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韓国の朴槿恵大統領は、ワシントンで開かれた米韓首脳会談で、閣僚の靖国参拝などを念頭に、日本は正しい歴史認識をもたなければならないと、オバマ大統領に直接訴えた。
北朝鮮の核・ミサイル問題に対処するため、関係国の結束を演出すべき場で、あえて歴史問題を持ち出し、日本を批判したのである。
ワシントンポスト紙のインタビューでも「日本は過去の傷口を開き、大きくした」と、日本の姿勢を批判した。
日米は2月に、米韓は今回、それぞれ首脳会談を開き、米中も習近平国家主席の誕生にあわせ3月に電話による首脳会談を開いている。
日中韓はどうか。3カ国でほぼ同時期に新政権が誕生したにもかかわらず、歴史認識や領土問題で関係が冷えきってしまい、首脳会談開催のめどはたっていない。
1995年の村山談話に関連して安倍晋三首相は、4月23日の参院予算委で「侵略という定義は、学会的にも国際的にも定まってない」と誤解を招きかねない答弁をした。
中韓両政府が閣僚の靖国参拝を批判したことについては、翌24日の参院予算委で「どんな脅かしにも屈しない」とけんか腰で答えた。
外交への影響を考慮し火消し役に回るべき首相自身が、挑発的な発言を重ね、摩擦の火種になっているのである。
北九州市で5、6日に日中韓3カ国環境相会合が開かれた。これを日中韓連携の第一歩にしてほしい。そのためには、首相自身の慎重さと中韓への配慮が必要だ。
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第1次安倍内閣は、従軍慰安婦問題で米議会から批判を浴び、米政府からもたしなめられ、結局、主張を軌道修正した。第2次安倍内閣もやはり、靖国問題などで米政府やメディアの批判を受けた。
安倍内閣は、ポツダム宣言とサンフランシスコ講和条約によって形成された戦後秩序を壊そうとしているのではないか。米国のメディアには、そんな懸念が消えない。
日米韓3カ国が連携し、北朝鮮問題にあたる、というのが米国の基本戦略であり、米政府も事態を憂慮し、外交への影響を懸念する。
日中韓3カ国は、東アジアの隣人でありながら、なぜ、未来に向かって手をつなぐことができないのだろうか。
従軍慰安婦問題に対する「河野談話」や、侵略や植民地支配に対する「村山談話」は、政府が公式に示した基準である。政権が代わるたびにぐらぐらするようでは国際社会の信頼は得られない。
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日本は、無謀な戦争によって未曽有の損害を被り、アジア諸国に対しては侵略や植民地支配によって甚大な被害を与えた。
戦後、自らの手で戦争責任を問うことができず、極東国際軍事裁判と講和条約によって他律的に処理した結果、侵略や植民地支配に対する共通認識を国民的規模で育てることができなかった。
歴史問題の根は深く、国民感情が複雑に絡む。まずは日本政府が率先して対話の道を探り、信頼醸成に努めるべきである。