草鞋大王 そうあいだいおう
Cǎo-xié dà-wáng
中国道教において草鞋、つまりわらじを司る旅人の守護神。ある旅人が草鞋を履き替えるとき、古いほうを目の前にあった古木の枝にかけた。これを他の旅人も次々と真似したので、街道のそばにあったその古木には沢山の古い草鞋が枝にかけられた。やがてその古木は占いで効験があるとされ、またある旅人によって「草鞋大王ここに降る」の木の幹に字が彫られた。これを受けて、昔その古木の辺りに住んでいた親切な兵士の霊が神の命よって草鞋大王となり、古木に宿った。
造化の三神
ぞうかのさんしん
日本記紀神話において、また神道思想上で万物生成化育の根元神とする三神。世界の始まりにおいて現れた天御中主神の中心とする三柱の神で、
別天神の始めの三神にあたる。
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│天御中主神││高皇産霊神││神皇産霊神│
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藻居 そうきょ
Zăo-jū
中国における水と木の精霊の一人。身長が20cmもない小さな老人の姿で、夏は森林に棲み、冬は川に棲むという。あるとき、この藻居が漢の武帝の前に出現し、何も言わずに天井と床を指差して消えたことがあった。賢者と名高い東方朔は、、これは宮殿建設の為に精霊の住む林を伐採するのを止めるように頼みにきたのだと解説した。皇帝はこの意見を聞いて宮殿建設を中止したが、その直後に瓠子河を行幸すると、精霊たちが出現し、楽器を演奏し、歌を歌って返礼したと言う。
竈君 そうくん
Zaojun
中国道教における竈の神。少なくとも紀元前2世紀にはすでに信仰されており、また現在でも中国を始めとする東南アジアの広い地域で信仰されている。竈君の神像は台所にかまどの上に掲げられるいて、新年には「糖餅(タンピン)」と呼ばれる砂糖菓子や肉、果物、酒が捧げられ、唇には麦芽飴が塗られる。麦芽飴を塗るのは、竈君が竈の神であるという以上に
玉皇大帝にそれぞれの家の家族一人一人の行いを報告する神として重要視されているためであり、つまり報告の時に竈君に「甘く」述べてもらえるだろう、という俗信からきている。竈君の神像は新年になる度に焼かれるが、これは竈君は天に昇るのを助けるためである。
ある伝承によれば、竈君は元々「張郎」という男だった。自分の妻を捨て若い女に走ったひどい男だったが、すぐに女には逃げられてしまい、しかも眼まで見えなくなってしまった。乞食になるしかなかった彼は家々を回っては物乞いしていた。そのうち、彼はそれとは気づかず昔に妻だった女性の家で物乞いをし、妻は彼の大好物を食べさせてやった。これが手がかりとなって彼は赤の他人だとばかり思っていた相手が昔の妻だと気づき、妻に自分の身の上を打ち明けた。すると妻に眼を開けるように彼に言った。彼がその言葉に従うと、目はまた見えるようになっていた。しかし、彼は過去の自分の振舞いをあまりにも恥ずかしく思い、炉に飛び込んで焼け死んだ。昔妻だった女性はかろうじて、男の足だけを救い出すことが出来た。こうして火掻き棒のことを「張郎(
螂=ゴキブリ)の足」と呼ぶようになったと言う(張郎もゴキブリもZhan langと発音する)。
蒼頡 そうけつ
Cāng-xié
中国における学問神の一。木や石に書くような古代の文字を初めて発明した神で、文字を作った神という意味で「制字先師」と呼ばれる。
黄帝の記録官であり、鳥獣の足跡の細かい筋目が異なるのをみて文字を発明したといわれる。天子のような立派な顔つきであり、目が四つあり、生まれたときから書に優れていたとする伝承もある。その鋭い四つの目は見るもの全ての特徴をつかみことごとくそれを文字へと変えた。蒼頡が文字を発明したとき、天は喜んで粟を降らせ文字によって迷信が破られることを恐れた鬼は夜泣きし、龍は水中に逃げたとされる。文字を書いた紙を粗末に扱った者は
文昌帝君や蒼頡の神罰を受けると信じられた。
叢原火
そうげんび
炎の中に坊主の顔が浮かんで見える
鬼火の一種。鳥山石燕の「画図百鬼夜行」ではm京都の壬生寺のほとりに出現するもので、俗に「宗源火」とも書くとしている。この宗源は元は僧であったが、壬生寺の賽銭や灯明の油を盗んでいたので、死んだあとに自分の顔が炎に浮かんだ叢原火という鬼火になったのだといわれている。死んで怪火になることはよくあり、「古今百物語評判」では比叡山中堂の油を盗んでいた僧侶が叢原火そっくりの鬼火になった話がある。
送子娘娘 そうしにゃんにゃん
Sòng-zľ niáng-niáng
中国道教で、子供を産む際にあらゆる災厄から護ってくれるという娘娘神のうちの一人。送子娘娘は
子孫娘娘の後を引き継ぎ、選定された子供が無事送り届けられるように胎児の安全を護る。(参考:
乳母娘娘)
"創造者にしてそれを変える者"
ネイティブアメリカンのスノホミシュ族に伝えられる創造神。「創造者にしてそれを変える者」は、最初は東の土地に世界をつくり、徐々に西へと進んだ。沢山の言語を携え、それを創造した部族にごとに与えていった。ピュージェット湾(アメリカ西海岸最北部のシアトル市)に来るとその場所が気に入り、そこにとどまることにした。しかし、まだ言語は沢山あったので、「創造者にしてそれを変える者」はその周辺に残りの言語をばら撒いた。このためピュージェット湾周辺では今でも多数のインディアン言語が存在するのだという。「創造者にしてそれを変える者」が作った世界には欠陥があり、それは背の高いものなら天に頭がついてしまうほど空が低いことだった。このため禁を侵し木に登って天界にいこうとする者もいた。そこで人間を始めとする動物たちはいっせいに空を持ち上げようと決めたが、みんな言語が違うので意思が疎通できない。ある者が、「どの部族でも持ち上げる時の掛け声は『ヤホー』と言うことに決めよう」と言った。こうして空は高くなった。
相柳 そうりゅう
Xiàng-liŭ
中国神話の中で、伝説上の帝王、尭が天帝だった時代に地上を荒らし回ったとされる九頭の巨大な蛇。地理書「山海経」では9個の人間の頭を持つとされる。個の怪物は英雄の禹が地上の洪水を治めたあとに出現し、9個の頭であらゆるものを食い尽くした。しかも相柳が進んだあとは毒のある水が溢れた沼沢地と変わり、どんな生き物も住めなくなったという。禹は人々のためにこの怪物を退治したが、怪物の血が流れた土地には何も育たず、人も住むことが出来なかったという。
ソカリス
Sekar
エジプトにおける葬送神。通常の人間の姿か、或いは隼の頭を持った男性の姿で描かれる。頭上には牡牛の角の上にアテフ冠をつけている。葬祭の神であり、地下世界(ケトニアン)の神でもある。この為冥界神
オシリスと同一視されることも多い。その役割は死者の保護であり、特に死んだ王に清めをする「開口」の儀式を行って、再び五感が働くようにしてくれる。古い神であるため親が誰なのかなどの素性ははっきりせず、本来伴侶もいなかったが、後にソカレトというソカリスの女性形を伴侶とするようになった。また新王国以降になるとオシリスの妹
ネフティスが妻とされるようになった。ソカリスの信仰の中心はメンフィスのネクロポリス(墓地)であるロ=セタウなので、「ロ=セタウの住人」と呼ばれることもある。このためメンフィスの名工の神である
プターと同一視されることもあった。地下世界にあるソカリスの領域では
ネヘブカウが待ち構えており、罪を宣告された人の魂を貪り食っている。そこは砂漠のような不毛の土地で洞窟があるという。
息壌 そくじょう
Xī-răng
中国神話の中で天帝に至宝の一つとして秘密の場所に隠されていたという、絶えず増殖しつづける土の怪物。天帝が尭だった時代に22年間にもわたる大洪水が地上を襲ったことがあった。この時治水を命じられた鯀(こん)という神がこの息壌を盗んで洪水を治めようとした。盗んだ量はごくわずかだが、息壌はどんどん増えて巨大な堤防となり、治水工事は成功かと思えた。しかし盗みを知った尭は鯀を殺し、この為に工事は失敗したという。
ソスピタ
Sospita
ローマにおいて三大主神格である
ユノの数ある別称のひとつ。救済の女神としてのユノをあらわす。
袖引き小僧
そでひきこぞう
埼玉県の川越市付近に出現するとされる臆病神の一種。姿はわからない。夕方日が傾きかけた道を一人で歩いていると不意に後から誰かが袖を引いて来る。誰もいないので、みな最初は気のせいかと思う。ところが歩き出すとまた誰かがまた誰かが袖を引いてくるので、振り返ってみるがやはり誰もいない。こんなことが何度もあって、何度も振り返ってみても誰もいないので、そのうち恐ろしくなってみな走って逃げ出してしまう。これは袖引き小僧の仕業だという。
ソーマ
Soma
Somaは「搾る」という意味の動詞に由来し、もとは特殊な植物の名(蘇摩)であったものが、この植物から作った新酒もソーマと呼ばれ、ベーダ祭祀の最も主要な供物であり、やがてこれが神格化された。神酒であるソーマはおそらく灌木の木を圧搾浄化して造った芳香のある黄褐色の液体であったらしい。植物の長としてその光輝をたたえられ、太陽はソーマの顕現と称される。地上の祭場におけるソーマ圧搾浄化の儀式はそのまま天上の宇宙現象を象徴し、浄化の過程で木槽に点滴となって落ちるソーマの滴りは降雨、液の流れる音は雷の響きである。このような象徴的儀式としてのソーマ祭は後世の祭式文献においてきわめて重要な祭祀とされ、その次第の細則が規定されている。ソーマの賛歌は「リグ・ベーダ」の第9巻を独占している。ブラーフマナおよびその以後の神話では月神チャンドラと同一視されるようになった。
ソムヌス
Somnus
ローマにおける眠りの神。ギリシアのヒュプノスに相当する。
ソラヌス
Soranus
ローマ北方で崇拝されていた神で、
アポロと同一視された。狼の崇拝と関連があるとされる。
ソル
Sol
ローマにおける太陽神。ギリシアのヘリオスに相当する。8月9日、12月11日に祭礼がある。
ソール
Sól
北欧神話における女神で、太陽の馭者であり、ときに太陽そのものと同一視される。神族の出身であるかは疑わしいが、神話においては女神の一柱として名を連ねている。天体の運行が人格化されたムンディルファリという男の娘で、マーニという名前の兄がいる。二人は美しかったのでそれぞれマーニ(月)、ソール(太陽)と名づけられた。神々はムンディンファリの傲慢さを怒り、二人をさらって本物の月と太陽を引く車の馭者をやらせた。終末ではスコールとハティという狼の魔物に月と太陽ごと飲み込まれるという。
ソロネ
Throne
カトリックにおける天使の階級である9階級のうち、第3位の天使のこと。日本では「座天使」と呼ばれる。
ゾンビ
Soma
西インド諸島において、ヴードゥー教の呪術師が、魔術的な方法で蘇らせた死体のこと。重罪を犯した人間は刑罰としてゾンビにされ、無償で農場などで働かされる。呪術師の支配下にあるので口は利けずまた意識も持たないし、痛みも感じない。昼は墓の中にいて働くのは夜だが、暗闇でもものが見えるという。真相は呪術師が薬などを用いて半仮死状態、あるいは催眠状態にしていると思われる。