カー
Ka
古代エジプトで、
バーと一緒に人間を構成する要素(霊魂)の一種として考えられていたもの。カーは生まれたときから人間にあるもので、死後にも人間の身体の特徴を備えており、その人の死後の代役のようなものとされていた。また、カーは人間の身体から完全に独立する事が出来ず、死後も食べたり飲んだりする必要があり、このために人々は死者に供え物をしたのである。供え物が途絶えたりするとカーは消滅する。カー・バーの思想は中国や日本にも
魂魄として伝えられた。
カアング
Kaang
南アフリカのサン人に信じられている創造神。無数の神々の頂点に立つ天空神。
カイア
Kaia
ニューブリテン島(西南太平洋)のガゼル半島に住む種族の信じる悪魔。特に火口の下に好んで住むと言う。世界の始まりには創造者だったが、現在では邪悪になり、全てを悪い方向へ変えようとする。
カイアムヌ
Kaiamunu
パプアニューギニアの民話に登場する悪魔。少年の通過儀礼のとき、少年を呑み込んで新しい生命として吐き出す。
豸
かいち
??? 獬(カイ):Unicode736C
中国における瑞獣(縁起の良い獣)のひとつで、身体は羊に似ていて、一本の角があるという。また麒麟のように鱗に覆われてるともある。正、不正を見抜く不思議な力を持っており、不正な者を懲らしめる事から裁判と関係づけられ、後世にはその姿が裁判官の服に描かれた。このため、他の瑞獣は優れた王者の時代に出現するとされているが、
豸は王者の裁判が公正に行われる時代に出現するとされる。
カイム
Caim
ユダヤの魔神でソロモン王に封印されたとされる72柱の魔神の一人。偽エノク文書の目録にもその名前が記載されている。ツグミ、サーベルを持ち炎に包まれた人間、羽根飾りと孔雀の尾を身につけた異形の人間という、三種の姿を持ち、召還した者の前にはツグミの姿であらわれる。事象の秘密を暗示する鳥の言葉を象徴する悪魔であり、言語と強く関連し、あらゆる動物と人間の言葉を教えてくれるという。地獄の大総裁であり、30の軍団の指揮官。
カイルス
Caelus
ローマの天空の神。ギリシア神話のウラノスに相当する。
高台 カオダイ
Cao-Dai
ベトナムにおいて、ホアハオ教と並び二大創基宗教とされるカオダイ教における至高神。カオダイ教は1926年にレ=バン=チュン(黎文忠)によって創立された新興宗教で正式には「大道三期普度教」という。高台は
ヤーウェと
黄帝を融合した混淆神で、ハートの中の目(「天眼」と呼ばれる)に象徴される。カオダイ教自体は仏教、道教、回教、キリスト教、儒教を統合し、世界主義的な教理をもった宗教だといわれている。
カーカ
Caca
ローマの女神。ローマ神話におけるヘラクレス伝説において、
カークスがヘラクレスから盗んだ牛の居場所をヘラクレスに教えた。
カークス
Cacus
ウゥルカヌスの子で、もともとはローマの火の神。三つ頭の怪物。
カーカの兄。ヘラクレスの牛を盗んだ。
火車
かしゃ
日本における死者をさらっていく妖怪。平安時代には火に包まれた牛車の姿をしており、死人が出た家にものすごい勢いで押しかけ死者を冥土へ連れて行ったという。江戸時代には二本足で立つ巨大な猫の姿をしており、出現する時は嵐を巻き起こし、黒雲に包まれていたといわれる。
がしゃ髑髏
がしゃどくろ
日本における巨大な骸骨の姿をした妖怪。多くの人々の恨みが連なってがしゃ髑髏になると言う。奈良時代や平安時代には、賦役(人身課税による労役)などのために苦しんで死んだ人々の骸骨が都の周囲にごろごろしていた。これらの髑髏には霊が宿っており、こうした霊の恨みが集まって巨大化したものががしゃ髑髏である。その丈は大きい時は30m以上になり、しばしば夜の野辺を歩き回ったり、或いは建物を破壊したりしたという。
片耳豚
かたきらうわ
「片身豚」とも書く。鹿児島県奄美大島に出現する妖怪の一種。影の無い子豚の姿をしていて、しきりに人の股をくぐろうとする。これにくぐられると死んでしまうか、性器を駄目にされて腑抜けになってしまうといわれる。とっさに両足を交差して立てば防ぐことが出来る(この状態でくぐられてもダメージは受けない)。片耳豚は耳が片一方しかなく、耳が両方無いものは「耳無豚(みんきらうわ)」と呼ばれるが、性質は大して変わらない。
カダクラン
Kadaklan
フィリピンのルソン島の山岳地帯に住むティンギアン人が崇める「もっとも偉大なる神」。雷神であり、忠犬キマット(閃光)とともに空の上に住んでいる。カダクランが特別な儀式が必要だと感じれば、キマットは家でも樹木でも人間にでも噛み付く。これが落雷である。
ただし、カダクランはもっとも偉大なる神と呼ばれているにも関わらず、ティンギアン人の尊敬を受けておらず、祖先霊の方がはるかに大きな崇拝を受けている。これはティンギアン人にとって最も重要なものが葬儀であり、死者がマグラワと呼ばれる地下世界に無事行き着けることが重要だからだという。また一説にはカダクランの出自がティンギアン人自身のものではなく、フィリピンを武力支配したスペイン人(雷は銃を意味すると考えられる)が転じたものだからともいわれる。
月光菩薩 がっこうぼさつ
?
仏教において
薬師如来の脇侍。右脇に侍する。「月光王」とも称する。
ガッド
Gadd
イスラム教以前のアラビア半島北部で信じられていた、様々な神々に与えられていた名前。単に擬人化された幸運を指すこともある。
河童
かっぱ
日本各地の川、湖沼、海などに住む妖怪。「猿猴」、「めどち」、「がわっぱ」等はその異称とも、或いは河童の一種族とも言われる。一般的におかっぱ頭の同時の姿で頭に皿があり、背中には甲羅を背負い体中に黒っぽい斑点のついた全体的に緑色の体で、三本指の手と足には水掻きがついている。皿の中には水がたまっており、これが乾いたりしてなくなると死んでしまうという。両腕は一本に繋がっており、片腕を引くともう一方の腕は短くなるといわれる。食べるわけでもないのに馬や人間(特に子供)を川に引きずり込んで生き血を吸ったり、人の尻子玉(肛門の所にあると想像された玉)を抜いたという。またキュウリが好物だといわれる。
ガネーシャ
Ganeśa
インド神話における学問の神。「眷属の支配者」の意。ガナパティともいう。
シヴァと
パールバティの子とも眷属の一人ともいわれるが、本来はインドの先住民の災厄・厄病の神であった。学問上の書物の冒頭にこの神に対する帰敬偈(経・論などの中に、韻文の形で、仏徳を讃嘆し教理を述べたもの)がおかれることが多い。姿は象面で長鼻、1牙、4臂、長腹をもつ。パールバティが水浴をする時に、彼女はガネーシャに見張りを頼んだ。そこに父親のシヴァがやってきた時、ガネーシャは杓子定規に彼もさえぎったので、シヴァは逆上してガネーシャの首を切った。これにパールバティが怒ったのでシヴァは近くにいた象の頭をガネーシャの首に据えた。また、牙が一本しかないのは、ラーマと戦った時に、彼の持つ斧を見てシヴァの与えたものだと知ったガネーシャが、わざと牙を折られて敗北して見せたからである。仏教では、
歓喜天となる。
金霊
かねだま
日本における黄金の精霊の一種。「今昔画図続百鬼」の説明では、金霊は黄金の気であり、善人の元に出現して大金持ちにするものだとしている。どうやら空を飛んでくるものらしく、大量の大判小判が光とともに蔵の中に降り注ぐ絵が描かれている。「古今百物語評判」には、夕暮れ時に薄雲の姿になって出現した銭神(ぜにがみ)という金霊の話がある。その薄雲は人家の軒の辺りで声をあげて騒ぎ立て、見つけた人が刀で切りつけるとそこから沢山の銭がこぼれ落ちてきたという。
河伯 かはく
???
中国神話・道教における黄河を支配する河の神。また、河の神を総称して河伯と呼ぶこともある。河伯は黄河に似合って数ある河の神の中でも最も重要、強力な神とされ、豊作や降雨を授ける力があるとされた。すでに殷(〜紀元前10世紀頃)の時代から河伯に対する祭祀は行われていて、おもに牛などが生贄として捧げられた。また、時代によっては巫女などが住民の娘を全員花嫁として飾り立て、ベッドに寝かせて沈めて生贄にした時期もあったという。広く信じられている説では冰夷(あるいは憑夷=ひょうい)という男が渡河中に溺死し、天帝から河伯に命じられたのだとされる。また道教では冰夷が薬を飲んで水の仙人となり、河伯になったとされる。洛水の女神である
嬪がその配偶神であるとされる。
かつて河伯が暴風雨の中に出現したは水の車に乗り、二頭の龍に車を引かせ、
を添え馬にしていたという伝説が残っている。また、河伯自体は人頭魚体ともいわれ、明朝の頃からは龍の一種と考えられるようになったといわれている。
花魄 かはく
Huā-pò
中国における木の精の一種。3人以上の人が首をくくって自殺した木に、自殺した人の恨みによって誕生するという。手に乗るほどの大きさの裸の美女で、体には全く毛が無く(髪の毛など以外)、声はインコの鳴き声に似ていて人間には通じない。木の精なので水がないと生きられず、水を与えないと干からびて死んでしまう。しかし、干からびた花魄の体の上に水をかけてやると再び生き返るといわれている。
カパッチリカムイ
アイヌにおいて大鷲を顕現体とする男性の
カムイ。「カパ
ラチ
リカムイ」とも呼ばれる。大鷲の力強い飛翔から想像されたカムイ。
カパプカムイ
アイヌにおいてコウモリを顕現体とする男性の
カムイ。名前は文字通り「コウモリのカムイ」の意。神謡においては、カパ
プカムイは他のカムイと異なりカムイモシ
リ(カムイの世界)から降臨したカムイではなく、天空を領有するカムイ、もしくは
コタンカラカムイによってアイヌモシ
リ(人間の世界)で創造されたカムイであるとされている。カパ
プカムイは非常に賢明な(もしくは悪知恵の回る)カムイとされ、アイヌを苦しめる悪魔をその知恵で出し抜いたという伝説がある。アイヌ人たちはコウモリが死んだフリをする動物と考えていたらしく、悪魔との争いにおいてもこれによって悪魔を油断させて射殺したとされている。この巧みな擬死によってカパ
プカムイは強く賢いカムイとされたらしい。また、コウモリの死骸は悪魔を退ける呪物とされた。
カブニアン
フィリピンのルソン島の創造神。初めに世界を創ったが、欠点を見つけたのでこれを滅ぼした。その後
モンタログと
モンティニグが新しく世界を創り、また最初の人間を生んだ。カブニアンは彼ら最初の人間達に供物を神に捧げる大切さを教えた。カブニアンには側近である
リチュムという神がいる。
カブラカン
Cabracàn
マヤの一部族キチェー族に伝わる聖書「ポポル・ヴフ(Popol Vuh)」に見える巨魔。
ヴクブ・カキシュの次男。カブラカンとは「地震」といった意味があり、彼はその名の示す通りの怪力で、山々を簡単に突き崩しては、自分は山をくつがえす男だと豪語していたという。彼は父や兄の
シパクナと一緒になって人間たちを支配しようともくろんだため、神によって滅ぼされたという。
ガブリエル
Gabriel
イスラムの伝承における天使の一人。語義は「神の英雄」。死と審判を司る。特に聖地の死の天使の役割を担っており、モーセを埋葬した天使の一人とされている。また彼は慈悲と購いの天使であり、天の財宝を守る役割を持っている。そこから天国の財政を任されているともされる。
イスラエルの守護天使の一人としても数えられ、火と雷の支配者ともされた。天使としての階位は
ケルビムだとされる。またその流れで「神の処罰者」としての役割も与えられている。右手に正義と真理をあらわす剣を、左手には公正さを表す天秤を持っている。甲冑を身にまとい、バケツ型の兜をかぶっているとも伝えられる。
カプロティナ
Caprotina
ローマにおいて三大主神格である
ユノの数ある別称の一つ。ガリア人が攻めてきたのを奴隷たちが知らせた記念に行う、7月7日の祭礼で祀られる主神。
カベイロス
Cabirus
エーゲ海北部の島々と、プリュギア(小アジア地方)における古い豊穣を司る神々。テーバイ(テーベ)でも信仰されていた。複数人存在するので、複数形で、「カベイロイ」と呼ばれることも多い。ギリシア神話に取り入れられ、航海の守護者、鍛冶の神などとして信仰された。
カーマ
Kāma
インド神話における愛の神。性愛・愛欲を司る。オウムに乗り、5本の花の矢を持ち、花の弓につがえて人の心を射る。パサンタは彼の親友である。彼はシバの苦行を妨げようとしてシバの第3の目によって焼き殺されてしまう。それ以来「アナンガ(体なき者)」と呼ばれるようになった。また、「マノーブー(心に生じるもの)」、「カンダルパ」などとも呼ばれる。仏教に取り入られ、
愛染明王に帰化する。
鎌鼬
かまいたち
日本の越後などに現れる妖怪。「窮奇」とも書く。鎌鼬現象(突然皮膚が裂けて、鋭利な鎌で切ったような切り傷ができる現象。気候の変動で空中に真空部分が生じた時、これに触れた人体気の空気が、一時に平均を保とうとするために起こるといわれる)を起こす原因と考えられた。決して姿を見せずに一瞬のうちに人間の太ももなどを切り裂くが、肉を大きく裂かれても痛みはなく血も出ない。このため一説には鎌鼬は必ず三人組で行動し、一人目が人を倒し、二人目が切り裂き、三人目が薬をつけるので傷が痛まないともされた。
カミフレクル
アイヌにおいて
ケネカムイの男性の部分を特にこう言う。ケネカムイはハンノキを顕現体とするカムイで、ハンノキは雌雄一株である。女性の部分は
カミフレマッと呼ばれる。
カミフレマッ
アイヌにおいて
ケネカムイの女性の部分を特にこう言う。ケネカムイはハンノキを顕現体とするカムイで、ハンノキは雌雄一株である。男性の部分は
カミフレクルと呼ばれる。
カムイ
アイヌ民族において、動植物や自然現象などの人間以外のあらゆる自然現象を擬人化した超自然的存在。言い換えればアイヌ(人間)を除いた世界の構成要素。鹿を狩るための毒(トリカブト)が自然界に存在すること、弓をこしらえられるよくしなる木が自然界に存在すること、大きく強いクマが自然界に存在すること、といった人間が持たない自然界の不思議や脅威にカムイは想定される。アイヌにとってカムイは人間と同じように文化をもつ対等の隣人であり、アイヌとカムイは互いに神秘的な存在である。
カムイは山奥や天上にあるカムイモシリというカムイの世界に住んでいて、そこではカムイ達は「カムイネ」と呼ばれる人間と変わらない姿で暮らしている。カムイ達はアイヌモシリ(人間界)に降りてくるときだけ、クマのカムイであればクマの衣装を、タヌキ(ムジナ)のカムイであればタヌキの衣装を着る。カムイモシリに戻るときはこれらの衣装を脱がなければならない。そしてその衣装や仮面を自分で脱ぐのは難しいため、これをアイヌが脱がせるのを手伝う。つまり、皮や肉(衣装)をはいでカムイ達を身軽にする。カムイたちは不死だと考えられており、狩りは人間界に降りてきたカムイ達を彼らの世界に帰りやすくする、ギブアンドテイクの行為だと考えられた。ただし、彼らが人間界に置いていく衣装(皮や肉)はカムイからアイヌへの贈り物であり、これに対してアイヌは礼儀を尽くさねばならない。正しい儀礼とともに行われる屠殺だけが許されると考えられた。
カメナ
Camena
ローマにおける水のニンフで、ギリシアのムサに相当する。ローマのカペナ門外にその聖なる森と泉がある。
カラウ
シベリア北東部のコリャク族に伝わる悪鬼達。「カラ」とも呼ばれる。創造神
テナントムワンが材木を取りに森に行くと、地下に一軒の家があった。そこはカラウの家で、カラウ達はテナントムワンを捕まえ、食べるために太らせ始めた。あるとき、テナントムワンは年老いたカラウの見張りで外に出た。テナントムワンは、研いでやろうといってそのカラウの斧を借り、また「鴨の群れだ」と嘘を言ってカラウがそっちを向いている間に斧で首を切り落として逃げ出した。
自分の家まで逃げたテナントムワンは、「至高神の宇宙」
ニャイネンに「彼らの矢は両目があって、ッ絶対に的に命中する」と訴えた。そこで、ニャイネンはテナントムワンに鉄の口を与えた。まもなく、カラウの息子達がテナントムワンに追いつき、矢を放ちだしたが、テナントムワンはそれを全部鉄の口で受け止め、全部飲み込んでしまった。矢を全部失ってしまったカラウ達は逃げ出した。その後、テナントムワンは矢を吐き出して息子達に与えたという。
から傘
からかさ
日本における
付喪神の一種。「唐傘」、「傘」と書いても「からかさ」と読む。また「から傘小僧」とも言われる。年を経て古びたから傘が魂をもって妖怪となったもの。全体的に傘をすぼめた形で、傘の部分には一つ目と口、腕がついており、また本来柄ガある部分からは脚が一本生えていて、一本歯の高下駄を履いている。雨の日に出現し、一本足でピョンピョンと跳ねながら長い舌を出して道行く人々を驚かす。
カラカルーク
Karakarook
オーストラリアのクリン人が信じる女神。
バリアングの妹。
ブンジルのお陰で、一度は火を手に入れるものの、人間達はそれをなくしてしまった。そのため、蛇がのさぼって女を襲うようになった。そこでバリアングに命じられたカラカルークが地上に降り、棒で蛇を殴り殺していたのだが、その時偶然に棒が石にぶつかり、再び火が出来た。しかし、この火は烏によって奪い去られてしまう。この火はブンジルによって天の星となっていた二人の男によって見つけ出され、人間に渡された。こうして人間は再び火を手にすることができ、二度と手放さなかった。
烏天狗
からすてんぐ
日本の妖怪の一種で、鳶のような顔と姿をした半人半鳥の天狗。大天狗の配下とも言われる。団扇で風を起こし空を飛べるという。
カーラディーヴィー
Kaladevi
仏教において
ダルマパーラ(護法神)の一柱。チベットではラモと呼ばれ、ダルマパーラの中で唯一の女神。他の神々のよって創造された女神で、儀礼的実践によって解脱を得ようとするタントラ仏教(密教)を保護するために様々な武器を与えられた存在だとされる。毒蛇と手綱とし、背中を
ヤクシャの皮で覆われたラバにのり、3つの飛び出した目と10本の腕を持ち、他のダルマパーラと同じく冠をかぶり頭蓋骨の環飾りをしている。ある神話ではヤクシャの皮はカーラディーヴィーの息子のものだが、彼女はその息子を食べてしまったのだという。スリランカのヤクシャの王の妻だといわれることもあり、時には2人の女性的存在を連れて血の湖の上を歩く姿で描かれていることすらある。また血に飢えた恐ろしい女神であることから
ヤマの配偶神とみなされることもある。しかし、真剣に救いを願うものには決して加護を惜しまないという。
カラリワリ
Karariwari
北米のネイティブアメリカンであるポーニー族の言葉で「動かない星」(=北極星)の意。創造神
ティラウ・アティウスがすべての星の軌道と位置を決めようとしたときに北に立つように言われたのがカラリワリであり、他の全ての星がカワリワリを中心として回ることから、ポーニー族では「族長の星」と見なされる。カワリワリは族長と交信して、族長に必要な安定性と支配力を与えるという。カラリワリの近くを回る小円を描く星々は、「族長協議会」と称されている。
カリアッハ・ヴェーラ
Cailleach Bheur
イギリス、スコットランドの高地地方やアイルランドにおける冬の妖精。
ハッグの一種だとされる。その名はゲール語(ケルト語に属する古代アイルランドの言語)で「青い妖婆」と言う意味で、その名のとおり青く醜い顔をしていて、晩秋になると一本の杖を持ち林や森や公園の中を歩き回る。その時、その杖が木々に触れると木の葉がすっかり舞い落ちてしまうという。冬の間日差しを暗くしたり雪を運んだりするのもカリアッハ・ヴェーラで、春が来て五月祭の前夜になると石になる。しかし、再び秋が来てハロウィンの日になると、息を吹き返して美しい夏の乙女に転生し、草花の芽を育て、新しい息吹を吹き込むという。
また動物達の守護精霊でもあり、鹿、猪、野山羊、狼などを使い魔とする代わりに、育て、養い、猟師たちから守る。水をつかさどる能力も持つ。またアイルランドでは沢山の巨石遺構を残したのがカリアッハ・ヴェーラだとされている。彼女が巨人のような大きな姿になってエプロンに石をいれて運んで道路を作ったときに、エプロンからこぼれた石が巨石遺構になったのだという。
カルデア
Cardea
ローマ神話における扉の蝶番(ちょうつがい)の女神。家族生活を司る存在でもある。ローマ帝政初期の抒情詩人であるオウィディウスによって、彼女の神話が
カルナの神話として混同して伝えられたという経緯を持っている。それによれば、カルデアは後にローマ市となるティベル河沿岸にある森に住み、山野で狩りをして暮らしていた。彼女は処女を守る誓いを立てており、男性が近づくと一緒に森に入り、あっという間に姿をくらましてしまうのだという。しかし
ヤヌスがカルデアに恋をして、一緒に森に入った時、双面であるヤヌスはカルデアが岩の背に隠れようとしたところを発見することが出来た。そしてヤヌスは彼女を捕らえて犯した。ヤヌスはその代償としてカルデアに蝶番の支配権と、その支配権のしるしとして、家の戸を守る魔力のあるサンザシの枝を与えた。
カルナ
Carna
ローマ神話における健康の女神。祭礼は6月1日に行われる。夜現れて赤ん坊の血を吸うという魔鳥を追い払う力を持っており、アルバ・ロンガ王プロカスの子が魔鳥に血を吸われていたのを救ったという。ローマ帝政初期の抒情詩人であるオウィディウスによって叙事詩に唄われているが、これはオウィディウスがカルナと
カルデアを混同して伝えたものである。
ガルム
Garmr
ゲルマン神話における冥府ニブルヘイムの番犬。「怒れるもの(gramr)」が語源だと思われる。グニパヘリルと呼ばれるニブルヘイムの入り口である切り立った洞窟に鎖で繋がれており、無闇にニブルヘイムに近づく生者などを追い払ったという(ただし、
オーディンが通った時は例外として襲わなかった)。女王
ヘルの館の門を守護している。ラグナロクの時には、鎖から解き放たれ、ミズガルズで魔軍の有力な一員として戦い、
ティルと壮絶な死闘を演じともに死ぬ。
ガルラ
Gallas
古代シュメールやアッカド神話の中で、冥界に棲むとされる精霊の一種。冥界の女王
エレキシュガルの為に働き、女王の命令で地上に行って生きている人間を捕まえることもあった。目的の人間を手に入れる為には、集団になっていたる所を探し回り、邪魔する者がいるとかなりひどい事もした。ガルラには善い霊と悪い霊、あるいは大小の二種類があるとされ、一方は槍のように細く、もう一方は葦の筆のように細いといわれるが、正確な姿はわからない。
カレイ
Karei
マレーシアのセマン族における偉大な存在。名前は「雷」をあらわし、雷の鳴る音はカレイの怒った声だとされる。怒りをなだめるためには数滴の血が必要だという。
川赤子
かわあかご
鳥山石燕が画集「今昔画図続百鬼」の中で、
河童の一種ではないかと説明している赤ん坊の姿をした妖怪。川辺の茂みや波打ち際にいて、普通は声だけしか聞こえず、不思議に思って探してみても姿は見えないといわれる。河童のように人間にいたずらを仕掛けることも全くない。川赤子が実際に赤ん坊の姿なのかどうかははっきりしないが、石燕は獅子のような顔をした赤ん坊がまるで捨てられているように川岸の茂みにいる姿を書いている。
川男
かわおとこ
日本の岐阜県、利根川流域にあらわれる妖怪。大きな川に網漁に出かけると出合うことが多いという。黒い色をしていて極端に背が高いが、出会うのは夜ばかりなので細かい特徴は分からない。よく川原や川の近くの草むらなどで必ず二人で並んで座り、互いに物語を話している。何もしないでおとなしく聞いていれば人にも物語を聞かしてくれる。
厠の神
かわやのかみ
日本の民間信仰において厠(トイレ)を守護するといわれる神。厠神(かわやじん)、便所神、雪隠神、おへや神などの呼び方もある。便所の壺の中にいて、片手で大便を、もう一方の手で小便を受け取るが、唾を吐いた場合は口で受け止めなければならないのでひどく怒るという。また恥ずかしがりやで、便所に入る前は咳払いして合図をしなければならないとされる。お産とも関係が深く、妊婦が美しいこの誕生を祈願して厠を清めたり、臨月に便所にお参りをしてお産が軽く済むように祈願したりする。これは排便の様子がお産の様子に酷似していることから起こった、いわゆる類感呪術の一種と見られる。
加牟波理入道も厠の神とされる場合もある。また、「厠(かわや)→川原(かわら)」と結びついて、水の神である埴山姫神と
水罔女神の別名ともされる。
岸涯小僧
がんぎこぞう
川辺などに出現し、鋭いギザギザの歯でバリバリと音を立てて魚を喰う妖怪の一種。歯の形が雁木(木こりなどが用いる大形ののこぎり)に似ていることから岸涯小僧と呼ばれるという。鳥山石燕の画集「今昔百鬼拾遺」では、腹と胸をのぞいて体中に毛が生え、尻尾があり、手足に水掻きがある猿のような姿が描かれており、葉がやすりのようだと説明されている。その姿は河童に似ているが頭に皿はない。山口県近辺に住むエンコという河童の一種ではないかという説もある。
歓喜天 かんぎてん
Gaņapati
仏教守護神の一。もとヒンドゥー教のシバ神の異称で、のち仏教に帰依した神。形像は象頭人身で単身と双身の像があり、単身のものは、二臂、四臂、六臂などの別があって、刀、杵などを持ち、双身のものは一つは男天で魔王、一つは女天で十一面観音の化身といい、男女和合の姿に作られる。治病、除難、夫婦和合、子宝などの功徳があるとされる。
大自在天の子で
韋駄天の兄弟とされる。正しくは大聖歓喜自在天。大聖歓喜天、聖天(しょうでん)とも称される。
眼光娘娘 がんこうにゃんにゃん
Yăn-guāng niáng-niáng
中国道教で、子供を産む際にあらゆる災厄から護ってくれる娘娘神のうちの一人。そのうち眼光娘娘は、母体や幼児を眼病から護る役目を司っている。(参考:
乳母娘娘)
ガンコナー
Ganconer
アイルランドの妖精の一種。次々と女に言い寄ることから、言い寄り魔といわれることもある。若い男性の姿をしており、パイプをくわえて人里離れた寂しい場所に出現すると、次々の若い娘達を口説く。口説かれた娘たちは皆がみな恋心を抱くが、ガンコナーの方はさっさと姿を消してしまう。このため娘たちはみな、ガンコナーのことを恋焦がれて死んでしまうという。本当は老人の姿をしており、魔力を使って娘達の心をつかむと言われる事もある。
ガンダルバ
Gandharva
インド神話やペルシャ神話に登場する一種の半神。インド神話では空中および水中にいる妖精で、水の精アプサラスの愛人、配偶神として有名。両者の関係は後世ますます緊密に表され、結婚者にに幸福と子孫を授けると考えられた。神酒ソーマの守護者ともいわれ、天上の音楽師とも考えられた。 ペルシャ神話では黄金の踵をもち、一度に十二人を貪り食う怪物で、英雄クルサースバに退治されたという。仏教では八部衆の一人
乾闥婆として取り入られる。
カンチュウ
アイヌ民族において、氷を顕現体とする男性のカムイ。
アペメルとともに
チピヤクカムイの兄で、チピヤ
クカムイを見初めたアイヌ人の男に試練を与えた。
カントコロカムイ
アイヌにおいていわば天空神に相当する
カムイ性別は定かではなく顕現体としての姿もない。アイヌでは生活に密着したカムイを重要視する傾向があったため、カントコ
ロカムイや
カンナカムイのようなカムイはあまり重要視されなかった。
カンナカムイ
アイヌにおいて雷を衣装としてアイヌモシ
リ(人間界)に現れるとされる
カムイ。「カンナ」とはアイヌ語で「上方」を意味する。「シカンナカムイ」、「ポンカンナカムイ」とも呼ばれる。長く伸びる雷の形が蛇に似ていることから大蛇(竜)としての姿(衣装)もとるといわれている。カムイモシ
リ(カムイの世界)において最も気の強いカムイと考えられるときもある。蛇は空を飛ぶ生き物ではないため、アイヌ人はカンナカムイをシンタ(子供用の揺り篭)にのって空を飛ぶカムイだと考えていた。
雷を初めとした天気状態を顕現体とするカムイであり、神としての風格は十分だが、アイヌ人たちはもっと生活に密着したカムイを重要視して奉る傾向があったために、信仰の対象とはならなかった。神謡においては人間の姿を顕現体とする
アイヌラックル(
オキクルミ、
オイナカムイ)の父とされることが多い。
加牟波理入道
がんばりにゅうどう
日本における厠(トイレ)に住まう妖怪。名前の由来は定かではないが、「眼張る(がんばる)=見張る」といった所から来たのではないだろうか。便所の窓の裏などに潜んでいて、夜中などに一人で厠に行くとホトトギスのような妖しげな鳴き声で驚かそうとする。そんな場合には「がんばり入道ほととぎす」と唱えるといたずらを止めるという。口から鳥を吐く入道の姿をしているという。このおまじないは中国の「厠に入ってホトトギスの初鳴きを聞くと不祥事が起こる」という故事に由来するものと思われる。