高級ホテルで市長主催の大宴会。主賓の竹中工務店の席には、あの児玉東大教授。
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それは豪華な宴だった。都心にそびえ立つ「ホテル椿山荘東京」。2万坪の日本庭園に、国の登録有形文化財の三重塔を抱く、老舗結婚式場として名高い。 広間に五つの大きな丸テーブル。料理卓からディナーが運ばれてくる。上座の円卓には、大手ゼネコン幹部がズラリ。竹中工務店の常務執行役員、竹中土木の福島営業所長、大成建設の執行役員、前田建設工業の総合企画部長、安藤建設の社長……。下座の円卓には、宴の主催者がにこやかに座っていた。誰あろう、「ユーチューブ」で被災地支援を呼びかけ、「世界で最も影響力のある100人」(米タイム誌)に選ばれた南相馬市の桜井勝延市長である。
市長を古くから知る地元有力者が言う。「『南相馬市経済復興懇談会』と銘打つ会合は、地元進出に名乗りをあげた企業を市長が招き、震災前は都内のKKR(国家公務員共済組合連合会)ホテルなどで地味に行われていました。豪勢な宴に様変わりしたのは震災後。椿山荘での開催は去年に続き2度目です」
■まるでゼネコン談合の宴
昨年春、南相馬市は生活圏の除染を、竹中工務店を中核とする民間事業体(JV)に約400億円で一括発注。さらに昨年秋、農地除染についても竹中JVに随意契約(約66億円)で一括発注した。「なぜ、竹中ばかり。しかも随契なのか」と疑問の声が上がったが、「桜井市長が竹中一本に決めてしまった」と、地元の保守系議員は批判する。
実際、被災自治体主催の懇談会とは思えぬバブルな宴は、竹中JVをはじめとする受注業者の談合の場と見まごうものだった。
本誌が入手した参加者名簿には企業側から29社39人。桜井市長を囲むテーブルには、地元に事業所を持つ業務用厨房機器メーカー「タニコー」やゴム製品メーカー「藤倉ゴム工業」のトップが揃い、ゼネコン以外の業種では、日立製作所グループ、総合商社の双日グループ、地元でソーラーパネルの製造工場を建設するジー・エム・ジーの代表などが参加。福島県からは東京事務所長、地元商工団体からは原町商工会議所会頭ら6人が出席。市からは、桜井市長以下、経済部長、企業誘致担当理事ら8人が参加し、総勢約60人の大宴会だった。
出席したゼネコン幹部は言う。
「桜井さんは除染が済んだ工業団地に企業を呼ぼうと必死だったね。雇用を創出して避難した住民を呼び戻したいらしい。原発20キロ圏内の北部エリアの避難住民は、南相馬市に『仮の町』を作る計画があるとか、誘致に応じてくれた企業には地方税を10年間免除するとか、話が盛り上がっていた……」
しかし、業者に復興策を熱弁する桜井市長の地元における評判はさっぱりだ。とにかく、市の除染事業は遅れに遅れている。当初、市は今年度中に生活圏の除染を終える計画だったが、それが1年ほど遅れ、その実現さえ危ぶまれている。「環境省が難色を示したため、農業用ため池の汚染土壌の浚渫(しゆんせつ)を諦め、周辺の除草程度にとどめた。桜井さんは期待を裏切ることばかりしている」(地元の農家)
※2に続く