連休中にロシアや中東諸国を訪問した安倍晋三首相が、アラブ首長国連邦(UAE)やトルコと原子力協定を結び、日本の原発をこれらの国に輸出する姿勢を露骨に示しました。原子力協定は原発輸出の前提です。なかでもトルコとの間では日本の三菱重工業とフランスのアレバ社が共同で原発建設を受注することで事実上合意、政府主導で日本の原発輸出に道を開くことになりました。2年余り前の東京電力福島原発事故で大きな被害を与え、いまだに事故収束のめどもたたない日本の政府が率先して原発輸出を推進するなど、許されることではありません。
大事故に開き直って
見過ごせないのは安倍首相が中東訪問中の記者会見で、「日本の最高水準の(原発)技術、過酷な事故を経験した(ことによる)安全性への期待が寄せられている」と開き直ったことです。これまで世界が経験したことがないような重大な原発事故を引き起こしたうえ、そのことを逆手にとって、「最高水準の技術」「安全性」などと売り込むとは、普通の感覚、普通の発想ではありません。
東日本大震災で外部電源も内部電源も途絶え、炉心が冷却できなくなり、核燃料が溶け落ちて、外部に放射性物質が拡散した東電福島原発の大事故は、日本だけでなく大気や海洋の汚染など世界的にも被害が及んでいます。事故はいまだに原因の究明が尽くされず、収束のめどさえ立ちません。原子炉から漏れ出す放射性物質に汚染された大量の水の処理が大問題になっており、外国のメディアからも「新たな危機」に直面していると指摘されています。万が一汚染水が海洋に流出すれば、それこそ国際的な大問題です。
事故が浮き彫りにしたのは、日本の原発の技術水準の高さどころか、原発自体が技術的に未完成で、冷却能力を失えばコントロールできなくなる致命的な欠陥をもつという事実です。原発では、全ての電源が切れ冷却できなくなるような過酷事故は起きないと、「安全神話」をふりまいて原発建設を進めた東電などの電力会社はもちろん、「国策」として原発を推進し、電力会社への有効な規制さえやってこなかった歴代自民党政権も、重大な責任を問われています。
多少ともまともな政権なら、事故の収束や被災者支援に全力をあげるとともに、原発の危険性を認め、直ちに原発からの撤退をこそ決断するのが当然です。ところが安倍政権は、民主党政権が掲げていた不十分この上ない「2030年代に原発稼働ゼロ」の目標さえ撤回し、国内では原発の再稼働を急ぐ一方、国外へは原発の輸出を推進する姿勢です。東電福島原発の重大性を受け止めるどころか、国民と世界に対し生命と安全を守る基本姿勢に欠けています。
中止求める国民の運動を
安倍政権がこれほどまでに露骨な原発推進の姿勢をとり続けるのは、既存の原発に固執する電力会社や、原発を売り込んでもうけようという原子炉メーカーなどの利益を優先しているからです。文字通り企業さえもうかれば“あとは野となれ山となれ”の態度です。
大企業の利益は考えても、安全については眼中にもない安倍政権は危険です。安倍政権による原発の再稼働や原発輸出を許さないため、国民の運動と世論が急務です。
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