北朝鮮をめぐり、関係国の注目すべき動きが続いた。
中国の国有大手、中国銀行は北朝鮮の朝鮮貿易銀行に対して取引の停止と口座の閉鎖を通知した。中国が制裁を強めた形だ。これと前後して米韓首脳が初会談し、結束を確認している。
北朝鮮は、核保有国として米国と対等の立場で対話しようという姿勢を崩しておらず、各国の圧力がどんな反応を生むかは分からない。非核化の道筋を付ける好機にできるかが問われる。影響力の強い中国を含め、関係国の連携を確かなものにしていきたい。
朝鮮貿易銀行は、北朝鮮の対外金融取引を統括している銀行とされる。米オバマ政権が3月に米銀行との取引を禁止する制裁措置を発表し、日本でも外務省が4月に同様の措置を取ったと明らかにしていた。今回、中国も歩調を合わせた格好だ。
北朝鮮は、中国からの話し合いによる問題解決の呼び掛けを聞き入れず、挑発を続けてきた。中国銀行は理由を説明していないものの、中国がいら立ちを募らせていることがうかがえる。
朝鮮戦争を共に戦って以来、中朝は「血盟」とも呼ばれる強固な関係を築いてきた。友好国として北朝鮮を支援してきた中国が厳しい姿勢に転じたとすれば、新たな局面といえる。
一方、オバマ大統領と韓国の朴槿恵大統領は、北朝鮮が非核化への意思を行動で示せば対話に応じることなどを確認した。米韓同盟60年の共同宣言では、北朝鮮が孤立から脱して国際社会の責任ある一員になるよう促している。
人道支援を通じて関係改善を図りたい韓国に対し、米国は北朝鮮側の歩み寄りが先とする。こうした立場の違いを埋め、対応していくことが大事になる。
北朝鮮は、日本海側に配備していた中距離弾道ミサイル「ムスダン」を最近、発射場から撤去したとされる。挑発をやめるつもりなのか、真意は分からず、今後の展開は予断を許さない。
朴氏はオバマ氏との共同記者会見で米韓の連帯や中国、ロシアへの期待感を表明する一方、日本については全く言及しなかった。領土などをめぐって冷え込んだ日本と中韓両国との関係が、いよいよ見過ごせない。
拉致問題などを抱える日本が蚊帳の外に置かれるような状況で関係国の対北朝鮮政策が進むことは避けなければならない。政府は中韓両国との関係改善に本腰を入れる必要がある。