社説:日米韓関係 連携の足元を確かに

毎日新聞 2013年05月09日 02時32分

 訪米中の朴槿恵(パク・クネ)・韓国大統領が、オバマ大統領とホワイトハウスで会談した。最大の焦点はもちろん、このところ過激な言動が目立った北朝鮮への対処である。

 北朝鮮は2月の核実験強行に続いて、米国や韓国の首都を「火の海にする」と脅した。日本に対しても、太平洋戦争での被爆以上の「途方もない災難」を避けられない、と断言した。これほど悪意に満ちた脅迫はめったにあるものではない。

 こんな威嚇には動じない姿勢を両大統領が示したのは当然だ。会談後の記者会見でオバマ氏は脅しが通じないことを強調しつつ、北朝鮮と対話する用意もあると呼びかけた。

 もっとも、オバマ政権の「挑発への見返りを与えない」という「戦略的忍耐」路線は、過激さを増した北朝鮮指導部に対して、どこまで有効か疑問が残る。

 一方、相手の変化を待つより「北朝鮮が変化せざるを得ないようにする」という朴氏の発言が、日米韓3国で共同検討する案なら受け入れやすいだろう、とも思える。

 しかし実際には、韓国には独自の構想があるようだ。場合によっては日米韓の結束に摩擦が生じるとの観測も流れている。意思疎通を十分にしなければなるまい。

 両大統領の会談と併せて、米韓同盟60年記念の共同宣言も発表された。米韓同盟は北朝鮮軍が韓国に侵攻して始まった朝鮮戦争を背景に成立したものだ。

 実質的に米中の激突となったこの戦争は、「中朝」と「米韓」が張り合う構図を現在に残している。

 それだけに、中国が北朝鮮の銀行の口座を閉鎖したと報じられても、それが制裁なのか判断しにくい。

 一方、韓国が対中貿易を重視し、米国との軍事協力をためらうケースもあるのは、大きな時代の変化だ。日本の竹島や歴史認識の問題で日韓摩擦が容易に激化するのも、そんな変化の一端だろう。

 今回の米韓会談で、一つ残念だったのは、オバマ氏が「日米韓の協力が重要だ」と話したところ、朴氏が「北東アジアの平和のためには日本が正しい歴史認識を持たねばならない」と反論したとされる場面だ。

 私たちは日韓摩擦に関し日本の政治家が明らかに不適切な発言をすれば批判をためらわない。

 だが多くの場合、双方にそれなりの言い分があり、一方的な主張で問題が解決することはない。両国の国民がむやみに対立するような、不毛な相互非難は避けるべきである。

 特に歴史問題は北朝鮮の脅威への対処などとは切り離し、じっくり、冷静に話し合う場を設けるべきではあるまいか。

毎日新聞社のご案内

TAP-i

毎日スポニチTAP-i
ニュースを、さわろう。

毎日新聞Androidアプリ

毎日新聞Androidアプリ

MOTTAINAI

MOTTAINAIキャンペーン

まいまいクラブ

まいまいクラブ

毎日RT

毎日RT

毎日ウィークリー

毎日ウィークリー

Tポイントサービス

Tポイントサービス

毎日jp×Firefox

毎日jp×Firefox

毎日新聞のソーシャルアカウント

毎日新聞の
ソーシャルアカウント

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞を海外で読む

毎日新聞社の本と雑誌

毎日新聞社の本と雑誌

サンデー毎日

サンデー毎日

毎日プレミアムモール(通販)

毎日プレミアムモール(通販)

毎日新聞のCM

毎日新聞のCM

環境の毎日

環境の毎日