ロシア、容疑者の重要情報を伝えず=ボストン事件で米政府関係者

[image] Associated Press

ツァルナエフ容疑者の埋葬場所には枯れた花が。リッチモンド近郊のこの場所以外は同容疑者遺体の受け入れを拒否した

 先月15日にボストンマラソンの会場で発生した爆破事件に関連して、米政府関係者はロシアが事件の容疑者に関する重要情報を事前に米国に伝えていなかったと述べた。米露間の不信で大惨事を回避する機会を失ったとの見方が強まった。

 ロシアは2011年、米連邦捜査局(FBI)に対してボストン爆破事件のタメルラン・ツァルナエフ容疑者について通報した。通報のきっかけはタメルラン容疑者が母親やロシアにいる親戚と携帯電話でやりとりしたメールだった。捜査について説明を受けた米政府関係者によると、これらのやりとりからは、タメルラン容疑者がコーカサス地方の過激派組織に参加したいと考えていることが伺えるという。ロシアはこの組織が同地方でのテロ活動に関与しているとみている。

 米政府関係者がこうしたメールについて知ったのは爆破事件から約1週間後のことだったという。複数の政府関係者はこのような正確な情報がわかっていれば、タメルラン容疑者をさらに詳しく調査していたと述べた。タメルラン容疑者は爆破事件後、警察との銃撃戦で負傷し、死亡した。タメルラン容疑者の弟のジョハル容疑者は現在も身柄を拘束されている。

 ボストン爆破事件では、事件のさまざまな兆候が米露間で共有されておらず、米政府関係者はこのメールのやりとりはその中でも最も重要な情報だったと述べた。ある米政府関係者によると、一般論としてジハード(聖戦)について議論しているメールが少なくとも1件あったが、テロの計画についての具体的な言及はなかった。

 下院情報委員会のマイク・ロジャース委員長(共和党、ミシガン州選出)はこの情報が伝達されていれば、「FBIは捜査を開始して(タメルラン容疑者の)通信記録を追跡することができただろう。ここで連携がうまくいかなかった」と述べた。

The Lowell Sun/Associated Press

ボストン爆弾事件のタメルラン容疑者

 米国内の過去のテロ計画から、米政府機関の間の情報共有が十分ではなかったことが明らかになっており、ボストン爆破事件についても同様に情報共有に問題があったことが指摘される可能性がある。しかし、米政府関係者によると、ボストン爆破事件については米露が情報共有できなかったことが問題視されている。米政府関係者によると、ロシア政府が11年にタメルラン容疑者について米側に通報したあと、FBIは3回にわたって追加的な情報の提供を要請したが、情報は提供されなかった。タメルラン容疑者はキルギスタン出身で、米国には合法的に居住していた。

 ロシア政府は同国の治安機関はタメルラン容疑者に関する情報をほとんど集めていなかったとしている。しかし、ダゲスタン共和国の関係者はタメルラン容疑者が12年に6カ月間、ダゲスタンに滞在した際には同容疑者を監視していたと述べている。ロシアは米国にこうした詳細について一切報告していなかった。ダゲスタンの当局者によると、タメルラン容疑者はダゲスタン滞在中に過激派の有名な人物1人と会っていた。

 米政府関係者はタメルラン容疑者の携帯電話でのやりとりがなぜ米国にもっと早く通報されなかったのかはわからないとしつつも、ロシア政府に情報源の保護や、情報をあまり信用していなかったなどの事情があったのではないかと述べた。

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