「円相場が100円になれば、日本の鉄鋼メーカーも韓国や中国のメーカーと競争可能だ」(UBS証券アナリスト・山口敦氏)
「円相場が100円以下では日本の製造業は維持が不可能だったが、これから企業は積極的に海外市場を攻略すべきだ」(古森重隆・富士フイルム会長)
円相場が1ドル=100円を目前とする水準まで下落し、日本では企業の復活に対する期待感が高まっている。
円安で最も恩恵を受ける自動車だけでなく、鉄鋼、機械部品も腕まくりをして「これで韓国と渡り合える」と戦意を燃やしている。日本の証券各社は、日本企業は円高で鍛えられているため、円相場が100円で推移すれば、経常利益が前期比で30-40%増加するとの予想を相次いで示している。しかし、日本企業は円安による好況に沸き立たず、むしろ手綱を締め直している。今回のチャンスを確実に生かし、再び訪れるかもしれない円高局面に備えようという考えがあるからだ。
■新興市場攻略の契機に
昨年の世界市場で販売トップの座を回復したトヨタは、これまでのコスト削減努力が奏功し、10円の円安で年間7000億円の増益効果が見込まれる。
しかし、トヨタ労組は今年3月の賃金交渉で、円安は進んでいるものの、国際競争が激しく、今後の事業見通しが不透明だとして、ボーナスの引き上げのみを求め、基本給引き上げは要求しなかった。2007年以来の好業績が期待されるトヨタは、むしろ危機意識を強調し、組織再編を断行した。開発途上国の攻略を目的として「第2トヨタ」という事業ユニットを設けた。韓国の自動車メーカーが強い新興国市場でも確実にトップの座を勝ち取るためだ。
ホンダが今年7月に完成させる埼玉・寄居工場は、新興国向けの実験工場と位置づけられている。コスト削減と品質向上のためのさまざまな工程を試し、来年以降に完成するメキシコとタイの工場に応用する方針だ。