ヤーウェ
Yahweh
 イスラエルの諸部族によって万物の創造主で、あらゆる国を裁くと考えられていた神。「ヤハウェイ、ヤハウェ」とも呼ばれる。ヘブライ神話、ひいてはユダヤ教において、明示的に「神」とされているただ一つの神格。キリスト教及びイスラム教はユダヤ教から派生したものなので、この二つの宗教において神と呼ばれている存在はヤーウェのこと。旧約聖書にも登場し、誤読され、「エホバ(Jahovah)」とも呼ばれる。カナン神話に最高神エルと同一の存在であったものと思われる。
 信奉者達によりヤーウェは4文字のヘブライ語「YHWH(もしくはJHWH、IHVH)」であらわされるが、これをみだりに書いたり、口にしたりしてはならないとされた。神の名を構成するこの聖なる4文字を口にすることは畏れ多いことだと考えられたからである。これは十戒(人が侵してはならない十の戒律)に由来する。またこの4文字に母音が含まれないのも、ヤーウェ名前自体の聖性を重んじた為である(子音だけで構成されるため発音が出来ない)。ふつうこの4文字は「わたしはある、わたしはあるという者だ」の意味と解釈されている。オカルト学ではこの4文字を「テトラグラマトン(聖四文字)」と称し、西洋魔術では「風」の元素の呪句として用いる。
 ヤーウェは自分の信者が他の神を崇拝することを禁じる嫉妬深い神であり、自分の教えから逸脱するものには厳しく当たったが、もともと正義の神であり、また慈愛の神でもある。おおよそ神と呼ばれるものが持つ性質をほとんど持ち合わせており、全知全能で、人の思い及ばぬ深遠な計画を練る存在である。神話上ではアダムとイブの前に姿をあらわしたことがあるが、それ以外で直接人間の目に触れることはない。彼を目にした人間は死んでしまうとまで言われる。ヤーウェは物理的な姿をとらず、どんな形でも偶像化されない。

ヤオカムイ
 
 アイヌにおいて蜘蛛一般を顕現体とする女性のカムイ。名前は「網を編むカムイ」の意。蜘蛛そのものよりも、蜘蛛の巧みな巣の張り方にアイヌ人が感銘を受けたことによって生まれたカムイだと思われる。糸を紡ぐ行為から機織を連想させるために女性のカムイだと考えられた。神謡では美しい女性カムイとして登場し、カケスのカムイであるハシナウウカムイなどと同様に狩猟や漁などを守るカムイだとされた。徘徊性の(巣を作らない)蜘蛛であるアシダカグモを顕現体とするカムイは特にアミタンネカムイと呼ばれる。

ヤクシニー
Yakxini
 →ヤクシャ

薬師如来 やくしにょらい
Bhaişajyaguru
 仏教における東方浄瑠璃世界の教主。「薬師瑠璃光如来」、「薬師仏」、「薬師」ともよばれる。十二の大願を発して、衆生の病苦などの苦患を救い、身体的欠陥を除き、さとりに至らせようと誓った仏。古来医薬の仏として尊信される。その像は、左手に薬壺または宝珠を持ち、右手に施無畏(せむい)の印を結ぶのを通例とする。日光菩薩月光菩薩の二菩薩を脇士とし、十二神将を護法神とする。

ヤクシャ
Yakşa
 ヒンドゥー神話において、富の神クベーラに仕える者。固有名称ではなく、大勢のヤクシャがいる。また、女性のヤクシャは「ヤクシニー」と言う。仏典では夜叉(薬叉)という。ヒマラヤに住み、秘宝の番をしている。通常、短い手足に太鼓腹の姿をしており、自然界の神秘的な存在(=精霊)であり、守護神で、豊穣をもたらす者として崇拝される。ヤクシニーは慈悲深いが、執念深くもあり、時には子供を食べることもあるという。

ヤザタ
Yazata
 ゾロアスター教における守護霊で、「崇拝に値する存在たち」の意。ほとんどの者は古代ペルシアの神々で、ゾロアスターが改革した宗教の中に、最高神アフラ・マズダを助ける者として取りこまれた。恒星や惑星に対応する者、元素に対応するものなどあるが、その他にも多数存在し、抽象的な概念に対応している。点のヤザタ達はアフラ・マズダによって率いられ、地のヤザタ達はゾロアスターによって導かれると言われることもある。
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│アナーヒター││アタール││ハウマ││スラオシャ││ラシュヌ││ミトラ││ティシュトリヤ│
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    水      火    薬草    従順     審判    真実    シリウス

   豊穣               祈りの聞き手             雨と豊穣の源

夜叉
やしゃ
 ヤクシャ(Yakşa)の音訳で「薬叉(やくしゃ)」とも称する。仏教にとり入れられて八部衆の一つとされ、毘沙門天の眷属で、諸天の守護神となり、北方を護る。夜叉明王、夜叉神とも称する

八十禍津日神
やそまがつひのかみ
 日本記紀神話において、伊邪那岐神が禊をしたときに大禍津日神とともに生まれた神。「八十」とは数が多いこと、「禍」はわざわい、「津」は「〜の」の意の格助詞、「日」は「霊」を示す。死者の世界の穢れ(けがれ)を神格化した存在。

八千戈神
やちほこのかみ
大国主神

ヤトッカ・タック
Tatokka taccu
 北米インディアンのズニ族の太陽なる父。月の光をもたらす母とともに、光と生命を与えてくれた神である。ただし彼女はヤトッカ・タックの妻ではあるが決して一緒になることは無い(太陽と月は同時には現われない)。ヤトッカ・タックは西と東の大洋に住居を持っている。彼の母はコハク・オカといい、白き貝の女である。彼女はヤトッカ・タックの西の大洋の住まいにいる。
 ズニ族の南には、トルコ石の男と塩の女が住んでいるが、塩の女はヤトッカ・タックの妹である。ズニ族は最初は地下に住んでいた。地上から4層も下の暗く狭苦しいところだった。ヤトッカ・タックは息子である双子の戦死アハユタに、太陽の下にズニ族を導くように命じた。人々は最初は口も持たず手足の指には水掻きがあり、角と尻尾があった。アハユタは彼等の顔に切れ目を入れて口をつくり、水掻きを切って指をつくり、角を折り尻尾も切った。こうしてズニ族は地上に住むようになった。

家鳴
やなり
 日本においてのポルターガイスト現象。地震でもないのに家が揺れたり、変な音が聞こえたりするのは軒下で小鬼達が柱を揺らしたりしているせいだと考えられていた。

ヤヌス
Janus
 ローマ神話における門や戸口の神。正反対の方向を向いた二つの顔を持つ男性神であり、物事の表と裏を見る力がある。事の初めと終わりをつかさどるとされ、神々の先頭におかれる。門や正月など、あらゆることの始原と入り口を司る神だと考えられた。ニンフカルナ(これは間違いで、カルデアのことだともされる)は、言い寄る男たちを洞窟に誘い、自分はすぐ後から行くからと言っては逃げていた。カルナはヤヌスも騙そうとしたが、ヤヌスには後ろ向きの顔があったのでカルナは逃げられず結局カルナはヤヌスと交わることとなった。カルナとの間に生まれた息子プロカスは後にアルバ・ロンガの王になったという。ヤヌスはカルナに礼として夜になると現われる吸血鳥を追い払う力を与えた。カルナはそれをプロカスの子を守る為に使った。

ヤハウェイ
Yahweh
ヤーウェ

ヤマ
Yama
 古代インドの「リグ・ヴェーダ」賛歌に登場する地獄の番人であり死者の王。仏教では閻魔にあたる。太陽神ビバスバットの息子で、大洪水の唯一の生存者で原初の人間であるマヌの兄弟。配偶神とされるヤミーは双子の妹である。ヤマとヤミーは最初の人間の夫婦だったとされ、また始めて死んだ人間だともされている。リグ・ヴェーダによれば、山は世界を探索する旅に出て、死の道を発見した。その結果人間は死すべき存在になったという。もともと死者を見守る者として親しみのあった存在だったが、聖典「ヴェーダ」の注釈書「ブラーフマナ」が書かれた頃(前1000年頃)には、不吉では快適な力を持つ者とされ、人間を罰する恐ろしい存在であり、罠と棍棒を持ち、緑色の体をしており、四つ目の犬を二匹従える存在とされている。この二匹の犬が時々世をうろつき、死者の魂を集めてまわるのである。肉体の離れた魂はヴァイタラニー川を渡り死者の国へと赴く。それから裁きの館へと進む。その魂の行いの報告で、魂が極楽へ行くか、数多くある地獄の一つに行くか、それとも来世に生まれ変わるかをヤマが定めるのだ。

八岐大蛇
やまたのおろち
 記紀神話に出て来る、身が一つで頭と尾が八つある大蛇。出雲国(島根県)の簸河(ひのかわ=斐伊川)の上流にいたが、素戔嗚尊が退治し、その尾から天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)が出たという。

山童
やまわろ
 日本の妖怪の一種。熊本県などで山奥に住むされる妖怪。寺島良安の「和漢三才図会」などにその名が見える。大きな猿に似て人のように立って歩くという。また、河童が秋になって山にはいったものだとされることもある。

山姥
やまんば
 日本各地の山に棲むという妖怪。普通は人間の老女の姿で、ひどくみすぼらしい格好をしており、時には樹皮を身にまとっているとも言われる。里の子供をさらって喰ったりする。また、山で迷った人間が山姥の住む家に泊まると、人間を料理したものを喰わされ、夜中には包丁を研ぐ音が聞こえ、泊まった者は次に来た者の夕食になるとも言われる。一説には姥捨て山に捨てられた老女の霊の恨みが山姥を生み出すという。

ヤミー
Yami
 古代インドの「リグ・ヴェーダ」賛歌に登場する死の女神で、ヤマの配偶神であるとともに双生児の妹。地獄の女たちを支配していると言われる。後に「ヤムナー(Yamuna)」とも称する。

ヤム
Yam
 フェニキア神話における海や水の神。「Yamm」、「Jamm」とも綴る。「川を治める者」と称される。竜、或いは蛇と呼ばれることもある。またレヴィアタンと称されることもある。ある伝承によれば、ヤムは最高神エルに対して、他の神々よりも格上にして欲しいと願った。エルはこれをバールに勝ったらという条件つきで承諾した。これに対してバールは鍛冶の神が鍛えた武器を帯びて戦ったために、ヤムは敗北し、その遺骸はバラバラに撒き散らされ、バールが王となったという。これはつまり、自然の脅威が文明の力に征服されることを象徴している。敗北したヤムは、女神アスタルテを妻に与えられて慰められるという伝承もある。

遣ろか水
やろかみず
 日本の愛知県等に住む妖怪、或いは川の主。木曽川の上流に棲み、大洪水を起こす。たいていの場合姿は見えないが、遣ろか水が洪水を起こした場合はその水面に目や口が浮かぶように見えるともされる。大雨で川が増水している時に上流の方から「やろかやろうか」と呼びかけてくる声が聞こえ、この声に「よこさばよこせ」等と応えてしまうとその瞬間に川の水が氾濫して大洪水が起こるという。

ヤル=スブ
Jar=Sub
 シベリアの古代チュルク語や現代アルタイ語を用いる民族の伝承で、大地と水の結合を人格化した神。「ヤル=スブ」は宇宙全体無いしこの民族の住む地方を指すことがある。