地域の元気:青森 劇団「渡辺源四郎商店」 生活に根ざした芝居 /静岡
毎日新聞 2013年05月08日 地方版
地域密着型の青森市の劇団「渡辺源四郎商店」が、地元中学生を対象に演劇体験のワークショップを展開したり、東京でも公演するなど活動の幅を広げている。主宰の畑澤聖悟さん(48)は県立青森中央高校教諭。「青森に根ざした優れた作品を発信し続け、地域文化に貢献する」と話している。【石灘早紀】
−−劇団名がユニークですね。由来を教えて下さい。
初めて自分が主宰する劇団で、父祖の名を借りました。渡辺は婿養子だった亡父の旧姓。源四郎は亡祖父から。商店は「芸術は理解されなくていい」と居直るのでなく「いらっしゃいませ」という気持ちで芝居をお客さんに差し出す、との思いを表しています。名刺を渡しただけだと「酒屋さん?」と思われてしまいますが。
−−演劇を始めたきっかけと、青森で劇団を旗揚げした思いを教えて下さい。
受験勉強中に演劇を題材にした漫画「ガラスの仮面」を読んで「自分もできる」と思い、大学で演劇サークルに入りました。
演劇の中心は東京ですが、東京では稽古(けいこ)の始めから発表までのすべてを手作りの拠点で行うのは無理です。それを地方でやりたいなとつくったのが今の劇団です。青森市の海の近くの元レストランを「アトリエ・グリーンパーク」と名付け、団員たちと劇場に変える大工仕事に取り組みました。劇団とは別の仕事をしつつ、青森の生活に根ざした視点で、じっくり芝居に取り組めます。
−−顧問を務める青森中央高の演劇部は、昨年の全国高校総合文化祭の演劇部門で最優秀賞を受賞しました。
「もしイタ〜もし高校野球の女子マネージャーが青森の『イタコ』を呼んだら」という作品です。東日本大震災の被災地で設備がなくてもボランティア上演することを念頭にしました。舞台装置や照明、音響は一切使いません。被災地でも9回上演しています。
−−演劇を通じてどんなことを目指していますか。
伝えたいことがある時は相手を見るとか、演劇には人と人とのつながりのノウハウが詰まっています。さらに、人を幸せにします。「もしイタ」のボランティア上演では、演劇で幸せを感じている者として、演劇でほかの誰かを幸せにしないと、と思いました。観客やワークショップの参加者も含め、演劇を好きでいてもらい、地域に愛される劇団でありたいと願っています。