難産だった。開幕前は常々、「自分への期待と不安。1本を打つまでは」と口にする。4月11日の巨人戦(甲子園)。雨天のため室内練習場にいると、ミズノのグラブ職人だった坪田信義氏(80)が訪れた。ガッチリと握手をすると、率直な心境を吐露。「試練を与えられています」-。信頼してきた恩人だけに漏らした言葉。現状を打破するため甲子園の試合後は連日、1時間以上もミラールームで素振りを繰り返した。
原点を呼び覚ましてくれる存在もいた。5月1日の広島戦(甲子園)の試合後。いつものように居残りをしていると偶然、D6位の緒方凌介外野手(22)が現れた。東洋大の後輩は荷物を取りに来たのだが、そこで質問攻めにされた。相手投手の配球の疑問をぶつけられ、答えたが、ひと言付け加えた。