男性不妊治療:無精子症の患者を顕微授精、無事出産

毎日新聞 2013年05月10日 20時00分(最終更新 05月10日 21時33分)

精子発生の過程
精子発生の過程

 セントマザー産婦人科医院(田中温院長、北九州市)は10日、男性不妊の一つ、無精子症の患者から、精子になる前段階の「円形精子細胞」を取り出し、顕微授精で妊娠、出産に成功したことを公表した。国内での出産は初めて。臨床研究として実施した。12日に札幌市で開かれる日本産科婦人科学会で発表する。

 円形精子細胞は精巣内で精子のもととなる精祖(せいそ)細胞が2回減数分裂してできる細胞で、成熟すると精子になる。染色体は精子と同じものを持つ。

 同院は、精子を作る機能が損なわれ、治療法のない「非閉塞(へいそく)性無精子症」に着目。他の細胞と見分けることが難しかった円形精子細胞を精巣内から効率良く見つける手法を開発。卵子を電気刺激してから顕微授精する工夫も加え、2011年9月から現在までに延べ856例に顕微授精を実施、80人の赤ちゃんが誕生した。自然妊娠で生まれた子と比較して大きな異常はないという。

 円形精子細胞を使う方法は以前、海外でも実施されたが、成功率の低さから00年以降は報告例がない。国内では日本不妊学会(今の日本生殖医学会)などが「臨床応用は時期尚早」との見解を示し、凍結されていた。同院は11年、院内の倫理委員会の承認を経て、厚生労働省の指針に基づく臨床研究として実施を決め、日本産科婦人科学会に報告した。

 田中院長は「非閉塞性無精子症患者の3〜4割は円形精子細胞を持っている。不妊に悩む男性が、倫理的な問題がある第三者の精子提供に頼らず、子を持つ可能性を広げる成果だ」と話す。【永山悦子】

 ◇無精子症

 精液中に精子がない男性の病気。患者は男性の100人に1人とされる。そもそも精子ができない「非閉塞性」が全体の8割、残りは、精子は正常に作られるが精子の通り道の精管が塞がっている「閉塞性」だ。非閉塞性は、遺伝的要因のほか薬や病気による精巣障害で起きることもある。妊娠には第三者からの精子提供に頼ることも多い。

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