││アメレタト│
│      ││ヴァヒシュタ││アルマルティ││ ヴァイリャ││       ││     │
└──────┘└──────┘└──────┘└──────┘└───────┘└─────┘
  善き思い     正義      信仰      支配       完全      不死

  動物/家畜     火       地      太陽と天      水       植物

天石門別神
あめのいわとわけのかみ
 別称を「天石戸別神(同訓)」、「櫛石窓神(くしいわまどのかみ)」、「豊石窓神(とよいわまどのかみ)」などという、天太玉神の子神。天石門(あまのいわと)とは、「天上界(高天原)に入り口にある堅固な門」と解される。天孫、瓊瓊杵神が地上に降臨する時に、天照大御神の指名によって思金神や天手力男神などとともに、随伴した神の一人。神名にもあるように、石あるいは磐と深い関係がああると言われていて、この神を祭神とする神社の中には、巨石、巨岩を御神体とする神社もある。  名前のとおり、門を司る神であり、ひいては、生(現世)と死(他界)、村の内と外、家の内と外、といった境界を司る神でもある。外界から災厄が侵入することを防ぎ、人間の平穏な生活を守護する霊力を発揮すると考えられている。 神徳として災厄・疫病防除、家内安全、無病息災などがある。

天鈿女神
あめのうずめのかみ
 「天宇受売神」とも書く。猿田彦神の妻とも言われる。天照大御神が天岩戸(あまのいわと)、或いは天岩屋戸(あまのいわやど)に隠れた、いわゆる「岩戸隠」の話で、大御神を外へ誘い出すために洞窟の前で踊りを披露した女神。細女神のその時の踊りを要約すると、「胸をはだけて乳房を露出し、さらに腰の紐をほどき、衣を下げて女陰に紐を押し当てた」といった感じである。この踊りは天照大御神の怒りをなぐさめ、和らげるもので、ひいては日の神を回復させるものである。そこから、神を祭りなぐさめる為に神前で舞を奉じる神楽の始まりとされ、天鈿女神はその祖神とされる。神楽の語源は「神座(かみくら)」であると言われ、これは神を招き、降臨してきた神を歓迎し祝福するために、神座(神の宿る場)において踊りをささげる事である。また神楽とは同時に、神の心を楽しませ和らげる「神遊び」という意味も含まれており、そうした神楽から日本の様々な芸能が派生した事から、天鈿女神は、日本における芸能の源流の神ともされているのである。
 また、天鈿女神が神懸りして踊る様子を「俳優(わざおぎ)をなして(滑稽な動作をして舞い歌い、神や人を楽しませること)」と記されていることから、俳優のルーツとも言われている。神徳としては芸能上達(舞楽、歌舞伎などの演劇、俳優、その他技芸一般)がある。

天上春神
あめのうわばるのかみ
 思兼神の子神。「天表春命」とも書く。信濃阿智祝部、武蔵秩父国造の祖神。天孫降臨の時、守護神として従う。

天忍日神
あめのおしひのかみ
 日本記紀神話における高天原(天界)の武神。大和朝廷の軍事を担当した大伴氏の祖神。天孫降臨の時、天津久米神とともに弓、矢、剣を携えて瓊瓊杵尊を先導した。

天忍穂耳神
あめのおしほみみのかみ
 天の安河で、素戔嗚神天照大神に誓約(うけい)を行なった際生まれた、五男神中の一神。瓊瓊杵神の父神。宇治市木幡神社、英彦山神社などにまつる。

天之御中主神
あめのみなかぬしのかみ
 天地開闢神話で、宇宙に一番最初に出現し、高天原の主宰神となった神である。造化三神、あるいは三柱の神と言われる三神の一柱で、その名の示すとおり宇宙の真ん中にあって支配する神であり、日本神話の神々の筆頭に位置付けられている。宇宙の根源であり、また高天原の最高司令官でもあるにも関わらず、人間にわかるような形では活動しないため、天之御中主神を主宰神として祀る神社は全国的にも少ない。  天之御中主神が、一般に馴染みのある姿を表しているのが妙見信仰である。北極星を仏教用語で妙見、あるいは北辰といい、これを神格化したものは妙見菩薩と呼ばれる。天のはるか高みに隠れている天之御中主神は、妙見菩薩と同一視される事により、「妙見さん」として信仰された。

アメミット
Amemait
 エジプトにおける死の女悪魔。「アムマイト」とも呼ばれる。また、「アミト(Ammit)」とも呼ばれる。ワニの頭を持ち、胴体は猫科の大型捕食動物(ライオンであることが多い)、臀部(尻)はカバで表される。オシリスの死者の審判において、善人と裁かれたものは真実の神マァトに導かれるが、悪人とされたものはアメミットの手にかかり、丸呑みにされてしまう。

アモル
Amor
 ローマ神話における恋を司る神。ギリシア神話のエロスに相当する。

アモン
Amon
 エジプトの神で、ムートの夫。「アムン(Amun=見えざる者)」とも言う。Amonとは「神秘」の意。本来はテーベの地方神に過ぎなかったが、第12王朝がテーベを首都として統一王国を作った時に、全国へと崇拝が広まった。ヘリオポリスの最高太陽神レー(ラー)と融合され「アモン・ラー」と呼ばれ神々の王とされた。はじめは羊頭の神として表されたが、中王国以後は一対の長い羽飾りを頭に載せ、顎鬚を垂らした人間として表された。聖獣は雄羊とナイルの鵞鳥。

アモン
Amon
 ユダヤの魔神だが、元々はエジプトのアモンから来ている。その姿は一般的に頭に2枚の長い羽毛をつけた黒青色の人間の姿で表されるが、羊頭の人間や、羊そのもの、ガチョウといった形態になる事もあるようです。「炎の侯爵」の異名を持ち、過去や未来の出来事を知り、恋愛の秘儀に通じているといわれます。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人。

アルチラ
Altjira
 オーストラリア北部の乾燥地帯に住むアボリジニ、アランダ族の信じる原初の天空神であり創造神。「エリナ・イチャ・アーバマナカラ=「誰も彼を作らなかった」の意」とも呼ばれる。神話的存在が活躍していたとされるはるか昔の時代、アルケラ(ドリームタイム)以前に存在した超自然的存在であり、アルケラに活躍した精霊達を造りだした者と考えられている。エミューの足を持つ神であり、その妻と娘達は犬の足を持つという。世界に現在の形を与えると、その他の「夢に住まう永遠の者達」が地下に戻っていったのと異なり天空の頂きへと移り住んだ。トーテム信仰を持つ多くの民族の創造神と同じように、アルチラは地上にはなんの関心も示さない怠惰な神(閑職神)として知られる。

アルマロス
Armaros, Armars, Abaros,Pharmaros, Arearos
 ユダヤの魔神で、アザゼルシェミハザなどの天使と一緒に天から降り立った天使たちの一人。人間に魔法使いの技を無効にする方法を教えた。

アユスト
Ajysyt
 シベリアのヤクート族において、女性の出産を助けるとされる女神。たえず前後に身をゆすっており、こうして生命力の伸長を図るとされる。イチタの化身と考えられた。

アラ
Ara
 ボルネオのダヤク族に属する、イバン族の創世神話に登場する精霊。時が始まった頃、鳥の姿をしたアラは、別の精霊イリクとともに、果てしない大洋の上を漂っていたという。二羽の鳥は、二つの巨大な卵を海から拾い上げた。その一つからアラが空を創り、イリクが大地を創った。だが空に対して大地があまりにも大きくなりすぎたため、二人の精霊は大地をぎゅっと押し縮めた。こうして山や谷、川や池が生じた。やがて植物が現れた頃、彼らは人間を作る事にした。最初は樹液から作ろうとしたがうまくいかなかったので土を用いることにした。最初に人間達の形をこしらえると、精霊たちは自ら鳥の唄をさえずって、彼らに命を授けた。

アラー
Allah
 元々はイスラム教以前にアラビア半島で信仰されていた神。唯一神ではなかったが最高神であった。他の神々とともに天に住んでおり、地球を創造しその上に水を分け与えた。イスラム教以前のアラビアではアニミズムが信じられていたが、預言者ムハンマドはアラーが唯一の神にして全面的服従が必要であり、他の神を崇拝することは冒涜であると宣言した。至高にして超越的であり、あらゆる生物を創りあらゆる自然を支配し、恵みを与え、最後に人間を裁く者だとされる。アラー自身とアラーの被創造物はまったく異なったものなので、アラーを偶像化することは禁止されている。イスラム教の聖典コーランでは99個の名前が与えられているが、100番目のもっとも偉大な名前は人間には明かされていない。

アラット
Allat
アル=ラート

荒吐神
あらばきがみ
 別名「荒覇吐神(あらはばきのかみ)」。関東以東、東北以南の土着民に信じられていた古代の神。邪馬台国の王、長脛彦(ながすねひこ)とその兄、安日彦(あびひこ)とが、神武天皇に滅ばされることなく津軽(青森県西部)に亡命し、先住民とともに結成した「荒吐族」で祀られていた神とされている。が、戦後になって初めて公開された偽史文書「東日流(つがる)外三郡史」によれば、荒吐神は日本全土に影響力を持っていた神であり、荒吐族との戦い勝利した朝廷によって戎神(未開の地の神の意)に貶められ記紀に名を連ねる諸神の社の門前を守る門前客神にまで降格されたのだという。また、青森県で発見された有名な遮光器土偶は荒吐神の姿をかたどったものだとする説もある。

アリナック
Alinnaq
 イヌイットの伝承における「月の男」。密かに実姉に恋焦がれていたアリナックはある晩姉のベッドに忍び込み姉と交わってしまう。相手の正体を知ったアリナックの姉は自分の乳房を切り落とし、弟にそれを食べるように迫り、松明を手に闇の中に逃げていった。アリナックも同じように松明をもって姉を追いかけたが、雪の上で転んだせいで松明の明かりはほとんど消えてしまった。やがて二人は天空に舞い上がり太陽と月になった。アリナックはいまだに姉を追いかけており、日食はアリナックが姉に追いついた証だとされる。
 西部北極地方の部族、特にテキガク族、アヌピアック族といったアラスカの人々の間ではアリナックは主要な神とされ、北極地方中部・東部で動物達の女主人とされるセドナに代わってアリナックがその支配者だと考えられる。クジラやアザラシなどの入った巨大なたらいを持っており、イグルー(氷のブロックの家)の内壁にそってカリブーの群れを走らせている。ただし、シャーマンたちは食糧不足の際にはアリナック本人に立ち向かわなければならない。

アリンナ
Arinna
 ヒッタイトの守護女神。もともとはヒッタイトの町の名前であり、女神はアリニッドゥ(アリンナの太陽)と呼ばれていた。天と地を司るアリンナはヒッタイト王国全体で最高の守護神となり、敵から国を護り、戦いの時には国を助ける役割を担うようになった。アリンナのシンボルは日輪であり、フリ人の女神ヘパトと同じ神と考えられていた。どちらも気象の神テシュブの妻となったといわれている。 

アル=ウッザ
Al-Uzza
 イスラム教以前のアラビアの女神。「エロッザ(エル=オッザ)」とも呼ばれる。またアラビア北部では「ハン=ウッザイ」と呼ぶ。アラビア中央部のベドゥインの諸部族の間では最高神アラーの末娘と考えられていた。黒い石が御神体として崇拝され、その表面には「アフロディテの押し跡」と称される印や凹みがああった。アル=ウッザは木の中に住んでいるといわれており、空けの明星が彼女だといわれることもあった。アル=ウッザへの崇拝には生贄が必要であり、人間の生贄も捧げられていたことが明らかになっている。
 預言者ムハンマドが属していた部族は特にアル=ウッザを崇拝していて、ムハンマド自身もイスラムの聖なる黒石を、メッカの神殿カーバに安置したといわれている。アル=ウッザの崇拝は女性の神官によって行われ、イスラム教の時代になってもこのようなカーバに仕える神官たちは「おばあさん(アル=ウッザのこと)の子」と呼ばれつづけた。イスラム教の聖典コーランでは、アル=ウッザは「その名は、汝や汝の父祖の呼びなせるものにあらず。ただ憶測と、女神たちの欲するとことに従えるのみ」と述べられている。

アル=ラート
Al-Lat
 イスラム教以前にアラビアの北部・中央部で崇拝された女神。「アラット」とも呼ばれる。アル=ラート信仰は特にメッカ近郊のタイフで盛んであった。タイフでは白い花崗岩がアル=ラートの御神体とされた。信者、特に女性達はこの石の周りをめぐって、アル=ラートを崇めた。おそらく大母神であったと思われる。アル=ラートは大地を表し、最高神アラーの三人娘の一人を言われていた。また、太陽、月、金星とも関係があるともいわれていた。

アロム
Alom
 マヤ神話において創世の時にのみその名が記される、母なる者、子を生み出す神。創世の神々の一柱。クアホロムと対となる存在。

アン
An
 シュメール神話における天の化身であり、エンリルの父神。バビロニア神話ではアヌと呼ばれた。次々と王座につく神が世襲制で代わっていくシュメール神話において最初の神々の王を務めたアヌであるが、マルドゥークアッシュルといった活動的で強力な神が登場するに至って、その勢力は大幅に衰退する。創造神であり、星を象徴する天の神であり、王権を保証するという重要な神であるにも関わらず、神々の権力競争に負け、エンリルに王座を譲ったという経歴があるためか、あまり積極的に信仰されたという記録は残されていない。

アンゲローナ
Angerona
 ローマの女神の一人。彼女を祀る祭礼が12月21日にある。

アンジェア
Anjea
 オーストラリア北西部、クイーンズランド地域に住むアボリジニーたちが信じる精霊の一種。妊娠している女性の子宮に泥の赤ん坊として住むという。子供が生まれた女性の母(子の祖母)は後産(胎児を分娩した後、排出された胎盤)を「アンジェアが集めたもの」として隠し、新たな子が宿るまで木の虚などの聖なる場所に保存する。

アンシーリーコート
Unseelie Court
 イギリスのスコットランド地方に棲む悪い妖精達の総称。小妖精のヤレリー・ブラウン、ドゥアガー、小鳥のスターリングなど色々な種類がいる。根がひねくれ者の妖精達なので、いくら親切にされてもその恩に報いようなどとは決して思わない。

アンタボガ
Antaboga
 バリ島神話における宇宙蛇。宇宙の最初に存在していたのはアンタボガだけで、この巨大な蛇は瞑想によって宇宙蛇ベダワンを創り出した。

アンドラス
Andras
 ユダヤの魔神で、「不和の侯爵」と称される。オオガラス(或いはカラス)の頭をした天使の姿をしている。頑強な狼にまたがり、右手に燃える剣を持ち、常に破壊的な言動をする。人々を不和に導きその状況を楽しむという。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人。

アンドレアルフース
Andrealphus
 ユダヤの魔神で、「美貌候」と称される。美しく大きな孔雀の姿をしているが、人間の姿で現われることもある。数学、幾何学、天文学に関する知識を教授してくれる。人間のいけにえがあれば、人間を鳥の姿に変えて、空を飛べるようにもしてくれる。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人。

アンドロマリウス
Andromalius
 ユダヤの魔神で、「正義の伯爵」と称される。片手に蛇を巻きつけた男の姿をしていて、盗まれた品物を取り返してくれたり、犯人の正体を教えてくれたりする。また、秘密の取引や財宝の隠し場所を知る能力を持っている。ソロモン王に封印された72柱の魔神の一人。

アンナ・ペレンナ
Anna Perenna
 ローマの女神の一人。彼女を祭礼は無礼講で、卑猥な歌などを大声で歌う。

アンバイ
Anbay
 イスラム教以前のアラビア半島南部の神。「正義の神」として知られていた。自分のより下位の神である月神アムに託宣を垂れるということで有名。

アンプク
 
 フィリピンのパラワン島の先住民族の神。まだ人間が地上におらず、天上に住んでいた頃、人間がアンプクに地上に降りてみたいと願い出た。アンプクは地上での生活は辛いから早く戻ってくるように、と警告しつつ、ディワタの元へと人間たちを送り出した。アンプクによって最初に作り出されたシャーマンであるディワタも、人間達が地上に行くことをとめたが、結局人間達は無理やり地上へと降りてしまった。地上はアンプクやディワタが言ったとおり、ひどいところで、悪霊や蠍や蛇だらけだったが、それでも人間達は天上に帰ることを拒んだ。それ以後人間はすべての悪事を我慢し、死ぬことも受け入れなくてはならなくなった。

アンマ
Anma
 西アフリカのドゴン族における創造神。ノンモユルグの父。アフリカでは創造神=天空神という図式は普遍的なものであり、アンマも大いなる空を支配する神である。アンマは二つの白い壷を造り、一方には赤銅を螺旋状に巻いて太陽とし、一方には白銅を螺旋状に巻いて月とした。次に虚空に土を投げてそれを星々にした。天空を創造したアンマは次にやはり土を使って大地を創造した。大地は女性であり、白蟻の巣が彼女の子宮で、黒蟻の蟻塚が彼女の陰核となった。アンマは自分が男だと主張する大地から蟻塚を切除(つまり割礼)して大地と交わった。そして生まれたのがユルグ(狐)だったが、ユルグは不完全だった。再び交わって生まれたのが理想的な存在、大精霊ノンモで、アンマはノンモに世界創造の完了をゆだねて自分は天の奥に退き、人間との接触を絶つ。

アンラ・マンユ
Angra Mainyu
 ゾロアスター教において、最高の神アフラ・マズダに敵対する最高の悪魔。「アーリマン(Ahriman)」とも言う。この世が始まる前の戦いで善神に敗れ、北方にある無限の深淵の暗闇に落とされたが、徐々に勢力を回復し、様々な悪をこの世にもたらすとされる。決まった姿があるわけではなく、出現する時はヘビ、カエル、トカゲなどの魔性の生き物の姿をとる。悪竜アジ・ダハーカ、大魔アエシュマ、地獄の悪魔ダエーワなど、全ての悪を配下に治めていた。