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銅線強盗で逮捕され服役していた元EE JUMPのユウキこと後藤祐樹(26歳)が、自らの過去を赤裸々に告白した書籍『懺悔 ゴマキの弟と呼ばれて』(ミリオン出版)を出版し、話題になっている。そこには、父母の死、女性アイドルとの恋、犯行の手口と事件の真相、刑務所での壮絶なイジメ、そして姉・後藤真希の素顔などが生々しく綴られている。なぜ今、この本を出そうと思ったのか? 今後、どのように生きていくつもりなのか?──仮釈放中の後藤祐樹を直撃した。
──どういう経緯で、自叙伝の出版を決意したのでしょう?
後藤祐樹(以下、祐樹) 懲役5年6カ月を言い渡されて刑務所に入り、昨年の10月に仮釈放となったんですが、以後、マスコミに追い回されて、取材を受けてもいないのに、あることないこと書かれてしまった。これはもう、自分ですべて本当のことを書くしかないな、そして迷惑をかけた周囲の人たちやファンのみなさんに謝るしかないな、と思ったんです。と同時に、一部の出来事については、誤解を解いておきたいという思いもありました。
──確かに「すべて本当のことを書く」という決意が伝わってくるような本の内容でした。書かなくてもいいんじゃないか? と思えるような過去の悪事についても、赤裸々に書いていますね。
祐樹 悪いことを正直に書かないと懺悔にならないし、いいことも信じてもらえないと思ったので……。
──小5で学校に放火、小6でバイク泥棒、中1で校長をブン殴る。とんでもない悪ガキだったんですね。校長先生のどこを殴ったのでしょう?
祐樹 顔ですね。
──相手はおじいさんですか?
祐樹 おばあさんだったような気がします(笑)。
──おばあさんをノックアウトしたんですか……。
祐樹 ゲームを奪われたので、ついカッとなって殴ってしまいました……。最低なことをしてしまったなと、今では反省しています。
──姉の真希さんが芸能界にデビューしてからも、祐樹さんは常習的に万引きをしていたという記述に驚きました。
祐樹 地元の友達と悪いことをして、スリルを感じるのが楽しかったんです。当時は姉に迷惑がかかるかもしれないということに、まったく頭が回りませんでした。
──やがて自分もEE JUMPとして芸能人になり、いったんは悪事を控えるようになったとありますが、熱中できる何かが欲しかったのでしょうか?
祐樹 というより、レッスンで忙しくなって、地元の友達と遊ぶ機会がなくなったから、悪事をする機会も自動的になくなったという感じですね。
──祐樹さんは、暴走族などに所属していたんですか?
祐樹 いや、地元の江戸川区には暴走族が2つ3つあったけど、自分は入りませんでした。ただ、小学校で金髪に染めたりしていたので、学校ではかなり目立っていたかもしれません。
──腕っぷしは強かった?
祐樹 基本的には穏やかなんで、暴力はあまり好きじゃないです。
──でも校長先生を殴りましたよね?
祐樹 あのときは、急にゲームを奪われたから……。基本、自分からは手を出さないですよ。
■あのアイドルとの恋、嫌いだった『夏だぜ!』
──本の中では、ある女性アイドルとの微笑ましくも切ない恋が書かれていますね。
祐樹 彼女との仲は本当のことだし、過去にマスコミで取り上げられたこともあるから、書いても大丈夫だろうと。それに彼女は、自分が初めて長く付き合った女性なんで、書いておきたいと思いました。
──EE JUMPの裏話も面白かったです。最大のヒット曲である『おっととっと夏だぜ!』を、祐樹さんが嫌いだったという話は笑いました。今でもあの曲は嫌いですか?
祐樹 今でも友達とカラオケに行くと、冗談で入れたりする奴がいるんですよ。そうやって仲間内でやっている分にはいいんですけど、そこに知らない人がいたりすると、相当気まずいですね。マジでやめてくれよ、と。
──スナックなどでリクエストされたら?
祐樹 相手が断れそうな人だったら断ります。ちなみに僕、芸能界を辞めたあとに最初に働いたのが、カラオケボックスなんですよ。そこで普通に店員として働いていたんですが、そういうところにはヤカラみたいな客も大勢来るじゃないですか。で、部屋にドリンクを届けに行くと、勝手に『おっととっと夏だぜ!』を入れられていて、「おまえ歌ってけよ! 歌い終えるまで帰さねえぞ!」と絡まれたりすることもよくありました。
──そういうときには?
祐樹 基本的には「ちょっと仕事中なんで」と流していましたが、どうしても断り切れないときには、歌っていました。けど僕、音痴だから、本当に歌うのが嫌いなんですよ。芸能界にいるときも、歌うのが一番イヤな仕事でした。そもそも歌に対しての興味がまったくなかったんで(笑)。
──ベースボールシャツみたいな衣装も嫌いだったと書いてありますね。
祐樹 あれは、ちょっとないなー、という感じですね(笑)。テレビやCDジャケットの衣装はたいてい、つんく♂さんが決めるんですけど、あの方自身の衣装も関西系のコテコテな個性があるじゃないですか。で、周りの関係者も大阪の方なので、つんく♂さんの意見にみんなが賛同していたけど、僕はイヤだった……。その当時、w-inds.とかのダンスユニットが私服っぽい衣装で踊っているのを見て、うらやましく思っていました。
──ソニンさんとの関係も、興味深く拝読しました。あんなにかわいい女性がいつも横にいて、本当に何もなかったんですか?
祐樹 たとえばカップリングの踊りを自分たちで決めるときとかも、ソニンは我が強くて、こっちの意見を全然聞かなくて……。そういう小さい不満が積み重なっていたので、恋愛感情はまったくなかったですね。EE JUMPはもともと3人いたんですけど、デビュー前に1人抜けて。で、ソニンは僕よりも4つ年上だから、「私がしっかりしなくちゃ」っていう気持ちも強かっただろうし、そこに我の強さも重なって、こっち的にはもうウンザリみたいな(笑)。当時は僕も幼かったから、ソニンの苦労をわかってあげられなかったですね。
──それやこれやの不満が爆発して、やがて祐樹さんは逃走。そして芸能界引退のきっかけとなるキャバクラ事件へとつながるわけですね。そのへんの詳細は書籍をご覧になっていただくとして、祐樹さんは昔から、抑えつけられると反発したがる性質なのでしょうか?
祐樹 かもしれません。ずっと自由がなくて、自由を求めた結果、マネジャーをぶっ飛ばしたりとか、そういうことになっちゃって……。
──マネジャーは女性ですよね?
祐樹 そうです。
──なんというか、結構女性を殴っていますよね。今は大丈夫ですか?
祐樹 はい、大丈夫です。あのときのことは大変申し訳なく思っています。
■芸能界引退、そして再び悪の道へ
──さて、芸能界を引退後に、再び悪事を働くようになった祐樹さん。その一部始終が本に書かれていますが、当時はヤケクソだったんでしょうか? それとも地元のつながりで悪事をやめられなかった?
祐樹 たぶん両方ですね。自分1人だったら、やっていないと思うんですよ。でも高校でまた悪い友達が増えたりして、ズルズルと……。
──よくカツアゲをしていたという記述もありますが、具体的にはどのように?
祐樹 6人の仲間とつるんでいたときは、2人ペアで3チームに分かれて、制限時間内にどのチームが一番稼げるか、カツアゲの金額を競って遊んだりしていました。チームごとに違う場所へ行くんです。地元はまずいんで、同じ江戸川区でも小岩のほうに行ったりして。で、ゲーセンで7~8人でたまっている集団を見つけたら、まず1人を捕まえちゃうんです。
──目が合っただのなんだのと因縁をつけて?
祐樹 いや、最初から「おまえちょっとカネ出せよ」と言って表に出して、もう1人が「おまえらも来い」って命令して、ゲーセンの外の駐車場とかに全員を連れ出します。途中で逃げる奴がいても、仲間に携帯かけさせたりして、必ず現場に戻ってこさせました。
──収穫を少しでも増やすため?
祐樹 そうですね。集団を狙うのも、一度に多くを稼ぐためでした。基本、学生服を着ている集団を狙うんですが、それは学生だと返り討ちに遭う危険が少ないから。あとは自分たちも制服を着ているから、カツアゲの現場を通行人に見られても、一緒に遊んでいるようにしか見えず、怪しまれない。そういうこともしっかり計算していました。
──悪賢いですね。それにしても、2対8でカツアゲが成功するものですか?
祐樹 8人もいると、中には「ふざけんじゃねえ!」と反発してくる奴もいるんですけど、そういうときのために、いつもローファーの中にナイフを隠し持っていました。ナイフを出すと全員おとなしくなって財布を出してくれます。
──なぜローファーに?
祐樹 お巡りさんに職質されても、靴の中ってあんまり見られないと思ったんですよ。ちょっと大きめのローファーを履いていたので、靴の内側と靴下の隙間にすっぽり収まるんですよ。折り畳み式のナイフが。
──紛う方なき不良ですね。でもその一方で、自分よりタチの悪い不良もたくさんいて、「おまえユウキだろ? 姉ちゃんのパンツ持ってこい!」と絡まれたり殴られたりしたという話は、因果応報とはいえ、少々気の毒に感じました。
祐樹 そういうのは頻繁にありましたねぇ……。そういうときは「姉のことだけは本当にちょっと勘弁してください」と、ひたすら謝って許してもらうしかなかったですね。
──ナメられたくないという思いなどもあり、やがて祐樹さんは次々とタトゥーを入れ始めるのですが、首の鯉を入れたのは、いくつのときでしたっけ?
祐樹 ハタチですね。首は服で隠しようがないから、このときから覚悟が決まった感じですね。不良の世界で行くとこまで行っちゃおうかな、と。
──そして逮捕のきっかけともなる銅線泥棒を本格化させていくわけですが、その犯行のエスカレートぶりは、読んでいて恐ろしくなりました。
祐樹 やりすぎました……。警察ともかち合ったことないし余裕かな、と思っているうちに、どんどんエスカレートしてしまって、一線を越えてしまいました。
──結局逮捕され、そのあと共犯仲間から裏切られてしまったそうですね。一部、濡れ衣を着せられたまま、判決が下りてしまったと。
祐樹 はい。とはいえ、被害者が出ていることですし、結局は自分が主犯でやったことなので、仕方がない。刑務所に入ってから、そう割り切りましたね。
──今現在、裏切った仲間を恨む気持ちは?
祐樹 ないですね。そもそも自分が銅線泥棒の話を持ちかけなかったら、彼らを巻き込むこともなかったわけですから、悪かったのは全部自分だと思っています。
──懲役生活は相当ツラかったようですね。
祐樹 自業自得とはいえ、地獄でした。詳細は本に書きましたが、イジメが特にツラかったです。意地悪な先輩とも24時間一緒にいなくちゃならない。これは相当こたえました。その苦悩を誰かと分かち合えたらラクなんだけど、刑務所ってたいてい、上がガッチリ固まっているから、文句を言いづらい環境なんですよ。基本は1人で我慢するしかない。気の合う者同士で、誰かの悪口を言うのも怖い。「こいつがチンコロ(告げ口)しちゃったらどうしよう?」と勘ぐっちゃう。でも、最初の工場では、あまりにひどいイジメが横行していたから、最終的には仲間と結託して、ある計画を練って、そのイジメっ子を工場から追い出しました。
──あの話は読んでいてスカッとしました。
祐樹 下に対してひどいことをすると、そうやって追い出されるのがオチなんですよ。だから自分が工場のリーダーになってからは、イジメを厳禁にして、和気あいあいとしたムード作りに努め、平和になりつつあったんです。でもそのあと、自分が刑務所にいる間に、妻や子供と連絡が取れなくなったり、母親が亡くなったり、姉が芸能活動を休止してしまったりという、悲しい出来事が立て続けに起きて、死ぬほど落ち込みました。すべて自分がいけないんだ、と。そしてあらゆる悪事を深く反省しました。
──そんな中、真希さんが何度も面会に来てくれたそうですね。どういう表情で来るのでしょう?
祐樹 いつも明るく笑っていましたね。僕を励ますためでしょうけど、「よう、久しぶり。元気?」みたいなテンションでした。僕が仮釈放になった当日も、姉は実家で鍋を作って待ってくれていました。あのときはホント、家族の絆、家族の温かさを感じましたね。と同時に、もう家族には絶対に迷惑をかけられないと、心の底から思いました。
──書籍のクライマックスのあたりに「でもこれからだ」という前向きな言葉が書かれていましたが、さて、これから何をするつもりでしょう?
祐樹 大きなことは決まっていません。でも刑務所にいたときに、宅建と行政書士の勉強をずっとやっていて、勉強の面白さに目覚めたので、まずは今後、それらの資格に挑戦してみたいですね。
──芸能界復帰は?
祐樹 本当の表舞台には、もう立てないと思います。
──首のタトゥーを後悔していますか?
祐樹 これは消します。留置所にいるときに、母親と約束したんで。「首だけは消してくれ」「うん、わかった」と。
──Vシネマの俳優などはどうでしょう? クールな悪役とか。
祐樹 興味深いですけど、演技とか全然やったことないんですよ(笑)。
──地下格闘技への参戦は?
祐樹 格闘技は好きなので、やれたらいいなとは思いますね。実は、これについては家族も賛成してくれているんですよ。でも自分、悔しがりなんで、やるからには絶対に負けたくない。出てもいいなと思えるレベルになるまで、ジムでみっちり鍛えたいですね。
──本を出した今の気持ちは?
祐樹 今までは自分が本に出るといえば、ゴシップみたいな形で出ることばかりだったんですけど、こうして初めて自ら本を出すってことに関しては、実感がないっていう気持ちと同時に、うれしさもありますね。世間の多くの方々はウワサでしか僕を知れなかったと思うので、1人でも多くの方に本を読んでいただいて、自分という人間を知ってもらえたらうれしいな、と思います。
──「悪事を書いて金儲けするな!」と叩かれる可能性もありますが。
祐樹 Twitterとかでは発売前からひどいこと書かれたりしていますけど、何も反応がないよりはいいかなと思いますし、そういう批判的な方々にこそ、この本を読んでいただきたいですね。昔の自分は確かにロクでもない不良だったけど、今は心を入れ替えてやり直そうとしている。そのことを知ってもらえたらうれしいです。
──ちなみに今回の出版について、真希さんはどのような反応を?
祐樹 出版前に相談したら、最初は反対していました。でも自分の今の状況をいろいろ話したら、結局は自分の人生なんで、自分で決めた通りにすればいいということでOKしてくれました。
──真希さんはお元気ですか?
祐樹 元気ですよ。ご安心ください。姉のファンの方々にも、この場を借りてお詫びしたいと思います。どうもすいませんでした!
(取材・文=岡林敬太)
●ごとう・ゆうき
1986年東京都生まれ。00年、EE JUMPのラップ担当としてデビュー。15歳だった02年にキャバクラに出入りしていたことが明らかになり、EE JUMPを脱退。そのまま芸能界を引退した。08年、導線窃盗や強盗などの罪で5年6カ月の実刑判決を受け収監。12年に仮釈放されていた。姉は元・モーニング娘。の後藤真希。
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