一瞬のチャンスを見逃さなかった。井岡の右の拳が、ウィサヌの腹にめりこむ。1発、そして2発目に挑戦者はもんどり打って倒れ、10カウントを聞かされた。老練なサウスポーの堅い防御にてこずっていたが、一気に攻略した。
「かっこよかったですかー!?」
先に初防衛した親友の宮崎にならい、リング上からファンにアピールすると、「(ボディーへのパンチは)正直、手応えはなかったけど、それまでに効いていたのは分かっていた」と余裕を漂わせた。
国内最速の7戦目でWBC世界ミニマム級王座を獲得した、2011年2月のオーレドン・シッサマーチャイ(タイ)以来となるサウスポー。磨き抜いた左ジャブから右ストレートを的確に当てて、打たれ強い挑戦者を追い込んだ。
励みになるのが、弟・勇さんの息子、勇生(ゆい)君の笑顔だ。2歳前の男の子は、テレビに映る井岡の映像を見てパンチのまねごとをするように。「いつも勇生のパンチで(井岡が)どつかれていますね」と母・美穂さん(45)。自身も幼いころから井岡弘樹会長(44)の背中を見て育ってきたように、勇生君も今後、井岡と同じ道を歩む可能性もある。