悦楽の学園 シーズウェア/AVG/7800円/1996年4月12日発売)
◎はじめに

悦楽の学園 タイトルシーン この作品は、1994年に発売された『悦楽の学園』をWIN用に移植したものであり、移植版の発売は1996年。で、今これを書いているのは2000年。プレイしたのも2000年。
 剣乃ゆきひろ氏のデビュー作であり、後に大ヒットとなる『EVE burst error』のキャラクターも登場していたりする。
 まぁ、4年も前に発売された作品なので、激しく今更っていう気もするけど、それなりに存在価値はありそうなので書いていくことにする。
 プレイした動機は「『EVE ZERO』も発売されたことだし、ある意味本当の『EVE ZERO』であるこの作品をプレイしてみるのも一興かな?」と思ったから。ってか、本当に『悦楽の学園』こそが『EVE ZERO』なんだよね。
◎ストーリー紹介

 男子禁制の秘密の花園、雨宮学園。
 そこに潜入していた工作員からの連絡が途絶えた。一体何があったのか?
 恋人兼連絡役の由美が続いての潜入を俺(佐久間裕一)に指示してきた。
 そこで待っていたのは、女子高で繰り広げられる様々な悦楽の光景だった。
 生徒同士のレズビアンだけでなく、青い果実と熟女のハードな誘惑。
 その中で隠された陰謀が、恐るべき結末に向かって進行して行く……。

 今では作られなくなった部類のストーリーやね……。「女子高」っていうのもあるけど、レズとか閉鎖的な空間とか、そういう類の奴。いや、作られているのかもしれないけど、私は知らないや。今の業界では存在感が希薄っていう意味で。尤も「それじゃ、当時は多かったのかい?」とか訊かれても知らないんだけど。
◎キャラクター

 まずは主人公。概要を説明すると、教育監視機構(JES)の調査員。なにかしら怪しげな教育機関に仮の教師となって潜入し、調査するという仕事。剣乃キャラの主人公というと天城小次郎や悪行双麻のようなプロフェッショナルで格好良い主人公を想像すると思うけど、『悦楽の学園』の主人公をそれらと比べてはいけない。剣乃キャラの見る影もない。それどころかヘタレの部類に入る。情けないし、活躍しないし、性なるお仕置きしかできない。
 潜入捜査員というからには頭の切れる人物を想像していたのだけど全然なのだもの。というか、おまえよく調査員として今までやってこれたなと思ったよ。
 でもって黒幕に関してはそれが一目でわかるし……。調査物で怪しい人物がいてそれがそのまま黒幕なんだもの。これはどう考えても問題っしょ? 「主人公が学園を調査する」ということは、それなりに謎な部分を含んでいなければならないのに、怪しい人物が簡単にわかるんだもの。思いっきり悪人面に描いてしまっているし、テキストにも含みを込めすぎだし。
 あと最初にも書いたけど、この作品には『EVE』のキャラが登場するのね。これは、この作品を今プレイする方にとっては、大きな魅力の1つなのではないだろうかと思う。というか、これしか魅力がないともいえるのだけど。
 ちなみに、登場するのは松乃広美と氷室恭子の2人。この時、松乃広美が高校生であったことを考えると、『EVE』とは少なくとも5年もの年月が離れている事がわかる。
◎シナリオ

 そんなものは無い。
 いや、嘘だけどね。でも無いに等しい。キャラクターの項で黒幕が誰だがすぐわかるとか、主人公が馬鹿みたいとか、色々書いたけどそんなのはどうでも良かった。結局エロシーンがメインだし。学園内でやりまくりだよ。でも、教育機関への潜入捜査員が学園内でやりまくるのもどうかと思う。乱れてるわねぇ、とオバサン口調にならざるを得ないわな。
 印象に残ったシーン? そんなの無いよ。印象に残ったセリフ? だから無いって。
 当時はこういう時代だったのだろうなぁ、とプレイした時はしみじみ感じてた。いきなり発情した保険医が襲ってきたりするし。
 でも「閉鎖された世界観」というのは雰囲気が出ていて良かった。『雫』みたいな雰囲気がこの作品にはある。もっとも、発売はこっちの方が先なわけだけどね。調べているのが教師か生徒くらいの差で、悲劇的な所とか、悦楽(雫では快楽)がうんたら〜とか結構似ていた。
 それでも、この作品が決定的に駄目駄目なのは碌な結末じゃないから。1つしかないエンディングの内容が非道すぎる。
 なんつうか、ヒロインである筈の松野広美や、その他のキャラの扱いが信じられない程にそんざい。これ本当に剣乃氏なの? 『EVE』や『DESIRE』であった丁寧なキャラクター描写がまるでない。
 その中で極めつけなのは河野陽子というキャラクター。薬とか使われて調教された性奴なのだけど、その所為なのか性格が非常に支離滅裂で、従順することもあれば、狂ったり怒ったりと「可哀想な人」そのものなのだけど、何かしら救済措置があるのかな、と思っていたら最後までなかった。ゴミ並の扱いを受けて終わる。
◎システム

■必要環境■
OS:Windows95
CPU:i486SX-33MHz以上
メモリ:8MB以上(推奨12MB以上)
解像度:640*480,256色以上
HDD:10MB以上
CD-ROM:倍速以上
サウンド:MIDI
 『ほいみんのページ』史上、最低スペックの更新である。まあ1996年の作品やしね。
 ちなみに、悪名高いレジストリセーブは、この時はまだ採用されておらず、Windowsフォルダ内に「悦楽の学園.dat」というファイルが作られ、そこに記録される。尚、説明書にそんな丁寧な説明はない。自力で探すのみである。
 さらに付け加えるなら、インストールも無い。CDからの直起動のみ。尤も軽いのでインストールなんかしなくとも、充分快適に遊べる事は確かなのだが。
 ウィンドウモードでの起動は可能だが、デスクトップ部分が真っ黒になってしまう。だので、ウインドウモードの意味がない。フルスクリーンモードオンリーといっていいだろう。
 CGモードと音楽モードの仕様が悪く、一回しか見る気しないのが残念。サムネイル方式ではなく、具体的に云うと1枚ずつ表示される『雫』や『痕』方式。
 ちなみに、プログラム担当も剣乃氏。クレジットでは菅野洋之となっていたけど、これは剣乃ゆきひろ氏の本名。
 ゲームのシステムは総当たり方式のAVG。が、総当たりする個所も少なく、ゲームというよりは紙芝居。『DESIRE』以降で輝き始める氏の才能も、この時はただ身を潜めるのみ。いや、このゲーム自体にはそんなの潜んでいないんだけどね。
◎音楽

 数え間違いが無ければ全32曲。今のエロゲ界では、奇跡的な数値である。音源はMIDIだが、おまけとしてDAでも13曲ほど収録されている。シーズがDAで曲を収録したのって、これが最初で最後なんじゃないだろうか?
 曲自体は、学園の閉鎖的雰囲気とか、暗い感じとかが良くでておりGood。全然期待していなかった個所だけに、意外な収穫であった。DAバージョンの出来も良い。ってゆうか、この作品がインストール仕様だったら、ゲーム中でDA使えたのにね。
◎ボイス

 WIN版は音声付き。さすがにベタ移植で出すというわけにはいかなかったみたい。定価7800円だし。
 声優は上手い人を揃えてあるなぁ、という印象。勿論、『EVE』の2人の声はSS版やWIN版とは違う方になってる。
 で、その『EVE』の松乃広美の声がケバイ。十代の設定なのに声質が三十代くらいなんだもん。って、前にも何処かのレビューで書いた記憶があるけどさ。上手さ優先で、声質無視っていうのがなぁ……。
 まあケバかったのは松乃広美くらいで、後は良かったと思うけど。
 と、普通ならここで終わる。ところがだ。『GLORIA』のWIN版にはEVEでの松乃広美役である、むたあきこ氏が出演されているのよ。むた氏18禁オッケーなんじゃん。これはどういうこっちゃね、と私は机を叩きながら云いたい。『悦楽の学園』でも松乃広美の役はむた氏に担当して欲しかった。
◎絵とエロ

悦楽の学園より 通常シーン 通常シーン。時代は変化し続けてもも、AVGのレイアウトは進化しないのね、といったところだろーか。ちなみに、画面に映っているのが松乃広美。この頃は髪が長かった。原画が違うので、名前が出るまで正体に気付かなかったよ。ってか、『EVE』で変わりすぎなのだけど。
 原画はやさまたしやみ氏。シーズのデビュー作である『禁断の血族』やDOS版の『DESIRE』もこの方が原画。『禁断の血族』から『DESIRE』までが氏の絶好期だったのかねえ。
 絵柄的には、良い感じだと思う。勿論、古い作品なので今に比べると見劣りする点は多々あるが、それでも全体的に良く描けている。
 でも、エロCGにおける男の絵が妙に筋肉質=AV男優を彷彿とさせてしまうので萎える、のは私だけかな。
悦楽の学園 エロシーン エロシーン。全エピソードが学園内なわけだから、当然Hシーンも学園内で展開される。乱れた学園だよなぁ、などと至極普通の感想を洩らしつつ。当然ながら16色なわけで、CGのクオリティは今に比べると見劣りする。
 内容は逆強姦が多い。くっそー、と云いつつも腰を振っている主人公が、非常に情けなかった。
 終始エロシーンが多く、登場するキャラすべてにエッチシーンが用意されているのは嬉しい。それだけに、主人公の情けなさも際立つのだけど。
 テキスト描写は、まぁまぁだと思う。「ぱんぱぁ〜ん」、とかのピストン音描写があるのは嫌だけど、及第点はいっている。
 それでも、極エロ娘が多いので萎えるってのはあるね。恥じらいが無い娘達のエロシーンを見てもソソられるものがないよ。
◎総評

 4時間で終了。半年で『YU-NO』のシナリオを書いたという剣乃氏も、この時は普通の方だったのね、と思いながらプレイしてた。『DESIRE』や『EVE』といった作品に繋がる何かがあるかもしれない、とか思っていたのだけど無かったし。
 まぁ、興味がある方は買っても良いかもしれない。
2000年6月16日 記
2002年1月31日 修正

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