月刊WiLL:2013年2月号に中西輝政氏が『中国の奥の手は「敵国条項」』という文章を書いています。
『国連憲章、第53条、第107条が敵国条項と言われる二条で、第2次世界大戦中、国連加盟国(中国は原加盟国、つまり創設メンバーとされる)の敵国であった日本とドイツに対して、この「敵国条項」が適用される。
この2国が「再び侵略戦争の動きを見せた時」、あるいは「第2次世界大戦で出来上がった国際秩序に対して、それを棄損する行為に出た時」には、国連加盟国は安保理の決議や承認がなくても、自国の独自の判断によって日本やドイツに対しては軍事的制裁を行うことができる、とされているのである。
そして安保理やアメリカを含むいかなる加盟国も、それに対抗したり阻止したりすることはできない、とわざわざ念が押されているのである。』
中国にこの条項を持ち出されたら、アメリカは手の出しようがなくなり、日本は完全にアウトになる、という大変な条項だ、と中西氏は恐れています。
日本外交はこの条項を撤廃するために全力を注ぐべきだったのに、日本政府は今までこの対策はほとんどなされていない、と嘆いています。
この条項がある限り、日本は中国に絶対に勝ち目がない、というのが中西氏の言わんとすることです。
右翼学者の中西氏が右翼雑誌WILLに書いていることですから、ある意味、信頼できる見方だと考えて、ここに引用しました。
アメリカ政府が安倍総理の訪米日程を受け入れなかったのは、安倍氏の言った、「河野談話、村山談話を見直す」という発言に、「第2次世界大戦で出来上がった国際秩序に対して、それを棄損する行為」を見たからだとも言われています。
従軍慰安婦問題などについての安倍氏の発言もアメリカ政府を苛立たせているようです。
中国が国連の場で、言っていることも、このことのようです。
つまり日本は、外交戦において、中国に完全に先手を取られてしまっています。
集団的自衛権などという滅多に起こらないケースのことでアメリカのご機嫌を伺うなどというのは小手先の誤魔化しにすぎません。
安倍政権は、右翼国粋思想と右翼親米志向との矛盾を抱えて、苦境に立たされています。
その上、TPPと沖縄基地問題で、アメリカのご機嫌を取ることは事実上困難な事情がありますから、2月の訪米へのお土産は何も無い、という状態です。
日本の今後について悲観的なことばかり書きましたが、こういうことで日本国民が自暴自棄に陥らないように願うばかりです。