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   この世の果てで恋を唄う少女YU−NO(SS/エルフ)

 1、ゲームの概要

 このゲームはプロローグ部分である、主人公が並列世界を旅するきっかけとなる事件だけは普通のコマンド式ADVですが、それ以降の並列世界・異世界「デラグランド」での旅は、画面上の対象物にカーソルを合わせ、それをクリックしていくタイプのADVになります。

 対象物にカーソルを合わせると、主人公が取る行動が表示され、それをクリックするとその行動を取り物語は進んでいきます。またこのゲームには、アイテムも多数存在し、その対象物に合ったアイテムを使うと、新たな展開に進展していくこともあります。

 プレイヤーは主人公「有馬たくや」となり、父から譲り受けた時を遡ることが出来る道具リフレクターデバイスを使ってこの並列世界を旅し、このリフレクターに本来装備されていた8つの宝玉を見つけ、異世界「デラグランド」に飛び、この並列世界とデラグランドとの関係の謎を解く事が目的です。

 この並列世界と言うのが、このゲームの最大のポイント。主人公の持つリフレクターの真中にある青い玉は、分岐点に到達すると点滅し、その点滅したシーンでどのような行動を取ったか、どんなアイテムを使ったかで、ストーリーは分岐していきます。

 自分が通った並列世界はリフレクターに搭載されているマップ「A・D・M・S」に記録されていきます。取り返した宝玉を使うと(見つかっていない宝玉も、A・D・M・S上に表示されています)A・D・M・S上に表示され、その表示された宝玉をクリックすると、そのルートに戻ってくる事が出来ます。このゲームは分岐が複雑なので、重要だと思えるところでは、この宝玉を使って道しるべを立てておき、すぐに戻ってこれる様にしていく事が大事です。

 このゲームはいわゆる「ギャルゲー」に分類されるゲームです。ゲームには6人の女性(神奈、美月、澪、亜由美、絵里子、香織)が登場し、その内5人がヒロインになる(絵里子は例外)になる、5つの大きなルートに選択次第で分岐していきます。彼女たちとどううまく付き合っていくかも、このゲームのポイントだと言えるでしょう。

 2、ゲームの魅力

  このゲームの最大の魅力は、ストーリー分岐が豊富に用意されているにも関わらず、そのどのルートでも高いストーリー性を有していることでしょう。

 各ルートでは、主人公とそのルートのヒロインの恋愛的な話と、デラグランドに関する謎でストーリーが構成されているのですが、どのルートもボリュームを生かした丁寧な作りになっていて面白いです。各ルート共、更にルート分岐があるのですが、そのどのルートもそれぞれ違った味のある話なので1度そのルートを制覇しただけでは、全てを味わい尽くすことなど到底出来ないので、何度でも楽しめる作りになっています。

 ヒロインたちは、自分たちのルート以外では、当然他のヒロインを引き立てる脇役として出てきますが、脇役として出てきても、その個性を失うことなく物語に溶け込んでいるのもポイントが高い所です。

 ゲームにはいろいろなアイテムが登場し、それをどう使うかでルートが分岐したり、新たなアイテムやクリアに必要な宝玉をゲット出来るか決まる訳ですが、そのアイテム、必ずしも必要なアイテムがそのルートで見つかるとは限らないのです。つまりAのルートで必要なアイテムは、実はBのルートで見つかる場合も多数あるのです。

 ゲームの目的である8つの宝玉も各ルートに散らばっているので、常に各ルートを注意深く見ていく事が大切。「A・D・M・S」を見てルートを良く確認し、怪しいと思われるが、手持ちのアイテムではどうしようもない時には、マップ上に宝玉を置いていつでも戻ってこれる様にしておき、別ルートを探索する事がこのゲームの鍵になるところです。各ルートのハッピーエンドを見る為には、アイテムの力が絶対に必要になります。

 まあハッピーエンドを見なくても宝玉を集める事は出来ますが、それではやはり後味が悪いですし、ハッピーエンドを迎えないとクリアに必要なアイテムをゲット出来ないこともあるので、なるべく各ルートともハッピーエンドを迎えられる様、動いた方がいいですね。各ルートでどうアイテムや宝玉をゲットするか?またそれをどの局面で使っていくか?ADVながら、こういう駆け引きなど高いゲーム性を有していますね。

 これだけ壮大なストーリーですから、登場するキャラクターの台詞も膨大な物になりますが、それを有名声優さんたちがフルボイスで演じているところも凄いところです。

 3、ゲームの欠点

 このゲーム、並列世界を探索しているときは、2で書いたとおり高いストーリー性とゲーム性を有した作りになっているのですが、目的の場所であるデラグランドではそうでもなくなります。ルート分岐はないですし、アイテムを使ってゲームを進展させていく事もなく、専ら画面上の対象物をクリックして行動していく単調な展開になっていきます。

 しかも並列世界に登場した人物達の殆どは出てこないので(引き続き登場するのは、主人公の有馬拓也、亜由美、絵里子、龍蔵寺の4人だけ)、寂しいものです。まあデラグランドで登場するキャラも多数いますが、並列世界をかなり長くプレイする事になるので、いまいち新キャラに愛着が湧かないんですよね。

 亜由美、龍蔵寺とプロローグとなる事件に居合わせた人物は登場するのだから、あそこにいたもう一人「神奈」は出して欲しかったのに・・・・(何故彼女があそこにいたか?これゲーム終わっても解明されないんですよね)。

 ストーリー展開が単調な上、デラグランドと並列世界の関係に関する謎解きも実にあっけないものでちょっと拍子抜けします。最後の方は盛り上がるのですがね・・・・・。まあこれも前半の並列世界が良く出来すぎていることからくる不満かもしれません。

 4、総評

 このゲーム最初にやった時は、その斬新なアイデアに度肝を抜かされましたよ。ストーリーがルート分岐していくゲームは他にも多数ありますが、このゲームの様にそのルート間を移動して、あるルートで必要なアイテムを別のルートから探してくるなんて言う、それぞれの話が、密接に繋がっている作品はありませんでしたから。

 話自体もデラグランドとこの並列世界の関係の謎を、各ルートにうまく散りばめているので、長くても全然苦にならないくらい面白かったし、ひとつのルートで謎だった事が別のルートで明らかになっていくので、どのルートも好奇心が衰えず、飽きずに楽しむ事が出来たと思います。まあ僕は、アイテムを集めたり、謎を解いていく事が大好きな人間なので、色々なルートを探索してアイテムを集め、それを有効に使って謎を解いていくと言うこのゲームのコンセプトが気に入ったのかもしれません。

 元々がエロゲーなので、エロいシーンも沢山出てきます。まあサターンは家庭用ゲーム機なので、大体のシーンは、元のパソコン版より性描写を控えた物になっているのですが、それでも結構綺麗な出来で好感が持てましたよ。このサターン版をやった後、パソコン版の攻略本を読んだのですが、それによるとパソコン版では、デラグランド編の最後で、たくやがユーノと愛を重ねるシーンがあるみたいなのです。しかし・・・サターン版ではこれないんですよ・・・・ユーノはこのゲームの真のヒロインと言える女性なのに、なんでユーノとのシーンはカットされてしまったのでしょうか・・・これはかなり疑問に思うところです。

 僕はこのゲーム、同メーカーが同じサターンで出した「野々村病院の人々」がそれなりに良かったし、パソコンの俗にいうエロゲーにも興味があったので(この当時僕はまだパソコンを持っていませんでした)なんとなく買ってしまったのです。しかしやってみてエロの興味本位で買った自分を恥じましたね。まさかこれほど完成度が高く長く楽しめるADVって他になかったですから。エロゲーと言えども、馬鹿に出来ない物だと目から鱗が落ちた思いでした。

 ADVの本質であるストーリーを楽しむと言う部分を大切に作りながら、同時にルート攻略に必要なアイテムを探す楽しみまでミックスし、しかもそれを破綻させずうまくまとめあげたこのゲームこそADVの鑑だと思いますね。これでデラグランド編もちゃんと作ってくれれば、文句の無いゲームだったのですが、まあそこまで言うのは贅沢かもしれません。

 「元がパソコンの18禁指定のエロゲーだし、俺ギャルゲーは嫌いなんだよね」って敬遠している方もいるかもしれませんが、これほどストーリー性とゲーム性に秀でているADVってそうはないと思いますよ。変な偏見は捨てて、この斬新なアイデアが一杯つまったADVの傑作を是非やってもらいたいものです。