東日本大震災:福島第1原発事故 事故後の動向、GPSで 被ばく量解明に利用
毎日新聞 2013年05月10日 東京朝刊
東京電力福島第1原発事故で、原発周辺から避難する住民の動向を携帯電話の全地球測位システム(GPS)機能を利用して明らかにしたと、東京大の早野龍五教授(物理学)が9日、発表した。これまでは聞き取り調査など記憶に頼っていた。客観データを利用することで、被ばく線量の解明に役立つという。
GPSを活用したサービスを提供する「ゼンリンデータコム」が協力。福島県民の約0・7%に当たる約1万4000人分のデータについて、2011年3月10〜17日の位置情報を集計した。
事故前の原発から20キロ圏内の人数は約7万6000人と推計された。1時間ごとに調べた結果、政府の避難指示が出されるたびに住民が圏外へ避難していく様子が確認できた。
また、放射性ヨウ素の空間線量が最も高かったとされる同14日深夜から15日深夜にかけて、20キロ圏内に最大で約2000人がいたと推計された。ただし、個人の特定はできないようデータを処理しているため、放射性ヨウ素の影響を受けやすい幼児が含まれているかは分からないという。放射性ヨウ素は半減期が短く、事故初期の被ばく量を推定するのは難しい。早野教授は「放射性ヨウ素の拡散予測と合わせ、初期被ばくの解明に役立てたい」と話す。【斎藤有香】