「震災復興提言」へのコメント（更新日:2011.6.14）（敬称略）

提言を準備して賛同を得る過程で多くの方々から「コメント」をいただきました。 小異を捨てて大同につくために、賛同者になって頂いた方もいるかもしれません。 それぞれの方のコメントの思いも大切にしたいので、ご本人の許可を得たうえで、ここにコメントの掲載を致します。 一部の方のコメントには私からのコメントをつけたものもあります。（伊藤隆敏）

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[1] 塩路 悦朗 (一橋大学) 2011/05/19

短期間に、経済学の英知を最大限に活かした提言をまとめられたことに感銘を受けました。 大筋では賛成なのですが、以下、いくつかの感想です。

1. 世代間の公平性について：若年層が損をしていることには同意します。 その理由としては社会保障制度もありますが、硬直的な雇用慣行の下で彼らが充分な 雇用やOJTの機会を与えられてこなかったことが大きいのではないでしょうか。
2. 復興財源を主に現行世代に求めることには賛成です。ただしtax smoothingの観点から、 向こう10年くらいの間で税収を挙げることにしてはいかがでしょうか。 一部地域に一時的に集中的に発生した災害によるロスは空間的・時間的に均して手当て することが合理的ですが、今回は震災の影響を受けなかった地域も多いため、主に 同時点内の横のつながりで財源を調達するのがよいと考えます。しかし急激に税収を 挙げるよりも、ある程度の時間をかけて均して財源を調達することは認めてよいと 思います（今は何もせず10年たってから増税する、というのとは違います）。 重要なことは税によって復興財源をすべて調達するための明確な道筋をつけておくことでは ないかと思います。
3. これに対して、原発事故については、これは明らかに現行世代が作り上げてきた制度の失敗に 起因するものであり、つけを将来世代に回すことは全く認められないと思います。 そうでなくても将来世代は土壌汚染、海水汚染、場合によっては健康被害、地に落ちた reputationなどの負の遺産を背負うことになります。 負担を求めるどころか賠償金を払ったほうがいいくらいかもしれません。
4. 原発事故の補償については、東電が払えない分を政府が負担するというよりも、明らかに 事故の直接的被害が発生している部分はあくまで東電の負担で、政府の役割は外部性が 及ぶ部分に（例えば汚染されていないかも知れないが消費者にとっては受け入れ難い ボーダーラインの野菜の買い取り）、という切り分けはできないでしょうか。
5. 消費税ですが、私も理想的な財源と思いますが、これまで政府が社会保障目的と説明して きたこととは矛盾しないでしょうか？
6. 電力について、私も時間別料金制が合理的と考えます。ただこれは現在の技術で可能でしょうか？ よく、「スマートグリッド」がないとできないという話を聞きますが・・・。
7. 時間別が不可能である場合、夏季電力料金の大幅値上げも重要な選択肢と考えます。
8. 病院も24時間稼働が欠かせませんが、電力利用権が高額となった場合、コストを利用者に 転嫁することにならないでしょうか？ 財政面での何らかの手当てが必要ではないでしょうか。
9. コンパクト・シティーについて、ご提案には賛成です。 しかし（ここが私が今回最も強い感想を抱いた点ですが）これが全ての被災者のためになる、 という立場には立たない方がよいのではないでしょうか。特に高齢の被災者(今回の震災の 最大の被害者ですが)の中で、自分の期待余命が比較的短いと感じている人にとっては、 あと10年の間に起こる確率がそれほど高くない次の災害に備えるよりも、あるいは時間と コストをかけて新しい街づくりをするよりも、できるだけ早く元の状態を回復してできるだけ 元に近い生活を始めたほうが、効用が高まる場合が多いと思います。特に家がダメージを 受けなかったか、ダメージを受けたとしても比較的小規模で済んだ人にはそのような思いが 強いと考えます。「にも関わらず」新しい街づくりを進めるべきだと私も考えますが、 そのためには上記のような人々に対して「若い世代のために」協力を、という説得を粘り強く 行うとともに、やはり適切な補償が必要になってくると思います。

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[2] 岡崎 哲二 (東京大学) 2011/05/24

特に電力問題への対応について、先の官房長官の「債権放棄」発言のように、 現在の政府には、憲法・法律で守られている国民の財産権を平然と侵害しようとする 傾向が見られます。これは市場経済の基礎を脅かすきわめて憂慮すべき事態と考えます。

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[3] 清水 順子 (専修大学) 2011/05/25

日々将来を担う大学生に講義をしている身として、震災国債を乱発して将来世代に 増税のツケを回してはいけないことを痛感しております。今こそが増税の必要性を 誰もが認め、覚悟を持ってそれを受け入れることのできる絶好の機会だとも考えております。
また、電力削減手段の一つとして、CO2の排出権取引のように、市場の力を導入して 電力消費権をやり取りするという案も大賛成です。

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[4] 小林 慶一郎 (一橋大学) 2011/05/25

復興連帯税は復興後に廃止するのではなく、社会保障財源の恒久税にスムーズに 移行して継続するべきと考えます。（こうして政治的には復興連帯税を財政再建の 出発点に位置づけ、かつ、Tax Smoothingも実現するべきではないでしょうか。）

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[5] 勝 悦子 (明治大学) 2011/05/25

復興のために国債発行ではなく増税で対応することに賛成ですが、ドイツ連帯税の ように所得税、法人税などについては「時限立法」とすること、消費税は今後負担が 増大すると見込まれる社会保障目的税として復興費用とは別枠とすることなど、 なし崩し的に増税となるイメージを払拭することが必要だと思います。また固定資産税に ついては、環境に配慮した資産は税控除するなど、税インセンティブを駆使し、 より豊かな国土、豊かな都市作りをしていくことが肝要です。さらに、食糧品など 生活必需品の消費税は低率とし、たばこ、その他賭博的サービスは増税するなど 豊かな社会構築のためメリハリをつけていくべきでしょう。
また、「電力不足対策に市場メカニズム導入」については、その通りだと思いますが、 電力不足を前提に議論をされていることが気になります。短期ではおっしゃる通りだと 思いますが、現在求められているのは、この非常時にしかできない抜本的改革なのでは ないのでしょうか。すなわち、米国に比べ高い電気代を支払っているのは何故なのか （ドイツ、イタリアは日本より高いですが）、分割された地域それぞれで、発電、送電、 配電すべてが独占状態になっていること、東西で周波数が違うため、変電に大きな コストがかかること、したがって価格メカニズムが働いていないことなど、安心安全に 配慮しながらも、電力自由化に向けて構造を大きく変えていくべきではないかと思います。 これは東京電力の破綻処理をどうするかとも関わってきますが、この点については、 hoshi-kashyapのWSJへの寄稿に賛同します。

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[6] 川�ｱ 健太郎 (東洋大学) 2011/05/25

「将来世代にツケを回さない」＝「復興財源が増税」という経済学の示す「原則」が、 広く国民に受け入れられるため、その説明責任が「政治」にあることは明らかです。 現政権には、その責任を十二分に果たすことを切に願います。

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[7] 大橋 弘 (東京大学) 2011/05/26

少し議論がありそうなのは、大型電源の集中配置を見直したあとの姿です。 仰るように、分散型の流れは強まるのと思いますが、太陽光などの再生可能エネルギーは 恐らく５−１０年のスパンで見守る必要があり、他方で自家発は効率が悪く運転コスト （燃料費）も高過ぎるので、本当に国民経済的に割に合うのか疑問です。「飛行機事故を 減らす最良の方法は飛行機を飛ばさないこと」と言われますが、その潜在的なコスト （死荷重）を指摘できるのは経済学者だけのように思います。

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[8] 川口 大司 (一橋大学) 2011/05/26

市場メカニズムの活用に関連して，労働分野では最低賃金の引き上げを被災地域では 当面凍結することが考えられます。2008年7月1日より施行された新最低賃金法では， 最低賃金水準の設定に当たり生活保護額との整合性が問われるようになったため， 生活保護額とのギャップを埋めるために，都道府県別最低賃金の増額が毎年行われています。 復興までの期間被災地域を最低賃金上げの対象から外すなどの配慮が中央最低賃金審議会では 求められると思います。

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[9] グレーヴァ 香子 (慶應義塾大学) 2011/05/26

私も、出来る限り将来世代に負担を残さず、広く浅く助け合うべきだと思っておりました。 具体的な数字まで調べてくださってありがとうございます。また、政治はもっと 説明しながら政策を行うべきだという点も深く賛同いたします。どんな政策にも反対は あります。それでも説明しつつなんとかしていくのが政治というものだと思います。

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[10] 西條 辰義 (大阪大学) 2011/05/26

ここ半年、UCLAにいますが、震災の直後、東京電力・政府が地区ごとの停電をする話を 聞き、驚愕しました。ごく普通の日本人は、そのような配給方式に頼らず、ごく自然に、 停電が起こらないように節電したのですね。直後はともかく、夏に向かって電力の 供給上限があるのだから、お上のいうことを聞け、ないしは人々の善意に頼る、 という手法は賢い政策ないしは制度設計ではありません。数量制約がある場合、 配給ではなく、価格で調整するしかないというのが経済学の常識ですが、たぶん政府・ マスコミともに価格調整を嫌うのだろうなあ、と思っておりました。彼らの理屈は、 電力料金をあげることによって、被災者や低所得者に追い打ちをかけ、加害者の東電に もうけさせるのか、ということのようですが、これを回避（消費の一定量までは電力料金を 上げない、ないしは必要なら下げるなどの対策を簡単にとれるはず）し、払うべき主体が きちんと払うことにするのは難しい話ではありません．電力消費を、我慢できる主体から、 どうしても電力を必要とする主体へと融通（取引）することもできるはずです。 へたな規制をかけると目にみえない大きな損失＜経済学にいうところの死加重(dead weight loss)＞ が発生するのですが、実際に誰かのポケットからお金が飛んで消える訳ではないので、 簡単に安易な配給方式に頼ってしまうのかもしれません。
肥満体質をかかえたまま、戦前タイプの配給手法では日本はもうやっていけません。 気がつくと、日本経済が、がりがりに痩せ、飢餓状態になるやもしれません。震災や 原子力災害を機に、まじめに働く人がほんとうに報われ、社会的弱者が泣きをみない 新たな社会へと大変革することができるのではないのでしょうか。

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[11] 嘉治 佐保子 (慶應義塾大学) 2011/05/26

電力不足は夏が終わっても終わりません。 新しい電力モデルをデザインし、今から一歩一歩着実に実現に向けて進む必要があります。 そうすれば供給制約をはずし、日本の新しい主要産業として諸外国に対し提供することも できます。

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[12] 川西 諭 (上智大学) 2011/05/26

まちづくりに関しては国土交通省などのトップダウンのやり方では住民の理解が得られずに 復興のブレーキになってしまったり、将来的な禍根を残すことになるのではないかと 危惧しています。複数案を提示して住民に選択させる、公聴会などを決定前に複数回開催し、 住民の納得する案を模索するなどの徹底した合意形成努力が必要だと思います。

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[13] 大来 洋一 (政策研究大学院大学) 2011/05/26

「増税は不人気」なのですが、最近では国民も復興のためなら受け入れる、という人が 多いように思います。義捐金と同じだ、と説得すれば容易なのに、政治家は何をおそれて いるのでしょうか。

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[14] 深川 由起子 (早稲田大学) 2011/05/26

細かい点は専門の方々にはいろいろご意見があるとかと思いますが、とりあえず、 まずは3大原則を強く政治家、国民が認識する必要があると思います。 近年の経済政策は原則・大枠が決まらないうちに選挙対策的な個別政策がバラバラ提起され、 全体像を欠いてきたきらいがあります。必ずしもその分野の専門家ばかりとはいえない、 錯綜したさまざまな懇談会の意義や政策との関係も不透明なところがあります。 まずはこれを是正することが必要ではないでしょうか。
そもそもがこういった大非常時にグランド・デザインを描くのは普通の国ではエコノミストの 仕事であり、そうならないことが非常に不思議です。震災復興の実践プロセスでは専門家の 知見動員システムのものを作り直す必要もあると思います。

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[15] 本多 佑三 (関西大学) 2011/05/26

方向としては賛成します。しかし、上手にやらないと成長軌道に乗れません。 景気への慎重な配慮・工夫が必要だと思います。橋本政権の時、景気が悪化したことを 思い出します。

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[16] 市村 英彦 (東京大学) 2011/05/26

第3提言を除いて、賛同します。全文版を読ませて頂きました。 確かに税を中心に各種取り混ぜて財源調達すべきと私も思いますし、電力のコントロールは 市場を使うべきで、値上げ分の収入増は復興財源に回せばよいです。しかし最後のところは あまりぴんときませんでした。非常に危険な場合には強制的に危険地域に住宅を建てることを 禁止するというところまでは賛成ですが、その後土地の広いところで「集積の利益」を 作り出せるかどうか。本来田舎らしいところを好む人が多いだろうところで、かなり 難しいのではないかと思います。
私は現状きちんとした情報に基づいて政策が決定されていないのではないか、ということを 危惧しています。例えば今現在全体で何人の人の基本的ニーズ（食事・健康・風呂など）の レベルでやっとの状態なのかということに関して中央政府で把握している人はいないのでは ないでしょうか。また、2％程度の金利で融資を受けることのできない被災地の自営業者が どれくらい今の時点でいるかも誰も正確に把握していないのではないかと思います。 そのあたりの情報をどのように精度良く集めて対策に結びつけていくかを緊急にきちんと 市町村レベルでアドバイスしていく必要があるのではないかと感じています。

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伊藤隆敏：
まあ、農家の人にいきなり高層アパートに住め、というのは難しいかもしれませんが、 とくに高齢者、介護を必要とする人達は、町の中心から幹線道路沿い、3キロ圏内、 というような街づくりはできるのではないでしょうか。（とくに仙台平野。） 地方財政・医師不足が厳しい中、医療・介護・除雪などを集中する必要があると思います。
それから、マスコミは避難所にいる人達にインタヴューして、「みんな一緒に暮らしたい、 村に帰りたがっている」、という報道を繰り返していますが、避難所にいない（つまり東京や 大阪に移住してしまった）人達のことはほとんど報道されません。つまりマスコミ・インタヴューは、 バイアス・サンプルです。つまり、村の再興をしたとしても、人口は元通りにはならない。 原発周辺や津波被災地のもっとも激しく被災した地域などでは、どこででも働ける能力を持つ モビリティーのある人達はもういなくなっているのではないでしょうか。実際に、人口が どれくらい減るのか、どのような街づくりをすれば、モビリティーのある人達が戻ってきて くれるのか（コンパクト・シティーのほうが戻るでしょう）、という観点も重要と思います。

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市村英彦：
先ずはどれくらいセンサスブロック程度の小さな地域ごとに人口が減りそうなのか、どのような 条件なら人口の減少が押さえられるのか、ということを調べるなど実態を正確に把握することが 急務だと思います。

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[17] 大橋 和彦 (一橋大学) 2011/05/26

人・物・リスク、広い意味で資源を有効に利用し負担を分かち合うには、取引を通じて過不足を 自由に融通しあう「市場の活用」が有効であると、多くの人に納得してもらうことが、低迷が続く 我が国が立ち直るために一番大切だと考えています。提言では市場の活用例として電力取引が 挙げられていますが、これを期に既存の電力会社でなくても参加しやすい電力市場が構築できれば、 より効率的でリスクが分散された電力利用が可能となるのではないでしょうか。また、提言では 触れられていませんが、ファンドや証券化等の手法を用い金融市場を活用することで、インフラ 整備等のための復興資金を税金以外で調達する方法を探ることもできると思います。

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[18] 生藤 昌子 (大阪大学) 2011/05/27

提言１に関しまして、「復興国債」を追加発行して10年後に返済するというアイディアは今後10年間に 二度と震災がないということを想定していると思われます。現在の日本は明日にもどこかで 東日本大震災規模、あるいはそれ以上の震災が起きるリスクが高まっています。したがって、今国債を 発行しても返済できない可能性があり、Ponzi-Game を続けていくことになります。
将来の震災リスクについての認知を正して今の世代が復興コストを負担すべきであり、震災に対する 適応能力を高めて備えることが大切だと思います。

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[19] 翁 邦雄 (京都大学) 2011/05/27

提言に基本的に賛成します。
基本的に、というのは「町づくり（提言３）」についての留保によります。 提言3にも必ずしも反対でありませんが、「コンパクトシティ」がどの程度に 「集中的に」展開されるべきと考えられているのか（少数の大コンパクトシティなのか、 多数のミニ・コンパクトシティなのか）提言では詳細版でも判然としません。 構想に合理性はあると思いますが、実現性・効率性を考えたとき集中度を捨象できるほどの 普遍性はないのではないか、とおもいます。

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[20] 山上 秀文 (近畿大学) 2011/05/27

全文版「経済学者提言に賛成」します。 ただし、提言の実行にあたっては、特に以下の２点に留意する必要があると考えます。

1. 「復興連帯税」導入にあたっては一時の増税ショックが景気を失速させる恐れを和らげる ために、借り換えを認めない３-５年の復興中期国債と組み合わせることが望ましい。 この措置は将来世代にツケをまわすことにはならない。
   
2. エコ・コンパクト・シティーはまずPFIや民間ファンドの手法を用いて、１-２箇所の モデルシティー建設を行い、民間資金が集まるか、また自発的入居者が集まるかを しっかり確認のうえ、地域全体に拡げていくべきである。官主導による 「ふるさとの破壊」があってはならない。
   
   

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[21] 青木 玲子 (一橋大学) 2011/05/28

賛成です。提言３をのぞき。電力利用権を家庭にも配分すれば、それを企業などに 売って夏休みは山で過ごせます。

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[22] ******** (********) 2011/05/28

「震災復興にむけての3原則」に賛成いたします。民主党政権が“バラマキ”的な政策を したら、経済に混乱をもたらすと、とても不安を感じていました。

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[23] 森棟 公夫 (椙山女学園) 2011/05/28

賛成。３は，高台、内陸地の知識が無く留保。

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[24] 中村 洋 (慶應義塾大学) 2011/05/29

「キャップ・アンド・トレード」の仕組みも大変興味深いと思いました。 一点だけ感じましたことは、そのような仕組みに、病院のような社会的な基盤となるような 組織も参加させてしまうと大きな反発が出てくることが予想され、実現性が乏しくなり かねません。参加する企業・組織（家計も含む）、参加させるべきでない組織の線引きも、 具体的な実現を議論する際には、重要になってくるように感じました。

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[25] 鈴村 興太郎 (早稲田大学、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ) 2011/05/29

基本的に賛同します。敢えて短くコメントすれば

1. コスト負担原則には共感を持ちますが、必要な財源をここで書かれている増税のみで まかなうことが本当に実行可能なのかに関しては、経済学的な側面のみならず、政治的・ 社会的な選択の側面からも、さらに踏み込んだ議論が必要だと私には思われます。
2. 第３提言のトーンは明らかに第１提言、第２提言とは異なって、相当集権的な リーダーシップを背後に想定しているように思います。冒頭に書かれた「強い政治の リーダーシップ」こそ、大震災によって露呈されたように菅政府の最大の弱点で あるだけに、この部分の提言を「べき」論だけで押し切ることには無理があるの ではないかと懸念しています。

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[26] 櫻川 昌哉 (慶應義塾大学) 2011/05/30

1. 財政支出額を圧縮できる可能性を議論すべきではないか。 資産の直接的被害16-25兆円の根拠がややあいまいではないか。 内訳の中で最も大きい社会インフラであるが、いずれの計算も、過去の進捗ベースの価格を そのまま積み上げたもののようにみえる。果たして再取得価格に等しいか。 東北は、80年代、９０年代に地元大物政治家の威光もあって、むだな公共事業が集中的に なされた地域のひとつ。さらに、当時は談合によって割高な価格で受注しているだろう。 過去15年のデフレでたとえ同じものであっても、割安で受注できるはず （計測上のデフレーターの問題）。神戸の10兆円からの比較類推は危険。 神戸の震災で影響を受けた社会資本は生産性が高い。 そう考えると、3-5兆円くらい圧縮できるのではないか。 一般に、したり顔で推定支出額を大きくして議論する傾向があるが、もう金がないのだから、 それは危険。
2. 財政再建は高齢化という恒常的なショックの問題、震災復興は一時的なショックの問題、 基本的には性質が違うので対処が変わってきてもおかしくないのでは。 財政危機の問題がないとして、震災への対策を考えるときに参考になるのが、災害や 戦争などの一時的シックがあったときの経常収支問題の考えたかを応用することであると思う。 復興で政府支出が一時的に必要になるとき、ライフサイクル仮説をもとに消費平準化がベストで あるという基準で考えると、選択肢は３つ。
   １．支出は課税で調達。個人は海外から借金。
   ２．支出は内国債で調達、個人は海外から借金。　
   ３．支出は外債で調達。個人は借金せず。　
   借金の金利は政府のほうが安いので、3がベストになる。 さらに、日本の財政危機の状況、政治的制約を考えたとき、外債だと財政規律が維持される可能性が 高いので、外債がベスト、次が課税、最悪は内国債（財政規律がなくなる）という考え方ができる。
3. 世代間の負担の公平の観点。 2と関連して、長期的な財政再建については、この基準は基本だが、震災ショックについても基本となるのか？　 消費平準化の基準も重視すべきではないか。すさんだ状況で、国民は消費不況に耐えれないかもしれない。
4. 世代間の公平性→　「年金改革＞増税＞国債」
   やや唐突感を感じる。世代間の公平が議論の柱であるなら、まず年金改革について言及すべきであると思う。 人口減の社会で、賦課方式の年金制度は、高齢者による若者への搾取マシーン以外何物でもない。 効率性の観点からも社会的公正の観点からもおかしい。 増税するのであれば、やはり世代間の公平性に配慮すべきではないか。 提案されている税の中では、資産課税が整合性があるが、資産価格の下落が心配。 相続税の控除わくの撤廃などはいいが、即効性が弱そう。　消費税は公平性の観点からむずかしいかも。 この精神に立った最も望ましくかつ有効性が高いのは預貯金への課税であろう。 預貯金を保有しているのは、主に高齢者で、全体で700兆円、デフレで稼いでいる１％の半分の0.5％の課税で、 3.5兆円ねん出できる。預貯金をしているのは、金融の資産運用について無知な高齢者が多いので、流出は少なく、 ほぼランプサムととれる。消費税は、長期的な財政再建には必要だが、震災対策に使うにはリスクが高い。 3月の落ち込みに見るように、消費の動きは読めない。 消費を握っているのは直観で動く女性であることを認識したほうがいいと思う。
5. コンパクトな街づくり
   支出削減の観点から望ましいと思う。ただし、住民の説得は大変かも。 巨大な堤防を作る費用と移転の費用をみせて、住民に判断させるなど気配りのあるプロセスが必要かも。
6. 東北は今回の危機をさかいに、人口減、人口流出が急速に進む可能性がある（神戸ですら減った）。 復興の鍵は、金よりもむしろ人材がどれだけとどまるかだと思われる。その点を留意したプランを設計すべきだと思う。

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[27] ******** (********) 2011/05/31

電力対策としてもっと市場メカニズムを用いるべきだとの点には特に賛成です。 とはいえ不足しているという意味で質が悪いサービスの価格を引き上げることへの賛同を、 エコノミストのロジックに慣れない一般の方々から得ることは難しいかもしれません。 行動経済学におけるframing効果やreference効果の知見を生かし、実効面では不足時に価格を 引き上げているにもかかわらず、そう見えないように制度を設計することが大切だと思います。

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[28] 細野 薫 (学習院大学) 2011/05/31

消費税増税は数年間かけて段階的に実施することが、消費の変動を小さくできて望ましいのではないか。

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[29] 田近 栄治 (一橋大学) 2011/05/31

• 復興における国民参加意識を持続させるには、ビジョンと財源を一体とすることが必要
• 復興の事業内容と個別事項の支出額を国民に開示したうえ、成果をわかりやすく説明する必要
• 阪神大震災では復興予算がなく、ビジョンと財源が一体化されず、成果の全体像が不透明
• 提言１：　復興の最初の時点から、復興支出全体を管理し、事後には評価の対象となる会計を作るべき
• 提言２：　復興会計では、�@新規予算と既存予算の組み替え、�A国と地方の事業と負担について、 とくに明記するべき。

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[30] 新海 尚子 (名古屋大学) 2011/05/31

第1提言、第2提言につき、「国債発行」というのが、おそらく一時的ではあり政治的コストが 低いためか、そちらを押されるエコノミストも少なくない中、世代間分担に関連し、制度的な 持続可能性を踏まえての分析がたいへん勉強になります。サンフランシスコでの1980年代の 大地震の後も、消費税が期限付きでしたが、高かったと記憶しております。第3提言（街づくり） につきましては、社会的厚生が最大になるような施設の設置に対しての実現可能性、および 社会的厚生へのリターンの大きさおよびコストを踏まえますと、やや疑問が残るように存じます。 基本的には「持続可能な街づくりの形成」には賛成なのですが、どのように形成するか、 どのような形態が社会全体にとって効用を最大化するかについては、地域の特性もあり議論が わかれると思われます。

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[31] 中条潮 (慶應義塾大学) 2011/06/03

「電力料金の市場化」はもちろん大賛成ですが、それほど複雑なことを考えなくても、 時間帯別料金と従量増加型料金体系で基本的に対応できると思います。「将来も維持可能な 街づくり」の内容にも賛成です。「壊れたものをすべてもとに戻そうとしない（つぶれた ままに放置する）」という決断も必要と考えます。これに加えて、「防災対策における 不確実性」をどう考えるか、（私は、不確実性の低い災害は放置するという選択肢は あると考えています）が課題になるかと。なお、「後代の世代に負担をさせない」と いうのは、今回、震災対策財源でクローズアップされましたが、環境問題、資源問題など、 あらゆる分野について検討すべき課題かと思います。 私は、「負担もさせない」代わりに「美田も残さない」考えなのですが。

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[32] 大野 泉 (政策研究大学院大学) 2011/06/06

３原則に賛同いたします。ただし、原則１の「復興コストのツケを将来世代に回すな」については、 税負担のあり方は様々な選択肢、または組み合わせを検討するという前提でと理解しています。 また、個人的には復興目的で消費税を引き上げる場合は時限的措置にすることとし、復興後そのまま 税率を安易に維持することには躊躇します。日本の財源は非常に厳しいですが、年金制度の抜本的見直し （現行のPay as you goからPrivate pension systemへの移行を含め）を行ったうえで、どの程度の財源が 必要かを検討してから、恒久的な増税の是非に結論をだすべきだと思います。

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[33] 佐々木 百合 (明治学院大学) 2011/08/18

震災後、「電力使用を控えよう。」と、街灯は消され、店頭の明かりも控えめになり、 建物の廊下は薄暗くなりました。しかし、本当に必要なのはピーク時の電力使用を 抑えることであり、全体的に電力消費を控えることではないと思います。 確かに無駄な電力使用を抑えることはエコの観点からも望ましいことだと思います。 また、震災後のつらい時期に繁華街が煌々として賑わうことには心情的にも抵抗が ありました。しかし必要以上の抑制や、ピーク時以外の使用制限は、消費減退に結びつき、 電力売り上げも落ち込むので、少なくとも経済的には望ましくないのではないでしょうか。 二つ目の提言で述べられているようにピークロードプライシングを実践することで、 ピークシフトがうまく働くのではないかと思います。たとえば電力料金の安い夜間には 繁華街は適度に明るくなり、街灯も灯り、タイマーで夜間に設定できる家電は 夜間に稼働させるなどの工夫も積極的に行われると思います。 ピークロードプライシングによるピークシフトは、ピーク時の料金を「相対的に」 値上げすることが重要で、極端な話、夜間の料金を下げる、といったことだけでも 実現可能です。ピーク時の料金を値上げして、電力会社を儲けさせようという魂胆がある、 などといった的外れの指摘をする人がいるために議論が盛んにならないのは残念です。 また、時間帯別料金設定が難しいという話も耳にしたことがありますが、その設定を 可能にするのにどれくらいコストがかかるのか、などといった具体的な議論が 公にされているのは目にしたことがありません。そもそもこのような問題を政府内で どのように検討しているのか、現在のエネルギー政策がどのような議論のうえ最善であると 判断されたものなのか、その辺が国民にみえてこないこと自体も問題だと思います。 （第一の提言と第三の提言については賛成の部分もありますが、細かい点については 他の方法ももっと考えらえると思いますのですべて賛同ではありません。）

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