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日本が戦闘機を国産できない理由
ライター:izuminokamiosafuneさん(最終更新日時:12時間前)投稿日:2013/2/10 アドバイス受付中!
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■はじめに
軍事に興味のある人は疑問に思ったことがあるはず。どうして日本は航空自衛隊の戦闘機を国産しないのだろう?と。
たしかに世界的技術大国の日本ですから、戦闘機を自分たちで作れば良さそうに思えます。
しかし、現実はそう簡単ではありません。日本が高性能戦闘機を作るのは難しいのです。それを解説します。長文ですので、ご覚悟を。
■戦闘機開発の難しさ
「日本は世界一の技術国だからステルス戦闘機でも簡単に作れる!」という人がいますが、これは大きな間違いです。
戦闘機とは最も開発の難しい兵器の一つです。要求される安全性能が他の兵器よりも遥かに高レベルだからです。空で何らかの故障が発生したら、「路肩に停車してJAFを呼ぶ」なんてことはできません。飛行機にとって故障とは墜落の可能性を意味し、墜落とは死の可能性をも意味します。乗員にも、地上の人々にも。つまり、陸上、海上兵器よりも安全性能と信頼性能が遥かに高くなくてはなりません。
さらに、戦闘機は戦略性の高い重要な兵器なため、要求される性能が高まる一方で、新技術とハイテクの塊です。複雑を極めていて開発が難しいのです。
これらの事情により、戦闘機開発には極めて高い技術力と、20年前後の時間、さらには兆単位の予算が必要です。
「でも、そういう事を得意とするのが日本でしょ?」とお思いですか?たしかにそうですね。しかし、それはノウハウがあればこそ可能。無ければ不可能です。
■戦闘機開発のノウハウの差
高性能戦闘機を単独で開発可能な国は、米・露・仏、スウェーデンなど数カ国に限られます。これらの国は、戦闘機を開発・量産・運用し続けてきたのです。簡単に言えばノウハウを持つわけです。英・独でさえ単独での高性能機開発を諦めています。日本を加えた先進3カ国ですら難しいのが戦闘機開発なのです。
アメリカとロシアは、言うまでも無く大戦中から戦闘機開発を大々的に行い続けています。フランスは、戦後にミラージュⅢの開発と販売に大成功し、この分野での優位を決定的としました。
スウェーデンは小国ですが高性能機たるグリペンの開発に成功。軍事中立を国是とするため、兵器の自国開発に早くから力を注ぎ、高性能機を開発し続けてきたのです。
スウェーデンの例から分かるように、ノウハウさえあれば小国でも高性能戦闘機の開発は可能です。裏を返せば、それが無ければ大国でも不可能。
では、なぜ日本はノウハウを持たないのでしょう?答えは簡単。国産戦闘機を作り続けていないから。
大戦中には優秀なプロペラ戦闘機を多数生み出した日本ですが、敗戦により約10年間、兵器開発を禁止されます。開発が許可された時には、既に空前のジェット戦闘機開発時代でした。プロペラ戦闘機からジェット戦闘機への移行期に10年間何もしていなかった日本は完全に出遅れたのです。
とはいえ技術大国日本ですから、必死の努力により、T-2練習機(退役済)、その発展型のF-1支援戦闘機(退役済)、T-4練習機は国産に成功します。
国産のF-1支援戦闘機(退役済)
「じゃあ、日本もノウハウを持ってるじゃん!」とお思いですか?いやいや、これでは圧倒的に不足です。世界に国家が日本しか存在しないならば良いですが、「相手」がいる話です。上記に挙げた、米露仏などです。
日本が60年代頃から国産した戦闘機、攻撃機、練習機などの主要機は、T-1、F-1、その原型のT-2、T-4、日米共同開発機のF-2です。実験機のT-2 CCVも加えましょうか。
では、例えば米国はというと・・・
F-4、F-5、F-5E、F-14、F-15、F-15E、F-16、F/A-18C、F/A-18E、F-22、F-106、F-111、F-117、A-5、A-6、A-7、AV-8、A-10、試作機ではF-16XL、YF-17、F-20、YF-23、X-32、YA-9
・・・などなど。これらで全てではなく、マイナーな試作機や実験機は含めていません。しかも、日本との比較のため、60年代頃としましたが、米国はそれ以前にも大量の戦闘機を開発しているのは言うまでもありません。
どうでしょう?日米の差は圧倒的。一目瞭然です。
ちなみに、練習機は戦闘機よりも開発が比較的簡単です。超音速性能、レーダーと武装などが不要な場合が多く、要求される性能が戦闘機よりも低いからです。戦闘機と同等の性能を持つ練習機は稀です。練習機ならば開発技術で米露などに劣る国でも開発可能。日本のT-2はF-1への発展が予定されていたので、超音速性能などを持つ高性能練習機でした。しかし、F-1は総合性能では高性能とは言い難い機種に終わりました。
さて、ノウハウで米露などに大きく差をつけられている日本ですが、アビオニクス(電子機器)の開発では日本は優秀です。また、炭素繊維複合材の技術も高い。しかし、個別に優秀な技術を誇っても、それらを高いレベルで融合させることができなければ、高性能戦闘機は生まれません。「戦闘機全体」を作り続けて初めてノウハウの蓄積が可能であり、米国と比較すれば、その蓄積量の圧倒的差はお分かりですよね。
少ない予算の中、日本が戦闘機を生み出しても、世界レベルの高性能機である保証が無く、「もしかしたら作れるかも」というレベルです。そりゃあ、普通な性能の「まぁまぁな戦闘機」なら作れるかもしれません。しかし、莫大な予算をかけてまぁまぁな戦闘機では駄目です。それだと直ぐに低性能化し、結果として時間と予算の無駄になります。高額な戦闘機を次から次へと買い替えることなど不可能ですから、長年の活躍が可能な「作って良かった!」という戦闘機でなければなりません。
国防戦略を大転換させ、今とは比較にならない予算を投じ開発を続ければ、国産機開発も夢物語ではありません。しかし、そうはいなかいのが現実です。その結果、完成度の高い米国製などを導入することになるわけです。
仮に、あなたが世界一足の速い人だったとします。では、あなたはプロのサッカー選手に簡単になれますか?なれませんよね。どれほど足が速くても、長年に渡り、毎日毎日、サッカーの練習を続けていないとサッカー選手にはなれません。
戦闘機開発もこれと同じです。日本は足の速さやジャンプ力など、いくつかの個別技術は世界トップレベルの人ですが、長年の総合的練習量、つまりノウハウが少ないのです。
米露などは、昔からまぁまぁな戦闘機を開発し続け、それによりノウハウを蓄積し、やがて高性能機を開発可能となりました。しかし、日本は、まぁまぁな戦闘機すら開発し続けておらず、政治・経済情勢を考えれば、今後もそれは不可能でしょう。
国産のT-4練習機。練習機は開発が比較的簡単。
■国際共同開発とは
以上のように、戦闘機開発は難しいものですが、戦闘機は国産できるのが望ましい。自国に最適な機種を得られ、外国製に頼らなければ国防を実現できない、というデメリットを回避できるからです。
こういう状況下で注目すべきは国際共同開発という方法です。つまり、技術と予算を数カ国で持ち寄って高性能機を開発するのです。そうすれば一国の負担予算は減少し、苦手な技術も他国に頼ることが可能。完全な国産ではないですが、完全な外国産でもない。
近年では国際共同開発が主流で、世界でも断トツで1番の軍事大国の米国ですら、莫大な開発費を負担できず、共同開発に逃げています。
共同開発ならば、日本はレーダーやミサイルなど得意分野を手土産にして計画に参加し、その中で発言力を得られます。共同開発をすれば「各国の思惑が対立して計画が遅延する」というデメリットもありますが、現実問題としてそうせざるをえません。
英、独、伊、西による共同開発機のユーロファイター・タイフーン
■日本の戦闘機開発の将来
日本は現在、ATD-X、通称「心神」と呼ばれる技術実証機を開発中で、それによるデータ収集を目指しています。しかし、勘違いされることが多いのですが、心神は純粋な実験機であり戦闘機の試作機ではありません。心神の開発をどれほど進めても戦闘機には変身しません。
そして、米国との比較からも分かるように、たった一機種の実験機で突如として不足しているノウハウの獲得など不可能です。
ただし、心神で得られたデータが将来の戦闘機開発に活かされる可能性はあります。さらに、心神とは別に同時進行で各種技術も研究中です。これらを活かして将来には国際共同開発を実現したいものです。
事実、防衛省は2、30年後の実用化を目指して国産機を開発できないかを模索しています。単独の国産はさすがに不可能でしょうが、30年後には共同開発による半国産戦闘機が誕生しているかもしれません!
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