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本紙記者コラム「見た・聞いた・思った」
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2004/09/18付紙面より 過去のコラム一覧へ

観客数水増しやめて

野球部 中村泰三記者

 12日に千葉マリン球場で行われたロッテ対日本ハム27回戦の観衆は、ロッテ球団の発表では「満員」の3万5000人だった。3、4位に位置する両チームの戦いだが、今季ばかりはプレーオフ進出をかけた好カード。その効果で2試合連続の満員となった。

 この日でパ・リーグは378試合を消化し、観客動員数は1005万7000人を記録した。これは97年の405試合を抜く、史上最速の1000万人突破だった。(ちなみにセ・リーグは同じ日で1236万7500人を動員)。

 この最速ペースは果たして、パ・リーグ人気の絶頂を意味するのだろうか。日本ハムの札幌移転、新庄人気、プレーオフ効果に、近鉄、オリックスの合併騒動の余波、などさまざまな要因がある。それでも、数字だけを見て素直には感心できない。なぜなら、この数字に「球団発表」という注釈が入るからだ。

 セ・リーグ球団のナイター取材をしたときに、こんな場面に遭遇した。

 球団職員A「今日の発表はどうします?」

 責任者B「う〜ん(スタンドを見渡して)これくらいなら○万でいいだろ。多いに越したことはない」。

 その間、わずか1分ほど。B氏の脳裏には、前売り券、当日券の売れ行き、年間予約席の販売数など、すべての数字が記憶されているかもしれない。ただ、明確な基準、データに照らし合わせ、発表された観客動員数でないことは目の前の光景が物語っていた。

 以前、担当していたダイエーは、9月12日時点でリーグトップの297万5000人を動員しているが、ここでも福岡ドームで空席が目立つときにも「満員4万8000人」と半ば強引に発表することがあった。「年間予約席などでチケットは売れている」というのが、主催者側の意見だった。

 その半面でダイエーは招待券を使った営業も行っていた。純粋な入場者数でなければ、有料入場者数でもない。ベールに包まれた4万8000人の実数は、球団側にしか分からない秘密の数字だった。

 なぜ増やすのか。1つの要因として、人気がさらなる人気を呼ぶ、という人間心理もある。売れる商品に人は興味を示す。野球で言えば、1000人でも多い観客動員数。球団は観客動員を水増しして発表し、チケット売れ残りの記事などには露骨に嫌悪感を示した。

 このどんぶり勘定を今こそ見直そう。プロ野球人気を測る尺度になるはずの観客動員数がこのままでは、現状の認識も将来的展望もままならないではないか。

 一連の球界再編騒動の中で、選手会はさまざまな提案、要求を行ってきたが、これに対し、球団側の対応は交渉翌日に発言のニュアンスを一変させるなど、誠実とは言い難いものがある。近鉄の赤字内容など、球団側の説明に不足部分も多い。本音を隠したままの説明では、選手会はもとより、ファンも納得できないだろう。

 球団側は経営的観点から意見を出しているが、球界の存続と発展を願う点では、選手会と気持ちは一致しているはず。だからこそ、変えるべきを変える、この機会を逃して欲しくない。

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   column@nikkansports.co.jp
◆中村泰三(なかむら・たいぞう)
 93年西部本社入社。競輪担当後、94年オフからダイエー担当。02年に東京本社野球部へ出向。現在はプロ野球担当。福岡出身、33歳。
中村記者の写真

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