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【社説】

育休3年 男性の育児参加が先だ

 アベノミクスの「三本目の矢」となる成長戦略を安倍晋三首相が発表した。「女性の活躍」を中核に「待機児童ゼロ」と「三年の育児休業」が目玉だ。必要な施策だが、大事な視点が欠けている。

 女性の活力は経済成長には欠かせない。待機児童解消のため保育所整備を加速させる姿勢は間違っていない。

 ただ、政府の規制改革会議で検討されている施設面積を狭くしたり、保育士の配置を減らすなどの基準緩和は問題である。子どもの詰め込みや保育の質低下を招く。

 一方、株式会社の保育分野参入は促進すべきだ。企業は経営努力でニーズに応える知恵がある。施設を増やすことにつながる。

 現行で最長一年半取れる育休の三年への延長を経済界に求めた。ただ、女性の働く環境の改善に必ずしも応えるものではない。

 働く女性の二人に一人は第一子出産の前後に退職している。育休を取っても、短時間勤務など職場復帰後に仕事を続けられる支援が不十分だからだ。育休制度を利用しにくい職場の雰囲気も壁になっている。非正規社員は正社員より育休を利用しにくい。

 現在でも満足に育休を取れないのに、期間を延ばして利用者が増えるのか疑問である。育休延長は経済界への要請にすぎない。実現には法的に制度も変えるべきだ。

 成長戦略で見落としている視点が男性の育児参加である。男性の育休取得率は依然低い。女性が職場復帰後に働きながら子育てするには、男性も一緒に子育てをすることが前提だ。長時間労働の是正や、非正規社員の待遇改善など男性の働き方の変革も必要である。

 二〇一一年版「働く女性の実情」白書によると、子育て期の男性五人に一人は週六十時間以上働いている。一方、共働きで六歳未満児を持つ妻の一日平均の家事・育児時間は五時間三十七分あるのに夫は五十九分しかない。女性に育児負担がのしかかったままだ。

 女性の活力を生かすには、男性も子育てしやすい社会をつくることが求められている。

 そもそも安倍首相には、子どもが三歳までは母親が育てるべきだという家族観がある。親子のつながりは大事だが、それでは女性の活躍の場は広がらない。

 政府は「三年間抱っこし放題での職場復帰支援」を掲げるが、子育てには「いろいろな人に抱っこしてもらう」との社会で子育てを支える発想こそが必要である。

 

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