エジプトにおける邪神。ワニの姿、或いはワニの頭を持つ男性の姿で描かれる。母は
ネイト神、父はセヌイ神(神牛メテイエルを母とする記録もある)。早くから
レーと結びつき、「セベク・ラー」として信仰された。この場合のセベクは光の神で、豊穣をもたらす神でもあった。だが、本来はその姿が示すように恐怖をもたらす神で、陰険で貪欲な捕食者としてのワニを象徴とするセベクは、大悪人として描かれることも多い。実際、「ワニの上の
ホルス」とか、「ホルスの石柱」といった図が残されている。しかし、ワニの用心深さや力強さ、執念深さ、突然の攻撃といった属性は、王として持つべき利点でもある。そのためセベクは王の守護者としても知られている。またエジプト人にとって、水辺に棲むものはよい運勢をもたらす神秘の力を持った生き物であり、この為、セベクは洪水を支配する力を持つとされる(エジプトの洪水は肥沃な土壌をもたらし農業には欠かせない)。