【北京=中沢克二】中国共産党機関紙、人民日報は8日付で「歴史的に未解決の琉球(沖縄)問題を再び議論できる時が来た」と主張する論文を掲載した。党・政府の見解を示す同紙が沖縄の帰属を未解決と断じ、中国の領有権を示唆したのは初めて。沖縄の帰属を持ち出し、尖閣諸島を巡る問題で日本をけん制する狙いがある。
執筆した社会科学院の研究者らは「琉球は明清両朝の時期、中国の属国だった」とし、日本が武力などで併合したと強調。1894~95年の日清戦争後の下関条約に関し「(敗北した)清政府に琉球を再び問題にする力はなく、台湾と付属諸島(尖閣諸島を含む)、琉球は日本に奪い去られた」と主張した。中国政府は従来、沖縄を日本領と認めてきた。だが、外務省報道官は8日の記者会見でこれに言及せず「琉球と沖縄の歴史は学術界が長く注目する問題」としただけだった。
菅義偉官房長官は8日の記者会見で、論文について「全く不見識な見解だ」と不快感を表明。「紛れもなくわが国の領土だ」と強調した。
今回、党機関紙が一部の研究者の意見を公式に認める形で帰属問題を提起したのは「尖閣問題で前進がなければ沖縄も安泰ではない、とのメッセージを内外に発する意味がある」(関係者)とみられる。
中国内では昨秋の尖閣諸島を巡る反日デモの際、「沖縄は中国領」と主張する横断幕が見られるなど、沖縄への関心が高まりつつある。一方、ネット上では「過去に中国の属国だったという論理から中国領になるなら朝鮮半島やベトナムも中国領となり、隣国の不安をあおって危険だ」など、人民日報の論文への懸念も出ている。
人民日報、沖縄、中国、菅義偉
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