2013-05-02
アベノミクスと、「異次元緩和」と言われる日本銀行の積極的な金融緩和策に押し上げられる格好で、東証REIT指数が高水準で推移している。国内REIT(不動産投資信託)型ファンドへも活発な資金流入が続いている。モーニングスターが5月1日にまとめた4月末を基準に推計した国内REIT型ファンド(計61本)の資金流出入状況は、過去3カ月間で2,138億円の流入超。純資産額の合計も1兆7,085億円に拡大した。
東証REIT指数の足どりを見ると、首相に就任する1カ月ほど前の昨年11月15日に安倍氏が講演で「無制限の金融緩和」の方針を打ち出した当日の終値は、「配当なし」ベースで1,052だった。それが今年1月末日に1,200台、2月下旬には1,300台にそれぞれ駆け上がり、3月27日には1,700台と、急坂を一気に駆け上がるような上昇を記録した。
日銀は4月4日に「質的・量的緩和」と銘打った、向こう2年間でマネタリーベースを2倍に拡大するという前例のない金融緩和策発表したが、その翌日の4月5日、取引時間中に1,717.88と08年1月以来の高水準まで伸び上がった。4月16日には1,544.90まで反落したものの、その後は1,600前後で比較的、安定した動きを続けている。
一方、投資信託マーケットの関係者が注目することの多い「配当込み」ベースで見ると、昨年11月15日時点の1,672.08が、今年3月27日には2,754.89と、この間の上昇率は64.7%に達した。こちらも4月中旬以降は高値圏でのもみ合い状態にある(図1参照)。
図1:東証REIT指数(配当込み)
出所:モーニングスター作成
空前の金融緩和策は間違いなく不動産市況の活性化につながる――そう読んだ結果のREIT指数の高騰だが、このところの“足踏み”状態は何を意味しているのか。
結論から言えば、単純な相場調整とみるべきだろう。要するに、相場が短期的にオーバー・シュート(行き過ぎ)状態となったことから、休養に入っているわけだ。
こうした相場的調整には、通常、値幅整理と日柄整理の両面がある。前者は、価格が大幅に下落することで相場の調整が一気に進むパターンだが、後者の日柄整理は時間をかけながら割とゆったりとしたペースで調整が進展する。東証REIT指数は現在、二つの整理局面をミックスするような格好で調整が進行中である。
もう一度、図表1のチャートをじっくり見て欲しい。特に、短期の相場トレンドを表わす25日移動平均線と、中期的なトレンド線にあたる75日線が大切なポイントになる。
4月初旬以降、指数がギクシャクした足どり(=高値波乱)に転じたことから、25日線の上昇カーブもやや緩やかになり始め、4月末には横ばいに転じた。値幅整理の余地を残していることを暗示させる流れと見ていい。
おそらく、調整相場の動きがピリオドを打つ一つのメドとして考えられるのが、今なお一貫して上昇中の75日線へのタッチだ。75日移動平均に対する、日々の指数の終値のプラス乖離率は3月27日、実に38%強と08年以降では最大を記録した。どう見ても、走り過ぎだった。
5月1日現在、配当込みの東証REIT指数は2,601.71で、その75日移動平均値は2,264.87。したがって、あと12〜13%程度の下げがあれば値幅整理が一巡する可能性がある。もちろん、マーケットの環境が良好なため、そこまで指数が下げずに持ち直すことは十分に想定できる。
図2:東証REIT指数(配当なし)
出所:モーニングスター作成
図表2の「配当なし」ベースの東証REIT指数も同様だ。
「買いにくい相場は高い」という格言がある。値ブレが激しくなって、一時的にきわめて投資しにくい状況に陥っても、好材料に支えられた銘柄は他を引き離すような復元力を発揮するもの。ここからの東証REIT指数は「反撃相場」をにらみながら、慎重に下値を探るスタンスが有効だ。
足元の不動産市況を探るうえで、注目される月次データの一つに、都心のオフィスビル動向がある。オフィス仲介の三鬼商事が毎月発表しているが、4月7日発表の3月末時点の調査資料によれば、東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィスビルの空室率は8.56%(前月比0.11%減)。昨年6月の9.43%から12月の8.67%まで順調に低下してきたが、今年に入って3カ月連続の8.5%台で推移している。
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ただ、新築ビルの募集状況について、三鬼商事では「依然として引き合いは強くある」と指摘。長期的な空室率低下(=改善)トレンドは変わっていない。都心のオフィスビルの賃料指数も2013年第1四半期(1〜3月)に入ってから上がり始めている。
(赤間 憲明)