1ドル=100円の大台が間近に迫る中、この円安ドル高傾向が韓国経済の不安要素として急浮上している。だが、ヒョン・オソク副首相(経済担当)をはじめとする韓国政府の経済担当者たちは、深刻な状況にあることを認識しながらも、これといった対策を打ち出せずにいる。ヒョン副首相は先週、米国ワシントンで行われた主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で円安に歯止めを掛けようとしたが、何ら成果を得ることなく帰国した。日本が「アベノミクスが国際社会から認められた」と喜び勇んだのとは正反対だった。
外国為替市場に直接介入し、レートを調節しようとしたものの、国際社会から批判を浴びるだけで、輸出企業に対する資金の支援なども国際社会のルールに反する恐れがあるため、他国の視線ばかり意識している、と指摘する声が出ている。実際、朴槿恵(パク・クンヘ)政権は発足以来、市場と親和的な為替政策を掲げ、市場への介入を自制している。李明博(イ・ミョンバク)前政権が輸出をめぐる競争力の維持という大義名分の下、ウォン安政策を実行したのとは対照的だ。
円安傾向を受け、韓国政府が最近打ち出した政策を見ると、政府の対処がどれだけ消極的なのかが見て取れる。今月1日、企画財政部(省に相当)は「最近の円安傾向への対応策」を発表したが、その主な内容は次の三つだ。一つ目は、関係機関が合同で対円レートを常時監視する体系を整備するというものだ。だがこれは、対策というよりは、日常的な為替レートのモニタリングを強化するというレベルにすぎない。
二つ目は、中小の輸出企業に対し、これまでよりも金利面で有利な条件で融資を行うというものだ。政府はひとまず、政策金融公社を通じ、円安により損害を被った企業に対し総額1000億ウォン(約88億円)の融資を行う方針を打ち出した。輸出企業に対する保証の満期を1年間延長し、また韓国輸出入銀行と政策金融公社が、すでに決定していた輸出資金の支援のうち60%以上を今年上半期に実施するという内容も盛り込まれている。だが、このような措置は、企業が受けた莫大(ばくだい)な損害を考慮すると微々たる水準で、円安による企業の収益性の悪化を解決する根本的な対策にはなり得ない。
三つ目は、韓国政府が日本向けの輸出企業のため、日本国内に合同物流センターを設けるなど、インフラの構築を支援するというものだ。だがこれも、恩恵に浴する企業は極めて限定的だ。