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不妊治療にはいくらかかるのか? 

東洋経済オンライン 5月8日(水)8時0分配信

 基本的に、検査だけで治療が終わることはありません。不妊治療は子どもを授かれるかどうかがすべてですので、ここからがスタートです。

 不妊治療には、がんなどの病気に見られる「標準治療」や「治療ガイドライン」などがありません。その理由としては、カップルごとに不妊原因が異なる点(原因不明を含む)や、妊娠という明確な結果に重点が置かれる点などが挙げられます。そのため、各カップルに合った「オーダーメード治療」を行います。

 一般的な不妊治療は、(1)タイミング法→(2)人工授精→(3)体外受精の三つのステップが基本になります。患者さん個別の症状や状態などに応じて、(1)→(2)→(3)とステップアップしていきます。

 不妊治療を妊娠率と治療にかかる費用の観点で見ると、治療がステップアップすればするほど、妊娠率は上がりますが、体への負担や費用は大きくなります。

 第1ステップのタイミング法とは、排卵日の前後に性交渉を行う方法です。基礎体温をつければ、自分でもある程度は排卵日を予測することはできますが、クリニックで超音波検査(エコー)を行うと、より正確に排卵日を予測できます。

 20代で時間の余裕があり、何の問題もないカップルにはタイミング法を勧めます。ただ、当院は35歳以上の患者が多いため、タイミング法の妊娠率は5〜6%にすぎません。30代後半の方には早めに人工授精に移ることを勧めています。

 タイミング法や排卵誘発などの治療は保険適用ですので、費用は1回当たり数千円程度です。

 二つ目のステップである人工授精とは、細いチューブ(カテーテル)を用いて、精子を女性の子宮あるいは卵管に人工的に送り込む方法です。受精は患者さん本人の卵管で行われるので、完全な自然妊娠です。

 特に男性は、「人工」という名前に抵抗感を持つ傾向があります。女性はやる気満々なのに、男性が「そんな人工的なことまでして子どもが欲しくない」と言って、治療が滞るケースが多くあります。ただ、男性にもしっかり説明すれば、多くの場合、わかってもらえます。

 精液所見が正常な男性と不妊原因の認められない女性のカップルの場合、人工授精の1周期当たりの妊娠率は、7〜9%程度です。4〜5周期続ければ、累積妊娠率は20%程度にまで上がります。ただ、それ以上回数を増やしても、妊娠率は上昇しませんので、5周期行っても妊娠しない方には、体外受精などへのステップアップを勧めています。

 人工授精の料金は1回当たり約1万5000円です。不妊治療は高額なイメージがありますが、人工授精までなら、家計を大きく圧迫するほどの負担にはなりません。

■ 自然妊娠の可能性をできるだけ追求すべき

 一般不妊治療(タイミング法と人工授精)で2〜3年以内に4〜5割の方が妊娠しますが、施設によって成功率は多少バラツキがあります。

 一般不妊治療で妊娠しない場合、一般的に2年間、35歳以上の方は約半年で、体外受精へ移ることを勧めるのが一般的です。

 患者さんにすぐ体外受精を勧める病院もありますが、当院では、できるだけ一般不妊治療による自然妊娠の可能性を追求しています。日本人の感覚からすると、自然に妊娠できるに越したことはありません。

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最終更新:5月9日(木)0時10分

東洋経済オンライン

 

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