Updated: Tokyo  2013/05/09 17:19  |  New York  2013/05/09 04:19  |  London  2013/05/09 09:19
 

トヨタは慎重過ぎる為替前提、現状水準なら今期最高益更新も

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  5月9日(ブルームバーグ):自動車メーカー世界最大手、トヨタ自動車の今期業績予想の前提となる為替レートは現状より大幅な円高を想定しており、足元の水準が続けば通期の利益が切り上がる公算が高く、過去最高益を更新する可能性もある。

トヨタは8日、今期(2014年3月期)純利益が前期比42%増の1兆3700億円との見通しを示した。円安のほか米国、新興国市場の堅調な販売や原価低減効果で08年3月期以来6年ぶりに1兆円の大台を超える見通しだが、ブルームバーグが集計したアナリストの今期予想平均値1兆4152億円は下回った。

アナリスト予想を下回った主因は業績予想の前提となる為替レート。外為市場では昨秋から円安に転じ、最近は1ドル=100円、1ユーロ=130円近くまで進行している中、通期の為替前提は1ドル=90円(前期83円)、1ユーロ=120円(同107円)とした。

トヨタ広報担当の土井正巳氏によると、同社の為替前提は3月の平均為替レートを円高方向に切りのいい90円に丸めたもので、事業の動向などを想定に入れて算出したものではないという。今期のトヨタは為替が1円円安になるごとに営業利益面に、対ドルで400億円、対ユーロで40億円のプラス要因となる。

独立系調査会社ティー・アイ・ダヴリュ(TIW)の高田悟アナリストは、為替前提だけでなく国内の販売台数や原価低減による営業利益の押し上げ効果などでもプラス効果を控えめに見積もっている印象を受けると指摘。金融危機以降、大規模リコールや東日本大震災、超円高など「異常事態が日常になる」経験を経て、「今回は下方修正はない。何も問題が起きなければ必ず利益は切り上るというトヨタのメッセージが読み取れた」と話した。

4500億円程度のバッファー

トヨタの決算資料によると、今期の営業利益は同36%増の1兆8000億円、売上高は同6.5%増の23兆5000億円と予想した。ブルームバーグ・データによるアナリストの予想平均値は営業利益2兆338億円、売上高24兆4522億円で、いずれも会社側の予想値を上回っている。

英投資会社GAMのファンドマネージャー、ベン・ウイリアムス氏は、実勢水準と今期の為替前提を比べると4000億円から4500億円程度のバッファーがあり、実勢水準でみるならば、市場予想にそったものになるだろうと話した。

アドバンストリサーチジャパンの遠藤功治氏は「一見保守的に見えるが、為替前提が90円であることを考えると実際は過去最高益を抜く可能性もある」とみている。遠藤氏によると、為替水準は1ドル=100円レベルなら営業利益は2兆2000億円程度となり、過去最高だった08年3月期の営業利益2兆2704億をうかがう水準となる。

トヨタ東京本社で会見した豊田章男社長は、前期決算を総括し、クラウンなどの新型車を市場に投入し、11年に発表した中長期の経営方針で掲げた「もっといい車づくり」を目指す「ビジネスサイクルが回り始めた」と話した。

今期世界販売は大台乗せも

ダイハツ工業 と日野自動車を含む今期のグループ世界販売は、小売りベースで、前期比4.2%増の1010万台を計画。中国合弁などを除いた連結ベースでは同2.6%増の910万台の見通しで、このうち日本が7.0%減の212万台となるが、北米は6.9%増の264万台、アジアが4.5%増の176万台などとした。

トヨタは最高益を記録した翌年の09年3月期にはリーマンショック後の世界的な需要落ち込みで59年ぶりの最終赤字に転落。その後も震災や対ドルで戦後最高値を記録した円高などで収益は低迷していた。

しかし、その後は再び盛り返し、12年の世界販売で、米ゼネラルモーターズ(GM )を抜いて2年ぶりにトップに返り咲いた。今年1-3月の実績でも前年同期比2.2%減の243万台で、GMや独フォルクスワーゲン を抑えて首位を維持していた。

1-3月の純利益は前年同期比2.6倍の3139億円だった。また、前期(13年3月期)純利益は前の期比3.4倍の9622億円で、会社側予想8600億円やアナリスト予想平均9120億円を上回った。また、単独決算の営業利益は2421億円と、5年ぶりの黒字となった。年間配当金は前の期に比べて40円増配の90円とした。

トヨタはまた、株主総会を6月14日午前10時から本社で開催すると発表した。トヨタの株価 は8日終値で、前日比1.4%高の5840円。年初来では46%の上昇となっている。

記事に関する記者への問い合わせ先:大阪 堀江政嗣 mhorie3@bloomberg.net;東京 向井安奈 amukai1@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先:Young-Sam Cho ycho2@bloomberg.net

更新日時: 2013/05/09 00:01 JST

 
 
 
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