吉羅 ジイラ
Jí-luó
中国の少数民族彝(イ)族の人々が信仰する精霊の一種。涼山彝族の人々にとって精霊とは、自然の中の石や棒などに宿っているものだが、このような精霊各家の中にある祖先の遺品や家畜などに宿ると、吉羅といわれる特別な精霊になる。吉羅は幸運を呼び、その家を守護するようになるという。したがってそれぞれの家で吉羅の宿っているものは違う。ある家では古びた鋤が吉羅であり、ある家では一頭の馬が吉羅とされたりする。宿るものが違うと吉羅は別々の力を帯びる。ある家の吉羅は争いごとを避けるのに役立ち、ある家の吉羅が農作の生産を促進する。また吉羅はあくまでもついているその家の守護精霊なので、他の家にとっては害になる場合もある。そのため彝族の人々はみな自分の家の吉羅を崇拝し、必要なときには祈りを捧げる。
シヴァ
Siva
ヒンズー教、インド神話における主神格のひとつ。サンスクリット語でめでたい、吉祥の意。「リグ・ベーダ」に単数、ときに複数で現れる
ルドラ神が、民間信仰と混合し、ヒンズー教の最高神に発展したものとみられる。神話ではヒマラヤ山中に住んで苦行している。4面3眼で頭に三日月をいただき、頭上に天から降下したガンジス川を受け、白い雄牛に乗る。獣の主として象皮をまとい、大蛇を帯とし、槍、弓、三叉の矛、斧を武器とする。彼はダクシャが神々を招いて祭祀を催したとき、自分だけ招かれないことを怒り、祭式の庭に乗り込んでこれを破壊し、鹿となって逃亡する「祭式」を弓を手にして追跡し神々を畏怖させた。さらにシバはヒマラヤ山脈のカイラーサ山で苦行していたとき、愛の神カーマが自分を誘惑しようとしたので、怒ってその第3の目より火を発してカーマを焼き殺した。このように怒りやすい反面、神々を請いを入れ、天空地の3カ所に金銀鉄の城を築いて神々を苦しめていた悪魔を退治して安堵させ、また乳海攪拌のおりに現れた猛毒カーラクータを恐れる神々のために進んでそれを飲み干し、その結果彼はのどを焼かれのどが黒くなり、ニーラカンタ(黒いのどを有する者)の異名をとるに至った。他にもハラ、ナタラージャ、マハカーラーといった多くの別名がある。仏教に取り入られ、大自在天に帰化する。 また日本では「湿婆」と漢訳する。
シウコアトル
Xiucóatl
アステカにおける火の蛇の女神。語義は「トルコ石の蛇」。「とぐろを巻いた火」であり、
シウテクトリの配偶神でもある。善神の蛇の神である
ケツァコアトルとは対照的に、シウコアトルは火の力と乾燥と旱魃おちう危険な暴力を象徴していた。アステカの神話では、トルコ石の蛇は日の出に東から昇る太陽を正午に天頂まで運ぶ役割を担っており、実際そのような蛇が二匹、1790年にテノチティトランで発見された巨大なアステカの「カレンダーストーン」の縁を囲んでいる。どうやら「トルコ石の蛇」は
ウィツィロポチトリと
テスカトリポカの装身具の一つだったらしい。
「終わりの無い」円周の姿(いわゆる
ウロボロスのような)をとる、シウコアトルの巨大な石造彫刻は、テノチティトランないしその境界線をかたどっている。また、これらシウコアトルの郡列はテノチティトランの北方の都市テナユカにある、巨大なピラミッド基壇の北側と南側には、大きなとぐろを巻く蛇も2匹刻まれている。
シウテクトリ
Xiuhtecuhtli
メソアメリカにおける初期の神。
ウエウエテオトルと同一視される。名前はアステカの言葉で「老いた者(長老)」ないし「老いた火の神」を指す。その起源は、メキシコ盆地の先古典期(前2500年−前300年頃)文化ないし、湾岸地域にいたオルメカ人たちの、例えば
"第T神"にあると考えられている。また、オトミ族(メキシコ盆地の北方から西方の地域にすむチチメカ紀元の人々)の間では
オトンテクートリないし
ショコトルと呼ばれていた。
通常老人の姿で登場し、しわ深い皮膚や歯の無い口を持ち、香炉を頭上に載せている。またアステカのセンポワリ(暦日)の9番目であるアトル(水)の守護神であり、「昼の神々」
トナルテウクティンと「夜の神々」
ヨワルテウクティンの一番目でもある。アステカの18ある歴月(ベインテーナ)の最初の月「イスカリ(復活の意)」に祀られるのはシウテクトリである。数字の「3」と関連し、メソアメリカの伝統的な日常具である火鉢石の象徴でもある。配偶神は火の蛇
シウコアトルである。
シウテクトリはまた、古くから世界に存在する巨大な柱だとも考えられていた。その火は、ミクトラン(「我々の下にある場所」=自然死したものが行く地下世界の国)から始まり、蛇の女神
コアトリクェの国と地上のあらゆる炉火を経て、トパン(「我々の上にあるもの」=神々の住む天界、ミクトラン(地下)、トラルティクパク(地上)に対応するところの天上のこと)にまで至ったという。全ての家々の火が消され、新しい火が灯されるトシウモルピリア(「年を束ねる」の意。現在の太陽の存続を保証するための盛大な再生儀式で52年ごとに行われる)を統括したのは他でもないシウテクトリであり、大地に吸収された死者の魂を助けたのも、この神であったとされる。
ジェー
Jahi
ゾロアスター教における女悪魔。古くは「ジャヒー」と呼ばれ、「性悪女」ほどの意味だったが、ササン朝ペルシア時代に入り、「悪神
アンラ・マンユのつくった中で最強の存在」とまで呼ばれるようになった。
善神
アフダ・マズダはこの世界を創るとき、邪魔になるであろうアンラ・マンユを呪文で縛り上げてその隙に世界を創った。呪文が解けて世界を見たアンラ・マンユは、アフラ・マズダの創ったものの一つである人間を見て急に気落ちしてしまった。というものの人間がたいそう良く出来た種族だったからである。アンラ・マンユの配下の悪魔達は言葉巧みにアンラ・マンユを慰めようとしたが、彼は落ち込んだままだった。ただ、女悪魔ジェーだけは最後にアンラ・マンユを元気付けるのに成功したという。
シェズ
Shedu
バビロニア神話において、神殿を守っているとされる悪魔。暴力と破壊を好み、牡牛の姿をしているという。
ジェニー・グリーンティース
Jenny Greenteeth
「緑の牙のジェニー」。イギリスのランカシャー地方の湖や川に棲んでいるという妖精の一種。姿ははっきりしない。子供たちが水辺で遊んでいたり、船に乗っていたりすると、水の中からぬっと手を伸ばして、子供の足首をつかんで水の底まで引っ張り込む。緑の水草が浮かんでいるような流れのない場所に棲んでおり、水草の陰から誰か獲物はいないかといつも様子をうかがっているといわれる。子供たちに水遊びの危険さを教えるために考え出された妖精だとされる。
ジェントル・アニー
Gentle Annie
スコットランドのクロマティー湾に棲む妖精、
ハッグの一種。姿を見せず、凪の海に嵐を起こして船を沈めてしまうとして恐れられている。
シェンラ・オエカル
GShen-lha-od-dkar
チベットの土着宗教であるボン教において、「白い光の神」。すべての神々はシェンラ・オエカルから発現したとされる。まだ何も存在していなかった頃、まず黒と白の二つの光が現れた。さらに虹が出現し、そこから硬度、流動性、熱、運動、空間が生じると、これらの現象は混じりあい、巨大な宇宙卵の形をとった。そしてその卵から黒い光は病や疫病、苦痛、そして数々の悪魔を生み出し、白い光は喜び、繁栄、そして多くの神々を生み出した。神々と悪魔達はあらゆる種類の生き物を生み出し、それらの生き物は山や木や湖を埋め尽くした。
式神
しきがみ
「識神」とも書く。陰陽道において、陰陽師が使役するという鬼神。陰陽師の命令に従って変幻自在、不思議な術をなすという。広義には依代(よりしろ)や符によって呼び出された人や鬼といった形をとる、陰陽師が呼び出す使い魔のことを指すが、狭義には、安倍清明の使役した「十二神将」と呼ばれた十二支の神々を精を呼び下ろしたものや、蘆屋道満の使役した10の猛禽の事を指す。
四凶 しきょう
si-xiong
中国において古代の尭帝の時代に、西方の地に住んでいたとされる四匹の凶悪な怪物たちのことを言う。すなわち、
渾沌、
窮奇、
饕餮、
梼木兀の四匹のこと。それぞれ偉大な帝王の血を引くものとされるが、生まれつき凶暴で、一説には舜帝の時代に流罪となり、西方から魑魅魍魎が侵入してくるのを防ぐ役割を与えられたという。しかし、もともと凶悪な彼らはすぐに役目を忘れ暴虐の限りを尽くし、このために四凶と呼ばれて恐れられたのだという。
シクソープ
北ミャンマーのカチン族(中国で言う景頗(チンポー)族)の世界創世神話に見える女性の精霊。世界の始まりには、霧の塊が幾つも漂っていた。次に「中つ国(天穹のことだと考えられる)」が生成された。最後に神の力によって大地が固まった。大地にはありとあらゆる精霊が住んでいたが、長年立つ間に姿を消してしまった。そこで登場したのが女で天の精霊であるシクソープ、男で地の精霊である
クリプクロープである。この二人は
チャヌムと
ウォイシュンという精霊を生み、この二人から天地の万物が生まれたという。
シーサー
沖縄において、魔物を追い払う力があるとされている怪物。語源は「獅子」にあるとされている。
フィーダマを追い払う力があるとされており、家の屋根や門などにシーサーの姿をかたどった焼き物が置かれる。
地蔵菩薩
Kşitigarbha
菩薩の一。インドでは「
クシティガルバ」と呼ばれ、「地蔵」はその訳。六道の一切衆生の苦を除き、福利を与えることを願いとする菩薩。また、特に地獄の衆生を教化し、代受苦の菩薩とされる。俗信では小児の成長を守り、もし夭折した時はその死後を救い取ると信じられた。密教では菩薩形にあらわされるが、普通には頭をまるめた僧形で、宝珠を持ち、平安中期以降は宝珠と錫杖を持つ姿が一般化し、多く石に刻まれて路傍に建てられ、民衆とのつながりが強まった。その救いや霊験、形、置かれた地名などによって、親子地蔵、腹帯地蔵、雨降地蔵、とげぬき地蔵、延命地蔵などの名がある。
子孫娘娘 しそんにゃんにゃん
Zǐ-sūn niáng-niáng
中国道教において女性に子供を授けてくれる女神。道教では子授けから出産、そして幼児が健康に育つまでの過程の各段階を担当する複数の娘娘神がおり、このうち、子授けから出産までを担当するのが子孫娘娘、
送子娘娘、
催生娘娘で、子孫娘娘はこの最初の過程である「子授け」を担当している。人々の願いを聞き届けて子宝を授ける女神であり、どんな子が生まれてくるかは子孫娘娘によって選定される。(参考:
乳母娘娘)
シータラー
???
ベンガル(現在のインド北東部(ベンガル州)、バングラデシュ共和国周辺)における疱瘡(天然痘)の女神。病気をもたらす力と治す力をあわせ持ち、また日照りをもたらしたり、雨をもたらしたりする力を持つ。天然痘やはしかなどの吹き出物は、彼女が信者の身を「真珠で飾った」ものだから、ことさらに恐れる必要は無く、大抵はすぐに直ってしまう。村人が集まって祭りをすれば、女神は怒りを鎮め、疱瘡の粒々を引っ込めて恵みの雨粒を降らせてくれる。シータラー女神の土地ごとに異なり、
カーリーとそっくりだったり、ロバにまたがったホウキとざるを持った黒い肌の老女だったりする。「不可触民(アウトカースト=賎民)の女の身体とバラモン(カーストの最上位)の女の首」を持っていることもある。他に「シータラデーヴィー」、「マーリヤンマン」、「セリヤンマン」、「ジエシュター」、「シエーッタイ」などと呼ばれる疫病と治癒、旱魃と慈雨をもたらす女神が各所に土地神として祀られている。
七人御先
しちにんみさき
日本の高知に出現する妖怪。七人一組の死霊の集団で、海で死んだ者の亡霊だという。いつも七人で連れ立って歩き、これに出会ったものは死んでしまう。こうして死んだ者は後列に加わり、先頭の者は成仏することができる。つまり七人の数にはいつまでたっても変わりは無い。
梓潼帝君 しどうていくん
Zĭ-tóng dì-jūn
シトゥンペカムイ
アイヌにおいて、黒ギツネを顕現体とする
カムイ。一般のキタキツネのカムイである
チロンヌプカムイと違って、格の高いカムイとされており、岬を守護し、人間に危機の到来を告げるとされた。
シトラリクエ
Citlalícue
シトラリニクエとも呼ばれる。語義はナワトル語(トルテカとアステカの共通語)で「星のスカートをはいている者」ないし、「星のスカートの女神」。アステカで天の川の呼称のひとつであった。アステカにおいて13層からなる宇宙の3番目を支配する女神であり、
シトラトナの女性配偶神であり、
オメテオトルの女性的側面をあらわす。
シノンゴル
フィリピンのルソン島における創造神、世界の始まりのときの女王。この世の初め世界は無く、死者の共同体だけがあって、そこには女王シノンゴルとその弟スアラがいた。スアラは薬草に詳しく神々の病を治していた。シノンゴルは宮殿の東にあった丈夫な八体の木の像から一つを選んで人間の男にした。その肋骨から人間の女を作った。二人は夫婦となり息子のメンタラランが生まれた。しかし男は女王シノンゴルの怒りを買い病気になってしまった。そこでスアラは男に薬を与えたが、この薬は誰も触れてはならないものだった。何故なら触れると息子が死ぬからだ。しかしシノンゴルは弟スアラより優れていることを示すために悪魔に命じてこの薬に触れさせた。当然メンタラランは死んだが、シノンゴルがメンタラランの死体と土を別世界に送って埋めると、そこが盛り上がり、木々が生えて世界が出来たという。
シハイ
Sihai
インドネシアのニアス島で信じられている世界最初の生命。世界樹はその心臓から生え、右目は太陽に、左眼は月になったという。
シパクナ
Zipacnà
マヤの一部族キチェー族に伝わる聖書「ポポル・ヴフ(Popol Vuh)」に見える巨魔。
ヴクブ・カキシュの長男で、いつも山を背もたれにして眠っていた程の巨人だという。自分で山を作り上げてはその山を相手に球技をして遊んだという。弟の
カブラカンと一緒に父子3人で人間を支配しようとしたため、フンアフプーとイシュバランケという双子の神によって滅ぼされた。シパクナは蟹が大好物で、偽物の蟹でおびき出され、山崩れを引き起こされて殺されたという。シパクナは死んだ後、大きな岩となったという。
シービショップ
Sea Bishop
中世ヨーロッパで海に棲むとされた、怪物の一種。シービショップは「海の司教」という意味だが、シーモンク(海の修道僧)とも呼ばれる。顔は人間のようで頭はつるつるしており、身体はウロコで覆われているが修道士の服を着ているようであり、腕の代わりにヒレがあり、下半身は尾になっているという。
シフ
Sif
北欧神話において
アサ神族の女神で
トールの妻。「髪美しき神」と呼ばれ、まばゆく輝く黄金の髪を持っていたが、
ロキの気まぐれによりその髪を眠っている間に刈り込まれてしまう。それにトールは怒り、その怒りに怯えたロキは、「イーヴァルディの息子達」と呼ばれる
ドヴェルグの細工師に魔法の金糸を紡がせてシフに弁償した。この金糸はシフの頭に根付き、本物の髪と同じように伸び、シフは前にも増して美しくなったという。黄金が神格化された存在と考えられることが多く、またその金色の髪は豊かに実った穀物の穂と関連付けられ、豊穣神としても信仰された。性的には奔放で、トールではない男との間に
ウルを産んだり、またロキとも関係があったという。トールとの間には憤怒の神
モージを産んでいる。
シペ・トテック
Xipe Totec
赤の
テスカトリポカであり東を司る神。語義は「生爪を剥がれた者」。メソアメリカ中央部における春と農耕の神、種子と播種の守護神で、アステカの20あるセンポワリ(暦日)の15番目であるクアウートリ(鷹の意)の守護神であり、365日暦上では「1の
オセロトル」を呼称とする。
ウィツィロポチトリ、
ケツァコアトル、
テスカトリポカら3神と共に
オメテオトル(
オメシワトルと
オメテクートリ)から生まれた4兄弟の1人。
シペ・トテックはメソアメリカ南部高地が起源だと思われるが、最終的には古代オルメカの
第W神ないし、ゲレロ南部高地のヨペ人の信仰から派生したものだと考えられる。シペ・トテックは特にトラスカラ族に崇拝されたが、南部高地のサポテカ人やミシュテカ人、さらにはタラスコでも崇められた。後古典後期(後1250年−後1521年頃)になって初めて少数のマヤの都市国家に将来・信仰されるようになり、オシュキントクやチチェン・イツァ、マヤパンなどの都市にその神像が登場する。金属細工の職人技の伝統が長く保たれていたオアハカ=ゲレロの南部高地では金属細工職人と石細工職人の守護神とされた。
シペ・トテックは苦悩と密接に関連した神でもあり、毎年の豊作を保証する見返りとして多くの人身供犠を要求した。アステカの18暦日の3番目の月である春の祭礼トラカシペウアリストリ(Tlacaxipehualiztli)では、この神の恩恵を乞う様々な儀式が執り行われたが、そこで生贄は皮を剥がれ、神官達がその皮を身にまとって踊りを踊ったという。これらの生贄はいずれもショチヤオヨトル(Xochiyaóyotl=生贄を補給するための儀礼的な戦い)の戦争捕虜で、供犠の目的は古代の豊穣儀礼を喚起するところにあった。
シペ・トテックの神像と仮面は、肥満した体に加えて、犠牲者から剥いで伸ばしたおぞましい皮をまとった神官を表す、二重の唇やくぼんだ目からも容易に見分けがつく。全身像の場合は皮はその背中で紐で結ばれている。こうした生贄から剥いだ皮を着るという行為は、皮が植物の種皮を連想させることで、植物生命の再生を象徴していた。また、皮を剥ぐという行為は植物が毎年自己犠牲として皮を落として再生することと同様のことと考えられていた。生贄の死との関連で、シペ・トテックは地下世界ミクトランとも結び付けられ、そこから転じて天然痘や疫病、皮膚病やかさぶた、失明といった恐ろしい病を人間に送り込む神と考えられた。
シームルグ
Sīmurgh
イラン(ペルシア)神話に登場する神鳥。セーンムルヴ(Sēnmurw)とも呼ばれる。ゾロアスター教聖典「アヴェスター」ではサエーナ鳥(meregho saêno)と呼ばれており、この綴りを入れ替えたサエーノ・メレゴーが変化してシームルグ、或いはセーンムルヴと呼ばれるようになったと思われる。ゾロアスター教神話では、太古の海に二本の木があり、そのうちの一本に棲んでいたとされる。この木の上でシームルグが羽ばたくと種子が撒き散らされ、その種子からあらゆる種類の植物が生えたという。しかしこの木(サエーナの木と呼ばれる)は、後に悪魔(
ダエーワ)たちによって打ち倒され、枯れてしまったので、シームルグはエルブルス山という人間が登ることもできないような東方の仙境に居を移したという。また学識豊かで人語を放す鳥だともされる。ワシや鷹のような猛禽類の鳥の姿をしていたとされる。
シャ Shā 煞(サツ):Unicode715E
中国少数民族の
(トン)族が信奉する悪鬼の中で最高の悪神で、すべての悪鬼たちを支配する。それゆえ悪をなすこともあるが、悪を取り締まることも出来ると考えられ、
族の人々に恭しく祀られている。
シャイターン
Saitan
アラビアにおいての
サタン。ただしイスラム圏ではシャイターンは固有の悪魔の名前ではなく、「悪魔」をいみする普通名詞として使われる。また、アラビアにおいて精霊を五つの階層に分けたうち、その一つの階層をシャイターンと呼ぶこともある。
シャウシュカ
Shaushka
フリ人における重要な神であり、バビロニアの愛と豊穣、戦いの神である
イシュタルと同一の神だと思われる。イシュタルと同じく、シャウシュカも二人の女にかしずかれ、ライオンの上に立った翼のある姿で描かれる。二重の性格を持つ神とされていたらしい。
シャカル
Shachar
フェニキア神話において、最高神である
エルの子供。「シャール」とも呼ばれる。
シャリムとは異母兄弟。古代都市ウガリトで発見されたラム・シャムラ文献によれば、エルが海に向けて波のように手を伸ばすと、2人の妻が受胎し、シャカルとシャリムが生まれたのだと述べられている。一般にはこの二人の妻とは、
アシェラと
アナトだと考えられている。
シャクラ
Shakura
北米平原に住むネイティブアメリカン、ポーニー族の太陽神。バンドによっては「サクル(Sakuru)」とも呼ばれる。神の意である「アティウス(Atiusu)」を付けて、「シャクラ・アティウス」とも呼ばれる。ポーニー族はシャクラのために、「サン・ダンス」と呼ばれる儀式を行いシャクラを祀る。最高神である
ティラウ・アティウスにより、東に立つことによって西に立つ月(
パー)を照らし、昼の間大地(地球)に光と
暖かさを与えるように命じられた。また、シャクラとパーの間に生まれた「最初の息子」は
トカパレカタ(宵の明星)とオパリカタ(明けの明星)の間に生まれた「最初の娘」と一緒になり、この二人はポーニー族の始祖となり、人間の精神を構成する二つの要素、つまり感情と知性は、シャクラとパーによって与えられたものだとされる。
ジャタ
Djata
インドネシアのボルネオ島のダヤク族における女神。ただし一部の伝承では男性神とするときもある。人間界の下にある下界のバスフン・ブラウ(金が積もった川)に住み、ワニを眷属とする。また創造神話では上界の金の山という所に住んでいる。正式名称を「バウイン・ジャタ・バラワグ・ブラウ(金の戸口を持つ女のジャタ)」といい、「金の戸口」とは女性器をさす。また本来の名前を「タンボン(水蛇)」といい、水蛇の姿で人々の前に現れるという。
マハタラの敵対者とされるが、両者は時に両性具有の神であり、子供達がそこから世界にやってくるという、世界樹そのものであるとも言われる。マハタラ(
ティガグ)と違ってイスラム教時代、キリスト教時代に改名されなかったのは、両宗教ともにこの女神を認めていなかったからである。
吉雅奇 ジヤチ
Jíyăqí
中国の少数民族、鄂温克(エヴェンキ)族の牧畜地帯の大神で、家畜の繁殖を主催する牧畜の神。家畜を売るときは家畜の尾の剛毛を切り取って吉雅奇の神像にかけるなど、吉雅奇の加護を願う様々な習慣があるという。
シャチー
Śacī
インド神話の雷霆神
インドラの神妃で、ジャヤンタの母。ベーダ文献ではインドラーニーの名で呼ばれるが、叙事詩やプラーナ聖典ではシャチーと呼ばれ、悪鬼プローマンの娘であるともされる。
シャックス
Shax
ユダヤの魔神でソロモン王に封印された72柱の魔神の一人。「掠奪公」と称される。召還されると大きなコウノトリの姿であらわれる。しわがれた聞き取りにくい声で話す。人の耳、口、目を使えなくしたり、隠された財宝を探し出したりしてくれる。また地獄で使うためによく馬や金を略奪する。召還者には忠実だが嘘つき。
ジャックランタン
Jack-o'-lantern
???
シャマシュ
Shamash
バビロニア神話における太陽の神。全てを見通す神であり、それゆえ正義と占いの神とも考えられた。シュメール人には
ウトゥという名で呼ばれていた。王座に座っている姿で描かれる。シャマシュの光はあらゆる不正と欺瞞を暴き、また未来さえも見通したという。毎朝、蠍の男が巨大なマーシュ山の門を開き、シャマシュは天空への旅を始める。やがて夕暮れが近づいてくるともう一つの大きな山の方へと馬車を進め、また門へと消える。夜の間シャマシュは地下を旅し、最初の門まで戻ってくる。アヤという名の妻がおり、二人の間には公正の神キトゥ、法と正義の神ミシャルの二人の子供がいる。
シャメン・エク
Xamen Ek
ア・チクン・エクとも呼ばれる。「シャメン」とは北を意味し、シャメン・エクは北極星の神である。コデックス(絵文書)では、しばしば「黒い戦王」ないし「黒い星」
エク・チュアとの関連が見られる。獅子鼻で頭に黒い斑点がある姿をしており、それゆえに猿面神とよく関連付けられ、マヤの暦日チュエン(猿の意)を司っている。その象形文字も猿の頭に似ており、「北」を示す。善神であり、
チャクとともに現れる場合が多い。北極星としては、商人の守護神かつ案内人であり、マヤ人の遠距離交易網はマヤ文明において非常に重要であった。マヤ文化圏のユカタンやペテンと緯度を同じくする地域では、北極星は一年中位置を変えない星であった。そうしたシャメン・エクのとりなしと恩恵を求めるため、沿道に特別に設けられた祭壇に祈祷とポンの香(コパルの木の樹脂)が捧げられた。この神はアステカの
ヤカテクートリに相当する。
シャラタンガ
Xaratanga
メソアメリカ西部、メキシコ盆地の北部と西部のパツクアロ湖畔(現ミチョアカン州)の住んでいたタラスコ人が信じていた月の女神。
クリカウェリと
クェラウァペリの娘。新月、発芽、豊穣、成長そして食料を司る。古くからの豊穣の女神であり、その信仰の中心地はパツクアロ湖に浮かぶハラクアロ島だった。
ジャリ
Jarri
ヒッタイトにおける疫病とペストの神。疫病が発生すると人々はジャリに救いを求める。またジャリは「弓の王」という名称で呼ばれることもあり、王たちを戦いにおいて助けるともいう。
シャリム
Shalim
フェニキア神話において、最高神である
エルの子供。
シャカルとは異母兄弟。古代都市ウガリトで発見されたラム・シャムラ文献によれば、エルが海に向けて波のように手を伸ばすと、2人の妻が受胎し、シャカルとシャリムが生まれたのだと述べられている。
ジャール
Djall
アラビア語で「悪魔」を意味する言葉。ラテン語の「ディアボロス」に相当する。
ジャンカウ
オーストラリア北部、アーネムランド半島のウランパ族が信じる夢の時代(ドリーム・タイム)の存在。二人の姉妹ととその兄弟三人の五人をジャンカウと呼ぶ。宇宙に存在するすべてのものをドゥワ半族に属するものとイリチャ半族に属するものとに分けたとされる。ジャンカウは東のドゥワのブルラグ島から、明けの明星をたどって「太陽の地(現在のポート・ブラッドショー)」に上陸した。そこから野山を越えて歩く途中、姉妹が「ヤムイモ棒のランガ」(ランガとは杖であり男性のシンボル)を大地に突き刺すと水が沸いた。「木のランガ」を突き刺すと木々が芽吹いた。兄弟達は絶えず姉妹を妊娠させ、子宮から次々と子供を取り出した。最後に、ランガの紋章と「ナラ」の儀式を教えた。
シュー
Shu
エジプト神話における大気の神で、
ヘリオポリスの九柱神一柱。シューという名は時に「空虚」、「上に支える者」などと訳される。妻である湿気の女神
テフヌトとともに、最高神
レー(ラー・アトゥム)の口から唾もしくはくしゃみとして誕生した。エジプト神話の最初の夫婦神であり、後に二人は
ゲブと
ヌトをもうける。レーのもとを去ったシューとテフヌトは、時が始まったその瞬間から存在するという深淵
ヌンの探検に出かけた。レーは子供を失ったと思い大いに悲しんだ。それだけに2人が戻ってきた時の喜びはひとしおで、レーの目からうれし泣きの涙がほとばしり出たという。そしてこの涙から最初の人間が誕生した。シューはレーを継いで王位にのぼるが、
アペプの崇拝者達の攻撃に絶えず悩まされていたためうんざりし、自分は天界に退き、息子のゲブに王位を譲った。
十二神将
じゅうにじんしょう
日本仏教において仏法を守り、薬師経を読む者を守護する一二の大将。
薬師如来の眷属である
夜叉の一群のこと。「十二夜叉大将」、「十二薬叉大将」と呼ばれることもある。いずれも悪鬼、或いは恐ろしい形相の武者として描かれ、各々7000(あるいは700)の眷族を従えて、薬師如来の教えと、教えを志す人々を守護するといわれている。十二尊ということから昼夜十二時の護法神とされ、やがて十二支と関連付けられるようにもなった。このため、十二支の動物を冠に戴いている十二神将像もある。各々の十二神将は下に示すように十二支と関連していると考えられているが、宮毘羅を亥の神とする説もあり、また持物(仏像の持っている物)も一定していないため、混乱したものとなっている。
┌──────┐ ┌──────┐
1│ 宮毘羅大将 │子の神。本地は弥勒菩薩 6│ 因陀羅大将 │午の神。本地は地蔵菩薩
└──────┘ └──────┘
┌──────┐ ┌──────┐
2│ 伐折羅大将 │丑の神。本地は阿弥陀如来 7│ 波夷羅大将 │未の神。本地は文殊菩薩
└──────┘ └──────┘
┌──────┐ ┌──────┐
3│ 迷企羅大将 │寅の神。本地は勢至菩薩 8│ 摩虎羅大将 │申の神。本地は大威徳明王
└──────┘ └──────┘
┌──────┐ ┌──────┐
4│ 安底羅大将 │卯の神。本地は観音菩薩 9│ 真達羅大将 │酉の神。本地は普賢菩薩
└──────┘ └──────┘
┌──────┐ ┌──────┐
5│ 摩羅大将 │辰の神。本地は如意輪観音 10│ 招杜羅大将 │戌の神。本地は大日如来
└──────┘ └──────┘
┌──────┐ ┌──────┐
6│ 珊底羅大将 │巳の神。本地は虚空蔵菩薩 11│ 毘羯羅大将 │亥の神。本地は釈迦牟尼仏
└──────┘ └──────┘
シューツ
Shutu
バビロニアにおける風の悪魔の一人。シューツは南風を吹かせる悪魔で翼を持っている。
樹木子
じゅもっこ
「じゅぼっこ」とも読む。日本の古戦場後に生える樹木の妖怪。見た目は普通の樹木と変わらないが、いつも血に飢えていて、人間が下を通ると茂った枝を伸ばしてその身体にからみつき、血を吸うという。古戦場に染み込んだ大量の血を養分として育った木が樹木子になるといわれている。血を吸って養分を蓄えているため、樹木子となった木はいつまでも若々しい木のままであるとされる。
シュリーカー
Shrieker
イギリスのイングランド北部などに棲む森の妖精。森の中を旅人が通るとその後をつけ、パタパタと音をさせるが、振り返ったところで姿は見えないといわれる。その名前は「Shriek(甲高い悲鳴をあげる)」が語源となっており、シュリーカーの悲鳴を聞いたものは近いうちに死んでしまう事になる。
ジュルングル
Julunggul
オーストラリアの北部、アーネムランド半島に住むアボリジニたちにおける、
ウングッドの呼び名。
鍾馗 しょうき
Zhong-kui
中国、民間信仰の魔よけの神。唐の開元年中、玄宗皇帝の夢に終南山の進士鍾馗があらわれ、魔を祓い、病気をなおしたという故事に基づく。疫病神を追いはらい、魔を除くと信ぜられた神。その像は、目が大きく、頬からあごにかけて濃いひげをはやし、黒い衣冠をつけ、長ぐつをはき、右手に剣を抜き持ち、時に小鬼をつかむ。強い者の権化・象徴とされる。
精螻蛄
しょうけら
日本において、庚申待(こうしんまち)の夜に、人々が行事の規則を守っているかどうかを見回ると言われる妖怪。庚申待とは
三尸の難をよけるために
帝釈天、
青面金剛、または
猿田彦神を徹夜でまつるもの。鳥山石燕の「画図百鬼夜行」では、人々が規則を守っているかどうか、屋根の天窓から覗き込んでいる精螻蛄の姿が描かれている。その姿は逞しい
鬼のものであり、手の指は3本で鉤爪が生えている。規則を守ればこの鬼に罰を与えられると信じられた。
女
じょか
nu-gua 媧(カ):Unicode5AA7
中国の伝説上の人頭蛇体の女神。三皇(
三皇五帝)の一人であり、同じく三皇である
伏羲の妻(猫(ミャオ)族の神話上では伏羲の妹)。天を支える四本の柱が折れたとき、五色の石を練って青空の割れめを修繕し、大亀の足を切って、天を支える柱にしたとされる。また、女
は人類創造の神といわれており、様々な神と一緒に人間を作ったとか、あるいは伏羲と二人で人類の祖になったとか、たった一人で泥をこねて人間を作ったとか様々な神話が残されている。また婚姻制度を整えたのも女
だとされている。
燭陰 しょくいん
zhu-yin
中国の神。燭龍とも呼ばれる。北方鍾山あるいは章尾山の神。両目の一方が太陽でもうもう一方が月だという。あるいは、目を開けば世界は昼になり、目を閉じれば夜になり、息を吹けば冬になり、吐けば夏になったともいう。身の丈は一千里で、人の顔を持ち目は縦についていて、胴体はヘビ、色は赤いという。食べる、寝る、呼吸するといったことをしない。
ショチケツァル
Xochiquetzal
ショチピリの姉妹ないし女性配偶神で、アステカの開花期と実り多い大地の神。字義は「羽毛に覆われた花」、「羽が豊かに生えた花」、詩的には「尊い花」といった意味。愛と美、従順さと花々を擬人化した女神で、女性の性的な力を象徴する。アステカ人はこの女神を肉体的愛の女神とし、子供を授けてくれる者とみなした。さらにアステカの未婚戦士や銀細工師、彫刻家、絵描き、職工などの愛人ないし売春婦(アニアニメ(anianime)やマキ(maqui)と呼ばれていた)の守護神であった。ある面では
トシや
トラソルテオトルとも関連していたが、これらの女神との相違点は、ショチケツァルが永遠に若く美しい女神だったことにある。コデックス(絵文書)では、ショチケツァル2つの大きなケツァル(カザリキヌバネトリという緑の美しい羽を持つ鳥)の羽飾りをつけて描かれている。アステカの暦日(センポワリ)では20番目のショチトル(花)を司っていた。
神話においては
トラロックの最初の妻であったが、
テスカトリポカによって誘拐されたとされている。ショチケツァルはまた地下世界ともかかわり、死者の祭りではキンセンカを捧げられて祀られた。伝承によれば
ケツァルコアトルによる平和的な支配の時代と第2の太陽の時代に、美しさと花の贈り物と青々した緑とで大地を飾り立てたという。
アトラトナンや
ウィシュトシワトル、
シローネンとともに4女神の一翼をになっていた。これらの女神を演じる処女たちは、テスカトリポカ役に選ばれた若い戦士と一年間夫婦となり、この戦士はトシュカトル(テスカトリポカをたたえる特別な祭儀がある日)には生贄にされた。ショチケツァル役の女性もまた生贄にされ、生皮をはがれた。そしてその皮をかぶった神官は、職人たちが猿やジャガー、ピューマ、犬、コヨーテなどの格好をして周囲を踊る間、機を織るまねをした。一方、信者たちは舌から血を滴らせながらショチケツァル像に罪を告白し、これによっておぞましい儀式を終え、最後に儀礼的な入浴をして罪の償いをした。
ショチピリ
Xochipilli
メソアメリカ中央部の善神。名前は「花の王」を意味し、「ショチピルリ」と発音することもある。花と魂の神として、また夏の象徴として、若々しい
トナティウの姿をとる。若い太陽神
ピルツィンテクートリの恵み深くやさしい側面を表すという。ピルツィンテクートリとともにアステカの夜の9つの時間を表す
ヨワルテウクティンの3番目であり、またアステカの暦日(センポワリ)の11日目であるオソマトリ(猿)をつかさどる。また、
センテオトルとも関係があり、「センテオトル=ショチピリ」(トウモロコシ=花の王)の姿をとると、
トナルテウクティン(昼の神々)の7番目となる。この神は外皮を剥ぎ取られた花で象徴される霊魂であり、赤ら顔の人物の姿をとる精霊としても表現される。トウモロコシ(メイズ)の収穫を保証するセンテオトル=ショチピリに対して人々を熱心に信仰した。また、アステカの官能の神
アウィアテオトルは彼の化身である。
ショチピリは兄弟である
イシュトリルトンや、
マクウィルショチトルとともに、健康と快楽と幸福を司る三柱を構成する。ショチピリがアステカの暦日(センポワリ)のうち11番目のオソマトリ(猿)を司るのは、こういった男性的な豊かさを象徴することに関係していると考えられる。ショチピリやほかの同類の神々をあがめる儀式や祝祭では、大量のプルケ酒(リュウゼツランの一種から作られるアルコール飲料)が消費されたという。さらに、ショチピリはその配偶神、あるいは姉妹とされる
ショチケツァルとともにメキシコ盆地南部と西部の湖、とくにショチミルコのチナンパ(湖を区切り泥を中にためた田んぼ)住民に人気があり、その神像は花や蝶などで飾り立てられた。
おそらく古い先古典期から古典期にかけて汎アメリカ的に崇拝されていた神、つまり古典期の都市ティオワカンでとりわけ信仰され、肥満神として知られた神にとって代わったものだと考えられる。これはサポテカでは
キアベラガヨに相当する。
ショック
shock
イギリスイングランド東部のサフォーク地方に出現する妖精の一種。いたずら好きな妖精
ボギーの仲間で、普通はロバか馬の姿であらわれるという。ショックという名のとおり、人を驚かせたり恐怖を起こさせるのが大好きで、そのためならば人々の集まる葬式の尾t期に幽霊の姿で出現したりする。捕まえようとするのはとても危険で、そんな人間には噛み付いて抵抗するし、噛み付かれた傷は一生消えないといわれる。
女郎蜘蛛
じょろうぐも
日本の妖怪。絡新婦とも書く。実際に存在するクモの名前だが、この場合の女郎蜘蛛は女の大蜘蛛の妖怪で、昼は美女の姿だが夜は本性を表し、小さな蜘蛛になる青い煙を吐いて人間に取り付き、生き血を吸うという。他にも武士に結婚を迫ったり、子供連れの女に化けたりして例もある。
シラオ
Sirao
インドネシアのニアス島で信じられている原初の神にして大地の造り手。また、最初の生物である
シハイを造った。
不知火
しらぬい
九州の八代海と有明海で旧暦七月晦日の真夜中に出現する怪火(あやしび)の一種。海岸から数kmの沖に、最初は一つ二つ親火といわれるものが出現する。それが左右に別れて数を増やし、最終的に数百個から数千個の光が横に並ぶ。その左右の距離は4〜8kmにも及ぶという。この怪火は古くから存在し、日本書紀の景行一八年五月の条において、景行天皇九州巡幸の際、航行中に日が暮れたが火影に導かれて岸に着くことができたと書かれている。この現象は、夜光虫、燐火、漁火などの諸説があるが、空気の疎密の差による光の屈折現象によって遠い漁船の火が見えるのだろうという説が有力である。
喜利媽々 シリママ
Xĭlìmāmā
中国の新疆ウイグル自治区に住む古代中国錫伯(シボ)族における家族の守護神。子供が生まれるたびに、弓矢や細い布切れを喜利媽々の像に飾る習慣があり、像そのものが家族数や世代数の記録となる。
シルキー
Silky
イギリスの北部イングランド地方に棲む女の妖精の一種。妖精である
ブラウニーと亡霊の中間的な存在で、灰色か白の絹のドレスを着ている。特定の家に棲み付いて、掃除や暖炉の手入れなどの家事を手伝ってくれるので、大きな館に少人数で暮らしているような家族にとってはありがたい妖精だといわれる。自分が慣れ親しんだ家に気にいらない人間が住むようになると、夜中に寝具をがたがたさせたり、天井裏で暴れたりして追い出してしまうという。
シールト
シベリアで信じられている、病などを起こす悪魔。村の新参者の家に入り込んで、夜になると音を立てたり、病気を振りまいたりして人々を困らせるという。人々は、このような禍から逃れるために、その家の周囲に柱を立てる。そうするとシールトは悪戯を止めておとなしくなるという。しかし、何か禍があると、村人は魔女の婆さんに相談してシールトの柱にロウソクを捧げるようになった。そうして、柱に明かりがついているのを見つけると、他に人が新しく柱を建てるようになった。もちろん、シールトが住んでいた家の住人は、シールトが戻ってくるのを恐れて柱を壊そうとはしない。やがて村人は、ロウソクを捧げるだけではなく、森の中で生贄を捧げるまでになった。このようなことをするのは男よりも女が多かったという。女のほうが迷信を信じやすいということだろうか。もしかしたら、新参者を疎んじる人々の口から生まれた悪魔なのかもしれない。
シルフ
Shylph
ヨーロッパの風(空気)の精霊の一種。「Sylph」とも綴る。またジルフェと呼ばれることもある。この世の物質は地水火風の四大元素からできているという考えに基づき、16世紀の錬金術師パラケルススは、これらの四大元素のそれぞれに固有の精霊が棲んでいると考えた。シルフかこのうち風を司る精霊で、本来は人間と精霊の中間的な存在だとされていたが、風の中を飛び回るイメージから浮気っぽくて決して老いることのない女性の精霊と考えられるようになった。
シレウェ・ナザラタ
Silewe Nazarata
インドネシアのニアス島で信じられている、全ての生命を象徴する女神。至高神
ロワラニの妻。「恐れられるもの」という別名を持つにも関わらず、人々を助ける神である。住処は月。別伝では夫ロワラニの傍らに座す。
シン
Sin
世界史上最古に分類される都市ウルで信仰されていた月の女神であり、シュメールの神々の王であった
エンリルの最初の子とされる。シュメールにおいては、月を司るとともに大地と大気の神として信仰されていた。またその性質から暦を司る神として認知されており、同時に月に由来する神に多い農耕神としての側面を有していたと思われる。暦の神としてのシンは、「遠い日々の運命を決める」力を持っていたといわれ、彼の練る計画を知り得た者はいないとされた。そのためか、シンに捧げられる礼拝は一神教的な傾向を示していたという。旧約聖書の創世記にはウル、ハランの両都市でシンと思われる月の神が信仰されていた、と書かれている。またアラビア半島ではシンは多くの称号と異名を持って信仰されていた。
蜃 しん
Shin
日本や中国において、蜃気楼の原因とされた大蛤(はまぐり)の妖怪の一種。「蜃」とは大蛤、「気」とは息のこと、「楼」とは楼閣(高い建物)という意味で、蜃気楼は巨大な蛤が気を吐いて描いた楼閣だから、その場所に行っても何もないのだと考えられた。
ジン
Jinn
アラビアにおける精霊の総称。
イブリースという天使の子孫だと言われ、霊鬼、魔神などと訳される。「アラビアンナイト」に登場するランプに棲む精もジンの一種である。実態はなく、出現する時は煙のような気体として現われ、そのあとで人や巨人、動物など色々な姿をとる。空を飛んで天界に行くことも可能で、その気になれば人の望みを何でもかなえられるという。アラビアの精霊を五階層に分け、上位のものからマリード、
イフリート、
シャイターン、ジン、ジャーンと呼ぶこともある。
シンテオトル
Cinteotl
アステカにおいてトウモロコシを象徴していた神。マヤでは
ユム・カアシュの名で知られた。シンテオトルは雨神
トラロックの庇護下にあり、アステカにおいて主食であったトウモロコシをもたらす神とされた。その姿は若々しく生気にあふれた若者としてあらわされる。顔面にはくねくねとした無数の線が刻まれ、頭には豊かに実ったトウモロコシの穂を模した派手な冠をつけている。アステカ神話によれば、人間はトウモロコシなくしては存在できないと言う。その人間が存在することを可能たらしめた神がシンテオトルであり、
ケツァルコアトルの化身である。黒アリに変化したケツァルコアトル(=シンテオトル)は、赤アリの貯蔵庫に忍び込みトウモロコシの種を盗み出した。その種が人間を存在させるもとになったと言う。
神農 しんのう
Shen-nong
中国において、
伏羲、
女に続く古代の三皇(→
三皇五帝)の一人。人民に農耕を教えた事をもってこの名があるといわれる。「炎帝」とも呼ばれ火の神でもある。人身牛首の姿をしていて、初めて医薬を作り、五弦の瑟を作り、八卦を重ねて六十四爻(こう)を作ったという。各地からあらゆる草木を集めそれを一つずつ自分で試したいわれ、そのため神農は一日に70種の毒にあたったこともあるといわれる。中国文化の源であるとされ、農業、医薬、音楽、占筮、経済の祖神であった。最後には
黄帝との戦いに敗れて南方の天帝となる。道教でも崇拝され「五穀爺(ごこくや)」という別名がある。また、本来
大国主神や
少名彦名神を医師の神とした日本でも漢方医や薬種商によって祭られた。
人面樹
じんめんじゅ
日本をはじめとして東アジア一体で信じられた妖木の一種。人里離れた深山の谷に生える木で、人の顔とそっくりな花が咲いており、言葉は話さないがしきりに笑う。笑うと枝が揺れ、笑いすぎると人面の花は落ちてしまうという。鳥山石燕の「今昔百鬼拾遺」にも紹介されている。