GHQ:検閲担当の日本人名簿確認 延べ約1万人分
毎日新聞 2013年05月10日 15時00分
第二次世界大戦後、連合国軍総司令部(GHQ)が、占領批判防止などのために日本で行っていた検閲に従事していた日本人の名簿が確認された。当時検閲の事実は国民に秘匿され、戦後も全容が明らかになっておらず、その解明につながる資料だ。占領期の情報管理政策を研究し、NPO法人インテリジェンス研究所理事長を務める山本武利・早稲田大名誉教授(情報史)が、国会図書館でGHQ関連のマイクロフィルムから見つけた。
検閲はGHQの民間検閲局(CCD)が、終戦直後から49年10月まで、世論、占領政策に反抗する動きなどを把握・防止するため、手紙や電信、電話、新聞などを対象に行っていた。延べ2万5000人の日本人が、検閲対象の選定や翻訳などにかかわったとされる。検閲は47年5月に施行された日本国憲法に反し、その事実は厳重に隠されていた。このため経験者の特定は困難で、研究は進んでいなかった。
確認されたのはCCDの東京地区の名簿で、48年6月と9月、49年3月と9月のものなど。各月約2000〜2500人、合計延べおよそ1万人分。ローマ字の氏名、所属部署、雇用された日付や給与などが記されている。
山本さんは「検閲の実態は、占領中も占領後も隠されてきた。断片的な体験談や記憶であっても、多く集まれば検閲の本質が見えてくるはずだ」と期待する。
しかし表記がローマ字であることや、生存者が高齢化していることから、該当者の特定は難しい。同研究所は今後ホームページ(http://www.npointelligence.com/)で名簿を公開し、情報提供を呼びかける。また名簿は11日、早稲田大で開かれる同研究所主催の「諜報研究会」で紹介される。【栗原俊雄】