オアンネス
Oannes
 バビロニアに伝わる魚人族。背面はほぼ魚の形だが、エラの部分からは顔が、胸ビレのあたりからは腕が、尾びれのあたりからは脚がつきでた、腹から開いた魚をかぶさった人間のような姿をしている。ペルシア湾より姿をあらわし、昼間は陸にとどまってシュメール人に文字、建築法、法律、灌漑事業、美術、陶芸といったあらゆる知恵をたった7日授け、夜には海の底に帰っていったという。

置いてけ堀
おいてけぼり
 江戸本所(現・東京都墨田区)の七不思議に数えられた、怪異現象の一つ。池の名前でもある。この池で釣をすると、水中から「置いてけ、置いてけ」と呼ぶ声がし、魚を全部返すまでこの声がやまないという。これを無視すると思わぬ事故にあったり、帰り道で迷わされたりしたという。埼玉県川越地方にも似た例がある。この怪異現象から、後に残るものを見捨てて、立ち去ることを「置いてけぼり」というようになった。

オイナカムイ
 
 アイヌ民族においてアイヌ(人間)に狩猟やカムイへの崇拝の方法などの文化を教えたカムイ。オキクと同一視される。

オヴィンニク
Ovinnik
 スラヴの国々において、穀物倉に住んでいるとされる精霊、神霊の一種。全身毛むくじゃらの黒い猫、或いはイギリスに伝わるヘル・ハウンドにそっくりの恐ろしい犬の姿をしている。吠えると犬のようで目は燃えるように赤く輝く。性格は悪く、穀物倉の住人であるにもかかわらず倉に火をつけて燃やしたりする。

大国主神
おおくにぬしのかみ
 日本記紀神話の神。素戔嗚神奇稲田姫神との息子、或いは6世、7世の孫とも言われる。大己貴神(おおなむちのかみ)、大物主神(おおものぬしのかみ)、葦原醜男神(あしはらしこおのかみ)、八千戈神(やちほこのかみ)など多くの異称がある。天照大御神を天津神の総元締とするならば、大国主神は国津神の総元締と言える。須勢理毘売神や、田心姫神や沼河姫神、神屋楯姫神、八上姫神といった多くの女神と結婚し、その子供の数は181人を数えるという。
 おそらく記紀成立以前は、農耕民が崇拝する自然神だったが、多くの結婚と多くの別名が示す通り、各地で信仰されていた様々な神の神徳を吸収した存在であると思われる。少彦名神とともに国土の開発、経営にあたり、農業、畜産を興して医療・禁厭(まじない)の法を定めた。天孫降臨に際し、国を譲って隠退。
 民間では大黒天と結びついた福の神、縁結びの神として信仰されるが、これは「大国」が「ダイコク」ともよめる事からの習合だと思われる。また因幡の白兎の話でも知られる。神徳としては艶福家であるということから縁結び、子授、夫婦和合、また国造りをした神として五穀豊穣、養蚕守護、商売繁盛など多岐にわたる。

大年神
おおとしのかみ
 日本神話における歳徳神の一人。素戔嗚神の子で(母親は神大市姫神)、香用比売神の夫で御年神の父親。日本の代表的な穀物の守護神であり、「年」は「稔(穣)」に通じ、稲の豊かな実りを司る。

大己貴神
おおなむちのかみ
大国主神

大日
おおひるめのむち 霎(ショウ):Unicode970E
天照大御神

大物主神
おおものぬしのかみ
大国主神

大山咋神
おおやまくいのかみ
日本記紀神話において、大年神(おおとしのかみ)の子。賀茂別雷神の父。

オキク
 
 アイヌの神謡において火や数多くの道具、そしてカムイたちとの交流において大切とされるイナウ(御幣)などを伝えたとされる文化英雄神的カムイ。普通カムイは、カムイモシ(カムイの世界)においては普通の人間と同じ姿で生活し、アイヌモシ(人間界)においては動物や植物・道具といった姿(衣装)を身に付け、顕現体としての姿になるが、オキクミはアイヌモシにおいても人間の姿で行動する。「アイヌラック」という名前で謡われる時もあるが、アイヌラックは元々別のカムイであったものが同一化されたものらしく、両者では出自も異なる。アイヌ人は明確に統一された神話を持たなかったため、オキクミは神話にいたるところに様々な性格で登場する。

オグマ
Oguma
 島のケルトにおいて、大陸のケルト神話のオグミオスに相当する、知識と文学の神。

オグミオス
Ogumios
 2世紀頃のガリア人に崇拝された神で、雄弁或いは文明創造の神だとされている。古代ケルト民族の文字である「オルガム文字」はオグミオスの名前から取られたもの。ライオンの毛皮をかぶり、弓と棍棒をもった老人の姿で描かれる。大勢の捕虜を従えていて、彼らの耳と自分の口を黄金の鎖で縛り、それを引っ張って歩いている。彼の頭は常に捕虜の方に向けられているが、そのしわだらけの顔は微笑みを称えている。これはオグミオスの弁説の言葉の持つ力によって人々を従えていることを意味している。ガリア人の間では「雄弁」つまり話が上手いことが美徳として尊ばれており、オグミオスはこうした彼らの特質から産まれたものだと考えられる。ローマ人はオグミオスをギリシアの英雄ヘラクレスと同一視した。

オグン
Ogun
 アフリカにおける文化英雄神。ナイジェリアのヨルバ族をはじめとして、遠くカリブのハイチまでの広範囲で信仰されている(ハイチのヴードゥー教では「Ogoun」と発音する)。火と金属の神であり、戦士の神であり、また酩酊の神、文化の神でもある。オグンは古い神々の一人であり、大地がまだ固まらずに水浸しだった時代に、至高神オロルンに命じられて地上の人々の生活を助けるために大地に降臨した。青銅しか知らなかった人たちに鉄器の作り方を教え、畑と町を築くために密林を切り開いてやった。そうして各地を回って人々に文化を伝えていたオグンは、あるときイレという町で盛大に歓迎を受け王になるように人々に懇願された。しかしオグンはこれを断り、山にこもって狩猟と農耕にいそしんだ。しかしイレの長老らの度重なる懇願に根負けし、後にイレの王となった。彼は国をよく治め、外国との戦争に勝ちつづけた。しかしあるとき、戦いのさなかにのどが渇いたオグンは、トリックスターエシュ神のヤシ酒を飲み干して酔い、敵味方問わずの大虐殺を犯してしまう。これに恥じたオグンは天空へと戻っていった。

白粉婆
おしろいばばあ
 顔いっぱいに白粉(おしろい)を塗りたくっている老女の妖怪。白粉の塗り方が乱雑な上に厚いので、夜中に出会うと見るだけで恐ろしいとされる。鳥山石燕の「今昔百鬼拾遺」では白粉婆は白粉の神である脂粉仙女に仕えている侍女だと説明されていて、破れ笠をかぶって右手に杖を付き、左手に酒徳利を持って雪の中を歩く、腰の曲がった老女として描かれている。

オズ
Óðr
 北欧神話における放浪神。ヴァン神族の女神フレイヤの夫だが、しばしば長い旅にでて、ある時から妻であるフレイヤのもとに帰らなくなったという。神話中では名前だけが記され物語に登場することはない。フレイヤはオズを探して多くの国を放浪したが、二度と会うことは出来なかった。オズがどの種族に属する神かは語られておらず、またフレイヤを見捨てた理由もわからない。ただ、名前がオーディンを酷似しており、また旅を好む部分にも共通点があるために、神話が伝承されるときに発生した混乱から生じた存在であるという説もある。フレイヤはオーディンの妻であるフリッグと混同されることが多く、この二柱の女神は古代北欧で信仰されていたオーディンを夫とする同一の女神を起源にするとも言われている。神話を伝承した詩人たちが、フレイヤとフリッグを明確に区別にしようとしたときにフレイヤの夫としてのオーディンの名残りがオズを起源なのかもしれない。オズはフレイヤとの間にフノッスという名前の娘をもうけている。

オセ
Ose, Voso
 ユダヤにおける魔神でソロモン王に封印された72中の魔神の一人。「豹総統」と称される。大きく優美な豹の姿をしていて、深紅の斑が入った緑の目をしている。人を望む姿に変える力をもっており、人を幻覚によって惑わしたり、発狂させたり、隠された秘密や品物を見つけ出す力がある。ただし凶暴で呪文によって従属させないと食い殺される危険性がある。

オチルヴァニ
Otshirvani
 シベリアの神話における光の神。インドの雷神インドラを原型とするとする説もある。世界中を毒で覆い、口から毒を吐いてすべての生き物を殺した大蛇ロジ(ロースン)と戦うため、最高神によって派遣されたオチルヴァニは、大きな鳥の姿となって爪でロジをつかみ、世界山に投げ落として殺したという。また中央アジアの伝承では、オチルヴァニは大地を創った造物主として登場する。

オト
Ot
 モンゴルにおける炎の女王ないし「火母」。空と大地が分かれて世界が誕生したときに生まれたとされる。結婚式にはオトに祝う慣習があり、その光輝はあらゆる王国に浸透するとされる。もともとシベリアのチュルク族の地母神ウマイと同一の神であったと思われる。

おとろし
 
 日本の神社に住まう妖怪。「恐ろしい」の事を関西地方では昔「おとろしい」と言ったので、語源はそこにあると思われる。神社のどこかに隠れていて、落書きなどをする輩を見つけると、屋根の上や鳥居の上から落ちてきて懲らしめる。そのまま襟首をつかんでつるし上げる事もあるとも。獅子舞の獅子にぼうぼうの長い髪を生やした頭に鉤爪が三本くっついた姿をしているという。

おに
 日本の妖怪の一種、或いは別種の怪物、あるいは邪神とされているもので、一般的に頭に牛の角をいただき、腰に虎の皮をまとっている。もともと発音的には「隠」が訛って伝わったものとされ、そのルーツは中国の「鬼(キ)」なのは明らかだが、意味的には仏教思想に現われる羅刹や夜叉のなどの悪神や、日本古来の邪神などが複雑に関係しあったものだと思われる。

お歯黒べったり
おはぐろべったり
 日本の妖怪の一種で、のっぺら坊のように目も鼻もなく、大きな口だけあって、真っ黒に染めたお歯黒の歯を剥き出しにしてにやりと笑う女の妖怪。着物を着ていて、人通りの少ない夜に顔を隠すように道の脇にたっているが、そこを通りかかった人がどうしたのだろうと思って親切心から声をかけると、お歯黒べったりは目鼻のない顔で振り返り、真っ黒な歯を見せてニタニタと笑い驚かす。

オプス
Ops;
 ローマ神話における豊穣と収穫の女神、ギリシア神話でクロノスの妻とされるレアと同一視され、その関係上サトゥルヌスの妻だと考えられるようになった。

オボハヅ
 
 パラオの創世神話に見える女神。人間の祖と称される(「ハヅ」は「人間」の意)。ラッツムギカイから生まれ、独り身にして女神ツランを産んだ。蟲魚草木を生じ、人間にハラマル樹をすって火を起こすことも教えたという。そのためか竈神(かまどがみ)として最近まで信仰されていた。

朧車
おぼろぐるま
 日本で平安時代に夜の都大路に現れたという妖怪。牛車の形をしているが牛が引いておらず、前面の本来簾がかかっている場所には巨大な夜叉のような顔がついている。全体に半透明になっていてはっきりとした存在感は無い。月がかすんでいるような朧月夜に出現し、都大路をギシギシと音を立てて走り回るという

オーマ
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オメシワトル
Omecíhuatl
 シラトリクエ、シラトリニクエ、トナカシワトル等の呼称も持つ。オメテクートリの女性配偶神であると共に、両性具有的な二元性の神オメテオトルの女性的側面を表す、概念的な神。メソアメリカ中央部の初期の創造神。

オメテオトル
Ometeotl
 語義は、ナワトル語(トルテカとアステカの共通語)で「二倍の神」ないし「二重の神」。メソアメリカにおける最初の観念的な神。2つの神格を1人で体現し、しかも目に見える存在ではなく、両性具有的な二元性を表現した神格である。全ての神々の根源となる創造的なエネルギー源そのものであり、世界の様々な出来事、空や星を越えたところ、時間と空間の枠外に存在する。その場所は「オメヨカン(Omeyocan)=2つのものの場所」と呼ばれる宇宙の最高層にあたる13層目の天界であり、あらゆる二元性と対立概念────光/闇、行動/休息、動/静、音/静寂、秩序/混沌────などが存在するところである。またオメテオトルの男性的側面はオメテクートリ(シトラトナ、トナカテクートリ)、女性的側面はオメシワトル(シラトリクエ、シラトリニクエ、トナカシワトル)として表される。オメテオトルはそれらを一体化する至高の存在と考えられた。しかし、こうした「第一原理」という考え方は日常一般に行われる宗教行為には抽象的過ぎており、アステカ(おそらくそれ以前の文化)の神官達によって、宇宙の定義や占いにおいて引き合いに出される存在だったと考えられている。

オメテクートリ
Ometecuhtli
 シトラトナ、トナカテクートリ等の呼称も持つ。オメシワトルの男性配偶神であり、また両性具有神オメテオトルの男性的側面を表す。メソアメリカ中央部における初期の創造神で、遠隔地からの力と考えられていた。配偶神のオメシワトルと共にアステカの13層ある宇宙の最高層「オメヨカン(Omeyocan)=2つのものの場所」にすみ、アステカの20あるセンポワリ(暦日)の一番最初の日「シパクトリ(ワニの意)」の守護神とされた。
 オメテクートリとオメシワトルの息子達は大地の四隅、つまり四方位であり、彼らは次のように色と結びついている。北=黒=テスカトリポカ、南=青=テスカトリポカ(ないしウィツィロポチトリ)、東=赤=テスカトリポカ(ないしシペ・トテックないしカマシュトリ)、そして西=白=テスカトリポカ(ないしケツァルコアトル)。「食料の神」としてのオメテクートリであるトナカテクートリは、ケツァルコアトルとテスカトリポカが第5の太陽(今現在の太陽)の創造を手伝ったことに対する報酬として、この2神を天空と星の神にした。

オリパカムイ
 
 アイヌにおける疱瘡(天然痘)のカムイ名前は「恐れ多いカムイ」という意味。死神のようなカムイだが、畏敬の対象とはなっても悪神のように扱われることは無かった。同じく疱瘡のカムイとしてカムイというカムイがいる。

オルクス
Orcus
 ローマ神話における冥界の神。壁画などではヒゲを生やした恐ろしい巨人として描かれる。ギリシアのハデス(プルトン)に相当する。

オーレ・ルゲイエ
Ore-rugeiyu
 デンマークに存在する睡魔の一種。壮年の男の姿をしている。虹色の絹の上着を着て、足音を立てないように靴下だけを履いて、眠っている子供のそばに近づくという。その子が良い子であれば片手に持った楽しそうな絵が描いてある傘を広げ、子供の上にかざして、心がウキウキするような楽しい夢をプレゼントする。しかし悪い子であれば別の手に持った何も描かれていない退屈な傘を広げ、何も起こることのない退屈な眠りだけを与えるという。

オルマズド
Ohrmazd
アフラ・マズダ

オンネチカムイ
 
 アイヌにおいて舟を顕現体とする女性のカムイ。単に「チカムイ」と呼ばれることもある。舟の利便性に対する敬意から生まれたカムイだと考えられる。

陰摩羅鬼
おんもらき
 寺に棲み、怠け者を見つけると出現するとされる妖怪の一種。鳥山石燕の「今昔画図続百鬼」では「清尊録」からの引用として、鶴に似た鳥で色が黒く、目が炎のように光り、翼を震わせて甲高くなくと説明されている。だが、絵の中の陰摩羅鬼は羽を抜かれた鶏のように不恰好な姿で、口から火を吹いている。普通、怠け者の僧の前に出てくるとされるが、近所の男が寺で昼寝をしていたら出てきたという話もある。